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特集

2018年7月24日(火)

中国ショック 廃プラ リサイクルの行方は

 
放送した内容をご覧いただけます

酒井
「リサイクルをめぐって、今、世界が大きな課題を突きつけられています。」


今、世界中で「廃プラスチック」が行き場を失い大きな問題となっています。


韓国KBS
「ペットボトルのようなプラスチックのゴミが、そのまま残っています。」


イギリスBBC
「汚れていたり、処理できないもの、違う種類が混ざったプラスチック。
これらはリサイクル業界に激震をもたらしています。」


きっかけは去年(2017年)12月末。
これまで廃プラスチックを資源として世界中の国から輸入してきた中国が、受け入れをストップしたのです。

中国 李克強首相
「海外ゴミの輸入を厳しく禁じる。」


さらにこの輸入禁止に続いて、東南アジアの国々も廃プラスチックの受け入れの禁止や制限を発表。
余波は日本にまで及んでいます。

日本の輸出業者
「まさかこんなになるなんて…。」


大量の廃プラスチックをどうリサイクルすればよいのか。
日本で始まった新たな動きと課題を取材しました。

花澤
「今、廃プラスチックのリサイクルが危機を迎えています。
これまで世界各国はリサイクルを中国に依存してきましたが、去年12月末に、中国が廃プラスチックの受け入れを禁止し、波紋が広がっています。」

酒井
「まずは、なぜそのようなことになったのか、これまで行われてきたリサイクルの仕組みと経緯について、松岡さんお願いします。」

中国ショックに揺れるプラスチックのリサイクル

松岡
「ヨーロッパ、アメリカ、日本などの各国は、ペットボトルなどの廃プラスチックの多くを『資源』として中国に輸出。
その量は年間1,000万トンに上ってきました。
一方、世界の工場として成長してきた中国。
国内での原材料不足を補うため、石油よりもはるかに安い廃プラスチックを集め『ペレット』と呼ばれる小さな粒に作り替え、そこから衣類や文房具などを作ってきたのです。

ところが、こうした資源ごみの中には、飲み残しのあるものや汚れがついたままの弁当トレーなど洗浄が必要なものがあり、環境汚染が深刻化。
ついに中国政府は輸入禁止を決めました。
その結果、世界各国で大量の廃プラスチックが行き場を失いました。
このうち日本は、家庭ゴミは自治体の責任でリサイクルが行われていますが、飲食店やコンビニ、工場などから出る事業系の廃プラスチックのほとんどは中国に輸出してきました。
その量は輸出国の中で最も多いおよそ150万トンです。

また中国のメーカーにとっても『ペレット』が入手困難になったため、今回の事態は痛手となっています。
波紋が広がる日本の現場と、ペレットを日本で入手しようとする中国企業を取材しました。」

中国ショックに揺れるプラスチックのリサイクル

廃プラスチックを中国に輸出してきた日本の業者です。
去年12月末の中国の輸入禁止以降タイに輸出してきましたが、先月タイにも送れなくなり、300トンの廃プラスチックが山積みのままです。

輸出業者 平良尚子さん
「ここ全部うちのものです。
全部。
こっちも全部ですね。
こっちもあっちも…。」

引受先を探していますが、思うように見つかりません。
港の使用量や倉庫代など、1日に発生する支払いは150万円以上。
先行きに不安を抱えています。

輸出業者 平良尚子さん
「困難の前で負けたくないですけど、でも寝られない日が何日かあります。」

 

こうした中、廃プラスチックのリサイクルを、国内で広げていこうという動きが始まっています。
廃プラスチックを回収し、ペレットを製造してきた日本の会社です。
ペレットは、国内の大手メーカーに出荷され、衣類や掃除シートなどにリサイクルされています。
今、力を入れているのは、ペットボトルからペットボトルへのリサイクルです。
この会社では国内の大手飲料メーカーなどと協力して研究を重ね、原料は廃棄されたペットボトルだけでペットボトルを作る技術を世界で初めて開発したと言います。

この技術で国内のリサイクルを増やせると期待し、工場の新設や機器の導入などに50億円を投資しました。

ペレット製造会社 古澤栄一社長
「しっかり自分たちの出した資源ゴミを自分たちの国で上手に循環させていく、リサイクルさせていくチャンスが来た、というふうに思っています。」

