にっぽん縦断 こころ旅
正平さん、こんにちは。私は正平さんと同じ誕生日です。なので 勝手に親近感がわき、毎回 正平さんの旅が気になってしまいます。
今回、山梨に来てくださると知り、お手紙を書くことにしました。
私の心の風景は、韮崎北東小の西を南北に通る農道から見た田園風景です。私は小学校1年生まで穴山小という全校生徒120人の小さな小学校で過ごしました。全校生徒が顔見知りのようなアットホームな小学校だったのを覚えています。
2年生になり、藤井小、中田小、穴山小の3校が統合して北東小になりました。児童数550人、1学年は3クラスになりました。徒歩で通学できる距離ではなかったのでスクールバスで30分かけての通学となりました。大きくて新しい校舎。
たくさんの友達や先生方。校庭も広くて、遊具もピカピカ。
でもなぜか登校するとドキドキしてしまい、授業中もなんとなく落ち着かない日が続きました。小学2年生の私は、まだよくわかっていなかったかもしれませんが、友達はできるのか、ここでやっていけるのか、という不安がとても大きかったのだと思います。
そんな私を癒やしてくれたのは、毎朝、スクールバスの窓から見る風景でした。七里岩を下り、一直線の農道に入るとひたすら田んぼ。新校舎の建設の関係で、2学期からの通学だったので、8月終わりだったと思います。朝の日射しを浴び、わさわさと揺れる緑の稲。このまましばらく見ていたいな、と思っていると あっという間に学校に着いてしまう・・・。朝のささやかな楽しみでした。秋になると穂が実り、田んぼは黄金色になります。その一面の黄金色のきれいなこと・・・。秋の澄んだ青空にもよくマッチし、私は心を癒やされました。秋から冬、春、夏・・・
小学校を卒業するまで、毎朝、バスから見る風景を楽しみました。
小学校を卒業してから 20年以上が経ちました。今は2歳の娘の子育てをしています。今でも、ふっとあの田園風景を思い出すと じわーっと心にくるものがあります。生きていると環境の変化 周囲との関係、たいへんなことが沢山あります。きっとこれからもあると思いますが、バスから見た風景が、そっと寄りそってくれているような気がします。
正平さん、どうかお身体に気をつけて、旅を続けて下さい。
山梨県韮崎市
皆川佳織 女 36歳
山梨県韮崎市
皆川佳織さん(36歳)からのお手紙