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特集

2018年12月19日(水)

中国外務省・陸慷報道官インタビュー

 
放送した内容をご覧いただけます

酒井
「中国外務省の会見で質問に答える、こちらの3人。
中国の外交や国際問題などについて、国内外のメディアに対応する報道官です。」




花澤
「その中の、こちら、陸慷(りく・こう)報道官。
日中関係が改善に進む中、今週から日本を訪問し、両国外務省による9年ぶりの『報道官対話』などに臨んでいます。
その陸報道官に、今日(19日)話を聞きました。」

  

中国報道官に聞く

中国外務省の陸慷報道官です。
冷静で表情を変えないイメージの陸報道官ですが、今日は笑顔でした。


初めに、日本との関係について聞きました。

花澤
「日本とは、関係改善に進んでいると思いますが、中国が日本に一番期待していることは何でしょうか?」

中国外務省 陸慷報道官
「この1〜2年、両国の関係は徐々に正常な発展起動に乗っています。
これは双方の国民や、この地域、世界が望んでいることです。
双方が正しい共通認識に立ち戻り、歴史を心に刻み、未来志向の精神で、共に両国関係の発展を求めたからだと信じています。」


今、世界を揺るがしているのがアメリカとの貿易戦争やハイテク技術を巡る覇権争い。
関税引き上げの応酬となった対立は、今月(12月)の米中首脳会談で一時休戦としたものの、知的財産の保護などについて、90日以内に合意できなければ、アメリカは再び関税を引き上げるとしています。


花澤
「トランプ政権は当初の予想よりかなり強硬姿勢を示していると思うのですが、3月1日までという期限に決着できると考えていますか?」

中国外務省 陸慷報道官
「たとえ全ての問題を解決できなくても、進展があれば双方に利益になります。
国際社会や市場に前向きな発信となれば、それは良い結果であると思っています。
問題解決の目的は協力関係を一層拡大させるためです。」


花澤
「『中国製造2025』の見直しを進めていると報じられていますが、事実ですか?」

中国外務省 陸慷報道官
「『中国製造2025』は計画であり、政策ではない。
計画として、常に改善されています。
計画の中で、優先的に発展させたい分野でも扉を閉ざすことはありません。
常に外の社会と協力して、発展させます。」

  

そして、中国政府が今、大勢のウイグル族を拘束しているとされる問題。
番組でも、収容所で拘束されていたという男性をインタビューしました。
この問題について、陸報道官に聞きました。


花澤
「多くのウイグル族の行方が分からなくなり、大勢が拘束されている。
アメリカや国連は『100万人が拘束されている』と言っています。
なぜこのようなことをしているのでしょうか?」

中国外務省 陸慷報道官
「新疆ウイグル自治区では職業技能訓練センターが設立され、職業訓練が行われています。
公開や紹介もされています。


こうした措置が取られてからは2年余り、テロ事件は一度も起きていません。
この成果がもっとも説得力を持っています。
100万人の大規模な失踪は起きておらず、テロと過激派勢力が消滅したのです。」


花澤
「いくら反論しても世界は信じないですし、中国は異質・危険な国だと考えると思います。
その結果、長期的には中国にとって、打撃になるのではないでしょうか?」

中国外務省 陸慷報道官
「打撃とは言いません。
先ほど“世界”と言いましたが、数えてみてください。
世界ではどのくらいの国がいわれなき非難をしていますか?
国連加盟国は195でイスラム国家もある中、中国を非難する国はどのくらいありますか?」


陸報道官は、中国はテロリスト撲滅に努めていると、重ねてアピールしました。

そして、中国が進める、巨大経済圏構想「一帯一路」について。
今、多額の債務を返せなくなるおそれから、事業の見直しや縮小を行う国も続出しています。

花澤
「『債務のわな』という言葉が関心を集め、中国の一帯一路への危機感・警戒感が高まったと思います。
これについては、中国政府は政策を変える考えはないのでしょうか。
どうこれにどう反論するのでしょう?」

中国外務省 陸慷報道官
「国際社会で懸念と言うが、一帯一路を支持し、中国と協力の覚書を結んだ国が増えています。
一帯一路の呼びかけは、グローバル化の過程で出てきた課題や弱点について、中国提唱の国際協力のプラットフォームで、国際的な公共財なのです。
一帯一路に協力している発展途上国の声を実際に聞いてください。
中国への非難に賛同する声があるかどうか。
私は聞いていません。」

  

中国報道官の発言を読み解く

酒井
「ここからは、中国が専門の加藤青延解説委員とお伝えします。
まず、今回のインタビューをご覧になって、どのように感じましたか?」


加藤青延解説委員(中国担当)
「やはり、報道官はあくまで中国の公式見解を述べる立場ですから、建前しか言わないですし、また嘘(うそ)もつかない、という意味では面白いインタビューでした。
私はこういう報道官の話を聞く時に2つ注意している点がありまして、1つは、今までと違うことを言うかどうかです。
違った場合には変化がある。
もう1つは、『YES』に近いけれども、逆に『NO』にも近いような言い方をして、いかにも『NO』であるかのように思わせる。
でも実は『YES』かもしれない、というような言い方をする。
そこをうまく見つけ出せるかどうかということですね。」

