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特集

2018年7月19日(木)

中国でウイグル族大量拘束 今何が?

 
放送した内容をご覧いただけます

酒井
「今日(19日)の特集、中国の少数民族が悲痛な声を上げています。」

中国の新疆ウイグル自治区に暮らす少数民族のウイグル族。
中国政府は、ウイグル族の分離・独立運動を警戒し、長年、締めつけを行ってきました。
その締めつけが新たな次元に。
外国とつながりがあるウイグル族の人々などを、次々と拘束。

「中国共産党が無ければ、新しい中国も無い。」

さらに、収容所で愛国教育を強制しているとみられています。

拘束された人
「“中国共産党と習近平国家主席を信じるべきだ”と言わされた。」


懸念が高まる新疆ウイグル自治区の現状に迫ります。

花澤
「こちらの写真をご覧ください。
ドイツの研究者が『新疆ウイグル自治区に去年(2017年)作られた収容所だ』としている施設です。
この研究者によると、去年までさら地だった場所にこうした巨大な施設が次々と建設され、ウイグル族数十万人が収容されているということです。」

酒井
「国際的な人権団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』は先月(6月)『罪のないウイグル族の人々が恣意的に拘束されている』として中国政府を批判。
拘束されている人の速やかな釈放を求めています。」

松岡
「中国の西部に位置する新疆ウイグル自治区。
人口2,300万余りのうち、およそ1,100万と半数近くを、この地域に古くから暮らしているウイグル族が占めています。
ウイグル族の人々は、大部分がイスラム教を信仰し、独自の言語『ウイグル語』を話すなど、中国で大多数を占める漢族と異なる文化を持っています。
18世紀後半以来、中国による支配が始まりました。

さらに1950年代、中国政府は漢族の入植政策を開始。
ウイグル族は、政治・経済面で漢族の力が強まり、宗教政策も抑圧的だと反発しました。
9年前には、中心都市・ウルムチで大規模な暴動が発生。
政府の発表で、およそ200人が死亡しました。
これ以降、中国政府はウイグル族に対する締めつけを強化。
大量の監視カメラが設置され、住民の監視が強化されています。
さらに、パスポートを没収されたり、中国国外との通信を制限されたりするケースも報告されています。
そして今、ウイグル族の人々が次々と拘束され、国際的な批判が強まっています。」

中国 ウイグル族 “大量拘束”の実態

実況
「シュート!!美しい!!」

サッカー19歳以下の中国代表の国際試合。
見事なシュートを決めたのは、ウイグル族の選手です。
アメリカ政府系のメディア「ラジオ・フリー・アジア」は、今年(2018年)この選手が「試合で外国に行ったこと」を理由に新疆ウイグル自治区で拘束され、行方が分からなくなったと報じました。
国際プロサッカー選手会も、選手の釈放を求める声明を発表しています。
海外の研究者は自治区で拘束され、収容所に入れられるウイグル族の人々が、この1〜2年で急増しているといいます。

収容所に数か月間入れられたという40代の男性です。
隣国・カザフスタンで、アメリカのAP通信に拘束中の体験を証言しました。

拘束された人
「彼らは私をつり上げました。
足は地面に辛うじて着くくらいで、4日間、一睡もさせてもらえませんでした。」

この男性はカザフスタンに住んでいますが、去年、両親に会うため、生まれ故郷の新疆ウイグル自治区に帰省したところ、拘束されました。
収容所では、中国共産党を称賛するよう、連日強制されたといいます。

拘束された人
「“イスラム教を信じるべきではない。中国共産党と習近平国家主席を信じるべき”と言わされた。」

こちらは「ラジオ・フリー・アジア」が、収容所内部で撮影されたものとして伝えた映像です。

「中国共産党が無ければ、新しい中国も無い。」

「やり直し!」

そこには、手錠を掛けられた男性たちが、中国共産党をたたえる歌を歌う姿が映っていました。
日本には、1,500人から2,000人のウイグル族の人が暮らしているといわれ、中国に住む家族や親族が拘束されたと、相次いで訴えています。
今回、匿名を条件に、4人がNHKのインタビューに応じ、胸の内を明かしました。

ウイグル族の男性
「私の親戚も2人は確実に(収容所に)入っているんですけど、子どもを外国に行かせたとか、親戚が海外にいるという、そういう方は海外から情報を受け入れやすいということで、彼らはやはり一番危ないと、中国政府が思っている可能性があるので、最初に連れて行かれたのかなと。」

