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特集

2017年1月23日(月)

トランプ政権始動 世界はどう受け止めたか

 
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田中
「20日に就任したばかりのトランプ新大統領。
就任演説では、雇用の回復や移民対策の強化、そして経済の立て直しに取り組む姿勢を強調しました。」



佐藤
「今日(23日)の特集では、トランプ新政権はどこへ向かうのか、そして世界は就任演説をどう聞いたのか、見ていきます。
まずは、就任式からこれまでの動きをまとめました。」

トランプ政権指導 世界はどう受け止めた?

「次期大統領、ドナルド・トランプ氏です。」

アメリカ トランプ新大統領
「これからはアメリカ第一、アメリカ第一だ。
アメリカを再び強く。
アメリカを再び豊かに。
アメリカを再び誇り高く。
アメリカを再び安全に。
そして、我々はともにアメリカを再び偉大にする。」

就任式で、34回も「アメリカ」という言葉を使ったトランプ新大統領。
「アメリカ第一主義」を訴え、国益を最優先にする姿勢を鮮明にしました。

就任以降、相次ぐ抗議デモ。

久米井彩子記者(国際部)
「トランプ新大統領に女性たちの声を伝えようと、全米から大勢の女性たちが集結しました。」




「憎しみではなく、愛がアメリカを偉大にするのよ。」





アメリカのメディアは、世界60か国以上で、抗議の声が上がったと伝えています。
一方、トランプ新大統領は早速、政策転換の姿勢を打ち出します。




TPPからの離脱。
オバマ前大統領が推進した「オバマケア」の見直し。
そして、NAFTA(北米自由貿易協定)をめぐっては…。



トランプ大統領
「NAFTAの再交渉を始める。」




協定の見直しに向けた再交渉の開始について、大統領みずから初めて言及しました。
さらに鮮明になったのが、メディアとの対立。
こちらは、トランプ大統領の22日のツイッター。

“およそ3,100万人が就任式を視聴した。4年前に比べて1,100万人も多いではないか”とつぶやきました。
一方、就任式をめぐっては、主要メディアは、オバマ前大統領の時に比べて、参加者が大幅に少なかったと伝えています。

アメリカ ABC
「左が8年前のオバマ大統領の就任式、右が同時刻のトランプ大統領だ。」

これに対してトランプ大統領は、主要メディアを強く非難。

アメリカ トランプ新大統領
「うそだ、代償は大きいぞ。」




メディアとの対決姿勢を鮮明にし、人気がない指導者だという印象が広がらないよう、神経をとがらせています。


就任から4日 波乱の船出

佐藤
「ここからは、トランプ新大統領の就任式が行われたワシントン、そしてモスクワ・カイロ・北京と中継を結んでお伝えします。」

田中
「まずは就任式が行われたワシントンから、禰津記者です。
就任式から4日目を迎えていますが、現地はどのような状況でしょうか?」

禰津博人記者(ワシントン支局)
「異例の展開が続いています。
私は当日、連邦議会の議事堂で宣誓式や就任演説を取材しましたが、そのさなかも、会場からはトランプ大統領に抗議する声が散発的に聞かれ、そしてそれを打ち消そうとするトランプ支持者との間で怒鳴り合いになるなど、異様な雰囲気につつまれていました。


また、ワシントン市内では、デモ隊と警察がにらみ合い、一部が暴徒化する姿も見られました。
『分断の大統領』とも言われてきたトランプ大統領ですが、その出発から波乱の船出を印象づけています。」


主張してきた政策 どこまで実行?

