NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第33回

世界のバイオーム (2)
〜さまざまなバイオーム〜

  • 生物基礎監修:筑波大学附属駒場中・高等学校教諭 宇田川 麻由
学習ポイント学習ポイント

世界のバイオーム (2) 〜さまざまなバイオーム〜

  • 中村徹さん
  • バイオームって?

植物学者の中村 徹(なかむら とおる)さんに、バイオームについてお話を聞きます。

降水量や気温など、似たような環境では似たような景色になることを知りました。
植物を知ると、そこにどんな生物がいるのかわかるということですよね。

  • 筑波実験植物園
  • ドングリ

今日やって来たのは、世界各地のさまざまな植物を見ることができる林。
それぞれの植物が持つ特徴を、中村さんに教えてもらいます。


中村さん 「ドングリを拾いたいんですね。……ちょっと早いんですよ、まだ熟しきっていないので。」

  • 照葉樹林の分布
  • 地面にはあまり植物が生えていない

まずは、地球の中でも暖かい地域の植物が見られる林につれてきてもらいました。

この林の葉っぱは、緑が濃いように見えますね。
地面には植物があまり生えていないようですね。

  • 照葉樹林
  • 葉が光っている

中村さん 「ここは照葉樹林とよばれている、常緑広葉樹が優占種になっている林ですね。照葉樹林とは『照る葉っぱの樹林』と書くわけですけれども。その名前のとおり、葉っぱがテカテカ光っている。そういう樹木が多いんですね。」


確かに、葉っぱがテカテカ光って見えますね!
暖かい地域では、こういう葉っぱが多いのでしょうか?


中村さん 「寒い地方だと、冬が寒くて植物が耐えられない。寒いほうでは、冬に葉っぱを落とすんですね。寒くなる前の季節に、葉っぱにあった栄養分を枝や幹に回収して、葉っぱを落とす。暖かい地方ですと、そういうふうに回収する必要がない。冬でも葉っぱをつけたまま、常緑でいられるわけです。」


暖かい地方では冬でも葉を落とさずにいるから、常緑広葉樹なんですね。

  • ニホンザル
  • イノシシ
  • ホンドリス

中村さん 「植物にとって、暖かくて湿度がある『条件のいい』というのは、動物にとってもおそらく好ましい条件のものが多いと思うんですけれども。調査などでよく見かけるのはニホンザルですね。あるいはイノシシなんかも、地面を掘った跡を比較的よく見たり。もっと小さいものでいえば、ヒメネズミやアカネズミといったネズミのたぐい。それからリス。ホンドリス(ニホンリス)なんかも、そういう樹林には比較的多くいるかなと。」

  • 夏緑樹林の分布
  • ブナ

次は、もう少し寒い地域の林だそうです。


中村さん 「今、歩いて入ってきたのがブナ林。ブナは落葉樹、しかも夏に緑になる夏緑樹なんですね。なので、夏緑樹林といわれています。」

  • 落葉樹は葉っぱが薄い
  • 落葉樹なので落ち葉がたくさんある

この林は、先ほどよりも少し明るいのでしょうか?


中村さん 「落葉樹なので、葉っぱが薄いんですね。それで光を通しやすいということもあって、林内が明るくなっています。」


葉っぱの厚さによって、林の中の明るさが変わるんですね。


中村さん 「落葉樹ですから落ち葉がたくさんたまっていて、歩くとフカフカして気持ちいいですね。」


確かに、気持ちよさそうですね!

ブナ林に他の木が混じりにくい理由
  • ブナ属の分布
  • ブナのほうが競争に強い

中村さん 「このブナ林が分布しているのは、日本だけではない。北アメリカにいくと、アメリカ北部からカナダ。ヨーロッパにいくと、ヨーロッパの北部。それから中近東にいくと、標高の高いほう。それから中国。というふうに、北半球の冷温帯。世界共通のブナ林の特徴として、ブナの木だけが優占種になって生えている。他の木があまり混じりにくいということがあります。」


それは、どうしてでしょうか?


