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特集

2019年2月21日(木)

徹底展望・米朝首脳会談 焦点の「非核化」は?

 
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来週行われる米朝首脳会談を前に、両国の実務協議も始まったベトナムの首都、ハノイ。
歓迎の準備が急ピッチで進む中、街の人たちは…。





「かっこいい。
キム委員長に似てるかな?」


このヘアサロン、両首脳と同じ髪型にする無料のサービスが話題に。
カットした200人のうちトランプ大統領を選んだのは、4人だけだったそうです。
その両首脳による史上初めての会談が行われたのは、去年(2018年)6月のことでした。

アメリカ トランプ大統領
「朝鮮半島の完全な非核化に合意した。」


大成功だったと成果を強調してみせたトランプ大統領。
その2日後…。

アメリカ ポンペイオ国務長官
「数週間のうちに米朝会談での確約を共に実行できるよう理解を深めたい。」


アメリカが北朝鮮に核計画の全情報の開示迫る。
2018年9月19日、南北首脳会談。
北朝鮮の“一歩”。

韓国 ムン・ジェイン(文在寅)大統領
「米の相応の措置があれば、ニョンビョン(寧辺)の核施設を永久に廃棄する用意がある。」


しかし、非核化の進め方をめぐって、立場の隔たりは残り…。

アメリカ ビーガン特別代表
「信頼構築につながる措置について話し合う用意がある。」


実務協議を担当する、アメリカのビーガン特別代表。
北朝鮮が求める見返りについても、話し合う用意がある考えを初めて示しました。

アメリカ ビーガン特別代表
「トランプ大統領は、戦争を終わらせる用意がある。
北朝鮮を侵略しないし、体制の転覆も目指さない。」


2019年2月19日、迫る2回目の会談。

アメリカ トランプ大統領
「最終的に望むのは北朝鮮の非核化だが、核・ミサイル実験がないかぎりは急がない。」

開催前に徹底予測! 米朝首脳会談

酒井
「ご覧いただいたように、立場の隔たりが浮き彫りになっていたアメリカと北朝鮮。
2回目の首脳会談はどのような展開になるのか。
北朝鮮情勢に詳しい南山大学教授、平岩俊司さんとともに徹底予測します。」

花澤
「振り返ってみますと、去年の最初の首脳会談の直後、全て核兵器・核施設のリストを、もうすぐ来週にも北朝鮮は我々に提出するんだと、開示するんだと、アメリカ側は言っていて、これは第一歩で、そこから非核化に進んでいきますよという話だったんですが、第一歩どころか、それが今や、ちょっとすぐには難しいといって、どんどんハードルが下がってきていて、おまけに見返りも完全に視野に入れていると。
現状をどうご覧になっていますか?」

南山大学教授 平岩俊司さん
「恐らく、実務協議に入って以降の北朝鮮の対応をアメリカ側が見て、これはやっぱりなかなか難しいということで、今ご指摘のような状況になってきているんだろうと思うんですけれども、先ほどご指摘があったように、昨年6月12日の1回目の米朝首脳会談の時というのは、やっぱり非核化というのが焦点だったんだと思うんですね。
それはアメリカ側がトランプ政権、トランプ大統領がもちろん非核化をあきらめているわけではないんですけれども、やっぱり自分の成果にするためには、非核化よりも、むしろ朝鮮半島で戦争が起きなかったことが良かったんだと。
例えば今年(2019年)の一般教書演説でも、トランプ大統領は『自分が大統領じゃなかったら戦争が起きたかもしれない』というようなことで、まさに朝鮮半島の緊張状態を緩和したことこそが意味があったんだというように、若干問題の焦点がずれてきているというか、あえてずらしていると、そういう印象がありますから、そういう中で、また非核化を目指しての実務協議ということでしょうから、どうしてもそういう印象を持つということになるんだろうと思います。」