2年前までは電話で話ができていた家族も、今は海外との接触を避けているといいます。

ウイグル族の女性
「電話をかけても出てくれません。
1年くらい前に“こっちに連絡されるとすごく迷惑なので、いろんな所からいろんなこと言われるので連絡しないで”って言われていて、寂しい、心配、恐怖というか、怖いです。」

故郷から遠く離れた日本。
家族の安否が分からないまま、時間だけがすぎ、不安にさいなまれています。

ウイグル族の男性
「私の妻も日本に来る予定で来られなかったし、私のおじも何人か、兄の友達なども捕まっているという情報がきました。
1年前の情報ですね。
いつも不安で、どういうふうになっているのか、家族はどうなっているのか、捕まっている私の親戚と妻はどうなっているのか、そういう毎日ですね。」

ウイグル族の男性
「今どういうふうに生きているのか、生きているのか死んでいるのかすら分からないという状況がここ1年間続いて、精神的に非常に私たちを追い詰めている状況にあります。
どうしようもなくて、何もできなくて、その無力さ、無力感、苦しむしかなくて。」

「ウイグルに自由を!!」

今月(7月)ウイグル族の人たちが、都内でデモを行いました。
100人以上が集まり、中国政府に拘束をやめるよう訴えました。
ウイグル族を巡る問題は、欧米各国でも懸念が高まっています。
アメリカ政府は、中国政府に拘束をやめるよう強く訴えています。

アメリカ国務省 ナウアート報道官
「我々はウイグル族の大規模な拘束と、空前のレベルでの監視を懸念している。
中国にこの措置の停止と、拘束された人の釈放を求める。」

一方の中国政府は。

中国外務省 陸慷報道官
「新疆ウイグル自治区の社会は安定し、経済も発展して、宗教の自由も享受している。
これは中国の内政であり、外国が干渉する権利は無い。」

故郷の家族と連絡さえ取れないウイグル族の人たち。
やり場のない怒りや不安を抱えながら、一刻も早い状況の改善を願い続けています。


現地の状況は?

酒井
「ここからは、中国現代史が専門でウイグル族の現状に詳しい、中央大学講師の水谷尚子さんにお話を伺います。
水谷さん、まず現地の状況はどうなっているのか、そして研究を通して何か変化は感じていますか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「昨年2017年から現地の友人たちとメールなど一切取れなくなりまして、それと同時に海外の、トルコであるとか、日本にいるウイグル人たちから、家族ともう何か月も連絡が取れないという話が入ってきました。
私が異変を知ったのは、昨年のちょうどこのぐらいの時期でした。」

花澤
「どういう異変だというふうに最初気づかれたんですか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「今まで、さすがに今インターネットもある、電話もあるというような時代に家族と一切連絡がつかないとか、あるいは友人と一切連絡がつかないというのは、ちょっと異常事態だなと思って、その後、やはりどうやら強制収容所に入れられているのではないかという話が国外から出てきて、『ラジオ・フリー・アジア』や、外国のトルコなどの人権団体、ウイグル人の人権団体が本格的な調査を始めたという感じですね。」

花澤
「先ほど、サッカー選手がという情報が出てきましたけれども、ああいう著名人も狙われているというか、拘束されているんですか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「拘束されている人は、最初の時期はイスラムの宗教指導者を中心的に強制収容所に入れられていたという話なんですが、それからあっという間に、そうじゃなくて社会的に何らかの影響力があるような人たち、例えば、その有名なサッカー選手もそうですし、有名なミュージシャンであるとか、あと大学の教授、それも医学部の先生とか、文学の先生とか、もうとにかくありとあらゆる人が収容所に送られるようになって、反対に言ったら、外にいる人たちというのは、高齢者であるとか、子どもであるとか、女性であるとか、社会的に何らかのあまり強い影響力を及ぼすことのないような人たちが外で暮らしているというような状況になっていると、今のところ、そのように見られています。」

花澤
「VTRの中では、拘束されていた人、そこから解かれた人も出てきましたけれども、ああいう人たちというのも一定数いるんですか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「いえ、極めてまれな事例です。
彼の場合は、カザフスタンの国籍も持っていたので、カザフ政府の圧力などによって出てこられたと。
しかしながら、中国国籍者であそこから出てきたという話はあまり聞かないですね。」

花澤
「ほとんどの人が連絡が取れなくなったまま、それっきりの状態が続いていると言われているわけですね。
それで、数十万人という情報でしたけれども、もう少し具体的に何か情報はあるんですか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「トルコのウイグル人の亡命者団体でインターネットテレビをやっている『イステクラルTV』というところが、現地の警察官などと水面下で連絡を取って調べた情報によると、主要な市を含まない県レベルで全部で89万人の人たちが収容所に入っているのではないかという調査をしていました。
ただし恐らく、数はもっと増えているのではないかと。
つまり主要な市などを含んでいない数ですから、つまりそれはウイグル人の人口を考えると、10人に1人ぐらいは収容所に入れられているのではないかという情報があります。」

