にっぽん縦断 こころ旅
白馬村 青鬼(あおに)集落
正平さん、こんにちは。私は今、目の前に安芸の宮島、厳島神社を見ながら おたよりしています。
夫はここ、瀬戸の海のそばで育ったせいか山好きで、学生時代から山登りを楽しんでいました。
結婚以来、街中育ちの私を 度々信州の山々に連れていってくれました。
夫婦であづみ野をレンタカーで走り 途中、アルプスの山々や田植えに勤しむ人達を眺めながら、田んぼのそばに車を止めて、コンビニのおにぎりをほおばるのは至福の一時でした。
そんなある日 通りがかった白馬村で「青鬼」と書いてある 小さな青い看板が目に入り、鬼でも出るのかとおもしろい名前にひかれて 入り込んで行きました。
曲がりくねった山道を くねくねと登っていくと、そこには遠くに北アルプスの山々を望む小さな集落がありました。
ひとっ子一人おらず、だんだん畑の真ん中に白い花をつけた大きなコブシの木がありました。
そばの小道沿いにはうす紫のシラネアオイの群生があり、そこにたたずむ小柄なおじいさんと、珍しいシラネアオイの花の話をしました。遠くに用水路をチョロチョロと流れる水の音が聞こえ、本当に心和むひとときでした。
3年前、訪ねてみると、その前年に地域を襲った大きな地震のため、土砂崩れがあり、集落には入れませんでした。
その後、あの青鬼の集落はどうなっているのかなあと、遠くから、美しい日本の原風景のようなあの集落を想います。
正平さん、あの地を 一度訪ねてみて下さい。
永井和子
広島県廿日市市
永井和子さん(67歳)からのお手紙