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特集

2018年9月7日(金)

反難民・移民勢力が躍進? スウェーデン総選

 
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福祉国家スウェーデン。
9日に総選挙が行われます。
最大の争点になっているのが、積極的に受け入れてきた移民や難民の問題です。
シリア内戦を逃れた人がヨーロッパに押し寄せた2015年には、スウェーデンは16万3,000人の難民を受け入れました。
しかし、急増する難民は福祉や医療の大きな負担に。
そこで支持を集めたのが、反移民・難民を掲げる右派の「スウェーデン民主党」。

スウェーデン民主党 オーケソン党首
「(移民・難民は)この国に来て、福祉を奪い、社会への貢献をしない。」


現在支持率を伸ばし、第1党に迫る勢いです。
移民政策を巡って揺れる中、行われる総選挙の行方を展望します。

花澤
「『手厚い福祉』で知られている北欧スウェーデン。
難民や移民にも寛容な政策を掲げてきましたが、風向きが大きく変化しています。」

酒井
「9日に行われる総選挙では、『難民・移民』と『福祉』が最大の焦点になっています。」

松岡
「『人道大国』といわれるスウェーデン。
2015年には16万2,450人が難民申請を行うなど、これまで数多くの難民を受け入れ、手厚い支援を行ってきました。
例を挙げると。
無償で住居を支給。
生活に必要な物資、例えば冬用の靴やメガネ、ベビーカーなども請求すれば支給されます。
そして、大人1人当たり1日900円の生活費を支給。
さらに医療費は無料か、もしくは非常に低価格です。
スウェーデンは、ヨーロッパでもトップクラスの「難民に優しい国」とされてきました。

しかし一方で、スウェーデン国民の間では政府に対する不満が高まっています。
1つは社会保障の質の低下。
政府は、年金の支給開始年齢を引き上げる方針を発表。
また、医療の質の低下も。
病院や福祉施設の民営化が進んだ結果、医師不足に陥り、十分な診療が行われていない、という声もあります。
これらの問題の原因は、難民にあると訴えているのが、反難民を掲げる右派政党、『スウェーデン民主党』です。
こちらは現在のスウェーデン議会。
与党『社会民主労働党』が113議席。
『社会民主労働党』は100年以上第1党を守っていて、これまで左派の政党と連立を組み政権運営を行ってきました。
そして、右派政党の『スウェーデン民主党』は42議席ですが、世論調査では20%前後の支持を集めており、これを議席に換算すると70近くになり、選挙の行方が注目されています。」

勢いに乗る右派政党 スウェーデン総選挙

リポート:税所玲子支局長(ロンドン支局)

「スウェーデン民主党」の選挙運動は、大勢の若者で活気づいていました。

若者
「SNSを使った若者によるキャンペーンで政権交代を呼びかけています。」

今回の選挙で、勢いに乗る右派の「スウェーデン民主党」です。
30年前、ネオナチに共鳴する若者が立ち上げました。
その由来から有権者に敬遠されてきましたが、13年前に就任した39歳のオーケソン党首のもと、イメージを刷新。
移民・難民の受け入れの凍結や、EU離脱、さらに高齢者への減税を掲げ、支持を拡大しています。

スウェーデン民主党 オーケソン党首
「この国に来て福祉を奪うだけでなく(仕事もせず)社会に貢献しない。
『イスラム法を考慮しろ』と要求する人には、この国に居場所はない。」

支持者
「歯の治療に移民は50クローナ(600円)なのに、私たちは2,000クローナ(約24,000円)かかる。」

支持者
「そんなのおかしいわ。」

スウェーデン民主党 オーケソン党首
「私たちはスウェーデンをまとめていかなければなりません。
ここ数年で偏見がなくなり、多くの人が私たちを支持するようになりました。」


こうした背景には、福祉制度への不満があります。
医師不足による医療の質の低下や年金への不満が高まっているのです。

また、治安の悪化への懸念もあります。
移民の失業率は16%と、全国平均の2.5倍近く。
中には犯罪組織に加わる若者もいて、この夏、車が放火される事件が相次ぎました。
今後移民や難民を受け入れるとこうした問題がさらに悪化するとスウェーデン民主党は主張。
有権者の指示を拡大していったのです。

