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特集

2018年9月12日(水)

アメリカ中間選挙 高まる選挙干渉への懸念

 
放送した内容をご覧いただけます

酒井
「中間選挙まで、2か月を切ったアメリカで、選挙への外部からの干渉の脅威が忍び寄っています。」



トランプ政権の外交政策への批判などを展開するニュースサイト「USジャーナル」。
ところが、このサイト。

情報セキュリティー会社「ファイア・アイ」担当者
「イランの行為である可能性を示唆しています。」


実は、イランの国営メディアが世論を操作するために、アメリカのメディアを装って運営していた可能性が明らかになったのです。
さらに今、投票システムへのハッキングの懸念が高まっています。

「ソフトを書き変えることで、選挙結果が変わります。」

中間選挙を、外部の干渉から守ることはできるのか。
アメリカで広がる懸念に迫ります。


花澤
「アメリカでは電子投票のシステムが各地に導入されていて、2年前の大統領選挙では、登録有権者の4人に1人に当たる、およそ4,400万人がその利用対象者だったとも伝えられています。」

酒井
「今回の中間選挙では、この電子投票のシステムが、サイバー攻撃の新たな標的になると懸念されているのです。」

松岡
「こちらは、今、アメリカの一部の州で実際に使われている電子投票を行う機器です。
画面には候補者の名前が並んでいます。
選びたい候補者の名前を手でタッチすると投票が完了です。
投票した情報は選挙管理委員会に送られ集計されます。
こうした機器の中には、2000年ごろからずっと使われているものもあります。

OSなどのシステムがアップデートされていないことなどが原因でハッキングされ、投票結果の改ざんが行われるおそれがあるのです。
ハッキングによる選挙への干渉の懸念、そして対策に追われる現場を取材しました。」

中間選挙の忍び寄る ハッキングの懸念

リポート:太田佑介記者(ワシントン支局)

今年(2018年)7月に行われた、メリーランド州の選挙管理委員会による緊急会見。

メリーランド州 マイケル・E・ブッシュ州下院議長
「FBIから、『州の選挙システムにロシアの投資が入っている』と説明を受けた。」

投票の集計や有権者登録のシステム運営を請け負うソフトウエア会社が、ロシアの投資会社に事実上、買収されていたことが明らかになりました。
捜査したFBIによると、州が契約を結んだ地元ソフトウエア会社を、別の会社が買収。
その会社の最大の株主が、ロシアの投資会社だったというのです。
アメリカの会社を装うためか、その投資会社の執行役員は、名前をアメリカ風に変えていたといいます。
さらに、会社の最大の出資者はプーチン大統領と親密な関係にある大富豪であることも判明しました。
買収の契約には問題がなかったため、選挙管理委員会は何も対策を講じることができないのが現状です。

サイバーセキュリティーの専門家は、今後の選挙での危険性を指摘しています。

サイバーセキュリティー専門家 ロバート・ジョンストン氏
「ロシアは選挙に関連する企業に投資することで、アメリカの選挙に介入しようとする。
今回の中間選挙であれ大統領選挙であれ、脅威となりうる。」

  

一部の電子投票システムがハッキングに対して脆弱(ぜいじゃく)であることも分かってきました。
先月(8月)開かれた、世界中のハッカーたちが集まるイベントです。

太田佑介記者(ワシントン支局)
「このイベントで注目を集めているのが、投票システムへのハッキングの実演です。」

この電子投票システムは、今もアメリカの一部の州で実際に使用されているもの。

投票機に、システムを書き換えるウィルスを仕込みます。
そして、書き換えられた投票機で3人が投票。
青色の候補者に2票、赤色の候補者に1票入れました。
ところが、集計結果を印刷すると…。
赤と青の得票数が、逆になっていました。

有権者登録の情報も、外部から簡単に書き換えられる可能性があることが分かりました。
この男性がオハイオ州から提供を受けた有権者登録のデータベースにハッキングを試みると、わずか1時間で、自在に情報を書き換えられる状態になりました。

記者
「民主党員の有権者の数を減らし、共和党員の数を増やすことも可能?」

ハッカー男性
「ああ、ハッカーのさじ加減次第で何でもできるよ。」

主催者ジェイク・ブラウン氏
「多くの選管の担当者が、投票機へのハッキングは不可能だと言いました。
実際にどれだけ脆弱(ぜいじゃく)かを広く知ってもらいたいのです。」


会場では、アメリカ各地から20人以上の選挙管理委員会の担当者が視察。
早急に対策を取る必要があると危機感をあらわにしました。

イリノイ州クック郡 選挙管理委員会 担当者
「選挙干渉の脅威がどれだけ切実か身にしみて分かった。」


巨額の予算を投じて、電子投票を見直す州もあります。
中西部ミシガン州です。

今回の中間選挙に向けて、州内の6,000台の投票機すべてをセキュリティーの高いものに刷新。
その上で、集計方法も変えました。
投票ではマークシートの用紙に記入します。
記入後は、スキャナーに通して集計し、マークシートは保管されます。
集計時にマークシートの一部を手作業でも数え直すようにすることで、集計結果に外部から変更が加えられていないかを確認するのです。

有権者
「紙にすべて記録されているのは安全ですね。
投票結果が守られることは非常に大事です。」

有権者
「トランプ大統領は、有権者が安全に投票できるようにする義務があるわ。」

ミシガン州 選管報道官 報道官
「投票用紙ならハッキングできません。
選挙を守るためには、我々は何でもします。」

選挙の正当性そのものを揺るがしかねない、選挙への干渉の脅威。
2か月を切った中間選挙に向け、対策が急がれています。


酒井
「ここからは、ワシントン支局の太田記者に聞きます。
選挙への干渉は民主主義の根幹にも関わることですが、現地ではどう受け止められていますか?」

太田記者
「誰に取材しても『中間選挙が干渉を受けないはずがない』という答えが返ってきます。
ソーシャルメディアの代表や、州の選挙管理委員会からは『もはや自分たちだけでは対処できない』という深刻な声も聞かれます。
選挙干渉の問題は、アメリカでは、もはや国の安全保障問題として受け止められています。」

花澤
「アメリカ政府はこうした状況にどういった対策を取っていくのでしょうか。」

太田記者
「アメリカ政府も無策でいるわけではありません。
政府は先月、サイバー攻撃に備える新たな部署を国土安全保障省内に立ち上げました。
また、情報機関の分析で選挙干渉があったと断定されれば、即座に制裁を科すことを盛り込んだ大統領令にトランプ大統領が12日にも署名すると地元メディアは伝えています。
そして、政府は各州の電子投票機の買い換えなどの費用として、日本円でおよそ420億円を各州に支援していますが、専門家は支援が追いついていないと指摘しています。」

米 選挙システムに詳しい デビッド・ベッカー氏
「新しいシステムを導入すると、選挙スタッフや有権者のために膨大な時間と予算がかかる。
民主主義の国々は今まさに攻撃を受けており、米政府のもっと強いリーダーシップが必要です。」

太田記者
「選挙干渉という、民主主義を揺るがす脅威。
その脅威の大きさにも関わらず、万全の対策はないというのが今の実情です。」


酒井
「電子投票はこんなにリスクが高いんですね。」

花澤
「選挙の結果が信頼できないとなると、どんな結果となったとしても、その後も正当性について議論を呼び、さらなる政治の混乱に見舞われることになります。
アメリカ政治がさらなる混乱を避けられるのか。
時間との闘いとなっているようです。」

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