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特集

2018年9月19日(水)

アルゼンチン “破綻”を回避することができるのか

 
放送した内容をご覧いただけます

酒井
「世界のマネーの流れが、新興国を追い詰めています。」

今、世界の投資マネーが、新興国からアメリカへと向かっています。
アメリカの政策金利引き上げで、投資マネーが吸い上げられているのです。
その影響を最も顕著に受けている国の1つが、アルゼンチンです。
通貨ペソが急落。
そのあおりで、物価が高騰し、市民の不満が高まっています。

デモ参加者
「非常に悪い状態です。」


アルゼンチンは、破綻の危機を乗り越えることができるのか。
現地からの報告です。


酒井
「今年(2018年)に入り、新興国の通貨が、ドルに対して軒並み下落しています。
こちらは、主な新興国通貨の下落率です。
中でも、突出しているのがアルゼンチンの通貨、ペソ。
今年初めからの下落率は50%を超えています。」

花澤
「先月(8月)急落して世界を揺るがした、トルコのリラより大きく値下がりし、今後、世界的な通貨危機の引き金となる可能性も指摘されています。」

アルゼンチン通過急落 “破綻”回避は

松岡
「アルゼンチンは、第2次世界大戦の頃まで農業を中心とした経済大国で、首都ブエノスアイレスは『南米のパリ』と呼ばれるほど繁栄していました。
しかし戦後は、繰り返し債務危機に陥ります。
歴代政権は、それまでに貯めた資金を、産業構造の改革につぎ込まず、目先の人気取りのために『ばらまき政策』を行いました。
そのため、財政がひっ迫し、赤字を穴埋めするために、大量の国債を発行。
膨らむ借金が国際金融市場で不安を招いて、通貨も下落し、ついには返済に行き詰まって、債務不履行=デフォルトに陥ってきたのです。

こうした状況を変えようと、経済改革を推し進めようとしたのが、2015年に発足したマクリ政権です。
前政権が行っていた『ばらまき政策』を縮小、為替も変動相場制に移行するなど、改革を図りました。
その結果、海外からの投資額は増え、経済は持ち直したかのように見えました。
その矢先に始まったのが、アメリカの政策金利引き上げです。
マネーがアメリカに逆流した結果、通貨ペソが下落。

インフレも加速し、再び経済危機に陥ってしまったのです。
アルゼンチン国民は今、厳しい生活を強いられています。」

アルゼンチン通過急落 国民の生活は いま

リポート:小宮智可支局長(サンパウロ支局)

こちらは、首都ブエノスアイレスにあるスーパーマーケットです。
先月から月に2回、半額セールが行われています。
アルゼンチンでは、通貨安に伴って輸入品の値段が上昇し、インフレ率は月10%近くにも達しています。
政府は苦しい国民生活を支援しようと、国の資金を投入して、このセールを始めたのです。

買い物客
「何でも高いのでもっと支援が必要です。」

通貨急落の影響が最も深刻なのが、不動産取り引きです。
アルゼンチンでは、ペソの信用がないため、住宅など高額な買い物にはドルが使用されてきました。
ペソに対してドルの価値が急激に上がったため、ドルを用意できない人が相次いでいるのです。

「このままドル高が進んでしまうと、誰も家を買うことができなくなります。」

さらに、アパートの契約を更新できずに、住む家を追われる人も出てきています。
その1人、カルロス・チャベスさんです。
ホテルのフロントマンとして働いています。
月収はおよそ3万ペソ。
日本円でおよそ10万円。
アルゼンチンでは、平均的な月収です。

カルロス・チャベスさん
「ここの仕事は気に入っていますが、今の給料では生活していけません。」

  

カルロスさんが今年4月から暮らしているのが、この簡易宿泊所です。
カルロスさんは以前、暮らしていたアパートの契約を更新する際、ドル払いでの保証金の支払いを求められ、資金不足から、引っ越しを余儀なくされました。
簡易宿泊所なら保証金が要らず、週払いの家賃はペソで支払えます。
しかし部屋はとても狭く、周辺は治安も悪いため、家族と離れて、1人で暮らさざるをえません。
この日、親戚の家に身を寄せている娘のイバナさんが、宿泊所を訪ねてきました。

