にっぽん縦断 こころ旅
正平さん、スタッフの皆さん、チャリオ君
いつも素晴らしい出会いと感動をありがとうございます。
さて、私が行って頂きたい心の風景は、宮城県松島の海岸から小さくない島に架かる赤い欄干が目印の「縁切り橋」です。
もう40年近く経ちますが、仙台市の大学に行っていたころの話です。私の大学と近隣の女子大でグループ交流があり、その中のATさんという女性に一目惚れしてしまいました。私は、色々と理由を見つけ、言い訳を言って、何回か彼女と二人だけで逢うことができたのです。彼女が気遣ってくれて、私に付き合ってくれたのでしょう。二人で行ったところはそれぞれに思い出深いのですが、一番印象に残っているのは、二人で最後に行った松島海岸です。そして、松島海岸から小さくない島に架かる橋を二人で渡ったのでした。
しかし、それからしばらくして・・・・彼女から「さようなら」の手紙をもらってしまったのです。私はATさんに夢中になり有頂天になっていたのでしょう。私はATさんを彼女と思いたかったのですが、ATさんにとって私はもちろん彼氏ではなく、知人・友人の中の一人だったのです。それはお手紙をもらってから悟ったのでした。小さな私の胸は痛みましたが、「さようなら」を言った彼女のほうも辛かったのかなと思います。
私は、男子高校に通い質実剛健をモットーに勉強しかしてこなかった人間であり、また当時、若かったせいもあって、女性の気持ち・女心、ましてや心の機微などを理解する術を持たない未成熟な人間だったのだろうと、今、しみじみ思い起こしているところです。辛い思い出ですが、良い思い出です。
瞳を閉じればハッキリとその時の風景が心に浮かぶのですが、悲しいことに、その風景は橋の欄干だけが真っ赤で あとは色がない白黒写真のようなものなのです。行ったとき雪が降っていたのせいなのかも・・・・
地元ではこの橋は元々「出会いの橋」と言われていて、だから二人で行ってみようと思ったのでした。しかし、私にとっては誰が何と言おうと、絶対「縁切り橋」なのです。
正平さん、スタッフの皆さん、チャリオ君
元々、松島は日本三景の1つで、それはもう美しいところです。「縁結びの橋」もあります。出会いと感動もあるんじゃないかと思います。
私の代わりに行って色のついた美しい風景を見てきていただけませんか。そして「縁結びの橋」を渡ってください。それに、カモメの声や波の音、また、潮の香り、牡蠣の匂いなども併せて伝えていただければ大変、有り難く思います。
最後になってしまいましたが、松島海岸やATさんの故郷・岩手県山田町をはじめ、東日本の海岸線を中心とした多くの被災地の皆さま、今までにも増してさらなる復興を遂げますよう、心より深く深くお祈り申し上げましてやまない次第です。
栃木県宇都宮市
木村 仁(じん) 59歳
栃木県宇都宮市
木村 仁さん(59歳)からのお手紙