佐藤
「課題山積という形ですが、禰津さんはどこに注目しましたか?」

禰津記者
「やはり、トランプ大統領が選挙期間中に主張してきた数々の政策を、どこまで実行していくかということだと思います。

トランプ大統領は就任初日から、TPP協定から離脱すると宣言したり、オバマケアの見直しに向けた大統領令に署名したりするなど、政策の転換を前面に打ち出しました。
また、外交面でも独自色を打ち出す構えです。
その代表例が、ロシアとの関係改善でトランプ氏を支えてきた幹部は次のように話します。」


上級アドバイザーを務めた ジャック・キングストン氏
「ISと共闘するためにも、ロシアと良好な関係が必要だ。
トランプ新政権は独自の考えがあり、オバマ政権やブッシュ政権のやり方に縛られないだろう。」



禰津記者
「しかし、こうしたロシアとの接近については、閣僚内でも警戒感が根強くあります。
さらに、およそ4,000人に上る政権を支える中堅幹部、実行部隊の人事が大幅に遅れているとされ、当面は政権運営をめぐり混乱が続くという指摘もあります。」


本格スタート 試される手腕

田中
「そのトランプ政権、いよいよ今週から本格的にスタートですが、この後の動きはどうなっていますか?」

「トランプ大統領は、今日この後、大統領執務室で、いくつかの政策をめぐって大統領令に署名する予定で、新たな方針を打ち出すのか注目されます。
また、議会指導部とも会談する予定で、オバマ前政権からの政策転換を掲げるトランプ大統領の手腕が早速、試されていくことになります。」

田中
「トランプ大統領が、オバマ政権から大きく政策転換する姿勢を打ち出しているのが、対ロシア政策です。
シリアのアサド政権を擁護するロシアと協力する構えを見せています。」




トランプ政権始動 世界はどう受け止めた?

アメリカ トランプ新大統領
「プーチン大統領が私を気に入っているとすれば、それは財産だ。
ただ、うまくやっていけるのかどうかはわからない。
うまくいくことを望む。」

ロシアが大幅な核軍縮に応じれば、その見返りとして、ウクライナ問題などをめぐってロシアに科されている制裁の一部を解除する考えを示唆してきました。
一方で、国務長官に指名されているティラーソン氏は、議会の公聴会でロシアに対して厳しい姿勢も示しています。



米国務長官に指名 レックス・ティラーソン氏
「ロシアは世界に認められようとする一方で、アメリカの利益を無視したことをしている。
現在のロシアは脅威だ。」




ロシアとの関係 “様子見の段階”

田中
「モスクワの石川支局長に聞きます。
トランプ大統領はロシアとの関係を改善する姿勢を見せていますが、ロシア側はどのように受け止めていますか?」

石川慎介支局長(モスクワ支局)
「ずばり様子見の段階です。
トランプ氏は、ロシアとの関係改善に意欲を示してきた一方で、起用した国防長官やCIA長官はロシアへの強い警戒感を示していて、ロシア側はトランプ氏の真意をはかりかねています。
トランプ氏は就任前に、大幅な核軍縮の見返りに、ロシアへの制裁の一部を解除する考えを示しましたが、ロシア側は核軍縮と制裁を絡めることはできないとしています。
核軍縮をめぐっては、アメリカのミサイル防衛システムなどで対立している話で、ロシアへの制裁はウクライナ情勢を受けて欧米が一方的に科したもので、まったく別の問題だとしています。
トランプ氏の唐突な発言によって、現時点でどこまで米ロ関係を把握しているのか疑問視しているものとみられます。」


国際問題で「取り引き」望むロシア

佐藤
「ロシア側は、トランプ政権との間でどんな関係を構築したいと考えているのでしょうか?」

石川支局長
「アメリカと対等な立場で『取り引き』することを望んでいます。
プーチン大統領は、アメリカが上からの目線で、民主主義のあり方や国際社会でのふるまい方をロシアに指導しているとして強く反発してきました。
それだけに、アメリカ中心の一極世界に終止符が打たれることを期待しています。」

国際政治学者 ドミトリー・トレーニン氏
「アメリカが覇権的な地位を捨て、世界の大国の1つとしてふるまうようになることが、プーチン大統領の戦略的な目標だ。」




石川支局長
「ロシア側は、まずシリアで過激派組織IS=イスラミックステート対策での共闘をめざす構えです。
そしてシリアで成果が出れば、ウクライナ問題をめぐっても取り引きして、制裁解除などロシアを取り巻く国際的な環境を大幅に改善させ、来年(2018年)3月の大統領選挙へつなげていくものとみられます。」


トランプ政権始動 世界はどう受け止めた?

