NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第27回

適応免疫 (2)
〜体液性免疫〜

  • 生物基礎監修:東京都立国際高等学校教諭 佐野 寛子
学習ポイント学習ポイント

適応免疫 (2) 〜体液性免疫〜

  • 河本宏さん
  • 胸腺の模型

前回(第26回)に引き続き、免疫学研究者の河本 宏(かわもと ひろし)さんに、適応免疫のはたらきについてお話ししていただきます。

右の画像は、河本さん手づくりの胸腺の模型です。
胸腺は、適応免疫ではたらくT細胞たちが選別されるところですね。


河本さん 「そうです。ちょうど心臓の上にポコンと覆いかぶさるように、親指くらいの組織があって。これは、その断面を拡大した図という感じですね。」

  • 丸いものは胸腺細胞
  • マクロファージの模型
  • 樹状細胞の模型

河本さん 「(左画像)丸っこいのが胸腺細胞で。黄色いのが未熟なもの、赤いのが成熟したものです。それから、死んだ胸腺細胞を食べるマクロファージ。これは負の選択をしている樹状細胞。これらが、別々な色が点灯するようにつくりこんであると。」


T細胞がどのようにしてできあがっていくのかはまだわからないことも多く、河本さんはそこに興味を持ち研究を続けてきたと、前々回(第25回)お話ししてくださいました。


河本さん 「そもそも胸腺は、一般の人はほとんど知らない。子どもはなおさら知らないわけで。そういう臓器がある、そこの中でT細胞ができているということだけでも理解してもらえたら十分だと。」

  • それぞれの免疫細胞
  • 免疫のしくみ

まずは、ここまでのお話をおさらいしていきましょう!


免疫のしくみについては、大きく分けて「病原体を食べる」「感染細胞を殺す」「抗体をつくる」の3つがありました。

細菌やウイルスなどの病原体が侵入してきたとき、最初に立ち向かうマクロファージや好中球のはたらきを、自然免疫といいました。

そして樹状細胞が、病原体の抗原を提示することにより、T細胞やB細胞がはたらくしくみを、適応免疫といいました。


そして今回は、抗体をつくるという免疫のはたらきについてです。

  • 抗体
  • 細胞性免疫

河本さん 「キラーT細胞がウイルス感染細胞を殺すということも大事ですが、実際にはウイルス感染を完全に治すためには抗体ができないと、なかなか完全には治らないんです。」


キラーT細胞が、病原体に感染した細胞をやっつけるしくみを、細胞性免疫とよびました。

体液性免疫とは
  • 体液性免疫

河本さん 「もう1つの大事な適応免疫の反応というのが、体液性免疫といいまして。これは、B細胞が抗体をつくるという反応です。これは免疫学の神髄といいますか、いちばんおもしろいところで。」


体液性免疫は、前回取り上げた細胞性免疫とは、どこが違うのでしょうか。


河本さん 「樹状細胞が病原体を取り込んで、それをヘルパーT細胞に見せて、それに反応できるヘルパーT細胞がくる。ここまではキラーT細胞のときと一緒なんですけれども。ヘルパーT細胞とB細胞の間の情報のやり取りで、見事に、入ってきた病原体に対してだけ抗体がつくられる。T細胞とB細胞の間でやりとりがうまくいっているのを見ると、よくこんなすごいしくみができたものだなあと。そんなことが起こっているのかと。」

抗体のはたらき
  • B細胞
  • 抗体のはたらき

左の画像が、B細胞です。
このB細胞が、ヘルパーT細胞から病原体についての情報を受けると、どんなことが起こるのですか?


河本さん 「B細胞は、抗体という分子をつくります。これはB細胞から分泌・放出されて、血液や体液の中を流れていって、病原体の表面にくっつくわけです。くっついてからめとる、あるいはその病原体がそれ以上感染できないように無力化する。そういうはたらきを持っています。」

