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特集

2019年9月2日(月)掲載

IS襲撃から5年 今も続くヤジディ教徒の闘い

2014年8月。過激派組織IS=イスラミックステートは、イラク北部に暮らす少数派のヤジディ教徒を襲撃した。多くの住民を殺害したほか、数千人もの人たちを連れ去った。あれから5年。ISに襲撃されたヤジディ教徒の多くは、今も過酷な避難民キャンプの暮らしを余儀なくされ、いまだに3千人の行方が分からない状態だという。「彼女たちを助け出したい」。奇跡的に虐殺を生き延びた男性が、みずからの娘の行方を探しながら、同じ境遇の女性たちの救出に力を注いでいる。ISとの闘いが続くヤジディ教徒の今を追った。

奇跡的に救出されるも…

イドリス・タハさん

ヤジディ教徒のイドリス・タハさん(48)。これまでに救出した人の数は、200人を超えた。自らが救出した家族を訪ねたタハさんは、「女性とその子どもを一緒にシリア東部から救出した。12人も救出したんだ」と嬉しそうに語った。

イラク北部コジョ。かつて、ヤジディ教徒の人々が住んでいた村だが、5年前野襲撃で住民は離散。今も周辺地域でISの残党による襲撃が続き、住民は帰りたくても帰れず、村は廃墟となっている。

そこには、タハさんが以前住んでいた家が今も残っていた。

家の外壁には、ISが書いたとされる文字が刻まれていた。2014年8月。この村は突然、銃を手にしたISの戦闘員に襲撃された。女性は連れ去られてISの戦闘員から凄惨な性暴力を受け、男性は、虐殺された。タハさんも額や足に4発の銃弾を受けたものの、奇跡的に救出されて一命を取りとめたという。
しかしー。

「私は隣にいた、17歳だった息子の手を握っていました。私だけが撃たれ、息子は撃たれないよう願っていました。でも、息子は、私の目の前で、頭を打ち抜かれたんです。」



“拘束された娘を助けたい”

娘のアマニさん(当時7歳)

さらに、タハさんを待ち受けていたのは、当時7歳だった娘のアマニさんがISに連れ去られたという悲しい知らせだった。タハさんは、アマニさんの写真を見ながら「娘は、とても恥ずかしがり屋だが、家族と一緒にいる時はいつも楽しませてくれた。笑顔がとてもかわいかった」と語った。

「娘だけは何としても助け出したい」

タハさんは、ISの支配地域に協力者を送り込み、娘や女性たちを救出するための、情報のネットワークを構築した。その後、タハさんのもとには、協力者からさまざまな情報が寄せられ多くの女性たちを救出することができたという。
しかし、娘のアマニさんだけは、今も助けることができていないー。


“娘に会いたい”闘い続ける父

2018年5月。タハさんのもとに、協力者からある動画が送られてきた。その映像には、美しく成長したアマニさんの姿が映し出されていた。
アマニさんは、いま、12歳になっている。

11歳になった娘アマニさん

「私はアマニです。コジョから来ました…」

アマニさんは、今も、シリア北西部の避難民キャンプで、ISの家族に軟禁されているという。さらに、協力者によると、アマニさんは暴行を受けたという。映像を見たタハさんは、「この女性は、アマニです。成長したなという感じだ。映像を見ると胸が痛くなる」と語った。

タハさんの願いはたった1つ。

「娘に、会いたい。もう1度会って抱きしめて、キスをしたいんです。」

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