花澤
「個別の質問についてお伺いしていきます。
こちら、主な質問のポイントです。
まずは、『米中貿易摩擦』について。
『中国製造2025』について陸報道官は、『“計画”として常に改善、変化する、そのプロセスにすぎない』という言い方をしました。
今、一部で報道されているように『中国製造2025』見直し、修正する可能性を示唆しているようにも聞こえましたが。」


加藤解説委員
「そうですね。
実は、アメリカのウォール・ストリートジャーナルが最初に報道した後、中国がどんな立場を示すかととても関心があったのですが、今回のインタビューで、ともかくこの『中国製造2025』というのは政策ではないと。
計画だからいくらでも変えられるということで、事実上、変更することは有り得ると立場を示したというのは初めて聞きましたので、中国側の立場としてとても面白いことを言ったなと思いました。
ただ彼は、変更はするが、それはあくまで自分の国の事情で変えるのであって、よその国に言われたからやるのではないと。
つまり、アメリカの圧力で変えるわけではないということを付け加えていますので、これはさすがに中国政府の報道官の立場を反映したものだと思いました。」

花澤
「もう1つ、米中で言いますと『知的財産』について。
知的財産については、世界各国と協力していく誠意はありますと言いました。
これも前置きとも聞こえるのですがどうでしょうか。」

加藤解説委員
「今、アメリカとはけんかをしたくない立場ですから、ここで例えば『保護主義に反対』などの厳しいアメリカ非難はまずいということで、そういう言葉が一切なかった。
むしろ、アメリカに対して、今は休戦状態だから刺激をしたくないという気持ちが現れていたように思います。」

花澤
「アメリカが悪いんだというようなニュアンスは全くなかったですね。」

加藤解説委員
「やはり、今90日間の話し合いの期間で、もしここで陸報道官が何かまずいことを言ってしまうと、米中関係にも大きく影響してきますので、そこは非常にうまく、丸く収めて話をしたなと思いました。」

花澤
「次に、『ウイグル族の問題』について。
収容しているのはテロ・過激主義勢力であって、職業訓練なんだという言い方ですよね。
これはどう聞かれましたか?」

加藤解説委員
「ここはちょっとやはりフェイントをかけてきたかなというか、いかにも悪いことはしていませんよというイメージを醸し出しながら、実はやっていないわけでもないということを言っているという。
質問に対し、“イエスに近いけどもノーと思わせるような言い方をしている典型的な例”として見ました。
100万人が失踪したら我々もとても心配する、そういうことは有り得ないということを前面に出しながら、でもやはり、職業訓練で皆さん研修していますよ、ということで事実上捕まえてやっていることは認めていると。
ですから、当たらずとも遠からじと、そういう言い方をしながら、事実上の実際のことを認めながら、しかし嘘(うそ)はつかない、という言い方で、今回のウイグルの話は、いろいろとやはりやっているんだろうということはわかるが、表向きは悪いことはしていないと。」


花澤
「あくまでもテロ対策であって効果も上げているのだと。
正当性があるんだよ、という説明でしたね。」

加藤解説委員
「そうですね。
テロ対策と言えば、アメリカやほかの諸国が仕方がないと思うだろうと。
全てテロ対策に持っていってしまおうと。
これは民族対策であり、宗教対策かもしれないが、『テロ対策だ』と言うことによって正当化しようとしていると思います。」

花澤
「そして『一帯一路』ですが、世界の懸念は当たらないということで反論してきたなという感じでした。」

加藤解説委員
「いわゆる『債務のわな』という質問にきちんと答えていなかったと思います。
実際には中国から借金を抱えて苦しんでいる国がたくさんあることは事実ですが、彼は、それは中国のせいではないと。
国際的な経済の影響であって、中国はむしろ、支援する国と共に話し合い、そして共に建設し、お互いに利益を得ようと。
そういう立場でやっている国際的な補強材だからどんどん利用してほしいと。
むしろ、日本も参加してほしいと。
日本という言葉は出てきませんでしたが、そういうメッセージのようなものを非常に受ける回答だったと思います。」

花澤
「最後にインタビュー全体を通した印象、分析はいかがですか?」

加藤解説委員
「実は、あの報道官があんなに笑顔で話すことはめったにないので、ずっと笑顔だったのでそれがすごく印象的でした。
日本に対してプラスのメッセージを送りたいという強い希望が画面から伝わるようにしていたんだと思いますね。」

花澤
「それは、今、中国が経済的に、アメリカとの貿易戦争もあって苦しいということなんでしょうか?」

加藤解説委員
「それもあると思います。
やはり、今まで40年になる改革開放経済を支えてきた日本の経済力というものに期待しているところがある。
それともう1つは、来年(2019年)習近平国家主席が日本を訪問する。
その時に日本との間で新しい日中の枠組みとなる外交文書を作りたい、それを成功させたいと。
そのために、冒頭に、日中関係は回復の軌道にあると言いましたが、脱線させたくない、うまくやりたい、日本とこれから仲良くやりたい、そういうメッセージを強く発信する。
そういう気持ちの現れだと思います。」

花澤
「ありがとうございました。」

酒井
「ここまで、加藤青延解説委員とお伝えしました。」

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