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特集

2019年4月12日(金)掲載

モディ政権続投なるか インド総選挙の行方

2019年4月11日インドで、5年に1度の総選挙の投票が始まった。有権者は約9億人。「世界最大の民主主義国家の選挙」といわれ、投票は、4月11日から5月19日まで、7回にわけて実施される。その最大の焦点は、2014年に就任し、海外からの投資を呼びかけるなどして、7%を超える経済成長を維持してきたモディ政権に、どのような審判が下されるかだ。インド経済を急速に成長させたとして評価する人がいる一方で、国民の6割を占める農家の人たちは、経済成長の恩恵を受けていないと不満を爆発。失業率の悪化によるモディ政権離れも進んでいる。

モディ政権を支持するIT企業

国内外のIT企業が数多く集まり、インドのシリコンバレーと呼ばれる南部の都市ベンガルール。ここでは、モディ政権を支持する声が数多く聞かれる。モディ政権は、高い経済成長のけん引役として、IT関連のスタートアップ企業を手厚く支援してきた。税金の免除や、資金調達の支援などの政策を実行し、この5年で5000社近い企業が設立した。

4年前に設立され、支援策によって急成長を遂げたIT関連の会社。スマートフォンのアプリを使って、食料品や生活用品など、あらゆるものを届けるサービスを提供している。その便利なサービスが好評となり、設立当初数人だった従業員は250人に増加。平均年収は、日本円で約40万円と、インドの平均のおよそ2倍にのぼっている。「ビジネスを始めるにはモディ政権が最高だ。会社をつくるのがとても簡単になった」(IT関連会社CEO)。



悪化する失業率 高まる不満

一方、国民の間では不満が高まっている。その理由の一つが、失業率の悪化だ。野党の国民会議派を率いるラフル・ガンジー総裁は、政府の経済政策は都市部の富裕層ばかりを優遇していると批判し、遊説先で有権者にこう訴えた。「モディ首相は、本当のことを伝えていない。今、深刻な問題は失業だ」。モディ政権は当初、製造業の活性化などで年間2000万人分の雇用創出を目指していた。しかし、実現出来たのは半分以下の800万人にとどまっている。

マノージ・サイニさん

去年、地方の大学を卒業し、仕事を求めてニューデリーに出てきたマノージ・サイニさん(21)。この1年、政府機関や企業などの就職試験を何度も受けたが、競争は激しく不合格ばかり。今は、路上で野菜や果物を売って生計を立てている。1日15時間、休みなく働いて得た収入のほとんどを、地方で暮らす家族に仕送りをしている。サイニさんは選挙を通じて、仕事を求める若者の声を政府に届けたいと考えている。「このままでは将来が不安だ。なんとか仕事を見つけて不安から抜け出したい」(サイニさん)。



期待から失望へ 農村部で相次ぐデモ

さらに農村部でも、モディ政権への批判が高まっている。各地で、モディ政権の退陣を求めるデモが行われ、国民の6割を占める農家の人たちは不満を爆発させている。モディ首相は5年前、農家の収入を倍増させるため、農村部でインフラの整備や補助金の支給を公約に掲げた。しかし実際には、インフラの整備は遅れ、生産性が上げられないところに燃料や肥料代の高騰が追い打ちをかけ、農家は苦境に陥っている。デモに参加した農家の人々は、モディ政権への不満を次々と訴えた。「一生懸命働いたのに適正な収入を得られていない」。「次の選挙では、絶対に支持しない」。



自殺まで追い込まれる農民たち

農家では、借金を苦に自殺する農家も相次いでいる。その数は、年間1万人以上にのぼっている。

サンギータ・ヤダブさん

インド西部の農村で暮らすサンギータ・ヤダブさんは、去年、夫を自殺で亡くした。自宅近くの畑で小麦や大豆を育てていた夫の年収は、日本円で15万円ほど。肥料代など経費を差し引くと手元にはほとんど残らなかったという。2人の子どもの教育費もかさみ、約60万円の借金をしたが、返済のめどが立たず、夫は将来を悲観して自殺した。目に涙をにじませながら夫の借用書を見せ、「夫はいつも悩み続けていた」と語ってくれたヤダブさん。前回はモディ首相に投票したが、今回は失望感から、野党に投票することも考えている。経済の専門家は、モディ政権が都市部の発展を優先してきたことで、地方の農村部との格差が広がっていると指摘する。「政府は地方の経済を活性化する手立てが必要だ。そうしないと状況は、悪くなるだけだ」(経済の専門家)。海外からの投資を呼び込み、高い経済成長を続けてきたインド。選挙結果は、世界経済にも大きな影響を与えるだけに、行方が注目されている。

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