移民が多く暮らす団地でに住む、グラフィックデザイナーのエリクソンさんです。
かつては与党「社会民主労働党」を支持していました。

エリクソンさん
「この地区では去年、6歳の少女がレイプされました。
他にも銃撃や強盗、麻薬の取り引きなどの犯罪が行われています。」

身の回りに忍び寄る犯罪に、与党は十分な対策を講じていないと考え、スウェーデン民主党にくら替えしました。
エリクソンさんの家族も、今回の選挙で初めて「スウェーデン民主党」に投票することを決めています。
理由は医療や年金などの将来への不安です。

エリクソンさんの母親
「重症の小さな子供なのに空きベッドがなく、治療を受けられず、フィンランドまで通っています。」

移民ばかりを優遇し、スウェーデン人のための政策が後回しにされていると感じているのです。

エリクソンさんの家族
「必要のない政策を優先し、市民を裏切っています。
今手を打たなければ、取り返しがつかないことになります。」


一方、苦しい戦いとなった与党社会民主労働党。
党首のロベーン首相は、「スウェーデン民主党」の政策は、社会の分断を加速させると主張し反転攻勢に出ています。

ロベーン首相
「(スウェーデン民主党は)メディアを攻撃し、少数派の住民を威嚇しています。
ネオナチに源流を持ち、反EUを掲げてます。」

2015年に、シリア難民の積極的な受け入れを決めたロベーン首相。
「移民・難民問題」が焦点となっている今回の選挙戦では、防戦を迫られています。

ロベーン首相
「移民政策はすでに変更しました。
他のEU諸国と同じレベルしか受け入れていません。」

「人道大国」で「寛容な社会」を自認してきたスウェーデン。
紛争を逃れてきた難民は不安の思いで、選挙戦を見つめています。

シリア難民
「私たちを国が迎え入れてくれて感謝しています。
でも来た時よりも(社会は)変わってしまいました。
(ここに来た時の方が)良かったです。」


酒井
「ここからは取材に当たった、ロンドン支局の税所支局長に聞きます。
ヨーロッパの国々でも『反移民』を掲げる政党が支持を広げていましたが、スウェーデンでも同じようなことが起きているのでしょうか。」

税所支局長
「はい、そうですね。
ただ、ほかのヨーロッパ国々と比べて、スウェーデンは景気は悪くなく、難民の受け入れによって本当に財政が立ち行かなくなっている、というわけでは、必ずしもないのです。
ただ、スウェーデン人は、国民が所得の半分以上を税金として納め、手厚い福祉を期待しているだけに、今起きている福祉の現実に、『こんなはずではなかった』という思いが広がっています。
そんな空気だからこそ、『スウェーデン民主党』の国民感情に訴えかける戦略が受け入れられる余地が生まれたのだと思います。
今回、取材した『スウェーデン民主党』の支持者の人たちからは『極右』という言葉から連想される極端な、排斥的な思想は感じられず、『ごく普通の家庭』の人たちという印象でした。
だからこそ、かつては口にするのをはばかっただろう移民や難民への不満をあらわにするのを見て、わずか数年で社会が変わってしまったと思いました。」

花澤
「本当に大きな変化ですよね。
選挙戦の行方、今後どのようになると見ていますか?」

税所支局長
「これまでスウェーデンの各政党は、『スウェーデン民主党』を人種差別的な政党だとして、連立協議の相手としては見なしてきせんでした。
しかし、専門家は、もはや無視し続けることは困難で、今後、さまざまな政策に影響を与える可能性を指摘しています。」

ロンドン大学 講師 エミー・エクルンドさん
「極右が例外的なものではなく、スウェーデン社会の中核であることは、ある程度認めなければならないでしょう。」

税所支局長
「ロベーン首相は6日、現在の野党第1党に、選挙後の連立相手としての秋波を送るなど、『スウェーデン民主党』を排除する姿勢を崩していません。
ただ、政治の指導層と市民の思いが乖離(かいり)した時に、そこに怒りや排他的な感情が入り込む余地が生まれるということも、今回の選挙の教訓の1つなのではないかと思います。」

酒井
「スウェーデンでも、難民に対する人々の目が厳しくなっているんですね。」

花澤
「確かに、『あの寛容だったスウェーデンが…』という驚き、衝撃はありますね。
ただ、その背景には普通の人々が抱える『福祉の低下』や『治安の悪化』への懸念があります。
そしてこれまで、その懸念に耳を傾けてこなかったという問題が各国で共通して起きていました。
難民への反発とそれを主張する政党の躍進。
ヨーロッパの大きなうねりは広がり続けています。」

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