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特集

2017年6月12日(月)

“最終作戦” ラッカは今

 
放送した内容をご覧いただけます

過激派組織IS=イスラミックステートが首都と位置づける、シリア北部のラッカ。
残された市民が撮影した映像には、市内での戦闘に備える戦闘員の姿が。
「シリア民主軍」による制圧への作戦が本格化しています。
脱出した市民からは、戦闘に向け、ISが態勢を整えているという証言も。

「ISは毎日トラックで土を運んできて、道路を塞いでいきました。」






 

戦闘が中心部に近づくにつれ、緊迫度が増す、ラッカ。
現地は今。

花澤
「3年前、ISが『イスラム国家』の樹立を一方的に宣言し、首都と位置づけてきたシリア北部のラッカ。
クルド人勢力主体の部隊『シリア民主軍』は今月(6月)6日、制圧に向けた最終的な作戦に入ったと宣言しました。」

 

増井
「作戦の状況について、松岡さんからです。」

 

松岡
「シリアとイラクにまたがる広大な地域を支配してきたIS。
最も勢力を広げた時には、この黒い部分を支配していましたが、


 

現在は、ここまで縮小。
そのISの本部機能が集まるラッカの中心部、いわばISの『心臓部』を失えば、標ぼうしてきた『イスラム国家』としての体制は大きく揺らぐことになります。




 

このラッカ制圧をめざす『シリア民主軍』は今、東に加えて西と北の3方向から部隊を進めています。
このうち西部では、アメリカなどが集中的に空爆を続けてきたのち、シリア民主軍の地上部隊が銃撃戦を行い、11日、市内に入ったとして戦闘の成果を強調。
一方、北部では、ISがバリケードやざんごうを設置。
激しく抵抗して、一進一退の攻防が続いている模様です。」

 

花澤
「市街戦の激化も現実味を帯び、緊迫度が増すラッカはどんな状況なのか。
ラッカの住民が撮影した映像からご覧ください。」

ISの“首都”ラッカ 緊迫の現地は今

リポート:森健一(カイロ支局)

NHKが、ラッカの市民ジャーナリストから独自に入手した映像。
ISに見つかれば、重い罰が待っている命がけの撮影です。

この黒い服を着たISの男たちは、住民の監視役です。
ファストフード店で注文したり、機関銃を持って足早に歩く戦闘員たちの姿も映っています。


 

カメラが捉えたのは、中心部にある「ナイーム広場」です。
この広場では、かつてISに従わない住民たちの処刑が連日のように行われていました。
しかし、ISが勢力を弱めるに従って、街の風景も変わり始めています。




 

中心部の大通りの商店は、どこもシャッターが下りています。
撮影した市民ジャーナリストによると、商店の前の街路樹の根元に爆弾が仕掛けられたため、営業を停止したということです。
ISがラッカ市内での戦闘に備えていることがうかがえます。
今月6日、クルド人勢力主体の「シリア民主軍」は、ラッカの制圧に向けた最終的な作戦を開始すると宣言しました。

『シリア民主軍』広報責任者
「テロリストの首都になっているラッカを解放するための戦いを開始する。」




 

近く始まると言われていた、ラッカ制圧作戦がようやく動き始めたのです。
迫る市街戦を前に、ラッカからの脱出を図る市民が相次いでいます。

取材班は先月(5月)、隣国のトルコに逃れてきた49歳の女性から話を聞くことができました。
夫や親せきが、まだラッカ市内に残っているため、目元以外を隠すのが条件でした。

ラッカから逃れてきた女性(49)
「外に出ると恐ろしい光景を目の当たりにしました。」

この女性自身も、体を完全に覆っていなかったとして夫とともに連行され、2日間、拘束されて追及を受けた経験があります。
中には、拘束されただけでなく、ひどい仕打ちを受けた女性もいたと言います。

ラッカから逃れてきた女性(49)
「檻(おり)に入れられ野外に放置された女性は正気を失ってしまいました。
急用がないかぎりは家の中で過ごすことに決めました。」

ラッカから逃れてきた女性(49)
「これはISの通貨です。」




 

