にっぽん縦断 こころ旅
前略 こころ旅 毎回楽しく拝見しております。
なにげない田舎の風景の中を、こころ旅チームの自転車が列をなして走る映像は心が和みます。また正平さんが、
さて私のこころの風景は、生まれ育った気仙沼・大島の「龍舞崎(たつまいざき)にある小さな祠(ほこら)」です。
小学生1~2年生頃の思い出です。(昭和40年代前半)
父は遠洋マグロ船に乗っており、家に帰るのは1年に1回でした。母は3人の子育て(兄・私・妹)しながら、祖母と畑仕事もして家を守っていました。
板一枚下は地獄といわれる船の仕事は、時化(しけ)で命を亡くしたり、病気になってもすぐに治療できません。
母は父の航海中に、大漁と安全・無事を祈って参詣(サンケと言ってました。)に行っていました。島にある数ヶ所の神社や氏神様など歩いて回るのです。1日がかりでした。
親戚のおばさんと私も一緒に回ったことがあります。おしゃべりしながら母と歩くのが嬉しくて、遠足気分でした。
各所の神社を参拝しながら島の北の方から歩き 最後は、南端の龍舞崎の松林にある小さな祠(ほこら)でした。
松の木の根本にある小さな祠(ほこら)、「こんな小さな所にもお参りするんだー。」と思った記憶があります。
東日本大震災の時、実家は津波が1階まで押し寄せました。
家族は無事でした。しかし母は震災の翌年、突然の病で帰らぬ人となりました。お別れを言う間もなく、一晩のできごとでした。父の無事をひたすら祈っていた母が 先に帰らぬ人となるとは…。
小さな祠(ほこら)に手を合わせていた母の横顔・サワサワと吹く松風の音・海の青、今でも思い出す私のこころの風景です。年に1度は帰省していますが 忙しなく、何年も龍舞崎には行っていません。今は橋ができ、便利になりました。正平さん、松林の中の小さな祠(ほこら)を見て来て頂けませんか。
探しても見つからない場合は、灯台のところから太平洋を見せて頂けるだけでも幸いと存じます。
よろしくお願いします。
草々
大分県 松本 浩子(62歳)
P.S.
なんせ50年以上前の記憶です。
小さな祠(ほこら)は、灯台に向かう遊歩道の中程・右側にあったように思います。
違っていたら、すいません。
父はおかげ様で長生きしてくれてます。
最後に乱筆を、お許し下さい。
大分県豊後大野市
松本浩子さん(62歳)からのお手紙