にっぽん縦断 こころ旅
「私の忘れられない風景」は何と言っても「鷹の巣(たかのす)」温泉のつり橋です。昭和32年小学校4年生の秋遠足で5km位の道のりを歩いて行きました。途中から米沢街道に入り、昼間でもうす暗い杉林をみんなだまって歩いて行きました。杉林を30分位歩いてしばらくして、パアーと明るい陽差しの所に出ました。大きな川とつり橋が見えました。そこが初めて見る鷹の巣温泉のつり橋でした。水面ははるか遠くに見え、橋はユラユラゆれていて「ワァ~おっかないよー」と口々に言うのが聞こえました。何人もの同級生は橋を渡って行きました。
私がつり橋がこわいと思う理由は単にゆれるからだけではないのです。5歳の秋ころ、近所の年上のお姉さんたちと自宅近くのつり橋で遊んでいて、足を踏み外し、浅い水面に落ち額を石で切り、血だらけになって家に帰ったら母からひどくしかられたことを思い出したからです。
その後、中学校2年生の夏休み、同級生6人と自転車で鷹の巣で行くことになりました。やっぱりつり橋がこわくて一人では渡れず、みんなについて行けずにいると“大丈夫だよ”と手を取ってくれ、無事向う岸までたどり着けました。
ず~と片思いしていたY君に初めて手を握られ、ボォッーとしている間に歩いて渡り切ってしまいました。
私の初恋のY君のことはナイショです。今も誰にも話してないことです。楽しい想い出です。
四月九日
埼玉県春日部市
片岡菊江
女性
71歳
埼玉県春日部市
片岡菊江さん(71歳)からのお手紙