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特集

2019年4月25日(木)掲載

各国が狙う“第2のドバイ”オマーン

中国が推し進める巨大経済圏構想「一帯一路」。南側の海上ルートでは、ヨーロッパやアフリカと中国を結ぶ経路として、インド洋沿岸のスリランカやパキスタンなどで港のインフラ整備などを積極的に進めてきた。こうした中、今、中国が狙いをつけているのが、中東のオマーン。中国はオマーンを「10年後には“第2のドバイ”になる」として巨額の資金を投じようとしている。一方で、アメリカや日本もオマーンとの関係強化の動きを見せている。インド洋の“新たな要衝”オマーンを巡る駆け引きを追った。

オマーンで進む巨大プロジェクト

オマーンの首都マスカットから600キロメートル。延々と続く砂漠地帯を抜けた先に、開発が進むドゥクム港がこつ然と姿を現した。オマーン政府はこの一帯を経済特区と位置づけ、一大工業地域にする巨大プロジェクトを進めている。広さは2000平方キロメートルに及ぶ。プロジェクトを進めるドゥクム経済特区機構の担当者は「ここは新しいハブになる。アラビア海とインド洋、そして国際的な海洋交易路に面している」と自信を見せた。



参加に名乗りをあげた中国

「中国・オマーン産業団地」とかかれた看板

このプロジェクトの参加に、いち早く名乗りを上げたのが中国だ。「中国・オマーン産業団地」と刻まれた石碑がポツンと建てられていたのは、まだ建設前の何もない土地。これから中国の工業団地になる予定だ。中国は2016年、一帯の開発に、日本円で1兆円以上の規模の投資を表明。石油化学プラントや建設資材の加工工場を建設し、電力を供給する発電所まで作る計画だ。すでに現地で働く中国人労働者やビジネスマンの受け入れ施設の建設が進められていた。中国の開発業者に話を聞くと「中国政府が国内の多くの企業に海外で投資をするよう呼びかけている」と教えてくれた。さらに「ドゥクムは急速に発展している。10年後には“第2のドバイ”となる」と意気込んだ。ドゥクムは、中国が推し進める「一帯一路」の要衝として、大きく発展する可能性があると期待されているのだ。こうした中、各国の間では、中国がドゥクム港を軍事利用するのではないかという疑念がくすぶっている。しかしオマーン側は、中国の動きを歓迎すべきものだとしている。「中国のドゥクムへの投資は純粋なものだ。オマーンはどの国に対しても友好的だ」(ドゥクム経済特区機構 ヤヒヤ・ジャブリ長官)。



日米も関係強化に動き出した

オマーンで存在感を高める中国に対し、アメリカも関係強化に動き出している。2019年4月に首都マスカットで開かれたドゥクムに関するフォーラムで、最前列にいたのは駐オマーンのアメリカ大使だった。また、アメリカ軍はここ数年、主力の原子力空母などの艦船を、度々ドゥクムに寄港させている。アメリカ海軍のホームページには、「この訪問は戦略的に重要だ。オマーンとのすばらしい関係を強化するのに役立つ」という文字が躍る。さらに、アメリカは2019年3月、オマーン政府との間でドゥクム港の軍事使用に関する新たな覚え書きも交わした。

一方、日本もオマーンに注目している。2019年4月、佐藤外務副大臣がオマーンを訪問し、政府高官と会談。「安全保障面でも非常に価値のある港になると思う」と述べるなど、ドゥクム港は、中国の海洋進出を念頭にした日本の外交戦略にとって欠かせない拠点だと関係強化の意義を強調した。巨額マネーで一気に存在感を高める中国。安全保障面で巻き返しを急ぐアメリカや日本。インド洋の新たな要衝を巡る各国の駆け引きが続きそうだ。

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