中村さん 「気温が低くなると、生えられる植物自体がどんどん減っていくというのが1つにあると思います。日本ではブナとミズナラくらいなんですね。ブナとミズナラを比べると、ブナのほうが、明るさが明るいところでも、それから比較的暗いところでも生育できる。光をめぐる競争では、ミズナラよりもブナのほうが強い。もともと生えられる樹木が少ない上に、競争にも強いということで、ブナが純林をつくっているのではないかと思います。」

  • 北海道 黒松内低地帯
  • ブナ
  • ミズナラ

北海道の、ブナの森です。
ここでは、ブナが持つ競争力の強さを見ることができます。

春、ブナの木は若葉に覆われていますが(中画像)、隣のミズナラの木はまだ裸のままです(右画像)。

  • ブナはミズナラより低い温度で若葉が開く
  • 光をめぐる競争に勝つ

ブナはミズナラよりも低い温度で若葉を開き始めるため、このような時間差が生まれます。

そして、森が葉で覆われる前の春。
ミズナラよりも早く芽を出すことができた若いブナは日光を独占し、ミズナラとの光をめぐる競争に勝つことができるのです。

寒い地域で葉が針のようになる理由
  • アカエゾマツ
  • エゾマツ

次は、もっと寒い地域の林です。


中村さん 「これは北海道に生えているアカエゾマツという木です。こちらはエゾマツという木で。いずれもマツ科の針葉樹になります。」

  • 針葉樹林の分布
  • 耐凍性

中村さん 「世界的にみると、カナダの北、それから北欧やシベリア。北のほうに分布している。気候帯でいうと亜寒帯といわれる、寒いところなんですね。『暖かくなって春になりました、今から葉っぱを広げましょう』と言っている間に、すぐ秋になってしまう。寒いところの針葉樹は、1年中葉っぱをつける。その代わりに耐凍性、凍らないような性質を獲得する。そして、葉っぱの形は、葉っぱが広くなると寒さに弱いので、小さく細く。『針葉樹』ですね。そういう形にする。」


針のような葉っぱをつけているのには、そういう意味があったのですね!


中村さん 「しかも、組織も硬くして、なるべく凍らないような。寒くても大丈夫な。そのような形になっています。」

  • 平均気温・年降水量を元にした図
  • 世界のバイオーム

世界のあらゆる地点の、年平均気温を横軸に、年降水量を縦軸にして図を描くと、左図のようになります。

ここにそれぞれの気候でのバイオームを重ねると、右図のように世界のバイオームを表すことができます。

  • 森林のバイオーム
  • 草原のバイオーム
  • 荒原のバイオーム

これを大きく分けると、森林のバイオーム(左図)、草原のバイオーム(中図)、荒原のバイオーム(右図)になります。

  • 熱帯・亜熱帯多雨林
  • 雨緑樹林

まずは、森林のバイオームを見ていきましょう。

高温多湿で植物がよく育つ環境が1年中続く地域では、背の高い常緑広葉樹が優占する熱帯・亜熱帯多雨林が発達します。

熱帯・亜熱帯でも、やや降水量が少なく、雨季と乾季がはっきりしている地域では雨緑樹林が見られます。
乾季に葉を落とし、乾燥に適応した落葉広葉樹が優占しています。

  • 照葉樹林
  • 硬葉樹林

熱帯よりも高緯度で、冬が比較的温暖な地域では、常緑広葉樹が優占する照葉樹林が見られます。

夏、雨が少ない地中海沿岸などの地域では、硬葉樹林が見られます。
夏の乾燥に適応するよう、常緑の硬い葉をつけた樹木が優占します。

  • 夏緑樹林
  • 針葉樹林

さらに高緯度になり、冬の寒さが厳しい地域では落葉広葉樹が優占します。
冬に落葉することで寒さに適応した夏緑樹林が見られます。


亜寒帯になると、針葉樹林が発達します。
寒さに強く寿命が長い、常緑の針葉をもつ樹木が優占します。

  • さまざまなバイオームと生物
  • 砂漠

気温の違いでバイオームをみてきましたが、世界には砂漠のように雨が降らないところもありますよね。

雨の量の違いはどのように影響するのでしょうか?

