NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第32回

世界のバイオーム (1)
〜気候と生物の適応〜

  • 生物基礎監修:筑波大学附属駒場中・高等学校教諭 宇田川 麻由
学習ポイント学習ポイント

世界のバイオーム (1) 〜気候と生物の適応〜

多様性が高い熱帯雨林
  • 中村徹さん
  • 熱帯植物が見られる植物園

今回お話を伺うのは、植物学者の中村 徹(なかむら とおる)さん。
ここは、熱帯に生える植物が見られる植物園です。
珍しい植物がいろいろありますね!


中村さん 「特に、熱帯雨林のいちばんの特徴は、多様性の高さということにあると思います。たとえば木を見ても、ある種類の木が1つあったら、同じ木に会うためには100m行かなければ会えないといえるくらい、いろいろな木がたくさん生えている。上の木だけでなく、下の、林内の植物も、いろいろな種類の植物が生えている。」


100mの間に、いろいろな植物があるということですか!
すごくたくさんの種類があるんですね!

中村さん、それはなぜなのですか?

熱帯雨林 多様性の理由
  • 熱帯は植物にとって人気がある

中村さん 「熱帯雨林というのは、植物にとっての環境がいちばんいい。温度も水分もたくさんあって、植物にとってはいちばん好ましい環境がたくさんある。そういう環境だから、いろいろな植物がこの環境に住みたくて、入り込んでくる。そういうふうなことで、種類がたくさんある。」


いろいろな植物が住みたいなんて、熱帯は人気があるんですね!


中村さん 「熱帯から外れると、植物の生育にとってよくない環境がだんだん増えてくる。たとえば、赤道から極……北極や南極に向かっていくと、温度がどんどん下がってくる。植物にとってすてきな環境から外れてくるという形になります。」

  • フィンランドは寒く植物にとって厳しい環境
  • 寒いと植物にとって厳しい環境

中村さん 「北欧のフィンランドという国に、12月下旬の冬至前後に行ったんですね。寒さもすごく寒いですけれども、暗いんです。とにかく光が当たらない。真昼の12時前後、2〜3時間だけ、わずかにほの明るいというくらいの光しか当たらない。寒さと光の当たらなさというのは、植物にとって大変厳しい環境だということを考えました。私が見たのは、針葉樹がわずかに生えていたというくらいのところですね。」


確かに……こんなに寒そうな場所では、生き物は暮らしにくそうですね。
熱帯と比べても、植物の種類も少なくなるんですね。

  • 地球表面の年平均気温の分布

地球上にはさまざまな気候帯が存在しており、気候によって植生もさまざまに異なります。
地球規模の気候は、主にその地域の年平均気温と年降水量であらわされます。

  • 高緯度に行くほど日射量が減少する
  • 夏と冬の日射量の違い

気温は基本的に日射量によって決まります。
高緯度にいくほど日射量が減少し、年平均気温も低下します。
また、地球の地軸は約23.4度傾いているため、赤道から離れるほど日射量の季節変化が大きくなります(右画像)。

日本では、夏は日射がより垂直になるため、光エネルギーをたくさん受けて暑くなります。
逆に冬は日射が斜めに当たるため、受けるエネルギーが少なくなり、寒くなります。

  • 大気や海流の循環により気温や降水量は複雑に変化
  • 地形の違いによって気温や降水量は複雑に変化
  • 地形の違いで気温や降水量が変化

さらに、大気の循環や海流、山や海などの地形の違いによって気温や降水量は複雑に変化します。

植物の生育は気温と降水量の影響を強く受けるため、植生やそこに住む動物はその場所の気候に大きく制限されているのです。

草原の風景は世界中どこでも同じ
  • 中村さんが研究するユーラシアステップという草原地帯
  • モンゴルの草原

中村さん 「私が専門的に行っているのは、ユーラシアステップという草原地帯なんですけれども。北緯50°くらいのところを東から西へずっと、アジアからヨーロッパまでつながっているんですね。そこの地帯というのは、降水量がだいたい年間500mmよりも少ない。日本はどこでも年間1000mm以上は雨が降りますから、それの半分以下というところで、乾燥しているんですね。そういうところへ行きますと、ほとんど木は生えなくて、ほとんど草しか生えない。景色は広々としていますよね。」