花澤
「100万人近いということになりますよね。
かなりな施設が必要になってきますけれども、それだけの収容所を造っているんでしょうか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「先ほどのVTRにも出てきましたが、造るのだけでは到底足りないので、現在、私たちが把握しているのでは、以前は存在したウイグル語による教育の学校を収容施設として転用したりとか、あと、いわゆる日本の区役所みたいな、そういうような公民館みたいなところを収容施設にしたりとか、体育館であるとか、そういう公営の施設を思想改造施設にしているというように言われています。
ただ、とにかく住環境が劣悪で、1つの以前の教室に50人ぐらい一緒に雑魚寝をしたりとか、そういうような状態だということです。」


なぜ今“大量拘束”

花澤
「それだけ収容して、目的というのは何なんでしょうか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「今、中国は一帯一路政策を押し進めていますので、あの地域というのは、主体民族はずっとウイグル人だったわけで、経済などの基盤などもウイグル人が中心となっていたわけですが、恐らく、中国の主体民族である漢民族の社会に乗り換えようという試みではないかと、私は見ております。」

花澤
「それにしても、ある種、一線を越えたような感じもしますけれども、なぜ今なんですかね。」

中央大学講師 水谷尚子さん
「2016年の段階で、チベットの党書記であった陳全国という人が新疆ウイグル自治区の党書記に転任になりました。
ちょうど、その陳全国氏がチベットで党書記をやっていた時にチベット人の焼身自殺が非常に大発生するんですが、少数民族への政治的な弾圧の手腕を買われて新疆の方に来たのではないかと言われておりまして、ちょうどこういう一連の強制収容が始まったのが、陳全国さんの党書記就任とかぶります。
なので、それが1つのきっかけになったと亡命者たちは見ております。」


国際社会は?

花澤
「それにしても、これだけの規模と深刻さから考えますと、国際世論はそんなに盛り上がっていないと思うんですが、これはなぜなんでしょうね。」

中央大学講師 水谷尚子さん
「まず、まさかここまでのことをしているとは国際的にも、あと裏がなかなか取れない話であったということもあって、人権団体も初めは、にわかに信じられなかったというのが1つだと思います。
あと、やはり情報が相当遮断されていますので、今、新疆ウイグル自治区の状況を、例えば『ラジオ・フリー・アジア』などが一生懸命放送をしようとしても、今は中国では声紋で特定のアナウンサーなどの声などが分かるので、その『ラジオ・フリー・アジア』の方が中国国内に電話をかけたら、それでシャットアウトして取材を妨害するとか、いろいろしていまして、なかなか正確な情報が国外に出ていかなかったというのが1つの原因ですね。」

花澤
「その実態が今ようやく見えてきつつあるということなんですね。」

中央大学講師 水谷尚子さん
「そうですね。」

花澤
「そうしますと、これから国際社会としては、この問題に対してどう対処していけばいいとお考えですか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「やはりここまでひどい人権弾圧は21世紀に入ってまだ類例を見ないものの1つだと思います。
そして、中国共産党自体もこのようなことをやっていたら、当然、世界的にも、そして歴史的にも、自らの品位を下げることになるわけですし、やはり国際社会は中国共産党に対して、この問題を訴えかけて、一刻も早く、こういうような非人道的なことをやめさせるべきだと、私は思っております。」

花澤
「各国で訴えれば、この政策を変えさせることはできますか?」

中央大学講師 水谷尚子さん
「ちょっとやはり度を超えていますので、とにかく中国、ウイグル人の文化的にも産業的にも壊滅状態ですよね、これだけ多くの人が塀の中に入っているということは。
なので、変えていかなきゃいけないでしょう。」

花澤
「私たち日本も責任を問われているということになりますよね。」

中央大学講師 水谷尚子さん
「そうですね。
日本のウイグル人留学生の中にも、親・両親と連絡が取れないばかりか、例えば学費の仕送り自体もないとか。
あと中国政府がパスポートの更新をしてくれないので、日本に引き続きいれない。
結局、戦時亡命という形で日本に残らざるを得ないという事例が実際に起こっています。
私もそういう事例をいくつか聞いています。
なので、日本にも大きく影響しております。
産業面でもそうです。
例えば新疆ウイグル自治区から干しぶどうなどを輸入していた業者が輸入できなくなったとか、今、日本でも多くの影響が出てきている状況です。」

花澤
「私たちも声を上げていかなければいけないということですよね。」

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