花澤
「本当に一般教書演説の中では、非核化を目指すのではなくて、朝鮮半島の平和を目指すという言い方になっていましたものね。」

平岩俊司さん
「ご指摘の通りですね。」

花澤
「こちら、それぞれ何を相手から得たいと思うか、相手に与えるのかというものを、あり得るものを一覧に並べてみました。
上の方が難易度が難しいであろうもの。
下に行くほど、与えやすいといいますか、獲得しやすいものということになると思うんですけれども、この最初の核兵器・核施設のリストを全部出すというのは、入り口のはずが、今や全く難しいと。
ICBMの廃棄など、いろいろ言われていますけれども、どの辺がアメリカにとって合格ラインと言えますか?」

平岩俊司さん
「本来であれば、やはりご指摘の『全核兵器・施設のリスト』を出させるというのがアメリカからすれば目指すところだと思うし、国際社会もそこを期待するわけですが、残念ながら、北朝鮮の立場に立てば、このリストのようなものを出せば、例えば一連のプロセスが破綻した時には、まさに攻撃対象のリストを与えるようなものであるというような考え方もあるでしょうし、また、アメリカ側が独自に持っている情報と、このリストの違い、齟齬(そご)みたいなものが出てくると、やっぱり北朝鮮はうそをついているということで、交渉そのものがまた難しくなるということもあるでしょうから、このリストというのはなかなか難しい。
そうだとすると、なかなかここの部分が難しいと、もう少し下がってくるわけですけれども、それでも今、アメリカ、あるいは国際社会が北朝鮮と向き合う時の非核化の課題というのは、北朝鮮は今後、実験もしないし、作らないし、使用しないし、拡散もしないし、という未来の核について封印するということは言っているんですけれども、すでに持ってしまった核・ミサイルについては全く言及がない。
むしろ、それを保有していることを前提にいろんなことを言ったりもしますので、ここの、いわゆる彼らがすでに持っている部分についてどうするのかというところが、恐らく重要な課題になるんだろうと思いますが、そのためには、本来はリストが必要なんですけれども、それが難しいとすれば、やはり『ロードマップ』のようなもので、この北朝鮮が持っている核をどういうタイミングで、どういう形で放棄させていくのかという、『ロードマップ』まで出せれば本当は一番いいんだろうと思うんですが、北朝鮮側からすると、今のいろんな形での行動を見ていると、『ロードマップ』まではなかなか難しくて、その手前の『ニョンビョン核施設の廃棄・査察』、ここら辺が焦点になってくるのかなという。」

花澤
「アメリカは『ロードマップ』までいきたい、北朝鮮は『ニョンビョン核施設の廃棄・査察』でとどめたい。
じゃあ、『ニョンビョン核施設の廃棄・査察』までは北朝鮮はある程度見越していると。」

平岩俊司さん
「これは去年9月の3回目の南北首脳会談の時にキム・ジョンウン(金正恩)委員長が『アメリカの対応次第では、ニョンビョンの核施設の廃棄・査察も大丈夫なんだ』という言い方をしていますので、ここまではアメリカの対応次第で受け入れる可能性というのはあるんだろうと思いますね。
アメリカが何を出してくるのかということに関わってくるんだろうと思いますけどね。」

花澤
「そうしますと、アメリカからすると、ここまでは取りたいと。」

平岩俊司さん
「本来はそうだと思いますね。
『ロードマップ』までは本当は取りたいというのが本音だろうと思いますが、北朝鮮の対応次第で、ニョンビョンのところでもう少し実質的なものにする。
すなわち、過去の核に関して言えば、このニョンビョンの核施設については査察のやり方なんだろうと思うんですけれども、例えば過去の核活動を分析できるような資料が手に入るような形での査察であれば、北朝鮮の核能力の全体像というのも検証できるということになりますから、『ニョンビョン核施設の廃棄・査察』というのも中身をめぐって、アメリカ側からすれば、より実質的なものにつなげていければ、必ずしも『ロードマップ』じゃなくても、ニョンビョンでも、ということもあるのかもしれないですね。」

花澤
「ニョンビョンと言えば、かつては北朝鮮の肝心な核開発の中心で、今はほかにもいろいろできていると言われていますが、そうしますと、ここの査察の仕方によって、一体、今いくつ核兵器を持っているのかとか、そういうものが査察によって分析すれば分かってくると。
これがしっかりできれば、アメリカとしてはこれも良しとするかもしれないということなんですね。」