この会社がこれまでリサイクルをしてきた廃プラスチックの量は、年間6万トン余り。
新たな技術の活用で、量を増加できると見込んでいます。
しかし、中国には日本から年間およそ約150万トンの廃プラスチックが輸出されてきたため、この会社は業界全体で取り組みが進まなければ、国内でのリサイクルが根付かないと懸念しています。

ペレット製造会社 古澤栄一社長
「中国または海外に依存していた分、それを半年1年ですぐに国内で取り返そう、循環させていこう、当然そういう動きはないとだめなんですけれども、その動きをたちまち結果に出すことは非常に難しいと思います。
国のしっかりとしたバックアップが当然必要になってくると思います。」

一方、廃プラスチックを日本でペレットにすれば中国に持ち込めることに目を付けた企業があります。
中国のペレット製造会社が4月に開いた東京の事務所です。
日本の回収業者から廃プラスチックを買い取っています。

この企業は中国のペレット工場を全て閉鎖し、製造拠点を日本に移しました。
今、買い取った廃プラスチックが次々と運び込まれています。
経営者の孫自強さんです。
中国と日本を行き来し、10年以上リサイクルビジネスに携わって来ました。

中国のペレット製造会社 孫自強社長
「2ライン立ち上げて、1ラインが動いています。
もう1ライン9月に立ち上げる予定です。」

今年秋までに生産量を倍増させ、本国へのペレットの輸出を増やしたい考えです。

中国のペレット製造会社 孫自強社長
「(中国は)廃プラスチックを世界中から輸入してきた。
一気にこれがなくなると、携わっている会社たちがみんな困っている。
今、本当に中国の大手企業しか出荷が間に合わない。」

さらにこの企業には、日本で廃プラスチックを狙う別の理由があります。
質の高い日本製のプラスチックを使って、新たなペレットを開発しようと、中国の呉馳飛教授と共同研究を進めています。

孫社長
「できた商品の品質は?
強度は大丈夫ですか?」

呉教授
「強度は通常の倍になります。」

今開発しようとしているのは、強度を高い製品に作り替えられるペレットです。

中国のペレット製造会社 孫自強社長
「新しい用途を開発すれば宝物になりますからね。
日本にはまだいっぱいあるんでしょうけどね。」

しかし、国内のリサイクルを進めても、行き場のない廃プラスチックは完全になくなることはないといいます。
この企業は、分別が徹底されていないものや質の低いプラスチックは買い取らないことにしています。

中国のペレット製造会社 孫自強社長
「需要があって我々の企業活動を通して、その需要に応えなくてはならない。
ただ単にエコのためにということだけではないんです。」


酒井
「スタジオには大阪商業大学の原田禎夫准教授にお越しいただいています。
まず、中国での廃プラスチックの輸入禁止は、世界にどんな影響があるのでしょうか。」

大阪商業大学 原田禎夫准教授
「先ほどのビデオでもございましたけれども、日本も含めて、各国大混乱しているという状況です。
例えば先日調査をしてきたアメリカでも、行き場が無いと。
中国の代わりに受け入れてくれている国、タイであったり、インドネシア、ベトナムであったり。
タイでは先ほどもありましたが輸入を禁止したり、他にもかなり厳しい制限を始めるということで。
あるいはヨーロッパでもルーマニアなどの東ヨーロッパの国々に代わりを求めているんですけれども、なかなか中国に代わる受け入れ先が見つからないというのが現状です。」

花澤
「そもそもこの廃プラスチック、どれくらいがリサイクルされているんですか?」

原田禎夫准教授
「リサイクルの定義というものもなかなか難しいんですが、ペットボトルだけですと、国内では48.6%がリサイクルされています。
海外では37.1%。
リサイクルをされない、これは埋め立てされているとかですけれども、16.1%…。
なのですが、リサイクルの中には新たな素材として生まれ変わる、素材に生まれ変わるリサイクル、これはある意味で質の良いプラスチックを使ったリサイクルですけれども、プラスチック全体として見ますと日本では25%程度しか、マテリアル・リサイクル、ケミカル・リサイクルと言うのですが、要は材料として再び使われることはそれくらいしかないのです。」

花澤
「残り75%はリサイクルされていないということですか?」

原田禎夫准教授
「そうですね。
焼却をしてそこから熱を取ったりあるいは発電をしたり。
これは実は英語では、リサイクルというよりはリカバリーと言いまして、一段劣る手段だと言われております。
こちらの数字なんですけれども、リサイクルの定義は国によって違いますので、単純な比較はできないのですが、材料としてのリサイクルという意味で考えますと、実はヨーロッパの方が高いリサイクル率を誇っているというのが現状です。」

