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特集

2019年8月30日(金)掲載

シリーズ アフリカ③ 目指せ流通革命!日本の中小企業の奮闘

中国をはじめ、世界各国が進出している「最後の巨大市場」アフリカ。7回目を迎える今回のTICAD=アフリカ開発会議で、日本政府は、日本からアフリカへの民間投資をさらに促進する考えを表明した。現在、アフリカでビジネスの展開を狙うのは、大企業だけではない。中小企業やベンチャー企業の参入も相次いでいる。そうした企業が注目する国は、必ずしも、南アフリカやケニアといったアフリカの中でも経済発展の進んだ国ばかりではない。日本の中小企業の1つが注目しているのが、アフリカ南東部のモザンビークだ。海岸線は2000キロと長く、海洋資源に恵まれた環境にあるものの、水産物の流通は進んでいない。そこに独自の養殖技術を持ち込むことで、魚の流通革命を起こそうと奮闘している。

“冷凍魚”が人々の食を変えた

アフリカ南東部モザンビークの首都マプト。半年前にオープンした鮮魚店には、地元の客が次々と訪れている。

ティラピア

売られているのは、「淡水のタイ」とも呼ばれるティラピアという魚。ここのティラピアは、栄養豊富でありながら、値段が安いと地元で人気になっている。「この店の魚はとてもおいしくて大好き」(買い物客)。こうした流通を可能にしたのが、日本企業の技術だ。漁獲後、生きたまま手早く氷で締めてから、時間をかけずにマイナス25度に急速冷凍する。こうした手法によって鮮度を落とさずに流通に乗せることに成功したのである。

松永徹さん

この店を経営するのは日本の中小企業から派遣された松永徹さんだ。はじめは苦労の連続だったという。

価格を抑えるため、養殖は自社で始めた。生けすも、ポリタンクやパイプで手作りしたものだ。生産量は年間2トンと決して多くはないが、更なるコストダウンのため、今後は規模を拡大していきたいと考えている。

松永さんは、さらに、モザンビークでは珍しい冷凍トラックでの移動販売にも取り組んでいる。魚になじみのない人にも知ってもらい顧客を開拓しようという狙いだ。

松永徹さん「品質もいい、値段も手ごろであると皆さんに受け入れてもらえるティラピアを作りたい」



窮地を救ったのは、地元の植物“モリンガ”

松永さんがモザンビークで経営する会社、その母体は、三重県で冷凍加工を行っている中小企業だ。日本での魚の消費量が減り続け、危機感を強めていた2012年、水産物の買い付けのために、たまたまモザンビークを訪れたことが、現地での起業のきっかけだった。冷凍技術が発達していないために、一般家庭では魚があまり食べられていないことを知った松永さんたちは、手頃な値段で魚を届けることができれば、大きなビジネスチャンスになると考えたのだ。

「人口がモザンビークに限らずどこのアフリカも増えているため、需要は自然に増えてくると思った。可能性は十分ある。後は値段次第だと感じた」

低価格を実現するため、松永さんの会社では、魚の養殖から販売まで一貫して現地で行う戦略を立てた。

さらに、養殖の研究をしている地元の三重大学に協力してもらい、養殖のプロジェクトが始まった。

植物の葉 モリンガ

研究を重ねること半年。モリンガというモザンビークでは至る所に生えている植物の葉が、エサに適していることを突き止めた。輸入に頼っていたエサを、すべて現地の材料で作ることで、ティラピアの生産コストを3割以上抑えることができたという。



異国の地で活路見いだす

当初は5年以内の黒字化を目指していたが、4年がたった今も事業はまだ赤字だ。本来であれば養殖をさらに拡大してコストを下げつつ、多くのティラピアを売って売り上げを伸ばす必要があるが、資金のめどがついていない。
立ち上げ時には日本の政府開発援助(ODA)の支援制度による資金を受けたが、事業の拡大には自力が必要だ。
今、急ピッチで進めているのは、販路の拡大のための新店舗だ。

この日は、新規にオープンする店舗の物件の下見に来た。日本とは、商習慣が全く異なることもあり、新店舗探しには慎重にならざるを得ない。今年1月には、所有者をかたる人物から偽の賃貸契約を結ばされ、裁判沙汰にもなったという。松永さんは「誰がオーナーか信用できない。又貸しの又貸しも多くトラブルばっかりだ」と嘆く。

しかし、厳しい環境の中でも、松永さんの店には、「これまで食べることができなかった魚を、今では週に3、4回は食べるようになった」「魚を食べ始めてからは、病気をしなくなった」と、買いに来る地元の人たちの数が増えているという。

松永さんは、今後は、国際機関の援助や民間金融機関からの資金も得て、現地でのビジネス拡大につなげていきたいと考えている。

「続けたいんですよね、とにかくここまでやってきていて、いろんな人に協力してもらってサポートしてもらって、安心できるレベル、そういう所までは必ずやりたいです」

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