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特集

2018年4月16日(月)

カンボジア“公正な選挙は行えるか”支援問われる日本

 
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カンボジア フン・セン首相
「国家転覆を企てる者は許さない!」






カンボジアで、7月に行われる総選挙。
独裁色を強めるフン・セン政権は、選挙を最大野党不在のまま行なおうとしています。
活動停止に追い込まれた野党幹部が、相次いで来日。
窮状を訴えています。

野党幹部
「もう時間がありません。
日本を含めた国際社会に助けてほしい。」


危機的な状況にあるカンボジアの民主主義。
その行方を見つめます。

花澤
「カンボジアでは7月に総選挙が行われますが、フン・セン首相は、この選挙を最大野党不在のままで強行しようとしています。」

酒井
「このままでは、公正な選挙にはならないと、国際社会から批判が高まっています。
なぜ、フン・セン政権は、強権的な姿勢を崩さないのでしょうか。」

松岡
「カンボジアでは、長く続いた内戦の後、1991年に和平協定が結ばれました。
その後、日本は最大の支援国として、欧米とともにカンボジアの和平・民主化に関与を続けていました。
しかし、民主化に暗雲が。

5年前の総選挙で、最大野党・救国党の議席が与党に迫る勢いをみせたことでフン・セン首相は危機感を募らせ、救国党への締めつけを強化。
去年(2017年)地方選挙で救国党がさらに躍進したことから、フン・セン政権は救国党の党首を国家反逆の疑いで逮捕し、党そのものも解党しました。
幹部118人を5年間の政治活動禁止とし、最大野党不在のまま、総選挙を行おうとしています。
背景には、日本に代わって最大の支援国になった中国の存在があります。
その投資は、日本円で総額1兆円を超え、存在感は圧倒的。
常にフン・セン政権を支持し、大きな後ろ盾となっています。
こうした窮状を訴えようと来日した、野党幹部に密着しました。」

カンボジア野党幹部 続々来日 …何が?

リポート:山口雅史(国際部)

先週、救国党の重鎮の1人が緊急来日しました。

党の創設者の1人で、前の党首のサム・レンシーさんです。
現在はカンボジアを離れ、国外で政治活動を続けています。
在日カンボジア人の熱烈な支持者から歓迎を受けました。

救国党 前党首 サム・レンシーさん
「カンボジアに民主主義を取り戻す支援をしてほしい。」

これまでカンボジアの選挙には、日本をはじめ、欧米各国が選挙管理委員会への支援を通じて関与してきました。
しかし、欧米各国が救国党を排除した選挙には正当性がないとして支援を打ち切ったため、今回の選挙を支援する国は、日本や中国など4か国だけになっています。

EU モゲリーニ上級代表
「EUは委員会への支援を打ち切ることにした。
野党の参加が禁止されている選挙が民主的でないことは明らかだ。」

サム・レンシーさんは、日本も選挙から手を引く可能性を示しながら、フン・セン政権に圧力をかけてほしいと考えています。
最初に訪ねたのは、自民党の高村副総裁です。
高村氏はかつて、外務政務次官や外務大臣だったころ、カンボジアの政党間の対立を調停し、民主化に力を尽くしてきました。
しかし、具体的なやりとりには至らなかったといいます。

救国党 前党首 サム・レンシーさん
「彼は何も言わなかったが、私は理解している。
具体的なことは、まだ言えないのだから。」

それでもサム・レンシーさんは、日本政府が水面下で何らかの影響力を示してくれると考えています。

次に訪ねたのは、2009年に外務大臣を務め、窮地の間柄である、民進党の岡田元代表です。

救国党 前党首 サム・レンシーさん
「25年前に始まった民主化は、逆行している。
いまカンボジアは一党独裁へと進んでいる。
日本が築いた民主化の遺産が壊されるのは悲しい。
これを守ってほしいと頼みに来た。」

民主党 岡田元代表
「日本外交として、民主主義とか基本的人権とか、アジアの中で民主先進国として広げると、安倍首相も言っているわけだから、(日本は)存在感をしっかり発揮してもらいたい。」

カンボジアでは、1992年、国連による民主化プロセスがスタート。
日本も国連のPKO=平和維持活動に参加するとともに、政治の面でも大きく貢献してきました。
しかしフン・セン政権は、2013年の総選挙で救国党が躍進したことをきっかけに強権化。
欧米各国が支援を打ち切っても、中国の後ろ盾があるとばかりに、民主化に背を向けてきました。
フン・セン政権の強権化は、海外で暮らすカンボジア人たちも心配しています。