5000〜6000kmも離れても草原

中村さん 「モンゴルとか、あるいは中国の内モンゴル。ユーラシアステップのいちばん西側にあるウクライナやポーランドのほうまで草原を見に行ったんですけれども、5000kmも6000kmも離れているんですが、すべて草原が広がっていて。木がなくて、草ばかりでというところで、とても景色的には似ています。」

  • アメリカ大陸の草原地帯「プレーリー」
  • イネ科のハネガヤ属

中村さん 「そして、そのユーラシア大陸を離れて、アメリカ大陸に行っても、プレーリーという草原地帯がありまして。ここも降水量、雨が少ないんですね。そういうところではやはり木がなくて、草原が広がっている。あとからいろいろ調べると、同じイネ科のハネガヤ属という、スティパという属なんですけれども。アメリカのプレーリーでも、アジアやヨーロッパのステップでも、そういう種類の植物が優占しているというのがわかりました。」


優占……って、なんですか?

  • 環境に適応して、いちばん勢力があるのが優占

中村さん 「優占というのは、その場所でいちばん勢力が強い。威張っているというんでしょうかね。そういうふうな植物のことを、優占種というんですね。その影には、ほかの植物と競争して、その植物たちに勝っているということなんです。すなわち、ある環境をいちばんうまく利用して、背が高くなって光を奪う。ほかの植物から光を奪う。そういうことで、ほかの植物との競争に勝つということなんです。」


環境に適応して、いちばん勢力があるのが優占なんですね。

  • 優占種が樹木であれば植生の見た目は森林
  • 優占種が草本であれば、植生の見た目は草原

ある地域の植生を構成する植物のうち、その中で量的な割合が最も高い種を、優占種といいます。

優占種が草本であれば、植生の見た目は草原となり、優占種が樹木であれば植生の見た目は森林となります。

草原や森林のような、植生の見た目を相観といいます。
優占種はその場所の環境に適応した形態を持つので、同じような環境の下では、同じような相観をもつ植生が成立することになります。

似た環境には似た植物が生える
  • サボテンとトウダイグサ

中村さん 「サボテンは北アメリカにだけ生える植物なんですけれども、アフリカなんかで似たような環境、すなわち乾燥しているところ。そういうところでは、トウダイグサ科というまったく別の科、サボテンと似たような多肉でとげがたくさんある、そんな植物がサバンナには広がったりすることがあります。」


これは同じように見えますが、違う種類の植物なのですね!

  • 植物の乾燥への対応
  • 葉を小さくしたり、硬くしたりする

中村さん 「植物にとってみれば、乾燥しているということは、どうやって対応するか。ある程度最初は葉っぱを小さくするとか硬くするとか。」


葉っぱを小さくしたり、硬くすると、乾燥に耐えやすいんですね。

  • 葉をトゲにする
  • 植物が多肉化する

中村さん 「そういう対応がまず最初ですね。それでも足りなくなると、葉っぱをとげにしちゃう(左画像)。」


砂漠に生えるサボテンとか、とげがありますよね。


中村さん 「葉の裏には気孔があって、そこから水分を蒸散させます。そういう葉っぱをなくしてとげにしてしまうという対応を取ります。それからもう1つは、植物体自体を多肉化。水分をたっぷり蓄えて多肉化するという対応のしかたがあります(右画像)。」


なるほど、乾燥に対応するように、植物自体がいろいろな形に変わっているんですね!

生き残るように形を変える植物
  • 周りの生き物との関係も形を変える要因
  • 周りの生き物との関係も形を変える要因

中村さん 「植物はそのように対応するんですけれども、動物にとってみれば、乾燥しているところで水分をたっぷりと含んでいる植物があるということは格好の餌になるわけです。」


動物としては、餌と一緒に水分まで取ることができます。
一方、植物からすればたまったものではなく、食べられるがままにしていたら絶滅してしまうと中村さんはいいます。


中村さん 「そこで植物は、そういう意味からも葉っぱをとげにして、植物体を守る。動物から食べられないように守る、そのためにとげを発達させる。そういう2つの意味があって、乾燥地帯にはとげのある多肉の植物……アメリカ大陸ではサボテン科の植物、アフリカ大陸ではまったく別ですけれど似たような形を持っているトウダイグサ科の植物。このような植物が、別々の場所で似たような進化のしかたを遂げているというふうに思います。」