花澤
「75%もあるものを、燃やさないようにしていく、目指していくんですよね。
どうすればいいのでしょう?」

原田禎夫准教授
「一つの方法としては、質の良いプラスチックは材料として使えますので、質の高い回収を実現すると。
ここに例えばITの力を借りて、より効率的により良い回収をしていくというのが考えられますが、それだけでは限界がありますので、元からのプラスチックそのものの排出量を抑制するという方法が急務だと思います。」

花澤
「質が悪いプラスチックというのは、具体的に言うとどういうものなんでしょうか。」

原田禎夫准教授
「例えば冒頭のVTRにもありましたが、ペットボトルの中に飲み残しがあるとか、あるいは(弁当の容器などに)食べ残しがあるとか、あるいはさまざまな原材料、油なんかがべったり付いている、あるいは他の素材とごちゃ混ぜになってしまっているとか、きれいではない物です。」

花澤
「よくコンビニでお弁当とかプラスチックの容器に入っているものを食べ残したり、油が付いていたりしますよね。
こういうものも?」

原田禎夫准教授
「化学処理をしてリサイクルできないこともないんですが、膨大なコスト、エネルギーを使ってしまいますので、例えばこういう使い捨てプラスチッックにつきましては、海外では今どんんどん紙の容器に置き換えていくということが進んでいます。
スーパーマーケットのお惣菜なども。
これはアメリカの写真です。」

花澤
「紙を使っていく社会に変わっていくということですか?」

原田禎夫准教授
「紙も、どんな紙なのかということも考えなければいけない問題です。
森林保護もしなければいけませんので。
最近大きなニュースにもなっていますが、大手コーヒーチェーン、ファストフード店ではストローを紙のストローに置き換えたり、中にはパスタのストローなんかも出てきています。
あとは埋め立てをしても土に還る、分解されるプラスチック。
これは生分解性プラスチックというのですが、すでに開発もされていますし、販売もされていますので。」

花澤
「あるんですね?」

原田禎夫准教授
「ヨーロッパに行きますと、本当に自然にレストランやカフェで出て来ますね。
この1年間の急激な変化だと思いますけれども。」

花澤
「見た目は私たちが使っているものと変わらないんですか?」

原田禎夫准教授
「一緒です。
ただ、例えば先ほど話題になっていましたペットボトル。
炭酸飲料は高い圧力で密閉しなければなりませんので非常に高い技術が要ります。
そういう中で植物を原料とした新しい素材も開発されていますが、残念ながら、今はコストが高いというのが課題としてはあります。」

花澤
「社会全体がそちらに、植物由来のものを使っていけば?」

原田禎夫准教授
「そうですね。
海外、アメリカ・ヨーロッパを調査して思うのが、政府がいつまでに何をするのかという道筋をはっきりと事業者、企業、あるいは消費者に示すことで、完全にマーケットがそちらにシフトして行くと。
そのことによって劇的にコストも下がりますし、あるいは消費者の行動自体も変わっていく。
それは本当に世界で急激に起こっている変化だと感じます。」

花澤
「そうすると、分解するプラスチックを使いましょうというふうに政府は決めていくと?」

原田禎夫准教授
「そもそもやはり使い捨てのプラスチックを無くそうと。
手段の一つとして紙の容器であったり、あるいは分解できるプラスチックであったり、多様な選択肢を用意していくということが大事だと思います。」

花澤
「分解すると言っても埋める場所も限りがありますよね。」

原田禎夫准教授
「そうですね。
分解するのにも一定の時間がかかりますので。
あるいは土に還ると言いましても、そのまま川や海に流れ出してしまうと、なかなか分解されないという問題もあります。」

花澤
「やはりプラスチックをなるべく使わない社会を目指して行くということになるのでしょうか。」

原田禎夫准教授
「お話を伺ったある大手飲料メーカーの方がおっしゃっていて、私も嬉しい驚きだったのですが、自分たちの国で処理しきれないプラスチックは作らないし使わないことが大事だと。
それを飲料メーカーの方がはっきりおっしゃっていたのが本当に印象的でした。」

酒井
「ありがとうございました。
ここまで、世界で波紋が広がる廃プラスチックのリサイクルについてお伝えしました。」

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