この日、在日カンボジア人がサム・レンシーさんの歓迎会を開きました。

在日カンボジア人
「家族はカンボジアにいます。
心配です、フン・センは危ないから。」

在日カンボジア人
「何か言うと捕まったり、殺されたり、危ない。
フン・センはかわってほしい。」

サム・レンシーさんは、人々を勇気づけようと、公正な選挙の実現まで戦い続けることを誓いました。

救国党 前党首 サム・レンシーさん
「今回の選挙は国民の選択肢がない。
(公正な選挙が行われたら)フン・センに勝てる。
我々は弱者や汚職のない清廉な人々の味方です。」

「救国党!救国党!救国党!」

救国党 前党首 サム・レンシーさん
「各国と友好関係にある日本が、カンボジアの平和と民主主義に貢献してくれるだろう。」

選挙の政党登録の締め切りまで、残された時間は3週間あまり。
それでもサム・レンシーさんは、日本がフン・セン政権に圧力をかければ、状況は変えられると考えています。

救国党 前党首 サム・レンシーさん
「我々は依然として、世界の中で民主国家とつながりを持っている。
日本が(選挙支援から)撤退すれば、フン・センは完全に孤立する。
日本が総選挙に正当性がないと主張すれば、(強行された)選挙で生まれた政権の正当性は完全になくなる。
日本だけがフン・センを説得できる。」



どうなる?野党勢力

酒井
「ベトナムのハノイには、取材にあたっている横田支局長がいます。
横田さん、選挙に向けた動きは今、どうなっていますか?」

横田晃洋支局長(ハノイ支局)
「選挙に向けて、立候補者と政党の登録の受付が今月(4月)30日に始まり、来月(5月)10日で締め切られます。
つまり、後1か月足らずで選挙の構図が決まってしまうんですが、最大野党・救国党にとっては、かなり厳しい状況となっています。
日本政府は、この間『野党勢力との対話』をフン・セン政権側に働きかけてきましたが、なかなかうまくいっていません。
先週、プノンペンを訪れた河野外相の口からは、『野党勢力との対話』という言葉さえ出なくなっていました。
これまでの日本の支援を知る野党関係者の期待は高い一方で、今のところ、フン・セン政権の姿勢を変えることはできていないんです。
手詰まりとなっている中で、新たな野党をつくろうという動きも実は出てきています。
ただ、急ごしらえの感は否めず、フン・セン政権に対する不満の受け皿となって、300万を超える票を獲得した救国党に代わる勢力というのは、正直見当たらないといった状況です。」


フン・セン政権に国際社会は

花澤
「欧米や日本の批判はフン・セン首相には届いていないように感じますが、こうした状況に、国際社会はどう対応していこうとしているのでしょうか?」

横田支局長
「このまま選挙が行われれば、フン・セン政権を支える与党の圧勝は間違いありません。
地方議員などの間接選挙で行われた2月の上院議員選挙では、与党が議席を独占し、国際社会から批判が高まりました。
7月の総選挙もそれに近い状態になる可能性は高く、そうなると、欧米は選挙結果そのものを正当とは認めないと思います。
日本が一貫して求めてきた『国民の意思が適正に反映された選挙』とは言えないような結果になることも大いに有り得るんです。
1993年の総選挙から25年がたち、内戦後の国づくり、民主化の階段を1つ1つ上がっているはずだったカンボジア。
残された時間が少なくなる中で、長年支援を続けてきた日本の姿勢が、今、改めて問われています。」


迫るカンボジア総選挙 問われる民主主義

酒井
「カンボジアの選挙が公正なものになるのか、厳しい状況のようですね。」

花澤
「そうですね。
私が初めてカンボジアに行ったのは2003年なんですけれども、その当時は日本の影響力、存在感が圧倒的だったんですよね。
それが去年行った時には、中国の影響力が圧倒的で、完全に逆転しているというような感じでした。
欧米や日本が、いくら圧力をかけたり、支援をひいても、その穴を中国が埋めてしまうという構図ですよね。
だから、なかなか圧力がかからないということなんだと思います。
野党側の日本への期待は高いですが、カンボジアでは難しい状況が続いているようです。」

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