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特集

2018年12月3日(月)

気候変動がもたらす“飢餓”急増

 
放送した内容をご覧いただけます

花澤
「地球温暖化の影響で引き起こされていると見られているのが、世界で相次いでいる熱波や豪雨などの極端な気象現象です。」

酒井
「国連は、この極端な気象現象の多発が、これまで減少を続けていた、飢餓の人口を再び増加に転じさせることにもつながっているとして、危機感を強めています。」

松岡
「国連によりますと、途上国と中所得の国で起きた洪水や干ばつといった極端な気象現象による自然災害の数は、1990年と比較して2倍以上となっています。

  

中でも深刻な状況にあるのが、アフリカの、サハラ砂漠以南の『サヘル』と呼ばれる、乾燥した地域にある国々です。
これらの国では、元々天候に左右されやすい農業が主な産業ですが、極端な気象現象によって打撃を受け食料生産に深刻な影響が出ているのです。

  

この結果、国連によりますとこれらの国々では、飢餓状態に陥っている人の割合と数が、共に高い状態となっているのです。
その1つ、ブルキナファソのカボレ大統領。
先月(11月)、日本を訪問し、深刻な状況を国際社会に訴えました。」

ブルキナファソ カボレ大統領
「わが国は温暖化による大きな影響を受けています。
去年(2017年)は100万近くの人が大規模な飢餓に陥りました。
温暖化は全世界に関係している問題であり、皆で協力して行動しなければなりません。」



  

松岡
「ブルキナファソの現状を取材しました。」

極端な気象現象がアフリカの飢餓を生む

リポート:別所正一郎支局長(ヨハネスブルク支局)

ブルキナファソの農村地帯。
しかし、広がるのは、砂漠のような大地です。

別所正一郎支局長(ヨハネスブルク支局)
「この一帯も、10年ほど前までは農地だったということです。
しかし、今はすっかり乾いています。」

極端な気象現象の影響で、砂漠化が急激に進んでいるのです。
ブルキナファソでは近年、かつてなかったような激しい集中豪雨が増え、洪水が多発するようになりました。
洪水によって草木が根こそぎ流されるため、土地はこれまで以上に水を保つことができなくなります。
このため、雨が止むと土地はすぐに乾いてしまうのです。


洪水と干ばつが繰り返されることにより、毎年、国土のおよそ2%、50万ヘクタールもの土地が砂漠化していると見られています。

農家のラスマタ・サワドゴさん、45歳です。
およそ20年間、畑でトウモロコシを栽培してきましたが、砂漠化の影響を受けて、収穫量は年々減っていると言います。

ラスマタ・サワドゴさん
「土地が干上がっています。
恐ろしい。
土がやせて、農業できる土地がどんどんなくなっています。」


今年(2018年)も食料の蓄えが6月に底をつき、収穫が始まる10月までは、国連の食糧援助に頼らざるを得ませんでした。

極端な気象現象の影響を真っ先に受けるのは子どもたちです。
村の診療所には、栄養失調の疑いがある子どもたちが次々に訪れていました。
ブルキナファソでは、子どもの10人に1人が深刻な栄養失調に陥っています。
生後9か月のこの男の子。
腕の太さを測ると、深刻な栄養失調の目安となる赤いラインを示しました。

母親
「栄養不足のわが子をみると悲しく、自分が何もできず、つらいです。」


人々の命をも脅かす農地の破壊を、何とか食い止めることはできないのか。
国連のWFP=世界食糧計画では、豪雨による水の流れを緩やかにするため、土地の浸食が進んだ場所の近くに石を敷き詰めたり、雨水をためるための人工の池を作ったりする対策を各地で進めています。
農地に無数に掘られた、この半月の形の浅い穴も対策の1つです。

国連WFP カリム・コネさん
「穴を掘って水をせき止める、ダムのようなものです。」


雨や洪水のとき流れていく水を、この半月状の弧を描いた部分で受け止めます。
これによって雨が止んだ後も、雨水が一定期間この場所にとどまり、干ばつの影響を緩和することが期待されているのです。

農家
「来年は良い収穫を期待したいです。」

対策を進めるWFPですが、現状では「土地が荒廃する速さに追いついていない」と危機感を募らせています。

国連WFPブルキナファソ事務所 オーロー・ルシガ副所長
「気候変動に対して、やらなければならないことはたくさんあります。
何もしないでいたら、気候変動との闘いに負けることになります。」

  

酒井
「取材したヨハネスブルクの別府支局長に聞きます。
アフリカのブルキナファソのような国では、気候変動の影響は本当に深刻なようですね?」

別府支局長(ヨハネスブルク支局)
「アフリカの多くの国々では、気候変動の影響は人々の身近な暮らし自体に及んでいます。
生きるか死ぬかの問題になっている所も少なくありません。
農業をはじめ、経済全体が気候変動による打撃を受けることで、若者が仕事や希望を失い、テロ組織に走ってしまうというケースも後を絶ちません。
気候変動によって社会が不安定化し、そこに過激派がつけ込んでいるとも言える状況で、ブルキナファソでもテロが繰り返し起きています。
まさに気候変動がサヘル地域の国々のさまざまな問題の根源になっているのが現状です。
温室効果ガスをあまり排出していないこうした国が、より深刻な影響を受けているのは、この問題の最も皮肉な点だと言えそうです。」

花澤
「気候変動による飢餓の問題を解決する方法はあるのでしょうか?」

別府支局長
「リポートで紹介した土地の改良に加えて、現場ではさまざまな取り組みが行われていました。
村では、女性たちを集めた栄養指導も行われていました。


地元で採れるバオバブの木の実を混ぜることで、食事の栄養を高めるための工夫などによって、少しでも栄養状況を改善しようという取り組みです。
実は世界では、ここ10年余りは着実に飢餓人口が減り続け、この問題で、世界は前進していました。
しかし、温暖化の影響が出始めたことで、ここに来て、増加に転じてしまっています。
もはや、アフリカ各国の現場レベルの対応だけでは限界があるのも事実です。
温暖化の影響を受けている国々を、国際社会が支援すると共に、温暖化そのものを食い止めるために連帯することができるのか。
待ったなしの課題になっています。」

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