にっぽん縦断 こころ旅
「父のいる場所」
私のこころの風景は宮崎市清武町黒北の黒北発電所です。
昭和24年に生まれてから小学校4年まで発電所のすぐ近くの社宅に住んでいました。
発電所勤務の父は、朝「行ってきます。」と仕事に出かけます。
といっても仕事場は目と鼻の先 通勤時間徒歩1分、お昼になると食事に帰ってきて、また仕事場への毎日でした。近いので昼夜問わず必要に応じて仕事をしていたように思います。
家からは仕事をしている父の姿が垣間見えて手を振ったりしていました。
部外者は発電所構内に入ることはできませんでしたが、時には中に入れてくれて、水が電気になる仕組みや電気の便利さについて説明してくれました。
子どもの私にはよくわかりませんでしたが、ドイツ製の真っ黒なタービンの回っている姿や音、その勇壮で立派な姿は父の姿と重なって見え、私の誇りでした。
(横置きでタービンの見える発電所はめずらしいのではないでしょうか)
その後、父は何度か転勤、48歳の若さで病気で亡くなりました。
私は結婚して山口へ住むようになってからも、宮崎へ里帰りすると、黒北発電所へ行きたくなります。
今見ると本当に小さなかわいい発電所です。
現存する発電所では 九州最古で国の登録有形文化財になっているようです。現在も動いていること、文化財になったことは 父と私にとって何より嬉しいことです。
正平さま、古くて小さくて現役の(父の)発電所ぜひ見てきてください。
山口県周南市 市村 和子 70歳
山口県周南市
市村和子さん(70歳)からのお手紙