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特集

2019年3月28日(木)

カトリック教会の性的虐待問題に揺れるポーランド

 
放送した内容をご覧いただけます

酒井
「今日の特集は、性的虐待問題に揺れる、カトリック教会です。」





「虐待やめろ!」

今、世界各地で、カトリックの聖職者による性的虐待の告発が相次いでいます。

被害者
「性的虐待をした聖職者たちは、私を『従順なペット』と呼んだ!」


オーストラリアとフランスでは、高位の聖職者である枢機卿に対し、有罪判決が下される事態に。
先月(2月)フランシスコ法王は、各国の司教を集め、対策を話し合う異例の会合を開きました。

フランシスコ法王
「必要な対策を全て導入して、悪魔の根絶に取り組む時が来た。」


性的虐待問題に揺れるカトリック教会。
その現状に迫ります。

酒井
「ローマ・カトリック教会の聖職者による性的虐待が世界中で発覚し、フランシスコ法王が対策を求められる異例の事態となっています。」

花澤
「虐待はこれまでもたびたび取りざたされてきましたが、今、カトリック教会に何が起きているのでしょうか。」

松岡
「世界におよそ13億人の信者がいるカトリック教会。
キリストの教えを伝えるのが、神父や司教、枢機卿などの聖職者です。
自分の全てを人々に委ねなければならないという理由から、独身であることが求められます。
一方、性的関係については、結婚した男女の間にのみ認められていることから、カトリックの聖職者は事実上、性的関係を持つことはできません。
聖職者による性的虐待は、以前から問題となってきましたが、教会は厳しい対応を取ってきませんでした。
しかし2013年、この問題に断固とした対応を取るとするフランシスコ法王が就任すると、ドイツ、フランス、アメリカ、オーストラリア、チリなどで問題が次々と発覚。
被害者の多くは未成年。
事件は教会や、教会が運営する学校で起きていて、発覚後、教会による隠蔽も問題となりました。
フランシスコ法王は、被害者から直接、話を聞いたり、加害者である聖職者の地位を剥奪するなどの対応を取ってきました。
なぜ今、性的虐待が大きな問題となっているのか。
ある映画が公開されたことをきっかけに、虐待の告発が相次ぎ、社会が大きく揺れるポーランドで取材しました。」

カトリック教会の性的虐待 ポーランドの実情

リポート:野田順子支局長(ベルリン支局)

去年(2018年)9月、ポーランドで公開された映画「聖職者」。
神父たちが、汚職や中絶など、カトリックの教えに背く行為に手を染めるさまを描いています。
中でも、観客に衝撃を与えたのが、教会の奉仕活動に参加する少年への性的虐待でした。

「私は神父だ。」

映画は実話を参考にして作られているということで、500万人以上を動員する大ヒットとなりました。

この映画の脚本作りに協力した、マレク・リシンスキさんです。
聖職者による性的虐待の被害者を支援するNGOの代表を務めています。
リシンスキさん自身も、13歳のころ、虐待を受けました。
当時、ミサで聖書を朗読する大役を任され、神父に信頼されていると喜びを感じていました。

マレク・リシンスキさん
「神父にとって僕は大切で、教会にとっても大切なんだと思った。」

神父を心から信頼していたことを、逆に利用されてしまったと感じています。

マレク・リシンスキさん
「僕は彼の部屋で性的虐待を受けた。
何度も彼の所に泊まったが、詳しくは話したくない。」

映画の公開後、リシンスキさんの団体には「これまで言い出せなかった」という被害者からの訴えが急増し、団体が把握している被害者の数は合わせて700人に上っています。
リシンスキさんは、これまでの支援活動を通してポーランドには、数万人の被害者が存在するのではないかと感じています。
批判の高まりを受けて、ポーランドのカトリック教会も聖職者の性的虐待に関する調査を行いました。

カトリック教会 司祭
「1990年から2018年までの未成年への性的虐待は382件確認された。」

教会がこの問題で調査を行い、虐待を初めて公式に認めたことが大きく注目されましたが、確認された件数は「氷山の一角に過ぎない」とも指摘されています。
教会は、なぜ多くの虐待を認めないのか。
ある神父の性的虐待について3人が告発した、北部の都市、グダニスクを取材しました。

