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特集

2019年5月15日(水)掲載

増え続ける不法移民 混乱のアメリカ

中米から続々とアメリカを目指す移民たちのキャラバン。その数は、2018年を上回る勢いで増え続けている。アメリカのトランプ大統領は2019年4月の声明で、不法入国する人の数が今年は100万人を超え、前年の2倍となる可能性があると危機感を示した。そして最近多いのが、国境を越えたあとに自ら進んで国境警備当局に不法入国で拘束され、そのまま難民申請をするケース。アメリカの制度では、例えどんな入国方法であれ難民申請さえすれば、審査中はアメリカでの滞在や就労が認められている。トランプ大統領は、この制度が悪用され、難民を装った人たちがアメリカに潜り込む手段になっていると主張している。アメリカを揺るがす不法移民問題。その混乱の現場を取材した。

子連れ不法入国者 増加の背景は

アメリカ南部のメキシコとの国境地帯を、アメリカの国境警備当局が撮影した映像には、メキシコ側から不法入国をしてくる人たちの姿が次々と映し出される。メキシコ側から国境の柵をくぐって、母親と子どもがアメリカ側に入ってくる瞬間。親子の近くには、手引きをしたとみられる複数の男たちが、銃のようなものを持って立っている姿も映っていた。また、金属製の柵の下に穴を掘り、子どもを抱えた人々が次々とアメリカ側に入ってくる様子も映っていた。アメリカで今年に入り、不法入国で拘束された人は4月末までに30万人以上。このうち、子連れでの入国が全体の半数以上を占め、かつてない多さとなっている。子どもが一緒の場合は、不法入国したあと、当局から拘束される期間が短くなるためだとみられている。



厳しい経済状況を訴える不法入国者

こうした不法入国者の多くが、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの中米3か国からの人たちだ。アリゾナ州にある保護施設で、安全のため顔を出さないことを条件に、何人かに話を聞くことができた。ホンジュラスから4歳の息子とアメリカに来た女性。母国は、ギャングがはびこる危険な状況で、「満足な仕事はほとんどありません。何とか服の縫製の仕事をしていましたが、貧しい人が多くて売れないんです」と窮状を訴えた。また、グアテマラから2歳の娘とともにやってきた男性は、農業で生計が立たなくなり「家族の収入を得るために、国境の川を歩いて渡ってきました」と話した。



不安を隠せない米国民

多くの不法入国者がやってくることに不安を隠せないアメリカ国民が少なくない。アリゾナ州で建設会社を経営するスコット・ニーリーさんは、同業者が低賃金で不法移民を雇うため、仕事を奪われてしまうと言う。「不法移民は、普通のアメリカ人よりも安い賃金で仕事をする。そんな連中と競争して勝てるわけがない」(スコット・ニーリーさん)。ニーリーさんはその上、不法移民が増えれば治安も悪化するとも考えていて、「トランプ大統領にはあらゆる可能な対応をしてほしい。家族全員、彼を支持している」と語るなど、国境での徹底した取締りを求めている。



受け入れに悲鳴を上げる教会

一方、多くの移民たちが押し寄せているため、受け入れの現場では対応が追いついていない。2019年3月にテキサス州エルパソで、受け入れ施設に入りきれない移民たちを橋の下に収容したところ、その写真がネットで拡散し非難が巻き起こり大問題となった。結局、この施設は閉鎖される事態となった。

カンボス牧師

行政の施設に収容しきれないことから多くの人たちの受け入れを、教会やボランティアにゆだねる異例の事態となっている。アリゾナ州最大の都市、フェニックスの郊外にある教会には、毎週、数十人から100人近くの移民たちが移送されてくる。取材したこの日も国土安全保障省のバスに乗って、約50人がやってきた。教会では、地域のボランティアとともに、移送されてきた人たちに食事や着替えなどを提供。さらに、難民申請を済ませたあと、アメリカ国内に住んでいる親戚や知人のもとに身を寄せるための移動手段の手配なども行っている。教会のカンボス牧師は、「移民当局から『これ以上自分たちでは対応できないので支援をしてほしい』と依頼があったのだ」と話す。教会では、人道的な見地から支援を続けているが、流入する大量の移民への対応に限界があり、公的な収容施設の予算の増額など抜本的な対策が必要だと訴えている。「何とかしてください。法改正が必要なら、改正してほしい。私たちを助けてください」(カンボス牧師)。来年に迫った大統領選挙でも大きな争点になるとみられる国境・移民問題。選挙を見据え、トランプ大統領と民主党が、対策を巡って対立する中で、安全・経済的な安定を求めて入国を求める人たちとどう向き合うのか。現場で、答えの見えない状況が続いている。

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