NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第30回

植生と生態系

  • 生物基礎監修:海城中学高等学校教諭 関口 伸一
学習ポイント学習ポイント

植生と生態系

  • 島野光司さん

森林生態研究者の島野 光司(しまの こうじ)さん。
ブナ林を中心に、自然の成り立ちやその保全のための研究をされています。
今日は、研究する森へ向かっています。

  • 場所によって生えている植物の様子も変わる
  • 場所によって生えている植物の様子も変わる
  • 場所によって生えている植物の様子も変わる

場所によって、生えている植物の様子も変わってくるんですね。

ブナの自然林と光
  • 光獲得の競争
  • 森林の成り立ちと光の関係

島野さん 「27、28年くらい前ですかね。初めてここに来たときには、ブナの自然林がどういう森林構造をしているのか、それを研究するために来ました。それは、林の中に見られるような……たとえば大木があって、それが枯れて、明るくなったところに次世代を担う樹木の子どもたちが入ってきて。それが、光獲得をめぐる競争をしていきながら数を減らしていって、再生していくというような森林の成り立ちですね。一見、穏やかに見える森の中でも、実は光獲得をめぐる競争というのが行われています。」


光獲得の競争!?
自然の森や林の成り立ちには、光が関係するみたいですね!

  • カヤの平高原
  • ブナの大木

標高1500m付近に広がる、カヤの平高原(長野県)。
ここでは、ブナの自然林が多く見られるのだそうです。


島野さん 「あの大きな、グレーの木肌をしているのがブナの木(右画像)。これなんかは、150から200年とかの樹齢になっているんですかね。」

  • 約50m2に16本の若いブナ
  • 大木になるのは1本だけ

島野さん 「これがブナで、これもブナ。これ、今は光を浴びられますけど……。これだけの数があって、16個体ここにありますけれども。面積的には7m×7mで約50mくらいのところに16本のブナの若い木がありますけれども、将来的に大木になるのは、この中で1本だけだろうというようなことが予測できます。」


この中で1本だけですか!
厳しい……!

  • 立ち枯れしたブナの木

島野さん 「これ、ブナの老木が立ち枯れしています。木が枯れたりなんかして明かりが差し込むようになると、樹木の子どもたちが光を浴びて成長できるようになります。」

  • 植生
  • 林冠
  • 林床

ある場所に生育する植物の集まりを、植生といいます。
森林という植生では、どのような特徴があるのでしょうか。

森林には、上層部に太陽の光を直接受ける高い木の枝葉が茂る部分があります。
これを林冠といいます。

また地面に近い場所を林床といいます。
背の高い木が生い茂っていると、林床に光は届きにくくなります。

  • 林冠が途切れて光が差し込む
  • ギャップ

ところが、それらの木が枯れたり倒れたりすると、林冠が途切れ、林床まで光が差し込む空間ができます。
これをギャップといいます。

ギャップと林床でのたたかい
  • ギャップと林床でのたたかい
  • ササが繁茂しているとブナの再生は厳しい

島野さん 「普通は光が当たるので、下にある樹木の成長にはよさそうだというふうに思うんですけれども。日本の場合は、こうやってササが繁茂(はんも)してしまいます。ササの下はものすごく暗いんですね。だから、こういうササになってしまうギャップのところというのは、ブナの再生にとっては非常に厳しいところです。」

  • ブナの大木が日陰をつくる
  • 日陰でササの密度が低い
  • 芽生えることができる

島野さん 「こちらのブナの大木があります。で、上を見ていただくと、枝を大きく広げて日陰をつくります(左画像)。たとえばこれが、上の木が枯れてくると、ササも入ってきます。競争です。ここの場合は、ブナの日陰でササの密度が低くなっています(中画像)。そうすると、いろいろな樹木の子どもたちを見ることができます。擬人的にいうと、親が立派なうちは、子どもはなかなか大きくなれないんですが、今の状態でササが入らないように子どもたちを守っているというふうに見ることもできるかもしれません。『俺が何かあったときは、お前ら頼むぞ』という感じかもしれません。」