「一緒に暮らしたい?」

娘 イバナさん
「はい。
父が恋しいです。」

カルロス・チャベスさん
「この経済状況が続く限り、家族と一緒に暮らすことは望めません。」


アルゼンチン政府は今、IMF=国際通貨基金から資金を借りて、通貨の下落を食い止めようとしています。
今月初め、アルゼンチンの財務相らがワシントンを訪問。
5年間で最大5億ドルの融資をできるだけ早く受けられるよう、IMFに要請しました。
その代わりに、マクリ大統領は、省庁の数の半減など財政緊縮を進めることをIMFに約束。
国民にも、協力を求めています。

アルゼンチン マクリ大統領
「我々は成熟し自分たちの収入を超えた生活をしないような社会にする必要があります。」


しかし、こうした政府の姿勢には、反対の声も上がっています。
こちらは、アルゼンチンで今はやっている、IMFを揶揄(やゆ)したビデオです。
IMFのラガルド専務理事が、少しでもぜいたくをしようとするアルゼンチンの国民を監視し、買い物した品物を次々と取り上げています。
最後に出てくるのは、「IMFは、われわれの日常生活に入り込んでいる」という文言です。

町中では連日のように緊縮策を求めるIMFに反対するデモが起き、批判の矛先は、政府にも向けられています。

デモ参加者
「本当にひどい状態です。
私たちを締めつけています。
税金を払っているのは我々労働者です。
IMFからの指示は望んではいません。」

  

アルゼンチン通過急落 “破綻”回避は

花澤
「アルゼンチンは今後どうなっていくのか、サンパウロ支局の小宮支局長に聞きます。
IMFの支援を受け入れなければ、物価の上昇は止まらない。
しかし、国民はそれに伴う緊縮財政の痛みを受け入れられるのでしょうか?」

小宮智可支局長(サンパウロ支局)
「なかなか難しいと思います。
ただでさえ国民の生活が苦しい中で、痛みを和らげる苦肉の策でもある、国の税金を使ったスーパーの半額セールなどの支援も切り詰めざるを得ず、強い反発が予想されます。
政府は通貨安によって唯一恩恵を受けるとされる、輸出の分野に新たに税金を課し、増えた税収を改革に充てるとしている。
しかし、実際には、輸出は増えておらず、単に企業が苦しくなるだけだという声も聞かれます。」

酒井
「マクリ政権は、破綻の危機を乗り越えることはできるのでしょうか?」

小宮支局長
「アルゼンチンには公務員の数が多すぎたり、退職者に大量の年金を払っていたりと、財政の立て直しのために手を付けるべき課題はたくさんあります。
ただ、手を付けても、その後、回復軌道に乗るとすぐにばらまき政策を再開し、破綻に陥っていったのがこれまでの歴史です。
経済通と言われるマクリ大統領なら、やるべきことはわかっているはずです。
来年には大統領選挙を控え、国民に不人気な政策は取りにくいところですが、ばらまきを続けては破綻は避けられません。
国民を説得するマクリ大統領の手腕が問われるのは、まさにこれからと言えそうです。」

酒井
「生活が苦しくなっているアルゼンチンの国民が、どこまで我慢できるのかという、大変な状況ですね。」

花澤
「そもそもマクリ政権は、前の左派政権のバラマキ政策から転換して、ある意味リスクを取って、規制緩和などで外国の投資を呼び込もうと改革を進めたことで知られます。
その道半ばで、アメリカの金利引き上げとペソの下落というものに見舞われた形となっています。
そしてアルゼンチンでは依然として、国民の4分の1以上が貧困層という、大きな格差への人々の不満が渦巻いています。
メキシコではそうした中で、こういった不満を受け皿として、12月に左派政権が誕生します。
マクリ政権が国民の不満の中で、どう舵(かじ)取りをするのか。
来年に大統領選挙を控えるアルゼンチンの行方は、中南米の各国にも影響を与えるものとして注目されています。」

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