告発されているのは、9年前に亡くなった、ヘンリク・ヤンコフスキ神父。
80年代にワレサ議長と共に民主化運動を指導し、英雄と考えられていた人物です。

被害を訴えている1人、ミハウ・ボイチェホビッチさんです。
17歳だった37年前、ヤンコフスキ神父から性的虐待を受けたと言います。

ミハウ・ボイチェホビッチさん
「ずっと話す気になれなかったが、私がされたことは、間違いなく性的な行為だ。
神父が何をしたのか、人々が理解してくれるまで納得できない。」

国民のおよそ90%がカトリック教徒であるポーランドでは、信徒たちは聖職者に絶対的な信頼を寄せているため、被害を訴えても、周囲からはなかなか信用してもらえません。

告発を否定する信徒
「ヤンコフスキ神父は、今も私たちの英雄だ。
これは教会を崩そうとする動きだ。」

教会の対応に批判的な人々が、ヤンコフスキ神父の銅像を引き倒して、虐待を認めるよう訴えました。
被害者を支援する団体の代表、リシンスキさんは、教会の自浄作用には疑問があるとして、内部調査の資料を開示することなど、透明性を確保するよう求めています。

マレク・リシンスキさん
「教会が自ら改革することはできないと思う。
教会の資料には、全ての虐待が記されている。
我々も調査に参加させてほしい。」



被害の全体像は?

酒井
「取材にあたった、ベルリン支局の野田支局長に聞きます。
カトリック教会の性的虐待の問題ですが、どのくらいの広がりがある問題なんでしょうか?」

野田順子支局長(ベルリン支局)
「全体像というのは、やはりなかなかつかめませんけれども、今後、被害者の数は増えていくものと見られます。
ポーランドで未成年者の被害者の数を教会は382と言っていますけれども、被害者の団体は数万と見ています。
今、表に出てきているのは『氷山の一角だ』との見方は、ポーランドだけでなく、各国の被害者団体の共通する見方です。」


なぜ発覚しない?

花澤
「数万というのは、また驚く数字ですけれども、それがこれまで発覚しにくかったのは、教会の、やはり構造的な問題があるということでしょうか?」

野田支局長
「被害者は、聖職者に悩みや苦しみを告白しているため、弱みを握られているという面があります。
また、仮に声を上げても、聖職者に厚い信頼を置く周囲の人たちに信じてもらえず、脅迫や嫌がらせを受けることもあります。
教会の権威を守るため、巨大な組織を利用して、問題のある神父を異動させることによって、犯罪行為を隠蔽することも行われたと指摘されています。
さらに、ポーランド特有の事情ですが、教会が『国家の中の国家』と言われるほど、非常に強い力を持っていることも挙げられます。
この問題について、ワルシャワの神父は、インタビューに対して次のように述べています。」

ダヴィドウスキ神父
「犯罪を隠し、握りつぶそうとするのは、ありがちなことです。
我々は教会の名誉を守るよう訓練されている。」



根絶できるのか

花澤
「フランシスコ法王は、虐待の根絶に真剣に取り組む姿勢を示していますが、現在の対策で、本当に虐待の問題を根絶することはできるんでしょうか?」

野田支局長
「根絶できるかどうかは、法王を初めとする協会の組織が、どこまで本気で取り組むかにかかっています。
虐待の存在自体を認めていなかった数年前に比べると、教会の対策は大きく進展していると言えます。
ただ、被害者の支援団体などからは、依然として不十分だという声をしばしば聞きます。
特に、過去に虐待や隠蔽に関わった聖職者の処分が適切に行われていないとの強い不満の声が出ています。
また、各国で行われている被害者調査でも、教会自らによる調査ではなく、第三者を含むべきだといった声も聞きます。
カトリック教会は、透明性を確保しながら被害者と向き合い、虐待や隠蔽に関わった聖職者を処分し、同時に再発防止の具体的な方策を示していく必要があります。」

酒井
「神父さんたちとの信頼関係を利用した行為で、声を上げられない人がまだまだ多いんじゃないかと思いますよね。」

花澤
「そうですよね。
数万人という話もありました。
そして、この信仰と信頼につけ込んだ、非常に卑劣な犯罪ということですよね。
根絶するには、徹底した調査、それから処分が欠かせないわけですが、果たして、今度こそ、それができるのかということになります。
カトリック協会には世界中から厳しい視線が向けられています。」

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