NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第29回

生態系

  • 生物基礎監修:筑波大学附属駒場中・高等学校教諭 宇田川 麻由
学習ポイント学習ポイント

生態系

  • セイタカアワダチソウ
  • 伊勢武史さん

伊勢さん 「これがセイタカアワダチソウです。セイタカアワダチソウは、北アメリカからやってきた外来種の植物なんですね。」


外来種は、もともとその場にいなかったのに、人の手などによって、ほかから入って住み着いた生き物のことですね。


伊勢さん 「外来生物が広がるというのは、環境問題です。環境問題は本当に広い地域、広いスケールで起こることなんですね。そして、刻々と年によって状況が変わっていく。なので、現状を把握するというのが対策の第一歩なんですね。」


今回、お話を伺うのは、生態学者の伊勢 武史(いせ たけし)さんです。

  • 記録カメラの準備
  • すぐセイタカアワダチソウが繁殖する

伊勢さんは、セイタカアワダチソウがどこに、どのように生えているのかを撮影して調査されているのだそうです。


伊勢さん 「こういうふうに、すぐセイタカアワダチソウに埋め尽くされちゃうんですよね。」(右画像)

外来種を自動認識
  • 撮影した映像の確認
  • カメラに撮影されたセイタカアワダチソウ

こちらは、先ほど撮影された映像ですね。


伊勢さん 「動画なんですけれども、いったん停止することで静止画をつくることができるんですね。で、静止画の中でどこにセイタカアワダチソウが映っているのか、自動認識するシステムを開発しようと思っています。」


自動認識って、なんですか?


伊勢さん 「人工知能は、人間が知能を得ていくのと同じようなプロセスで学習していくんですね。コンピュータにも『これはセイタカアワダチソウだよ』と教え込んでいく。」


コンピュータが自動的に、セイタカアワダチソウを見つけてくれるんですね!

  • 時刻と位置を記録しながら撮影する
  • 生態系とはなんなのか?

伊勢さん 「GPSで車の動いた場所の時刻と、緯度・経度を正確に記録しているので、地球上のどこの場所でこの写真を撮ったか、そこにどれだけセイタアワダチソウが生えていたのかがわかるようになります。」


なるほど!人工知能を使って、分布図をつくるのですね!


伊勢さん 「セイタカアワダチソウの分布のマップができたとして。そのマップで、もしかしたら今は、セイタカアワダチソウがほとんど存在しない場所がある。でももう少ししたら、そこにセイタカアワダチソウが進出してくるかもしれない。そのような場所を見つけることができたら、その場所は日本の生態系を守るためにセイタカアワダチソウを頑張って駆除しよう、みたいな活動につながるとは思います。」


最新技術をたくさん使っているんですね!
ところで、生態系って何なのでしょうか?

生態系

ある地域に生息する生物の集団と、それを取り巻く環境を一体として捉えたものを、生態系といいます。

生態系は、さまざまな要素から構成されています。
この要素を環境要因といい、そこに生息している生物の要素は生物的環境。
光、水、空気、土壌、温度などの要素は非生物的環境といいます。


生物はみな、水を得たり、光を浴びたりして非生物的環境から影響を受けています。
これを、作用といいます。

一方、植物が葉を広げて光をさえぎったり、動物がフンを落としたりするなど、生物は光や土壌などの非生物的環境に影響を与えています。
これを、環境形成作用といいます。

  • 生産者と消費者

二酸化炭素と水から光合成で有機物をつくり出す生物は、生産者
生産者の有機物を直接的、あるいは間接的に利用する生物は、消費者といいます。

生物同士も、お互いに影響しあっているのです。

全体のシステムを考える生態系
  • 全体を見て考える
  • 生態系を構成する生き物がどう暮らしているのか

生態系を見るときには、要素一つ一つをバラバラに考えるのではなく、全体としてどのように振る舞っているか考えるのだそうです。


伊勢さん 「たとえば台所なら、そこで料理するために総合的にいちばん便利なのがシステムキッチンです。システムキッチンはいろいろな要素によって構成されていて、流し台やコンロがあったりしますよね。それと同じように、生態系もシステムとしてできているので……。そこに生きている1種類の動物だけを研究するのではなく、その動物がそこで生きられるためにはエサとなるような、どういう植物がいるのか。さらには、その植物が生きるための環境がどうなっているのか。生態系を構成するいろいろな生き物が総合的にどのように暮らしているのかを考えるのが、システムだと思います。」


生き物は、光や空気や水などから影響を受けているし、生き物同士も影響しあっている。
そのすべての環境を考えるのが、生態系なのですね!

