震災後、がれき処理の仕事に就いていた弘さんは、8月に突然倒れ、亡くなりました。
今もずっと思いつづけて９年目。どうして震災があったのか、どうしてこの年になってといつもふり返っています。
子供達、そして孫も大きくなり、これから私の人生と思っていた矢先、二人で自由に好きなことをして人生をおくるつもりだったのに、今一人になってどうしてどうしてと悔やんでいます。これは私の運命と自分に言い聞かせております。でも主人が生きてさえいればとまた、淋しさがこみあげてきます。私は死ぬまでこうして思うのだろうかとさえ思っています。
９年、長いようで短い日々でした。少し離れた山の方に家を建て今７才の孫と暮らしております。主人はこの孫を見ずに亡くなりました。夜、星空を見上げ、孫に一番光ってる星は「じじが見ているよ」とおしえてます。孫は、「じじここだよ」とさけんだりしています。なんだか、ほんとうに主人が合図をしているかのようで嬉しく感じています。
復興道路もあちこちで一生懸命作っており、我家の前もどうなるのだろうと思う位、道幅も広くつくっております。
住み慣れた土地を離れましたが、今どうにか慣れてきました。
７才の孫を一人前になるまで元気でいなくちゃと思う毎日です。
まもなく７年も経とうとしてる歳月。１か月前のできごとのようにしか感じられず、日々の早さに驚いています。
お父さんと別れて、古希を迎えた年になりました。貴方の亡くなった年齢にまもなくなる自分に驚いています。
私はまだまだしたいこと、やってみたいこといっぱいあるのに残念ですね。
２人でこれからのこと、いろいろ夢もあり希望もあったのに、今１人ぽっちになったら全部あきらめにかわりました。
地元で復興のため、一生懸命頑張っている様子がわかりますが、「まだまだ」という言葉が一番合うようです。
工事も予定より３年くらい遅れているとのこと、どう変わっていくのか想像さえできません。どうしてわざわざ造り直すの？と思うところもたくさんあります。
無駄を直したらずいぶん違うだろうにと思うのは、私だけでしょうか？
震災からまもなく３年。お父さんと別れて暮らしてまもなく３年たちます。
ついこの間まで全部が夢なんだと自分に言い聞かせ、「私も迎えに来て」って思っていました。
この頃、フッと、「あれ、やっぱり死んでしまったんだなぁ」と思うようになり、淋しさ空しさ悲しみがあふれ、１人で涙がボロボロ流れ、ワァワァ泣いて、どうして一難去って一難、残酷な事ばかり起きるんだろうと涙が止まりません。
お父さん、貴方は私と結婚する前から漁船員として働いていました。１年に１度帰り、１か月位家に帰り、また遠い海原へ私達家族の為、漁場を捜し、オーストラリア、アメリカ、ブラジル、ニュージーランド、シンガポール、まだまだ言いあらわせない位の所に行ってたんだね。帰ってくると、「みわ子、シンガポールもいいけどニュージーランドが綺麗だぞう、お前を連れて見せるからな」って１０回も口で言ってたじゃない。だから私、「もう見飽きた」って笑ったね。
震災の１年前、８人の友達とグアム旅行に行って、珍道中で楽しかった。あの時、幸福の鐘の下で２人で鐘を鳴らしたじゃない。
幸福だったかしら？
幸い、３人の子供に恵まれ、それぞれパートナーも見つけ、孫にも恵まれ、ホッとしている最中で、震災後、「みわ子、皆んなゼロからスタートだ。とりあえずキャンピングカーを買って、日本一周しよう。好きな場所に車を止めて、俺は魚を釣る、お前は好きな料理を作ればいい。最初、青森から出発か、九州から行くか」って、二人で震災のつらさをわすれようと話してたじゃない。
貴方は大動脈りゅう破裂の病いもしらず、一瞬のうちにこの世を去ってしまった。
私は、ただ驚きで声も出なかった事を思い出します。
お父さん、時々、夢の中に出てきて私の話を聞いてください。
沢山、沢山、山程のお話しがあります。
震災１年後、女の子の孫が生まれました。貴方の生まれ変わりのようで、まもなく３月で２才になります。
名前は姫菜、毎日忙しく、振り回されています。
きっと抱っこしたら毎日散歩につれて歩き、メロメロだったでしょうね。
迎えに来てねってお父さんに手を合わせたけど、この子が成人するまで頑張って育てます。
だからそれまで側にいけません。
お父さん、聞こえますか？
一言で言い表せない感謝の気持ち、大きい声でいいます。
ご苦労様でした。
世界一幸福でした。ありがとうございました。
生きてる時、ありがとうって言えなかった今もずっと悔やんでいます。
たぶん一生悔やむんでしょうね。
何度も言います。
貴方に届けて下さいと。
