にっぽん縦断 こころ旅
正平さん、スタッフの皆さん、何時も心が癒やされる素敵な番組ありがとうございます。
さて、私のこころの場所と風景は、北海道函館市中野町にある あいす118というソフトクリーム屋さんにあるベンチとそこから見える飛行機が離陸する風景です。
昨年の6月頃、突然妻が鎌倉へ旅行に行きたいと言いました。今思えば会社を退職して直ぐにでも旅行に行けば良かったと後悔しています。8月に夏休みが取れたら旅行に行く約束をしました。3日間だけでしたが8月の中旬に休みを取ることができました。しかし、8月に入った頃から 歩くのも大変な程、妻は体調を崩してしまい、旅行は中止になりました。妻は数年前から癌を患っていました。
旅行に行く予定だった夏休みの初日の朝、妻が「あいす118」のソフトクリームを食べに行きたいと言いました。内心 私は妻とドライブデートが出来るのは これで最後になってしまうのではないかと不安に思いながら、いつもより車をゆっくり走らせ向かいました。
その日はとても良い天気でした。現地に着いて ソフトクリームを買い 妻の手を引いて外にあるベンチに座り のんびりソフトクリームを食べました。その時、離陸する飛行機が見えました。「体調が良くなったら あの飛行機で必ず鎌倉に行くよ!」という私の言葉に妻は静かに微笑んで ゆっくり うなずきました。その時の妻の優しく穏やかな表情は私の記憶に深く刻まれました。
それから約2週間後、容体が急変し 緊急入院することになりました。昨年大学に入学したばかりの息子の卒業式に、元気で出席することを目標に頑張っていたのですが、その願いも叶わず9月の中旬に天国に旅立ってしまいました。後に残されたのは、悲しみと後悔と治療費などの借金、そして知り合ってから34年もの間、彼女から沢山の幸せを貰ったのに、最後まで妻に何もしてやれなかった不甲斐ない自分でした。
年が明けて今年の春になり、妻の遺影に あのソフトクリームを供えたくなりクーラーボックスに保冷剤を沢山詰めて出かけました。
しかし、途中で昨年のことを深く思い出してしまい、自分でも驚くほど涙が止まらなくなり運転も覚束無くなりました。休み休み向かいましたが現地に着いても 一人のおやじが号泣しながらソフトクリームを買うのは とても恥ずかしいと思い、その日は諦めて引き返しました。数週間後 又行こうと思ったのですが、クーラーボックスに保冷剤を詰めている時点で又 涙が止まらなくなりました。私にはもう少し時間が必要なようです。
そこで正平さんにお願いがあります。妻と私の代わりに妻が好きだった モカミックスソフトクリームを食べに行って貰えませんか。
ソフトクリーム屋さんから見る風景は、函館空港の滑走路の東側先端を手前にして津軽海峡を望むことができます。天気の良い日は下北半島も はっきり見えます。陸側は小高い山々が連なるロケーションの良い所です。今回の旅で道南方面へ行く予定がありましたらよろしくお願いします。
これからも、この素敵な番組が末永く続いて行くことを心から願っています。
北海道函館市
澤村昭史(56歳)
北海道函館市
澤村昭史さん(56歳)からのお手紙