田中
「続いては、中東。
トランプ新政権の政策によって、情勢が大きく変わる可能性が出ています。」




アメリカ トランプ新大統領
「古い同盟を強化し、新たな同盟を作る。
文明社会を結束させ、過激なイスラムのテロを地球から完全に根絶する。」

外交政策の最優先課題に、IS=イスラミックステートなどイスラム過激派組織の壊滅を掲げたトランプ大統領。
一方、中東和平をめぐっては、イスラエル寄りの立場を鮮明にしています。

就任式の2日後、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、来月(2月)上旬にホワイトハウスで首脳会談を行うことを明らかにしました。

そして、イスラエルが“最大の脅威”と位置づけるイランに対しては、核開発を制限する見返りにアメリカなどが経済制裁を解除するとした核合意を破棄する考えを示してきました。」


ISは一掃できるのか

田中
「カイロ支局の森記者に聞きます。
就任式の演説で、トランプ大統領はISの撲滅を最優先課題に挙げていましたが、実際のところそれが可能なのか、森さんはどう見ていますか?」

森健一記者(カイロ支局)
「ISは壊滅の方向には向かっていると思います。
アメリカ主導の有志連合は、これまで続けてきた空爆でISから体力を着実に奪っています。



しかし、特にシリアからISを一掃するには、空爆に比べてはるかにリスクの高い地上での戦闘が不可欠です。
これを誰が担うのか、トランプ政権にとっても大きな課題になります。
この地域は、各国の利害が複雑に絡み合い、ISとの戦いは、シリアの内戦と密接に絡んでいます。



今日からちょうどカザフスタンでシリアの和平協議が始まりました。
トランプ政権はシリアのアサド政権と反政府勢力、それに両者の仲介を行っているロシア・トルコなど、多様な相手とどのような関係を築いていくのか。
場当たり的ではない長期的な戦略を立てる必要があります。」


キープレーヤーはイスラエルとイラン

佐藤
「トランプ政権の誕生で、中東情勢の鍵を握るのはどこの国になるでしょうか?」

森記者
「キープレーヤーは、イスラエルとイランです。

トランプ大統領は、イスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移転させると公言するなど、イスラエル寄りの立場を鮮明にしています。
中東和平でバランスを欠くことになれば、イスラエルを敵視する周辺国が反発を強めることは必至です。
そのイスラエルが最大の脅威だとするイランに対して、トランプ政権は核合意の見直しに言及しました。

イランは再交渉には応じないとけん制し、合意が守られないようなら制限していた核開発を元に戻すと警告しているんです。
トランプ政権の出方によっては、イランの核開発問題という中東の火種が再燃する可能性もあります。
中東の指導者たちはトランプ政権の出方を見極めていくことになります。」




トランプ政権始動 世界はどう受け止めた?

田中
「最後は、中国です。
トランプ大統領は、選挙期間中から、中国に対して厳しい姿勢を示し、対立が深まる可能性も指摘されています。」



アメリカ トランプ新大統領
「中国は最低の『為替操作国』だ。」

アメリカ トランプ新大統領
「中国は南シナ海に巨大な要塞を築き、アメリカを出し抜いている。」

大統領就任前から中国を「為替操作国」に認定して、高い関税をかけると主張するなど、強硬な姿勢を見せてきました。

南シナ海での人工島の造成や、北朝鮮の核開発問題への対応でも中国を批判。

台湾問題をめぐっては、中国の対応次第では「1つの中国」の原則を見直す可能性を示唆しています。





緊張に包まれる中国政府

田中
「中国総局の高木記者に聞きます。
トランプ新政権の対中強硬姿勢、中国政府はどう受け止めていますか?」

高木優記者(中国総局)
「中国政府内は今、かつてない緊張に包まれています。
中国にとって核心的利益に関わる台湾問題に本当に踏み込んでくるのか、強く警戒しています。
『1つの中国』の原則をねじ曲げるようなことをされれば、武力行使も辞さないというのが、中国の歴代指導部がとってきた基本姿勢だからです。
同時に強く懸念しているのは、アメリカとの『貿易戦争』に陥るような事態です。
貿易問題で真っ向から対立すれば、景気が減速している中国経済への打撃は避けられません。
経済の安定は、国民の不満を抑え、共産党の一党支配体制の正当性を維持する上で必要不可欠なだけに、習近平指導部は非常に深刻にとらえているとみられます。」