酒井
「一方のアメリカ側は、北朝鮮にどこまで見返りを与えると予想されますか?」

平岩俊司さん
「もちろん見返りを与えるような発言もあるんですけれども、基本的には、いわゆる『制裁緩和』に関して言えば、北朝鮮の非核化というものがしっかり行われないとやらないという話なわけですから、だとすれば、もう少し難易度が低いものにいくということになるんだろうと思うんですね。
一番やりやすいのは、要するに北朝鮮に対して何らかの形で経済的にプラスになるようなことはできるだけしたくないということでしょうから、そういうことで言えば、例えば『人道支援』のようなものに関して言えば、特定の病気についてのNPOだとかの活動というのを行うということは、割とやりやすいことなんだろうと思います。
その上の3つ(「ケソン工業団地の操業」「クムガン山の観光事業の再開」「南北間の鉄道・道路の連結」)に関しては、韓国が、いわゆる南北関係の枠組みの中でやりたいということを言っている話ですので。」

花澤
「この3つは『制裁緩和』ですよね。」

平岩俊司さん
「そうですね。
『制裁緩和』なんですけれども、実際はアメリカがするわけではなくて、韓国がやることによって、実質的に緩和というのの一部を特例として認めるということで、一昨日(19日)韓国のムン・ジェイン大統領は、アメリカのトランプ大統領に対して、『アメリカが譲歩するのが難しいのであれば、我々を使え』と、『我々は南北の民族の枠組みの中で一定程度やることがあるんだ』と、『それをもって北朝鮮に対して、そのカードとして出して、北朝鮮に、まさにニョンビョンの施設だとか「ロードマップ」のようなものを出させろ』というような提案をしていますから、ここら辺は韓国が絡んだ形での、米朝と、それから韓国が絡んだやり取りということになるんだろうと思います。」

花澤
「『制裁緩和』につながるこの3つ、特に『ケソン』『クムガン山』は、北朝鮮からすると、外貨の獲得になるという意味で、アメリカとしてはあまりやりたくないことですよね。
『ロードマップ』まで得たいと、だけれども、例えば『終戦宣言』ですとか『連絡事務所設置』、こういったものなら北朝鮮への圧力、実質的に制裁が弱まることもなく、これぐらいなら与えてもいいんじゃないかという考え方があると思いますけれども。」

平岩俊司さん
「これは北朝鮮の側も、ここのところずっとアメリカとの交渉が滞るのは、信頼醸成ができていないんだということですよね。
要するに、北朝鮮からすれば、『自分たちが非核化を進めても、アメリカはそれに対して応じてくれないのでは困るんだ』と、『その信頼がほしいんだ』ということで言うと、まさに朝鮮戦争の終結を法的に終結されるのはなかなか難しい話ですけれども、高官言われているような不可侵宣言のような、いわゆる政治宣言で『これ以上、アメリカは北朝鮮に対して攻撃しませんよ』ということで信頼醸成の基礎としたり、あるいは、連絡事務所を設置することによって、実質的に対話というものを進めていくと。
継続的に対話が進む1つの窓口を作るということですから、そういうことで実質的な利益を北朝鮮に与えないけれども、信頼醸成を作るということで言えば、やりやすいだろうと思いますが、ただ北朝鮮からすると、もちろんそれも重要なんですけれども、同時に具体的な利益、いわゆる『制裁緩和』の部分に手をつけたいというところがあるんだろうと思います。」

花澤
「そうしますと、実際には下の3つ(「終戦宣言」「人道支援」「連絡事務所設置」)、プラスアルファでこの中(「ケソン工業団地の操業」「クムガン山の観光事業の再開」「南北間の鉄道・道路の連結」)のどれかを、というところが落としどころになるんですかね。」

平岩俊司さん
「かもしれませんね。
そこは韓国側がアメリカに対してどう働きかけるのか。
これは韓国側の事情としては、例えばケソン工団に関して言えば、韓国の事業主がやりたいという思いもありますから、韓国の国益にも関わってくる話ですので、これから米韓の間でどういうふうにこの問題と絡めて交渉されるか、ということなんだろうと思います。」