降水量によるバイオームの違い
  • 降水量によるバイオームの違い
  • サバンナでは樹木がまばらに生える

中村さん 「たとえば熱帯地方だと、1000mmいかないところ。あるいは温帯地方になってくると、500mmいかないところ。そういった雨の少ないところでは森林が成立できなくて、草原になるわけです。熱帯の草原はサバンナといいまして、草が主体ですが、ポツポツと木が生えることがあります。これは木が生えていても、冬の間、熱帯なので枯れないんです。」

  • ステップ

中村さん 「一方、温帯のほうにいきますと、雨が少ないと草しか生えなくなり、ステップという草原が広がります。木は生えませんから、地平線のかなたまで草原がずっと広がるという景観になります。」

  • サバンナ
  • ステップ

降水量が少ない熱帯や温帯では、草原のバイオームが広がります。

熱帯・亜熱帯の草原はサバンナとよばれ、アカシアなどの樹木がまばらに生育し、イネの仲間が優占します。

温帯の草原、ステップでもイネの仲間が優占しますが、樹木はほとんど生えません。
冬の寒さが厳しいためです。

極度に乾燥した地域のバイオーム
  • 砂漠
  • 砂漠

さらに乾燥すると、どうなるのでしょうか?


中村さん 「やはり、砂漠ですね。植物が生きていくのに十分な水分、雨が降らない。植物の生育にとって非常に厳しい。砂漠といっても、比較的雨が降るようなところでは、草が少し生えたりすることもあります。ほとんど雨が降らなくなってくると、草1本生えないような砂漠が広がるわけです。」


水がないということは、植物にはとても厳しい環境ですよね。

植物に過酷な環境 寒さ
  • 寒いと木が生えない
  • 寒い地域に生きる動物

中村さん 「もう1つ、植物にとって環境条件が厳しいのは、寒さ。極東・ロシアのカムチャツカ半島、そこも北極圏に近くて非常に寒いんですね。そういうところですと木が生えなくて、せいぜい10cmから20cmくらいの植物があたり一面に広がるという。まるで、サバンナのステップ、草原なんかと似たような。非常に空の広い、さえぎるものが何もないというような景色が広がります。」

  • 砂漠
  • ツンドラ

サバンナやステップより降水量がさらに少なくなると、砂漠になります。
ここでは、サボテンのように乾燥に適応した植物がまばらに生育することもあります。

亜寒帯より高緯度の寒帯では、低木、草本、地衣類、コケ植物を主体とするツンドラとなります。
夏の一時期だけ、表面の凍土層がとけて植物が成長し、花畑が広がります。

世界のバイオームの違い
  • 世界のバイオームの違い

中村さん
「大学院のときに、アルバイトの関係で沖縄に行ったんですけれども。
関東地方の植物なんかはぜんぶ知っているはずだったのに、(現地で)見る植物を何も知らない。
違うものばかり、しかも常緑のものばかりで『なんだこれは』ということがありまして。

違うところへ行くと、見たこともないような植物がたくさんあって。
これはおもしろいというふうには感じました。

たとえばアメリカやヨーロッパでは、だいたい日本と樹木は似ているので『あの仲間だ』『この仲間だ』というのはわかるんですけれども。
オーストラリアなんかへ行くと全然違って、名前がわからないということがあって。

いろいろなところに、いろいろな植物があっておもしろいな、と思い始める。
そうすると、いろいろな文献を見たり、情報が入ってきて、『ここにはこういう植物がある』『珍しいものがある』といわれると、今度はそれが見たくなってしまうんですね。」



世界中にはいろいろな生き物がいますが、それは地球上にいろいろな気候の場所があって、その環境に合わせて一生懸命生きているいろいろな植物がいるからなんですね。

それでは、次回もお楽しみに!

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