にっぽん縦断 こころ旅
正平さん、スタッフの皆さん、チャリオ君、雨の日も風の日も自転車旅 ご苦労様です。
毎日楽しく拝見しております。この度訪ねて頂きたい私の心の風景は、確かに行ったのに、ほとんど記憶に残っていない大分県日出町(ひじまち)の糸ヶ浜海水浴場です。
それは35年前、私が高校三年生の夏休みの事。
当時交際していた彼から海へ行こうと誘われました。場所は彼の家に近い糸ヶ浜海水浴場です。家族とよく海には行っていましたが、そこは初めてで、彼と過ごす初めての夏だった事もあり、ウキウキした気持ちで大分市から大神駅(おおがえき)まで電車で行きました。当時大神駅は小さな無人駅で、外に出ると彼が原付スクーターで待っていました。勝手に海まで徒歩圏内だと思い込んでいた私は??・・・彼が言うには、「歩くと相当遠いョ。裏道を通ればほとんど人が居ないから大丈夫!!」とのこと。原付が二人乗り禁止である事を知っていたので少し悩みましたが、すでに陽が高く、ジリジリ暑い中を長時間歩くのは辛いなぁと思い、彼の言う通り私が前に乗り、後ろから彼がハンドルを握る形で二人乗りをして海に向いました。竹やぶや畑の脇を通る様な道でしたが、たまに遠くでエンジン音が聞こえると、バイクから跳び降り、車が通りすぎるとまたバイクに乗り・・・を繰り返し、あんなに用心していたのに、待ってましたとばかり、ひっそり隠れていたパトカーに見つかってしまったのです。
「僕が無理矢理乗せたから、彼女は悪くない!」と彼は一生懸命私を庇ってくれたのですが、結局二人ともパトカーの後部座席で事情聴取です。名前や住所・学校名・学年・クラス等を聞かれたと記憶しています。優しくお説教をされた後解放され、再びトボトボ海へ。そこからは警察から家や学校に連絡が入っていたらどうしよう。今後の進路や親の反応が心配で頭の中が真白でした。
真青な空、濃い緑、眩しい太陽、セミの声、と状況は何となく憶えているのに、海はどんなだったか、どこをどう帰ったのか?ウソの様に記憶が飛んでしまっています。
大好きだった彼とは、駅での別れ際「また連絡するね」と交わした会話が最後になりました。
幸い警察から家や学校に連絡は無く、私だけの切ない思い出として30年間ひた隠しにしていた「パトカー事件」を唯一話していた主人が私の家族に暴露してしまいました。
今となっては笑い話ですが、ホロ苦い恋の思い出は、いくつになっても忘れられないものです。あの日通った裏道は、きっと変わってしまっていて辿るのは無理かも知れませんが、どうか大神駅から糸ヶ浜海水浴場まで走って頂けないでしょうか。季節は違いますが、あの日の風景を思い出しながら、遠い青春の耀きをもう一度味わいたいと思います。
今後の皆様の旅の安全を心からお祈りしています。
平成二十九年 秋 清島 由美
東京都小金井市
清島由美さん(52歳)からのお手紙