花澤
「そうするとアメリカとしては、この3つならというふうに考えている可能性がある。」

平岩俊司さん
「『連絡事務所設置』はかなり具体的な話になりますので、『人道支援』だとか『終戦宣言』ぐらいは全体の流れというものを止めないためには出しても構わないということになるのかもしれませんけれども、一方で北朝鮮は、ここら辺(「ケソン工業団地の操業」「クムガン山の観光事業の再開」「南北間の鉄道・道路の連結」)を何としても1つはほしいということになるんだろうと思います。」

花澤
「できれば、ケソン工団がほしいと。
これ(ケソン工団)が入るのかどうか。」

平岩俊司さん
「韓国は、これを3点セット(「ケソン工業団地の操業」「クムガン山の観光事業の再開」「南北間の鉄道・道路の連結」)でやりたいというのもあるわけですから、北朝鮮からすれば、ここの部分を特例として認めてほしいという思いがあるんだろうと思います。」

花澤
「韓国政府はこうしたいと。」

平岩俊司さん
「韓国側は、間違いなくこの3つ(「ケソン工業団地の操業」「クムガン山の観光事業の再開」「南北間の鉄道・道路の連結」)をできるだけやりたいと。
だたし韓国側は、国連の決議に違反するような形では取りたくないから、アメリカとの合意、北朝鮮の対応次第、ということは言っていますけれども、本音で言えば、ここで動かして、全体の流れのイニシアチブを韓国も握りたいというところはあると思います。」

花澤
「今回いずれにしても、こういう形ですと、成果、非核化に向けて、すごく大きく動いたかというと、入り口だったはずのものは、ほぼ無理だろうということですから、トランプ大統領は『成果があった』と言うでしょうけれども、『どうなんだろうか?』というようなクエスチョンマークがつく結果になりそうなわけですよね。
長期的に考えて、非核化というのは実現できるんでしょうかね。」

平岩俊司さん
「なかなか難しいわけですけれども、一方で北朝鮮の立場に立てば、彼らが言っている経済発展のようなものは、韓国を通した形での経済協力、南北間の交流だけでは手に入れられないというのは、彼ら自身がよく分かっているんだろうと思います。
ですから、より大きな国際社会からの投資であるとか、あるいは経済協力を得るためには、やっぱりアメリカが言っている『完全な非核化』のところに踏み込んでいかなければいけないというのは分かっているんだろうと思うんですけれども、だけど、そこはできるだけ出したくない、出さずにそこを手に入れたいというのが、恐らく北朝鮮の思いでしょうから、今後のアメリカとの交渉次第ということになってくるんだろうと思います。」

花澤
「事実上の核保有国・北朝鮮を、事実上受け入れる状態で持ち込もうとしていると言われていますけれども、とはいえ制裁が効いていれば、ひょっとすると、北朝鮮が非核化に向かう可能性はまだあると。」

平岩俊司さん
「制裁の効果で、北朝鮮がギブアップするということではなくて、北朝鮮がより経済発展を目指すとすれば、自分たちが持っている核を取り引き材料にしなければいけないんだという形に持ち込んでいくことができれば、なおかつ同時に、今、核がどういう状況にあるのかということを、いろんな形で、査察なりを通して、現状を把握しながら追い込んでいくということになるんだろうと思います。
そうだとすると、全く可能性がないというわけではないと思いますが、やはり、かなり難しい状況になることは間違いないと思います。」

花澤
「事実上、核保有国にどんどん近づいているという。」

平岩俊司さん
「少なくともトランプ大統領は『まだまだこれは時間がかかる』ということをおっしゃいますし、それからキム・ジョンウン委員長との会談も『今回1回が最後ではない』ということを言いますので、やはり当面、北朝鮮の核と共存させられる状況が続くということは間違いないと思います。」

酒井
「ここまで、北朝鮮情勢に詳しい、平岩俊司さんとともにお伝えしました。」

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