立派な親だから、守られたり。
いなくならないと成長しなかったり。
なんだか、人間社会にみられるような、厳しい世界なんですね。

アカマツとコナラの林では
  • アカマツとコナラの林では
  • 階層構造を見るのにわかりやすい林

ここは、違う木の森でしょうか。


島野さん 「上にアカマツの大木があって、下にコナラなどの落葉広葉樹があるので。ブナ林の場合は、大木は大木だけで集まっている。大木の下にはササなんかはありますけれど、ほとんど何もない状態。若い木は若い木で集まって生育するというような。光に対する要求が、みんな同じなわけですね。それが倒れて明るくなれば、小さいものがどんどん集まって成長していく。ここの場合は、たとえば『よーいドン』で何もないところにいろいろな植物が生えたとしても、先に成長の早いものが伸びていき、後から成長のゆっくりなものが伸びていきます。」


高木層、亜高木層、低木層といった構図を見るのであれば、このような林のほうがわかりやすいといいます。

  • 高木層
  • 亜高木層

森林には、さまざまな高さの樹木や草があり、それらに階層構造をみることができます。

上層部から順に、高木層亜高木層

  • 低木層
  • 草本層
  • 地表層

低木層草本層地表層といった構造になります。

  • オオタカ
  • ハイイロチョッキリ
  • ヒメネズミ

階層構造が発達した森林では、それぞれの階層を生活場所にする多様な動物たちをみることができます。

  • アカマツは明るいところでどんどん生える
  • 次はコナラの林になる

島野さん 「アカマツはすごく明るいところが好きな植物なので、明るいところではどんどん生えていって、この周りに見られるようにすごく大きな林にまでなるのですが(左画像)、そうすると今度はアカマツの子どもが種から芽生えたとしても、親の葉っぱで庇陰(ひいん)されてしまって暗くなってしまう。そうすると、その暗さで成長できないということですね。しかしコナラなどにとっては、このくらいの明るさであれば何とか成長できる。この林が将来どうなるかといえば、アカマツの寿命がくれば、今、下で待機しているコナラ(右画像)が上のほうに成長していって、今度はコナラの森になると。」


森に生えている木が変わってくるんですか!
光の影響はとても重要なんですね。

  • 木が朽ちていく
  • 枯れた木の中で土ができている

森を構成するのに光がとても重要なのはわかりましたが、森にとって大切なものは、ほかにもあるのでしょうか。


島野さん 「今、朽ちていって、だんだん分解されていって、もうこの辺(左画像)なんかは土といっていいような状況ですね。」


土が枯れた木の中でできているのですか!
そもそも土って、どのようなものなのでしょうか?

  • 國頭恭さん
  • 土壌の研究とは?

土壌微生物学研究者の、國頭 恭(くにとう たかし)さん。
土壌……土の研究をされている、ということでしょうか。


國頭さん 「そうです、土。特に私は、土の中にある養分と、養分の循環と、それに微生物がどのような役割をしているのかということについて研究しています。」


微生物って、肉眼では見えない小さい生物ですよね。
土壌とどんな関係があるのでしょうか。

  • 分解
  • 有機物が分解されて土になる

國頭さん 「いろいろな土壌動物がいるんですけれども。土壌動物も、落ち葉などを食べています。ただ、土壌動物は分解という意味からいうと、ほとんどが完全に無機物にまでするわけではないので。どちらかというと、土壌動物は有機物を食べて、残りかすやフンという形に小さくしてくれるという役割のほうが大きいといわれています。それをさらに微生物が分解して、本当の無機物にして、植物がまたそれを取り込むというような流れとなっています。」


なるほど……落ち葉などの有機物が分解されて、土になるんですね!

  • 有機物の量の違いは?

森とグラウンドの土壌では、有機物の量はどのくらい違うのでしょうか?
有機物を分解する酵素活性の度合いでくらべます。

  • 酵素活性の度合いを調べる
  • 森林のほうが色が濃い

酵素活性が高いほど反応液が黄色くなり、有機分の分解が盛んであることがわかります。

森林(右画像・左)のほうが、濃い黄色ですね!

