NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第40回

生物学と人類の未来

  • 生物基礎監修:東京都立国分寺高等学校教諭 市石 博
学習ポイント学習ポイント

生物学と人類の未来

  • 海城中学高等学校 理科教諭 関口伸一さん
  • 川には自然浄化作用がある

「生物基礎」のシリーズも、いよいよ最終回です。
今回は、これまでの学習の流れを振り返りながら、海城中学高等学校 理科教諭の関口伸一(せきぐち しんいち)さんに生物学を学ぶ楽しさについて聞きます。

関口さんは、生物の面白さは「飽きない」ところだと話します。


関口さん 「私自身が生物を好きになった理由としては、中学生の時に自由研究で川の性質を調べたということがあります。川の上流の方から下流に行くにつれて、下水等が入ってどんどん汚くなっていくと思っていたんですね。」


ところが有機物の指標であるCODを見ると、上流から下流に向けてきれいになっている区域があったといいます。
そしてその理由を調べていたところ、川には「自然浄化作用」というメカニズムがあることを知り、それに感銘したことで生物や自然環境に興味を持つようになったのだそうです。

関口さんは、この「生物基礎」で、それぞれの研究者が生き生きと自分の専門分野を話しているのが印象的だといいます。

この番組ではこれまで、たくさんの研究者が研究や生き物の面白さを分かりやすい言葉で説明してくれました。

ポイント1 生物の多様性と共通性
  • 細矢剛さん
  • 菌類を中心に種類や生き方を調べている

国立科学博物館 植物研究部 細矢 剛さん
「よく私が思うのは、生物は多様だからいいんだと。多様なことというのは、ある意味、生物の世界にとって宝だというふうに思います。そういう意味で、多様であることそのものに価値があると、私は考えています。それを学ぶための一つのきっかけとして、その生物というのが材料になるのではないかと思います。」

  • 大西康夫さん
  • 微生物がつくり出す物質を医療分野へ応用する研究

応用微生物学研究者 大西 康夫さん
「とにかく微生物は多様で、いろいろな種類のものがいて、そういったものがたくさん、独特な性質を持っているというのが微生物を研究する中で魅力の一つだと思います。微生物だけではなくて、生物全般に通じるような、新しい概念につながるような、新しい発見があったというときには、これはおもしろいぞと。」

  • 園池公毅さん
  • 生理学の視点から光合成を研究

植物生理学者 園池 公毅さん
「植物・動物というのは、生き方からして案外 対照的で。動物は環境が変わっても、いかに自分の体を一定の状態に維持するかというのが、動物の生きていくうえでの戦略なんですね。植物はそれに対して、まわりの環境が変わったときには自分の体の中を変えて生き延びていく、それが戦略なんです。むしろ自分を積極的に変えていく。そういった意味で、光合成はすごくおもしろいんじゃないかなと思います。」

  • 地球にすむ多様な生き物
  • 地球にすむ多様な生き物
  • 地球にすむ多様な生き物

地球には、多種多様な生物たちがすんでいます。
生物学では、その多様性とともに、共通性についても探究してきたんですね。

  • 共通性:細胞
  • 共通性:エネルギー
  • 共通性:DNA

生物における共通性。

それは、どの生物も細胞からできていること。
エネルギーを利用して、さまざまな生命活動をおこなっていること。
そして子孫を残すため、自分と同じ形質を受け継いでいく遺伝情報を、DNAとして持っていることです。

  • 武村政春さん
  • DNAや巨大ウイルスの研究をおこなう

DNA研究者 武村 政春さん
「DNAの複製というのは正確さが命で。いかに正確に親の情報、遺伝子を子に渡していくかというのが、至高の目的だと思うんですね。それで、その生物は何回も何回もDNAを複製して生きてきたわけなんです。正確に、正確に、伝えようとしている。でも正確に伝えきれない部分もあって、それはやっぱり子孫につながるんですね。ただ、そういうのがあるからこそ、我々生物は進化してきたので。だから、表裏一体ですね。エラーがないのはいいことなんだけれども、でもエラーがないと進化はしなかったはずなので。その両方のバランスをうまくとりながら、我々はDNAを複製してきたのかなと思います。」

  • 胡桃坂仁志さん
  • 生物が生きるメカニズムを調べる

構造生物学者 胡桃坂 仁志さん
「最初は受精卵1個で、そこに入っている情報、つまり設計図は一緒なわけです。その同じ設計図なのにもかかわらず、目ができたり皮膚ができたり。実際はDNAからタンパク質がつくられて、そして生物ができて生命が生きる、生きている。ものすごく不思議なことなんですよ。で、実際は何もわかっていないに等しい。なので、何を明らかにするのかというと、どうやって生物が生きているのか。そういうことを知りたいんですね。」