生き物と環境の関係
  • 生き物が住める環境
  • 水は循環している

伊勢さん 「生態系というのは生き物によって構成されているんですけれど、その生き物がそこに住めるというのは環境があるからなんです。生き物が住むのに適した環境……温度があったり、水があったり、日光があると。」


植物は成長して光合成するときに水を使いますが、その水は「1回使って終わり」ではありません。
水は流れ出て海や川になり、それが雨になって降ってきます。
水も、このように循環しているのです。


伊勢さん 「たとえば地球温暖化のからみで、植物が光合成して二酸化炭素を吸うことによって、地球温暖化を抑制する。しかし植物……たとえば熱帯の森を伐採してしまうと、二酸化炭素がどんどん出ていって温暖化が強くなるとか。わりと、環境との相互作用をおもしろいと思ったりします。」

山火事にも適応する生き物
  • 山火事に対応するマツの一種
  • 環境に適応した生物

伊勢さん 「僕は大学時代、アメリカのイエローストーン国立公園というところで研究していました。イエローストーン国立公園では、1980年代に大きな山火事が起こったんですね。」


伊勢さんによれば、そこに生きている生物も、山火事に適応しているのだといいます。


伊勢さん 「マツの一種なんですけれども、そこに生きているマツは山火事が起きると松かさを開いて種を飛ばすという、そういう作用を持っているんです(右画像)。山火事が頻繁に起こるようなところでは、そこで生きていける植物の種類が限られるというのがあるんですね。なので、その植物をエサとして生きていける草食動物が、その場所を得意な場所として住んでいる。すると、それを食べる肉食動物がいる、みたいな形で食物連鎖のピラミッドができている。食物網が存在していると思います。」

  • 食物網

生物は、食べる・食べられるの関係でつながっています。
生物がほかの生物を食べ、その生物がさらにほかの生物を食べる……といったように、生物同士は食物連鎖でつながっています。
何種類もの生物の間に、食べる・食べられるの関係があります。
いくつもの食物連鎖が網目状にからまり、複雑な食物網ができているのです。

トップダウンとボトムアップ
  • 上位の肉食動物がいなくなると……
  • 草食動物が下草を食い荒らす

伊勢さん 「言葉は難しいんですけれども、トップダウンの作用とかボトムアップの作用とかが存在するのが、すごくおもしろいと思うんですよね。」


トップダウン、ボトムアップ……って、なんですか?


伊勢さん 「トップダウンの作用っていうのは、まさに、その生態系でいちばん上位にいる肉食動物がいなくなってしまうと、それがエサとしていた草食動物がはびこってしまう。すると、草食動物がたくさん草を食い荒らすので、森の下草がなくなってしまう。上から下……肉食動物、草食動物、草というふうに影響を与えていくのがトップダウンの作用ですね。」


生態系のいちばん上の生き物がいなくなると、いちばん下の草も、いつの間にかなくなってしまうのですね。

  • エサのササが枯れてしまうと……
  • 草食動物が減り、さらに肉食動物も減る

伊勢さん 「ボトムアップっていうのは逆なんですけども。たとえば日本の森にはササがよく生えていますけど、ササはたまに一斉開花して、その後枯れちゃったりしますよね。すると、ササが死んだことによって、ササをエサとしていた草食動物が数を減らしてしまう。すると、さらにそれを食べていた肉食獣が減ってしまう。こういうのが、ボトムアップの作用になりますね。」


ボトムアップは、生態系のいちばん下の生き物の変化によって起こる影響なんですね。

生態ピラミッド

ある食物連鎖に注目したとき、食べるものよりも食べられるもののほうが数量が多くなります。
このような、数量的なバランスを生態ピラミッドと呼びます。
食物連鎖の各段階は栄養段階と呼ばれ、矢印が先に進むほど栄養段階は高くなります。

栄養段階が最も低い生産者は、数量が最も多く、ピラミッドの底辺を成しています。
その生産者を直接食べる一次消費者の数量は、生産者よりも少なくなっています。
そして、一次消費者を食べる生物である二次消費者はさらに少なくなり、それらを食べる三次消費者は、生態系の中で最も数量が少ない存在です。


食べるものと食べられるもののバランスは常に少しずつ変化していますが、長期的に見れば、ほぼ一定に保たれているのです。

身近にみられる生態系
  • 京都で採取したコケ
  • コケに付いた種が発芽している

伊勢さん 「生態系というのは、いろいろなスケールで、いろいろな大きさで研究できるんですね。たとえばこれは、京都市内のコケなんですね(左画像)。京都という街はそれなりに湿っていて、まあまあ暖かいのでコケの成長に向いているところなんです。」


こ、コケ?
生態系とはどんな関係があるのですか?