  • B細胞も病原体を取り込む
  • B細胞も抗原提示を行う
  • ヘルパーT細胞の助けでB細胞は活性化する

B細胞が抗体をつくるまでを見てみましょう。

侵入した病原体を樹状細胞が取り込み、ヘルパーT細胞に抗原を提示します。
同じ頃、リンパ節ではB細胞も流れ着いた同じ病原体の抗原を取り込むことになります。

B細胞がその抗原を提示する相手とは、樹状細胞から同じ病原体の抗原提示を受けて数を増やしているヘルパーT細胞なのです。

そのヘルパーT細胞の助けがあってはじめて、B細胞は活性化し増殖することで、抗体を大量生産することができます。

  • 抗体は病原体と戦う武器になる
  • 体液性免疫

抗体は、体液によって感染した部位などに運ばれ、病原体と戦う強力な武器となります。

こうした免疫のしくみを体液性免疫といいます。

  • リンパ節では抗体をつくる準備をしている
  • B細胞は抗体を大量につくる

河本さん 「特に、風邪をひいたとき。病気をしたらリンパ節が腫れますけれども、この腫れているリンパ節の中でT細胞とB細胞が情報交換をして、抗体をつくる準備をしていると。そう思うと、とても頼もしいなという気持ちになります。」


ヘルパーT細胞から情報を受け取ったB細胞は、数を増やして抗体を大量につくっていくんですね!
では、抗体はどうやって病原体と戦うのですか?


河本さん 「抗体の分子というのは、英語の『Y』のような形をしていて。先のところが抗原にピタッとくっつくようになっています。」

  • 抗体は病原体を無害化する
  • 食細胞の餌食に

抗体は、どのように病原体と戦うのでしょうか。

抗体はY字の形をしていて、その先端が抗原と結合する部分となっています。
抗体が、病原体などの抗原と結合すると、たとえば毒素を持つ細菌ではその毒性がなくなり、人体には無害となります。
また、細胞にもぐりこんで仲間を増やすウイルスなどは、抗体が結合することでそれができなくなり、食細胞の餌食となります。


抗体が抗原と結合することを抗原抗体反応といい、病原体の増殖や細胞への感染を防ぐことができるのです。

抗体のはたらき
  • B細胞から抗体が出てくる
  • 毒素を抑え、食細胞の食欲を増させる

河本さん 「バクテリアに抗体がくっついたら、抗体の分子の根っこのところが、マクロファージや好中球から見たらものすごくおいしそうに見えるんです。元々こいつ(病原体)を食べる力はあるんですけれども、もっともっと食べる。」


抗体が病原体と結合することで、1つ目は、その毒素を抑える。
2つ目は、食細胞の食欲が増す、ということですね!

  • 風邪の引きやすさも免疫に関係する

河本さん 「うちの研究室でも、若い連中はすぐに『風邪ひいた』とか『インフルエンザにかかった』とかね。僕は、この20年くらい1回も風邪ひいてないですよ。でも若いころはしょっちゅう熱を出していたので。熱を出して、たくさんの病原体を経験してきたことで、今や大概の風邪には対応できる体になっているということですね。」


風邪をひきやすい・ひきにくいも、免疫と関係があるんですね!
どうして、同じウイルスに対して、2回目は感染しにくいという現象が起きるのでしょうか?

2回目の感染で起きること
  • 病原体に反応しはたらく
  • 細胞の一部がそのまま残る

河本さん 「そもそも免疫という現象は、1回かかった感染症に2回目はかからないということから、なぜそんなことが起こるのだろうと『免疫』という概念ができてきたわけです。特定の病原体に反応できるT細胞が増えて、はたらく。せっかく増えたのだから、全部残ると多すぎるのでおおかた死ぬんですけれども、その中の一部がそのまま残るわけです。」


病原体との戦いのあとに、体の中に生き続ける免疫細胞があるということなんですね。

免疫記憶とは
  • 免疫記憶

河本さん 「それがまさに、免疫記憶という現象でして。すぐにはたらける状態のままで残って、体じゅうのあちこちに配置されるわけです。キラーT細胞も必ずできて記憶されます。B細胞のほうも、その病原に対して抗体をつくる力を持ったB細胞が、記憶B細胞としてリンパ組織の中に眠り続けて、待ち続ける。ですから、次に病原体がきたら、あちこちに記憶細胞としてばらまかれているので、それがすぐに活躍できる。」

  • 1回目の感染
  • 記憶細胞
  • 2回目の感染

ある感染症に一度かかると、その感染症には2度目はかかりにくくなることを、免疫記憶といいます。
1回目の感染では、いったん免疫反応のために増殖したT細胞やB細胞は役割を終えると死んでいきますが、その一部は記憶細胞としてリンパ節などに残ります。
次の同じ病原体の侵入に備えて、生き続けるのです。