  • 多様性について語る関口さん

関口さんは、地球上のそれぞれの多様な環境に生物が形を合わせて進化していったことで、多様性が生み出されているといいます。
そして細菌のような小さなものからゾウのように大きい体を持った生物まで、全てに共通していることは、DNAがその遺伝情報となっていることだといいます。

関口さん 「自分自身が細菌などを見た時に、自分と同じものと思えないと思うんです。でも実は生まれてきた起源は変わらず、DNAを設計図として生きてるという点で、私たちと共通していることがすごいことだと思っています。」

ポイント2 体内環境を保ち守るしくみ
  • 変化の厳しい環境にさらされて生きる
  • 変化の厳しい環境にさらされて生きる
  • 変化の厳しい環境にさらされて生きる

私たちは、変化の激しい環境にさらされて生きています。
そのため、体の中ではさまざまな器官がはたらいてくれています。

  • 坂井建雄さん
  • 解剖学の立場から腎臓のはたらきなどを研究

解剖学者 坂井 建雄さん
「体の中の細胞はそれぞれ一生懸命、生きよう生きようと努力しているんですね。体内環境が変わると、その大前提を壊されてしまうようなものだから、生きていけないんですよ。液の濃度を変えてしまうと、それだけでも影響を受けるし。それから液の成分が変わると、影響を受ける。細胞というのは本当にけなげで、かわいそうなくらい繊細なもので。人間の体が生きているということ、そしてそれを細胞がつくっているということ。その意味を考えたときに、どうしても細胞が生きていくための前提条件というのを考えますし、そこに体内環境の役割というのがある。」

  • 体内環境を保つしくみ
  • 生物は細胞の中の状態を一定に保つしくみを持つ

私たちの体内環境は、常に安定した状態に維持されています。

たとえば、暑さ・寒さの厳しい環境でも体温を一定に保つしくみや、体内の細胞の状態を一定に保つしくみがあります。

  • 肝臓
  • 腎臓

そのために重要なはたらきをする体液は、肝臓や腎臓などの器官が、その量や成分を調整しています。

  • 自律神経系
  • ホルモン

また自律神経や、血液中に分泌されるホルモンも、体内環境の調整にかかわっています。

  • 中村和弘さん
  • 神経のメカニズムと心理ストレスの関係について研究

生理学者 中村 和弘さん
「人間というのは、何千万年というふうに生きながらえてきたわけです。その長い間、生き続けられるということを可能にしているのが、自律神経系だと思うんです。私はそれが生命の本質的な部分だと思うんですけれども、それを明らかにしたい。そうすることで生命の謎、生命の本質、そういったものに近づくことができるのではないかと考えています。」

  • 高橋伸一郎さん
  • 動物の成長や老化のしくみについて研究

内分泌学者 高橋 伸一郎さん
「環境に対して、我々が生命を維持するためにどうしているのか。そういう機構を知りたいという意味では、我々の生命現象を明らかにするための命題なんですね。ホルモンは、それの一つの題材で。我々の体・生体の外あるいは中で何か変化があったときに、それをどう、それぞれの細胞に伝えて、我々の生命を維持しているかというところに非常に興味があって。それを実際にいじってみると、たとえば病気がよくなったり、あるいは病気になってしまったり。モデル動物を使っても、すごく脂肪細胞がたまったり、いろいろして。そういう意味では生体のからくりを使って、我々の体の状況を変えていくことができるということに興味を持っています。」

  • 体外環境に存在する病原体
  • 体内環境を保つ機能 免疫

私たちを取り巻く体外環境には、病気の原因となる、細菌やウイルスなどの病原体が存在します。
こうした病原体が体内に侵入しても、これを取り除くしくみが動物には備わっており、このしくみを免疫といいます。

  • 河本宏さん
  • 免疫システムを解明

免疫学研究者 河本 宏さん
「免疫細胞が、毎日襲ってくる病原体を殺してくれているから、生きていられると。最初、何もできないのが、しかもそれが増えて、長生きして……記憶ですね。免疫が1回かかった感染症を忘れないようにするために、その病原体を見分けることができるリンパ球というのが、何年も何年も、場合によっては一生、生きたりすると。リンパ球を見ていたら、人間の社会を見ているようで。そういう見事なしくみができているわけです。」

  • ホメオスタシスについて語る関口さん

私たちには体内環境を保ち、守るというしくみがあります。
関口さんは、そのシステムが巧みにできているというところが面白いといいます。

例えば私たちの体温は、個人差はありますが36度前後と常に一定です。
夏にどんなに暑い環境になっても、冬でどんなに寒い所に行ったとしても、常に一定に保たれています。


関口さん 「体温が常に36℃なんて、これが凄いなあなんて思ったことはあまりないとは思うんですが、なかなか気づかないような当たり前のところ。それが分かるのが、この分野じゃないかなと思いますね。」

ポイント3 生態系とその保全
  • 生態系
  • 生態系

そして、生態系についても勉強をしましたね!