伊勢さん 「コケという植物は、たとえば岩が露出したような場所に真っ先に生えてくる植物なんですね。コケが生まれて死んでいくという時間をかけていくと、だんだん腐葉土みたいのものができていって、そこにほかの植物の種が落ちて、成長していくことができるようになるんです。たとえばここにも、このコケの上にたぶん種が落ちて成長していた植物の葉っぱがあったりしますけれど(右画像)。こんな感じで、コケがつくと土ができて、ほかの植物が生えていく。まず最初はコケなどの小さな植物が着生して、やがて森になっていくのだと思います。」

  • ドローン
  • ドローンで3Dモデルを作成する

こちらでは、何をされているのでしょうか。
大学院生の大西さんの机にあるのはドローンです。


大西さん 「僕は、ドローンを飛ばして、こういう3Dモデルを作って解析しているのですが……。」


3Dモデル?
何を解析しているのでしょうか。

新技術で見えなかったものを見る
  • ドローンで撮影したオオカツラの木
  • 映像を元にした3Dモデル

大西さん 「これは、芦生演習林に生えている、シンボルのようなオオカツラの木があって。この巨木の生態を調査・研究しています(左画像)。」


これが、オオカツラの3Dモデルなんですね!(右画像)
何がわかるのでしょうか?

  • 木の先端の環境
  • 木の根元の環境

伊勢さん 「この木は、高さが約40mありまして。12階建てのビルとか、そのくらいの高さなんですよね。なので、木の根元のほうと先端のほうでは、環境も結構違うんです。上のほうは風が強くて、乾燥していて、日当たりがいい(左画像)。下のほうはその逆で、湿っていて暗い(右画像)。新技術を活用して、今まで人が立ち入ることが困難だった、木の上のほうの環境がどうなっているのか。そこでどのような独自の生態系ができているのかというのに、非常に興味があります。」

  • 熱帯林のシミュレーション

伊勢さんは、今の生態系の調査だけではなくて、将来の予測もされています。


伊勢さん 「さら地から大きな木が生えるまで。熱帯林での80年間のシミュレーションになります。」

  • 更地が森になるまでのシミュレーション
  • 始めに赤色の木が生えてくる
  • 日陰でも耐えられる緑色の木が増えていく

上の画像は、まったく何も生えていない1辺が30mの正方形の土地に、どうやって木が生えて森になるのか、80年間の様子を時間を縮めて表しています。

はじめに生えてくる赤色の木は、光合成の効率がよいため明るい場所でいち早く成長できるタイプの木です(中画像)。

赤色の木がたくさん生えたのち、やがて緑色の木が増えてきます。
緑色の木は日陰でも耐えることができ、赤い木の下で着々と成長しています。
赤色の木が倒れたら、一気に成長します(右画像)。

80年間という長い期間の移り変わりを、光の量や木の性質などを考慮してシミュレーションするのです。

シミュレーションで将来を考える
  • コンピューター上ではシミュレーションが可能

伊勢さん 「今、僕らの暮らしている地球は、1個しかない唯一のものなんですけれども、コンピュータ上では何回もシミュレーションをすることができます。たとえば、温暖化がすごく強くなった場合は生態系がこうなる、人間が努力して温暖化を抑制した場合は変化がこのぐらいになると。人間と自然の関わり方について理解を深めていくことが可能になります。」


地球は1つしかないから、起きてしまってからでは遅いですよね。
生態学を学ぶのは、私たちの未来を考えることにもなるのですね!

環境問題と生態学者
  • 次回もお楽しみに!
  • 地球は1つしかない

伊勢さん
「私自身は本当に、生態系を人間が変えることについて問題意識を持っているのですけれども。
科学者として僕は、できるだけ客観的な研究をして、客観的な情報を伝えたい・表現したいと思うんですね。

なので、自分は危機感を持ってはいるんですけれども、それはグッと抑えて。
客観的に信じられること、統計的に確かだといえることを、論文なりの形で発表しまして。
それをできるだけ多くの人に知ってもらいたいと思うんですね。

温暖化をどのくらい止めるべきかというのは、政治とか社会とか経済の問題になるんです。
なので、僕は科学者として、判断のための材料を提供しようと思っています。」



おいしいお水、おいしい空気、豊かな土、おいしい食べ物。
みんなつながっていて、生態系のおかげで私たちは生きているんですね!
そう考えると、とても興味がわいてきますね!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約