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特集

2018年9月25日(火)

香港高速鉄道開通で進む中国との一体化!?

 
放送した内容をご覧いただけます

酒井
「特集は、一昨日(23日)開業した、中国の高速鉄道。
香港で物議を醸しています。」


中国本土と香港を結ぶ高速鉄道が開業。

香港 林鄭月娥行政長官
「中国経済圏との結びつきが強まり、発展の機会が広がる。」


これまで2時間かかっていた広州と香港の間を、最短47分で結びます。

乗客
「うれしい。」


乗客
「便利になった。」


背景にあるのは、中国が掲げる国家プロジェクト『大湾区構想』です。

習近平国家主席
「中国本土と香港、マカオの互恵協力を全面的に推進する。」


一方、香港では抗議デモが。
中国が香港を飲み込もうとしている、と反対する声が上がっています。

「中国共産党が攻めてきた!
香港を滅ぼそうとしている!」


高速鉄道は中国と香港の関係を変えてしまうのか。
その行方を検証します。

酒井
「中国の習近平国家主席が打ち出す『大湾区構想』。
その根幹を担う、広州と香港を結ぶ高速鉄道が23日に開業しました。」

花澤
「『大湾区構想』を推し進める中国政府ですが、その構想のもとで、中国本土と香港の一体化が進行しています。」

松岡
「中国の国家戦略『大湾区構想』は、中国本土・広東省の広州や深圳など9つの市と、香港、マカオとの間で、ヒト、モノ、カネの往来を活発にして、地域を発展させるのが狙いです。

地域の人口は、およそ7,000万。
GDPは160兆円余りで、これは韓国やロシアに匹敵します。
広東省の製造業、香港の金融、そしてマカオの観光業。
それぞれの強みを生かすことで、ニューヨークや東京のような巨大都市圏にする構想です。
今回開業した高速鉄道は全長142キロ。
これまで2時間かかっていた広州と香港を最短47分で結びます。
さらに年内には、広東省の珠海と香港、マカオを結ぶ巨大な橋が開通し、地域を一体化する動きが加速します。

中国肝入りの『大湾区構想』。
しかしこの構想の一翼を担う香港では、中国に対する懸念が高まっているんです。」

中国本土〜香港 高速鉄道 経済一体化で高まる懸念

リポート:馬場健夫支局長(広州支局)

高速鉄道が開業した広州側の駅です。

馬場支局長
「広州から香港へ向かう高速鉄道の一番列車です。
大勢の人たちが、興奮した面持ちで乗り込んでいきます。」

香港行きの列車はほぼ満席。
中国本土の乗客たちは高揚感であふれていました。
去年(2017年)、中国本土から香港を訪れた人は、延べ4,400万人で、香港の人口のおよそ6倍。
高速鉄道の開業で、さらなる増加が見込まれます。

乗客
「とても速い。
ちょっと寝てたらもう着いたよ。」

新たな商機に沸いているのが、旅行業界です。
高速鉄道で香港へ行くツアー商品も早速登場。

広州の旅行社 広報担当
「今後、本土から香港への観光客は増えるでしょう。
大きなビジネスチャンスです。」


不動産の投資マネーも過熱。
広州側の駅の周辺では、高層ビルの建設ラッシュが起きています。
この地区ではホテルや企業のオフィス向けの大型開発も進み、既に完成している26階建てのビルは全てのフロアが完売しているといいます。

広州の不動産業者
「売れ行きは好調です。」

中国本土〜香港 高速鉄道 経済一体化で高まる懸念

リポート:若槻真知支局長(香港支局)

高速鉄道で経済の一体化を進める中国。
香港を取り込む動きは着実に加速しています。

広州にある、中国国営の不動産開発会社です。
会社ではインターンシップを通じて、香港やマカオの優秀な学生の採用に乗り出しています。
対象が香港やマカオの学生であれば、地元政府から滞在費や交通費の全額補助が受けられます。