環境に対応するだけではなくて、周りの生き物との関係も、形を変える要因なんですね!
植物はそれぞれの環境に対応しているから、似たような環境では似たような植物がいるんですね。

  • プレーリードッグ
  • タルバガン

中村さん 「やはり動物というのは、餌や住みかにする植物に依存していますから、大陸を別にしても植物の環境が似ているということは、それに依存している動物も似てくる。すなわち降水量が少ないという環境に、植物が呼応して草原が広がる。そして、その草原に依存して似たような動物たち……たとえばプレーリードッグ(左画像)がアメリカのプレーリーにいますけれども、これもモンゴルのタルバガン(右画像)と同じ仲間になります。ということで、草原が似てくると動物も似てくるということになるのだろうと思います。」


似た植物がいる環境では、似た動物が住み着くということなんですね。
環境とは、具体的に何なのでしょうか?

雨と気温が決める環境
  • 陸上のバイオームは、どのような植生が成立するで決まる
  • 植物の生育は気温と降水量の影響を強く受ける

植物の生育は気温と降水量の影響を強く受ける


中村さん 「降水量ですね、水分。それと温度、暖かさ。この2つの軸で地球上にいろいろな環境ができまして、その環境に適応した生物群集、すなわちバイオームが成立するということになります。」


生態系の中でも、生産者を基盤としたその地域に生息する動物や微生物など、すべての生物のまとまりをバイオームといいます。
バイオームは陸上にも海洋にも地球上のあらゆるところに存在していますが、陸上での生産者は主に植物であるため、陸上のバイオームは、そこにどのような植生が成立するかによって決まります。

植物の生育は気温と降水量の影響を強く受けるため、陸上には地理的な気候区分とほぼ一致する、特徴ある相観をもったバイオームが成立しています。

降水量によるバイオームの違い
  • 森林のバイオーム
  • 草原のバイオーム

中村さん 「バイオームは気候条件と非常に密接に関連があると申し上げましたが、気候条件の中でも、まず降水量、水分条件ですね。降水量の違いによって、バイオームは森林、草原、そして荒原と大きく3つに分かれるんですね。」


陸上のバイオームは大きく、森林・草原・荒原の3つに分けられます。

森林のバイオームは樹木を中心とした植生からなり、年降水量が豊富で年平均気温が−5℃以上の地域では樹木の生育が可能となり、森林が発達します。

年降水量が少なく比較的乾燥した地域では、ほとんど樹木が育つことができず、イネの仲間などを中心とした草原が成立します。
これが草原のバイオームです。

  • 荒原のバイオーム

年降水量が300mmに達しない地域、もしくは年平均気温が−5℃に達しない地域では、厳しい乾燥や低温に耐えられる植物だけがまばらに生える荒原のバイオームとなります。

それぞれのバイオームに生きる動物
  • 「あらゆる環境の中で生きていける生物は人間くらいだろう」

中村さん 「植物は、かなり気候環境に依存して生育分布を決めているという生き物なのだろうと思いますね。そして植物に依存している動物たち。昆虫、鳥を含め動物たちというのは、その植物に対する依存度が高くなればなるほど、植物と同じように分布が限られる。どんな草でも食べられる、どんなところでも生活できるという動物があれば、それはいろいろなバイオームにまたがって生活できる。」


どのような動物が、いろいろなバイオームで生きているのですか?


中村さん 「あらゆる環境の中で生きていける生物といったら、人間ぐらいだろうと思うんですね。」

あらゆる環境で生きる人間
  • あらゆる環境で生きていける人間
  • あらゆる環境で生きていける人間
  • あらゆる環境で生きていける人間

中村さん
「文明でいろいろなものを発明して、人間の生きる環境を自ら変えていくということで、暖かいところから寒いところから、湿ったところから乾いたところまで、すべての環境で生きられるようになった生き物なのだろうと思いますね。」



確かに、バイオームという見方で考えると、私たちはいろいろな気候の地域に住んでいますよね!
バイオームという視点で生き物を見ると、おもしろいですね。

次回は、異なるバイオームについて具体的に伺っていきます。
お楽しみに!

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