自宅から逃げる途中、津波に巻き込まれて亡くなりました。
どんな言葉で今の気持ちを伝えればいいんだろう?
「辛くない」と言えば嘘になるけど、もっと話がしたかった。もう一度、父と一緒にカメラを構えたかった。
あの日から5年。泣きたいわけじゃないけど涙は溢れてくるし、どうして生きているんだろう?って考える。
答えは見つからないけど、独りになると考えずにはいられない。
「お前らしく生きればいい」父さんなら、こう言うのかな?
答えは見つからなくても、「愛する人を守るために生きていくよ」そう言い聞かせ、もうちょっと頑張ってみるね!
心の荷物はあの時のままだけど、今日も生まれたての朝日をいっぱい浴びて、新しい一歩を踏み出すよ!
忘れない。言うことを聞かず叱られた時のことを。運動会で精一杯送ってくれた声援を。それからあの日、目の当たりにした無言の父の姿も。
辛いとは言いたくはない、だけど、やっぱり辛い。
いつも笑顔でいなくてもいい、いつも元気でいることもない。泣きたい時は涙すればいい。
そう思ったら、なんだか力が抜けた。
だからかな、今なら素直に父の死を受けいれられる。
最期に言いたかったことはわからないけれど、ただ、「自分らしく生きろ」そんな一言が聞こえてきそうな感じです。
そして今日からは、前を向いてこう言えるよ。
「ありがとう」って、愛する人の幸せを祈りながら。
お父さん、今頃何してますか?母との二人暮らしが始まって5回目の春を迎えようとしています。
幼い頃から病弱で、いつも心配ばかりかけていましたね。
それに、あの日の出来事は、正直、今でも辛いです。でも悔し涙を流すことはやめました。いつまでたっても安らげないですもんね。
消すことはできない記憶だけど、津波にのみ込まれた町が新しく生まれ変わろうとしているように、私も新しい道へ、その一歩を踏み出せましたよ。
復興住宅へ入居できましたし、北茨城市の職員として働くこともできました。
そしていつの日か、一緒にカメラを構えた思い出の場所で写真を撮りたいと思えるようになりました。
だからもう大丈夫!今まで心配かけた分、必ず幸せになりますから。