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特集

2019年8月28日(水)掲載

シリーズ アフリカ① アンゴラ ”脱中国依存“の模索

アフリカ54か国の首脳らが一堂に会し、日本との経済関係の強化や開発援助について協議するTICAD(ティカッド)=アフリカ開発会議。2019年8月28日から、横浜市で開催される。7回目となる今回のTICAD、キーワードは、「投資」だ。急速に成長するアフリカでは、今、諸外国の企業がその成長の分け前に預かろうと、次々と進出を図っている。中でも、猛烈な勢いで存在感を高めているのが中国だ。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の調査によると、2000年から2017年までの間に、中国はアフリカ諸国に1430億ドル(約15兆円)の融資を行っているという。その中国が最も多く、お金を貸し付けているアフリカの国が、アフリカ第2位の産油国、アンゴラだ。その額は430億ドル(約4兆5000億円)。財政を圧迫されたアンゴラは、中国による「債務のワナ」にからめとられようとしている。現状を取材した。

アンゴラのインフラ整備を支える中国企業

1975年に、宗主国ポルトガルからの独立を果たしたアンゴラ。その後、30年近く、豊富な石油資源の利権を巡って、政府軍と反政府勢力の間で激しい内戦が続き、首都ルアンダは一時、荒廃していた。しかし、今、内戦の面影はどこにもない。街には、高層ビルや、ショッピングセンターが林立し、至る所で建設工事が行われている。

急速な発展を遂げつつあるアンゴラ。経済成長率は、2000年代に10%を超えた。15%を超えた年もあり、富裕層や中間層も誕生している。ルアンダに住む22歳の女性は「ビル、住宅、娯楽施設、どんどんできてるわ」と満足気に話す。

アンゴラには、今、450以上もの中国企業が進出し、大規模なインフラ開発を進めている。首都近郊の5000ヘクタールの敷地に建設された700棟のマンションビル。一部の裕福なアンゴラ人のために、ゼロから造られた街だという。総事業費は、アフリカの中でも最大規模の35億ドル(日本円で3800億円余り)。そのすべてが中国による融資だ。学校や商業施設のほか、独自の発電所や浄水施設、さらに交通網も整備され、すでに7万人が暮らしている。今後、さらなる拡大が予定されていて、将来的には20万人が暮らすことになっている。

オクタボ・サンバさん

住民の1人、エンジニアのオクタボ・サンバさん(39)は、妻と5人の子どもとの7人で暮らしている。オクタボさんは、6年前、広さ120平方メートルの3LDKのマンションを購入した。日本円で約800万円、20年のローンを組んだという。「ポルトガルとブラジルの会社が建てる住宅は非常に高いので、中国の参入はいいですね。家を持つという夢が叶いました」(オクタボ・サンバさん)。しかし、こうした中国資本の進出の裏には、大きなからくりが隠されていた。



中国 巨額融資の裏のからくり

からくりの仕組みはこうだ。住宅開発をはじめとするインフラ整備には、巨額の中国マネーが流入する。工事を受注するのは、地元の業者ではなく、大金を融資してくれた中国の企業だ。

債務を膨らますアンゴラ政府は、外貨を捻出するため、アンゴラの唯一ともいえる輸出品の原油を売る。ところが、その原油を購入しているのも中国だ。

中国にしてみると、建設費を支払ってもらい、融資した資金も戻ってくるうえ、さらに原油も手に入るという仕組みなのである。

アゼベド石油相

このからくりをアンゴラ政府はどう思っているのか。アンゴラのアゼベド石油相に話を聞いた。最初は、言葉を濁していたが、繰り返し聞いたところ、苦々しい面持ちで答えた。

記者「原油での返済は、国にとって負担か?」
アゼベド石油相「その話には詳しくは立ち入りたくないが、我が国は、返済の義務は果たすしかない」



巨額債務のしわよせは国民に

中国の融資による借金が膨らみ続ける中、そのしわよせは、国民生活を直撃している。高層ビルの建設が進む中心部のすぐ横には、トタン屋根の住宅が密集するスラム街が広がっている。一部の国民が豊かさを享受する一方で、国民の30%が、一日1.9ドル(約200円)以下で暮らす貧困層だ。

アンゴラの債務の返済額は、今、国の支出の12%、約3300万ドル(約35億円)に及んでいる。これは、医療と教育それぞれの支出を上回っていて、国の財政を圧迫している。結果、貧困層の多くが、十分な医療や教育を受けられずにいる。「中国の投資の恩恵は企業や金持ちだけ。私たちは全く感じていない」(スラム街の高齢の女性住人)。

左:ドスサントス大統領 右:習近平国家主席

中国の融資を受け入れてきたのが、ドスサントス前大統領だ。40年近い長期政権により、腐敗が横行。欧米や日本などが、不透明な政権運営で批判されていたアンゴラ政府への融資を渋る中、中国は、融資を続けてきたのである。

経済専門家のカルロス・ロサド氏

地元の経済の専門家は、こうした融資が、中国に有利な条件で行われてきたと批判する。「石油が担保できたからこそ、中国はリスクを承知で融資をしたのです。お金は全くアンゴラに落ちません」(経済専門家のカルロス・ロサド氏)。一方で、ここに来て変化もみられるようになった。一昨年(2017年)、ドスサントス氏が退陣したのは、まさに長期政権や中国との関係に、国民から批判が高まったからだった。



変わる風向き “脱中国依存”へ

ロウレンソ大統領

新たに就任したロウレンソ大統領は、これまでの中国依存からの脱却を掲げ、融資を、ほかの国や国際機関から受ける方向に転換しようとしてる。現在、中国企業が担っている新空港と鉄道の工事についても、事業費が膨れ上がり過ぎているとして、工事のストップと見直しを命じた。

アゼベド石油相

しかし、アンゴラのインフラ整備がまだ途上であることに変わりはない。中国依存からの脱却のためには、どこまでほかの国からの投資を呼び込めるかが課題だ。アゼベド石油相は、私たち取材陣に対して、日本からの投資への期待を隠さなかった。「日本企業はすでにさまざまな産業に進出している。石油産業への進出も期待している」(アゼベド石油相)。

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