トランプ政権の出方探る中国

佐藤
「中国としては、今後トランプ政権にどう対応しようとしているのでしょうか?」

高木記者
「経済大国同士、ウィン・ウィンの関係を発展させていくことで、台湾や南シナ海をめぐる問題で対立が先鋭化する事態を未然に防ぎたい考えです。
中国外務省報道官は、新政権発足後、最初の会見となった今日、次のように呼びかけました。」

中国外務省 華春瑩報道官
「中国とアメリカの健全で安定した発展は、両国やその国民の利益にかなうものだ。
核心的な利益や重大な関心事を互いに尊重し、建設的な方法で意見の違いに対応すべきだ。」



高木記者
「中国では今年(2017年)後半に、5年に1度の共産党大会が開かれ、指導部が大幅に入れ替わる見通しです。
政治的に敏感なこの時期に、習近平指導部は外との摩擦は避けたいわけですが、弱腰ととられるような態度もとりにくいというジレンマにあります。
当面は、台湾の蔡英文政権に対して、アメリカ側に接近しないよう圧力を強めながら、外交・経済両面で、トランプ政権の出方を慎重に見ていくことになりそうです。」


トランプ政権始動 世界はどう受け止めた?

佐藤
「ここまで、4か国と中継を結んでお伝えしてきました。
トランプ政権の外交、田中さんはどう見ていますか?」

田中
「これはアメリカ外交の大きな方向転換ですよね。
アメリカが内向きになることで、世界情勢が大きく不安定化するおそれがあると思います。

トランプ外交の最大の柱は、就任演説でも強調していた『アメリカファースト=アメリカ第一主義』ですね。
自国の国益を重視するのは当たり前なんですが、ポイントは、アメリカの国益のみを重視する。
今までやってきたような、世界のリーダーとして世界共通の問題の面倒を見るのはもうやめますよ、という主旨なんですね。
具体的には、安全保障では『単独主義』。
経済では『保護主義』へと大きくかじを切っています。
その結果、これまでアメリカが主導してきた国際的な枠組みやルールが大きく後退し、そのスキをついてルールを破ろうという国や勢力が増え、放置されることが懸念されますね。

もう1つのキーワードがこちら、ビジネスマンらしく『取引』です。
これまで『自由と民主主義』などの価値観で結ばれてきた同盟関係よりも、重要なのはアメリカの利益。
それを最大限に引き出すために、政策ごとに個別の国と取り引きをするというアプローチなんですね。
中継にあったロシアとの関係は、まさにそういうところだと思います。
またヨーロッパでは、EUやNATOから距離を置く一方で、EU離脱の独自路線を選んだイギリスとは同志のような関係で連携を強化していこうと。
だからまず、メイ首相と今週会談する予定なんですね。」

佐藤
「そうなると同盟国・日本の対応というのも難しくなりそうですね。」

田中
「これまでの同盟関係とは全く違う、『取引外交』に対応せざるをえないと思います。
もちろん、一方的な要求をすべて受け入れるわけにはいかないので、日本としてどんなカードを使えるのか、そしてそれをどう最大化できるのか、厳しく問われることになります。
また同時に、同盟関係の重要性をトランプ政権に訴え続けていかなくてはなりません。
もう1つ、懸念材料は、トランプ大統領が不測の事態や危機にどう反応するのか。
一貫した外交政策が見えないのと、トランプ氏の性格上、どう反応するのかが見えず、事態が一気に緊張する可能性があるんです。
例えば北朝鮮の挑発行為や、東シナ海での不測の事態を想定して、これまで以上に平時からの緊密な意思疎通が重要になってくると思います。」

佐藤
「今後のトランプ政権の行方、注視していきたいと思います。」

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