そして、2回目の感染が起きると、記憶細胞はすぐさま反応し、はたらく細胞として増殖します。
1回目よりも迅速に免疫反応が起きるため、感染症を発症しないで済んだり、症状が軽かったりするのです。

  • 血液中の抗体濃度
  • 免疫細胞

その反応の違いを、グラフで見てみましょう。
縦軸は血液中の抗体の濃度、横軸は感染からの経過日数です。

最初の感染では、7日目あたりから抗体が増え始め、15日目あたりでようやくピークとなります。
ところが、40日目に2回目の感染があったとすると、7日目には初回のピークをはるかに超え、10日目には初回の100倍もの反応を示します。
免疫記憶によって、2回目の感染でのその反応は、早いだけでなく強力になるのです。


1回目の感染によって、病原体の記憶を持つ免疫細胞がいつでもその記憶をもとに戦えるよう、2回目以降の感染に対してスタンバイしているというわけですね!


河本さん 「2回目の感染のときは、あっという間に抗体が大量につくられるということになる。抗体をつくることができるB細胞が、ちゃんと記憶B細胞として居るというのが、免疫にとってすごく大事ということです。」


樹状細胞、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、B細胞、そしてB細胞がつくる抗体。
免疫細胞同士が情報をやり取りしたり、力を合わせたりして、適応免疫のしくみが成り立っているのですね!

適応免疫の特徴
  • 多様性
  • 特異性

河本さん 「適応免疫には4つの特徴がありまして。1つは特異性。たとえば、はしかに対して免疫がついても、おたふくかぜに対してははたらけない。特定の相手だけに反応するというのを、特異性といいます。一方で、体の中には、どんな病原体に対しても最終的に反応できるわけですね。こういうのを多様性といいます。」


適応免疫では、いろいろな病原体と戦うために何百万という種類のT細胞が用意されている、それが多様性
そして、その中から1種類だけが特定の病原体に反応して強力にはたらく、これが特異性ですね!

  • 自己寛容
  • 免疫記憶

河本さん 「そうなると不思議になってくるのが、なぜ病原体にはなんでも反応できるのに、自分の体の成分に反応しないのか。これが自己寛容という現象です。」


自分の体の成分を攻撃してしまうT細胞は選別され取り除かれるしくみが、自己寛容でした。


河本さん 「4つ目は、免疫はそもそも同じ感染症に2回かからないという現象だったわけですが、これが免疫記憶という現象です。」


4つ目の特徴は、2回目の感染では1回目の感染の記憶を持つ免疫細胞がすぐにはたらいて、病原体をやっつけてくれるのでしたね。


河本さん 「まとめると、特異性、多様性、自己寛容、免疫記憶。この4つが、適応免疫の特徴といえます。」

適応免疫を締めくくる食細胞
  • ヘルパーT細胞がマクロファージを助ける
  • 食細胞のはたらきを助ける
  • 適応免疫と自然免疫は一緒になってはたらいている

河本さん 「思い出していただきたいのは、細胞性免疫の中のヘルパーT細胞がマクロファージを助けるというところがありました。このマクロファージは自然免疫性の細胞でしたので、結局最後にはたらいているのは自然免疫の細胞なわけです。それから抗体分子は直接、病原体を無毒化・無力化もできましたけれども、病原体分子の表面に付いて食細胞のはたらきを助ける機能があるという話もしました。そこで最後にはたらいているのは、自然免疫系の細胞なわけです。ですから、獲得免疫系(適応免疫)と自然免疫系は全然分かれたものではなくて、最終的には一緒になってはたらいている。そういうのが正しい理解ですね。」


よくよく考えてみれば、食細胞も適応免疫で重要なはたらきをしていました。
自然免疫と適応免疫とが巧妙にはたらくことで、万全な免疫のしくみが成り立っているのですね!

  • 次回もお楽しみに!

次回は、病気の治療に免疫のしくみがどのように活かされているのかを見ていきますね!


河本さん 「わたしは、T細胞の分化だとか、いろいろな免疫の研究をしてきましたけれども。最近は特に、自分たちでT細胞をデザインしてつくって、T細胞製剤という形で患者さんに投与できるような細胞をつくろうと。そういう研究をしています。」

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