  • 色の濃さを測定器で調べる
  • 森林のほうが有機物が多い

色の濃さを測定機でも調べます。

結果は、森林0.223、野球グラウンド0.082です。
森林の土壌のほうが、有機物を微生物がより多く分解していることを数値は示しています。

やはり、林や森のように落ち葉が多いところには、有機物が多いということなんですね。

土壌微生物と植物
  • 微生物の役割

國頭さん 「微生物と植物というのは、実は土の中ではかなり激しく養分の取り合いをしています。微生物はそういった有機物を、わざわざ酵素を分泌して分解したのを植物にやるというのは、基本的にはしなくて。基本はほとんど微生物が取り込んでしまいます。」


なんと!土の中でも激しい競争があったんですね!


國頭さん 「ただ、その微生物が死ぬと、その微生物から出てきた養分を植物が取り込むことができます。植物にとって微生物というのは、分解者としての役割もありますが、養分の貯蔵庫としてのはたらきもあるというふうにいわれています。微生物が多いということは、植物にとって競争相手が多いということになるのかもしれませんが、微生物の量が多いと、そこから放出されて少しずつ出てくる養分を、また植物も利用できるという意味もあります。」


微生物は、自分のためだけに養分を取っている。
それでも、それが結果的に、植物にとってもよいことになっているのですね。

  • 小さな生物が枯れ葉を食べる
  • さらに小さく分解する
  • 分解されたものを植物が養分にする

森林の地面には、落ち葉が幾重にも積もります。
その下にいるのは、ミミズやダンゴムシなど、落ち葉を食べる小さな生き物たちです。

そのフンや食べかすは、さらに小さな生き物たちによって分解されていきます。
さらに菌や細菌などの微生物が、無機物に分解していきます。

こうして分解されたものを、植物が養分とするのです。

森林の土壌ができるまで
  • 森林の土壌ができるまで
  • 微生物は森にとっての縁の下の力持ち

國頭さん 「土壌はもともと、岩石がまず風化してできたものになります。ただ、岩石が風化するだけでは土壌はできなくて、基本的には生物がいないと土壌はできません。最初、岩石が風化する段階で、岩石の上にたとえばコケだとか、あるいは微生物といったそういう小さい生物が住み着いて。その生物が死んで、遺体から出た養分を次にまた別の植物・微生物が使って成長して、また死んで……と繰り返していくうちに、だんだん有機物が厚くなっていって、土壌ができていきます。そうすると、さらにまたいろいろな生物が住めるようになって。最終的には、最初はコケくらいだったのが草になって、日本だと森林の状態になって。土壌が分厚くなって、いろいろな生物が住めます。」


小さな微生物がいたから、土壌ができて、森ができたんですね!
ふだん目にしない微生物たちは、森にとっての「縁の下の力持ち」なんですね。

  • なぜ太平洋側ではブナは生えにくい?

森の成り立ちに影響するものは、ほかにもありますか?


島野さん 「太平洋側は大きなブナはあるんですけれども、小さな芽生えのブナみたいなものはものすごく少ないんですね。これがどうしてか。雪とブナにはどういう関係があるのかということを探してきました。」


島野さんは若い頃、このテーマに取り組んだのだそうです。

雪とブナ林の成り立ち
  • ブナの種
  • 種をネズミが食べてしまう
  • 雪に埋もれると種がわからない

島野さん 「こちらがブナの種です(左画像)。雪がないところだと、ブナの木から種が落ちると、それは、すぐネズミなどが食べてしまうんですね。翌春、芽生えようとするんですけれども、食べられてしまって、ないんですね。しかし雪で埋もれると、ネズミは視覚で探すのに探しにくくなりますし、においも遮断されてしまいます。ブナは雪があるところでは生活しやすいということがありますので。それで、日本海側では分布域を少し広げやすいのだろうというふうに思います。」


雪も影響しているのですか!
光や土だけでなく、いろいろな影響を受けて森や林という植生を形成しているんですね。

  • 次回もお楽しみに!

島野さん
「ぜひ、森へ、野原へ出て行ってほしい。
違うところへ行って、全然自分が見たこともない植物を見たりすると、自分にとっては新しい発見ですね。

一見、ほかの植物は同じものだったりするので、同じような環境に見えるかもしれないですけれども。
そういう、自分が知らなかった新しい出会いがあると、今まで自分が体験したことのないところへ来ているのだな、そんなことが喜びとして大きいですかね。」



多様な植生が、至るところにある。
身近なところにも発見がある。
今から出かけて観察しにいきたくなりました!
森よ、待っててくれ〜!

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