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特集

2019年6月14日(金)掲載

行き場失うプラスチックごみ 揺れるアメリカ

海を漂流し、生態系に影響を及ぼすプラスチックごみ。いま世界で行き場を失い、深刻な問題になっている。国際機関の推計によると、1年間に世界で発生するプラスチックごみの量は3億トン。これまで多くの先進国は、このプラスチックごみをリサイクル資源として中国や東南アジアなどに輸出してきた。そして、その輸出量の1位がアメリカで、2位が日本だった。ところが2018年1月、中国が処理作業に伴う環境汚染などを理由に輸入をストップ。さらに東南アジアの国々も、輸入規制の強化に乗り出し、世界に波紋が広がることとなった。中でも、これまで大きく中国に依存してきたアメリカは、プラスチックごみの行き場を失い揺れている。

プラスチックごみ 輸出から埋め立てへ

首都ワシントンに近いバージニア州のハリソンバーグ市にある、家庭などのごみが持ち込まれる処理場。さまざまなごみと一緒に、いま埋め立てられているのは、食品容器やペットボトルなどのプラスチックごみだ。ハリソンバーグ市では、2019年4月から、家庭からのプラスチックごみの回収を断念した。市の幹部は「残念だがリサイクル業者を確保できず、回収できない。環境に優しくないことはわかるが、しかたない」と諦め顔で語る。アメリカでは、ごみは埋め立て処分されるのが一般的だが、プラスチックごみは埋め立てには適さないとしてリサイクルに回され、中国などに輸出されてきた。プラスチックは、分解されるまで400年以上かかるものもあり、溶け出して環境汚染につながるからだ。ところが、中国が受け入れを停止したため、プラスチックをリサイクルに回すことができず、埋め立て処分に踏み切る自治体が増えている。

マヤ・カルツェバさん(41)が暮らすバージニア州スタントン市でも2019年4月、埋め立て処分が決まり、プラスチックごみは一般ごみとして出すよう通達があった。しかし、マヤさんは、これまでリサイクルされてきたプラスチックを埋め立てることに抵抗感があるため、ごみをなるべく出さないよう心がけている。例えば、これまで使い捨てにしていた子どものランチを入れるプラスチック製の袋。今は毎日洗って再利用している。それでも家の中には、ごみが増えていく一方で、限界も感じている。「プラスチックのものを買わないというのは無理です」(マヤ・カルツェバさん)。



サンフランシスコが目指す“脱プラスチック”

こうした中アメリカでは、徹底したリサイクルの推進、さらに、そもそもプラスチックをなるべく使わないようにする“脱プラスチック”に向け、急激にかじを切る動きが出始めている。その代表例が西海岸のサンフランシスコ。全米で最も徹底したリサイクルを進めている環境先進都市だ。プラスチックごみの焼却は一切しておらず埋め立ても原則として行っていない。

市内のごみを一手に引き受ける処理業者を取材した。ここでは、センサーなどを搭載した最先端の装置を導入し、プラスチックごみを洗浄し、透明なペットボトル・色つきのペットボトル・食品容器・発泡スチロールなど8種類にまで細かく分別。資源としての価値を高め、アメリカ国内での引き取り手を確保している。さらにこの処理業者は、自治体と連携して、ごみそのものを減らすPR活動にも力を入れている。PRビデオで「使い捨てのプラスチックの使用を“拒否”することは、あなたにもできます」というメッセージを流し、プラスチック削減への協力を訴えている。

またサンフランシスコでは、使い捨てのプラスチック、包装や容器のものを極力扱わないスーパーが人気となっている。サンフランシスコのスーパーの店内に並ぶのは、小分けにされていないそのままの食材。砂糖、小麦粉、ゴマなどあらゆるものを量り売りで買うことができる。

他にもシャンプーやハンドソープも量り売り。客は、自ら持ち込んだ容器に必要なだけ商品を入れるというシステムだ。スーパーの担当者は「必要な量だけ購入できた昔ながらの店を目指している。そもそもプラスチック容器を消費しないことが大事だ」と語り、この店のシステムの重要性を強調した。



市民ができることは?国がすべきことは?

店の常連客、スプリング・ウッティングさん(45)は、持ち込んだ容器の重さを量り、手慣れた様子で商品を入れていく。「ここはユニークな場所だし、満足できる。手間はかかるが、やる価値はある」と買い物を楽しんでいるようだ。サンフランシスコ市内で4人家族で暮らすウッティングさん。プラスチック製品に頼らなくても不自由はないという。自宅の冷蔵庫には紙パックに入った卵に、牛乳が入ったガラス瓶などプラスチック包装されていない食品ばかりが並んでいた。そのため、1週間で出るプラスチックごみは、ごく少量。「消費者がプラスチック包装はいらないと意思表示すれば、市場に影響を与えられるので効果は大きいと思う」(スプリング・ウッティングさん)。こうした官民をあげた取り組みが功を奏し、サンフランシスコのプラスチックごみの量は、年々、減り続けている。サンフランシスコ市の環境局担当者は「プラスチックをほかに売ればいいという問題ではなく、ごみを減らす必要性を市民に再考してほしい」と訴えた。そして、脱プラの動きは世界各地で加速している。つい先日、2019年6月10日には、カナダが早ければ2021年にもレジ袋やストローといった使い捨てのプラスチック容器や包装の提供を禁止すると発表した。待ったなしのプラスチックごみ問題。国をあげての早急な対策が求められている。

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