ISは独自の通貨まで作り、強制的に使わせていたと言います。
さらに、ISが市民を「人間の盾」にしようとする動きも。

ラッカから逃れてきた女性(49)
「一般市民です。
(ISと)同じ格好をさせ、見分けがつかないようにしています。」



 

住民たちがISの動きに大きな変化を感じ始めたのは、制圧作戦の開始が濃厚になっていた4月ごろ。
その様子は、ほとんど外に出ないこの女性にも目に見えてわかるようになってきたと言います。
女性がひそかに撮影した写真です。

ラッカから逃れてきた女性(49)
「ISは毎日トラックで土を運んできて、道路を塞いでいきました。
家と家との間にトンネルも掘ってました。」

商店の前にも、砂袋が積まれていました。

ラッカから逃れてきた女性(49)
「“市民を守るためだ”と言い張っていましたが、実際は自分らのためなんですよ。
トンネルを掘ったり、住宅を占拠したり、さまざまな防御策をとりはじめました。」

女性は、ISが禁じていたテレビを密かに見ていました。
自宅周辺を頻繁に回っていたISの宣伝カーと外国のニュースで知る情報は明らかに異なっていました。

ラッカから逃れてきた女性(49)
「ISはいつも“我々は勝利している”“あそこを占領した”と流していました。
“制圧作戦が始まる”というニュースが外国メディアで流れ始めると、ラッカから逃げ出そうとする人が大幅に増えたのです。」

女性と同じ建物には、複数の外国人戦闘員が家族とともに暮らしていたと言います。
市街戦が始まれば攻撃の対象となると考え、ラッカから逃げる決心をしました。

ラッカから逃れてきた女性(49)
「誰かに殺される運命なら、脱出のチャンスに賭けた方がいいと考えました。
ISは敗北して行ってほしい。
誰が来てもISよりはましです。」

 

脱出にも困難 ラッカ市民

増井
「ここから、取材にあたった森記者に聞きます。
市街地での戦闘を前に、この女性のようにラッカから脱出する人は増えているんでしょうか?」

森健一記者(カイロ支局)
「取材を続けていますと、去年(2016年)の夏以降、ラッカから隣国トルコにひそかに脱出した人たちが増えていると耳にするようになりました。
実際、何人かに話を聞いたんですが、この頃は、ISの弱体化にともなって監視の目が弱まったため、以前に比べれば逃げやすくなっているということだったんです。
ところが、VTRに登場した女性によりますと、作戦が近づくにつれ、ISは再び監視の目を強めるようになったということなんです。
また、女性によりますと、郊外にはいたるところに地雷が仕掛けられていまして、逃げるためには案内人、つまり密航業者を頼らざるを得ないんですが、密航業者が拘束されて処刑されるというケースが相次いでいたということなんです。
ISの支配が続く市中心部では、正確な数は分かっていないんですが、少なくとも10万人が残っていると見られています。
人間の盾となっている人たちが逃げ出すのは容易ではありません。
多くの人が逃げることもできないまま、戦闘の巻き添えになる恐怖を感じながら暮らしています。」

 

市街戦激化 作戦の行方

花澤
「非常に心配な状況ですね。
11日にもシリア民主軍が新たにラッカ西部に入って、市街戦は激しさを増しそうですが、この先、作戦はどうなりそうですか?」

森記者
「今日(12日)、東と西から攻める部隊は、さらに中心部に向けて前進している模様です。
6日に最終的な作戦の開始が宣言されてからまだ1週間も経っておらず、ISが支配していた他の都市と比べましても、ここまでは早いペースで作戦が進んでいるという印象を受けます。
アメリカが空爆だけではなく、地上戦でも特殊部隊が地元の部隊を支援しているということが大きいのではないかと思います。
ただ、これから市内の東部と西部では本格的な市街戦に入ります。
人口が密集している地域では、空爆や砲撃は難しくなるため、より慎重に進むことになると思います。
現地では、作戦を控えて外国人戦闘員が家族を連れて次々に南のデリゾール方面に逃れたという情報も出回っていたようです。
市街戦には時間がかかります。
シリア民主軍と有志連合は、市民の犠牲を出さないようにするため、ISの戦闘員を追い込んで、他の都市に撤退させるというシナリオも描いているかもしれません。」

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