学生
「とても充実した経験でした。
ここでの生活はとても楽しかった。」

中国本土で起業を目指す若者の囲い込みにも余念がありません。
香港出身の羅偉特(ら・いとく)さん、26歳です。
2年前(2016年)から広東省に移り住み、淡水魚を活用し化学肥料を使わない、水耕栽培を始めようと準備を進めています。
利益はまだなく、ビジネスとしては未知数ですが、地元政府は実験用の温室や事務所兼宿舎を無償で提供。
年間80万円の補助金まで支給しています。

羅偉特さん
「普通に生活も仕事もできます。
とても自由で楽しい。
大湾区は仕事も生活も便利にするし、生活圏を小さくします。
成長できる機会になると思います。」

経済の一体化を進める中国政府の動きに香港側からは、懸念の声も上がっています。
高速鉄道の駅で開かれた集会。
参加者は香港の「1国2制度」が脅かされていると訴えました。

「中国共産党が攻めてきた!
香港を滅ぼそうとしている!」

怒りの理由は、香港の駅構内に設けられた黄色い線。
線の先では中国の税関や警察などが、中国本土への人の出入りを管理しています。
香港の駅の構内で中国当局が行政権を行使するのは、1国2制度に反するというのです。

集会 参加者
「香港の一部を中国の支配下に置くようなもので、受け入れられない。」

集会 参加者
「彼らは我々の土地に踏み込んできている。
今後、中央政府の関与が強まるのではないかと心配している。」


中国の影響力拡大に警鐘を鳴らしてきた、民主派市民団体の彭嘉林(ほう・かりん)さんは、経済的な一体化が進めば中国政府の政策の一方的な押しつけが常態化しかねないと指摘しています。

彭嘉林さん
「香港の自治や1国2制度の本来の理念が変えられていくのではないか。
中国の言いなりになってしまうのではないかと心配しています。」



酒井
「ここからは取材に当たった、広州支局の馬場支局長に聞きます。
高速鉄道の開業は、ただ便利になったというわけではないようですね。」

馬場支局長(広州支局)
「そうですね。
今回の高速鉄道の開業で、香港が広州だけでなく、北京や上海など本土の合わせて44の駅と直接つながりました。
香港が中国本土側の高速鉄道網に一地方都市として組み込まれた、と言う意味で、大きな転換点と言えます。

中国が『大湾区構想』のもと、香港を取り込もうとしている背景には、経済的な効果に加えて、4年前に民主的な選挙の実現を訴えた大規模な抗議活動、『雨傘運動』で見られるように、香港では若者を中心に大陸への反発が根強いことがあります。
昨日(24日)も、中国からの独立を主張する政治団体に対して、香港政府が今後の活動を禁止すると発表し、現地では中国の影響力拡大の一端として受け止められています。
中国政府としては、香港が大陸への経済的な依存を強める中で、さらに一体化を進めることで、こうした反発を和らげようという狙いもあると見られます。」

花澤
「しかし経済的な結びつきを強化することで、思惑どおりに香港の一体化は進むのでしょうか?」

馬場支局長
「そう簡単ではなさそうです。
香港では大湾区で、中国との結びつきが強まり、経済界を中心にビジネスチャンスが広がると歓迎する声もあります。
しかし一方で、中国政府の影響力が強まる中、高度な自治が認められてきた1国2制度自体が揺らぎかねない、という危機感が広がっているのも事実です。
実際、香港市民の間では、高速鉄道の歓迎ムードに広がりは感じられません。
高速鉄道が開業したことで、中国本土から香港に向かう人の流れは強まりました。
しかしその逆に香港から広州に向かう高速鉄道の中には開業当日にもかかわらず、一車両に数人しか乗っていない便もあり、本土と香港の温度差を象徴しているようにも見えました。
移動時間が短くなり、経済的に一体化の動きが進んだとしても、中国との心理的な距離を縮めることは、容易ではなさそうです。
以上、広州からお伝えしました。」


酒井
「華々しい開業でしたけれども、香港から鉄道に乗る人は少ないんですね。」

花澤
「それが象徴的な話ですよね。
香港側ではこの大湾区構想、懸念の声も強まっているようです。」

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