生態系は、長い時間をかけて形づくられ、生物どうしがお互いにつながりあっていました。

  • 生態系
  • 生態系における食物連鎖

ある地域に生息する生物の集団と、水や空気など、それを取り巻く環境を一体として捉えたものを、生態系といいます。

生態系の中で、食物連鎖や食物網など、生き物たちの命はつながり合っており、私たち人間も、それらの命や環境に支えられて生きています。

  • 伊勢武史さん
  • 生態系や環境問題について研究

生態学者 伊勢 武史さん
「生態系というのは生き物によって構成されているんですけれども、その生き物がそこにすめるのは環境があるからなんですね。生き物がすむのに適した環境……温度や水、日光がある。植物は成長して光合成するときに水を使います。その水は1回使って終わりではなくて、水がまた川になって海に流れ出て、それがまた雨になって降ってくる。このように循環しているわけなんですね。たとえば地球温暖化との絡みで、植物が光合成して二酸化炭素を吸うことによって地球温暖化を抑制する。植物、たとえば熱帯の森を伐採してしまうと、二酸化炭素がどんどん出ていって温暖化が強くなるとか。割と、環境との相互作用を僕はおもしろいと思ったりします。」

  • 人間活動によって生態系のバランスが崩れることも
  • 絶滅の危機に瀕する生物たちがいる

生態系は、人間活動によって影響を受け、バランスが崩れることも起きてしまいます。

私たちの便利な生活と引き換えに、失われていく生態系があったり、絶滅の危機に瀕する生物たちがいることを、忘れてはいけませんね。

  • 宮下直さん
  • 日本の身近な生物多様性などについて研究

生態学者 宮下 直さん
「生態系のバランスがどう保たれているか、あるいはどういう状況だと崩壊してしまうかということを研究すること自体が、我々の学問ですので。その種がいるかいないかによって、生態系の構造や生物多様性は変わってきます。そういった種をしっかり見極めて、それの保全やモニタリングをしていくということは重要であることは間違いないと思います。」

  • 沖大幹さん
  • 水の循環による影響などを研究

水文学者 沖 大幹さん
「海の場合には、たまっている水が多いので循環がゆっくりであるということがいえます。そうしますと、汚れに気づくまでも遅いですし、汚れに気づいてきれいにしようとし始めてからまた元通りきれいになるまでの時間も長くなってしまう。つまり、自分たちが何をしているかはわかっていても、自分たちがやったことがさらに人間社会や自然環境にどんな影響を与えているかまで、私たちはふだん考えないわけです。そこにぜひ、思いをはせる。そういうのが重要なのではないかと僕は思います。」

  • 五十嵐圭日子さん
  • キノコの酵素分解を応用した物質変換の研究

木質科学研究者 五十嵐 圭日子さん
「人間が知っていることって、本当に少ないんですよね。たとえば新しい研究の技術であるとか、そういうものを自然の中に向けてあげるだけで、本当に多くのことが、わかることがいっぱい出てくるわけです。それが、自然のいちばんすごいところじゃないかなと。全然、人間はわかっていないですよね、まだ。」

  • 身近な自然をよく観察すること
  • 農産物の収穫量から考えることもできる

ヒトは、生態系なくして生きてはいけません。
しかしその生態系は今、私たちヒトによって、かなり変わってきていると言われています。


関口さん 「保全の中で大事なのは、まず一つは身近な自然をきちんとよく観察することが大切だと思っています。」


さらに関口さんは、「普通に見られた生き物が減少しているかどうかは、普段から自然を見ていなければ なかなかわからないこと」だと言います。


関口さん 「実際人間社会にどういう影響を与えているのか。例えば農産物が取れなくなるといった現状を目の当たりにすると、それによって自分の生活ができないように変わってしまうのであれば守っていこうとか。社会課題とか社会問題とかと繋げて色々考えていくことも、保全の大切な行動になるんじゃないかなって思います。」


生物の世界は、私たちの社会や生活とも、密接に結びついているんですね。
さらに深く生物を学んでいくために、これまで学習したことを、わたしたちはどう生かしていったらいいのでしょうか?

  • 生物基礎は入門!

生物基礎は生物の入門であり、深く学ぶためには自分で色々調べたり観察や実験をしてみる事が大切だと、関口さんはいいます。


関口さん 「細胞から生態系まで幅広い分野を扱っているところがすごく面白いところです。ある一種の生物を研究したとしても、それが別の種類だったらどうなんだろうかと、色々な観点で見ることができる。」

自分なりに新しい知見を見つけることが、深い学びにつながっていくんですね。


関口さん
「本当まだまだ分からないことがたくさんある中で、様々な研究が進んでその一部が見えてきてるっていう感じではないかなと思うし、まだまだこれからどんどん面白い発見があるんじゃないかなって楽しみにしています。」



1年間、ありがとうございました!

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