NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第25回

免疫のシステム

  • 生物基礎監修:東京都立国立高等学校教諭 板山 裕
学習ポイント学習ポイント

免疫のシステム

  • 河本宏さん

今回お話を伺うのは、免疫学研究者の河本 宏(かわもと ひろし)さんです。
これは、免疫細胞の絵だそうですが……免疫細胞とは、何ですか?


河本さん 「免疫細胞とは体を守る細胞で、病原体の感染から体を守る細胞たちです。」


病原体の感染から、体を守る。
これは、とても大事な細胞ということですか?

  • 病原体を食べる細胞
  • 抗体をつくる細胞
  • 感染細胞を殺す細胞

河本さん 「これは、病原体を食べる細胞。これは、抗体をつくる細胞。これは、感染細胞を殺す細胞です。」


食べる、つくる、殺す!?
免疫細胞って、なんだかすごそうですね!

  • 病原体が感染する危険にさらされる
  • 免疫

私たちの体内環境は、常にウイルスや細菌などの病原体が感染する危険にさらされています。
こうした病原体から体を守るしくみを免疫といいます。
免疫は、安定した体内環境を保つためになくてはならない機能のひとつです。

  • 白血球
  • 免疫細胞

血液の細胞の中で免疫にかかわっているのが、白血球です。
白血球には、食べるはたらきをする好中球やマクロファージ、T細胞やB細胞とよばれるリンパ球があります。

これら免疫ではたらく細胞を免疫細胞といい、その多くは血液やリンパの流れとともに体の中をめぐっています。


いろいろな免疫細胞があるんですね!
みなさんそれぞれ、違う特徴があるのでしょうか?

  • マクロファージのはたらきの様子
  • マクロファージのはたらきの様子
  • マクロファージのはたらきの様子

河本さん 「マクロファージというのは、よく食べる細胞で。病原体が来たらパクパクと食べてくれるわけですね。食べるというのは、食べて、中で消化して殺してしまう。そういうすごい細胞です。」

  • 好中球のはたらきの様子
  • 好中球のはたらきの様子
  • 好中球のはたらきの様子

河本さん 「好中球は寿命が短くて。パンパンに食べ終わった頃には死にますので、だいたい寿命が2〜3日とか。その病原体も殺し終わった好中球の死がいが、うみになって出てくるということです。」


けがをしたときのうみは、免疫細胞がはたらいてできたものだったんですね!

  • B細胞は抗体をつくる
  • T細胞は感染した細胞を殺す

河本さん 「リンパ球とよばれるものの中に、B細胞とT細胞があるんですけれども。B細胞は抗体という分子をつくって、その抗体によって体を守ってくれる細胞です。一方、T細胞というのは、病原体そのものを殺すのではなくて、病原体に感染した細胞を殺す細胞。」


感染した細胞ごと、殺してしまうのですか?


河本さん 「病原体が感染したら、その中の病原体だけ殺してくれたらいいんですけれども、なかなかそんなことはしてくれなくて。感染した細胞ごと殺す。そうすることによって、これ以上病原体が広がらないようにすると。そういう細胞です。」

  • 免疫のはたらき

免疫のはたらきは、主に3つに分けられます。

病原菌やウイルスなどの病原体が体に侵入したときに、すぐさま駆けつけるのが好中球、マクロファージなどの食細胞です。
これらの細胞は、病原体を食べて撃退します。

食細胞たちでうまく処理できないときに登場するのが、リンパ球のキラーT細胞やB細胞です。
キラーT細胞は、感染した細胞ごと破壊して病原体を撃退します。
B細胞は、抗体という武器を体じゅうにばらまき、病原体を撃退します。

  • 防衛ライン
  • 自然免疫

病原体が侵入すると、最初にはたらく細胞はなんでしょうか?


河本さん 「最初という意味でいえば、まずは皮膚などの防衛ラインがありまして。生き物の表面というのは、それだけでしっかりとした防衛ラインになっていて、けがをしない限りは皮膚からは入らないんです。が、粘膜はやはり弱いんです。なので、だいたい粘膜から入ってきます。たとえば風邪でも、のどとか器官の粘膜から入ってきますし。この第1の防衛ラインを突破したら、まずはたらくのは自然免疫のしくみで。主にマクロファージとか好中球とか、いわゆる食べるという細胞がはたらいてくれます。」

  • マクロファージ
  • 好中球

マクロファージは、侵入したものに最初に立ちはだかり、細胞内に取り込んで消化してしまいます。

好中球(右画像)も、マクロファージと同じようなはたらきをします。
そして、好中球は白血球の7割近くを占めます。

  • 第1の防衛ライン
  • 第2の防衛ライン

病原体の侵入を最初に防ぐのが、第1の防衛ラインである皮膚や粘膜です。

このバリアが突破されて、侵入した病原体を食べることで排除するのが、好中球やマクロファージ。
これが第2の防衛ラインのはたらきです。


この第1、第2の防衛ラインは、生まれながらに誰もが持っている免疫のはたらきで、自然免疫とよばれています。

もし免疫がなければ
  • もし免疫がなければ

ところで、もし免疫がなかったらどうなってしまうのでしょうか?


河本さん 「呼吸で、たくさんの病原体を、ふだんから吸い込んでいますので、免疫がなかったらすぐに肺が腐ってしまいます。ふだんはなかなか意識できないんですけれども、本当は免疫がないと1日で体じゅうのあちこちが腐ってくると思います。」


腐ってしまうのですか!
そんな大事な免疫なのに、ふだんは全然気にせず生きている気がします……。


河本さん 「免疫細胞がはたらきだすと、熱が出る。あるいは局所が赤く腫れてくる。これは免疫細胞が戦っているということですね。痛い、熱が出てしんどい……ではなくて、『免疫細胞がはたらいて病原体をやっつけてくれている』と思うと、『頼もしいなあ』『やってるやってる』という気持ちで見てもらったら、熱が出るのも赤く腫れて痛いのも、頼もしいという気持ちになると思います。」

免疫は体の警察!?
  • 免疫は体の警察!?
  • 適応免疫

河本さん 「免疫はよく警察にたとえられますけれども。駐在所の警察官とかが、最初のマクロファージのようなもので。いったん病原体が感染して、それに対する指名手配書がまわると、警察や公安が動き出して。そういうふうに指名手配犯を探す役割が、リンパ球の仕事ということですね。こういうのは適応免疫といいまして、脊椎動物よりも高等な動物だけが持っています。」

  • リンパ球

適応免疫は、わたしたちの体に備わっている、もうひとつのしくみです。

適応免疫では、自然免疫では撃退できなかった特定の病原体に、活性化したリンパ球が強力にはたらきます。

  • 抗体をつくるはたらき
  • 感染細胞を殺すはたらき
  • 適応免疫

抗体をつくるはたらきや、感染した細胞を殺すはたらきです。
こうした適応免疫のはたらきが、第3の防衛ラインとなります。



免疫は、しっかりとした防御のシステムなんですね。

  • 自然免疫と適応免疫のしくみの違い
  • 自然免疫と適応免疫のしくみの違い

自然免疫と適応免疫、このしくみの違いを教えていただきます。


河本さん 「(病原体を食べるというのが)自然免疫。抗体をつくる、それから感染細胞を殺すというのが適応免疫。特徴としては、自然免疫というのは早いけど弱い。適応免疫は、捜査本部を立ち上げてから動くようなものですので、どうしても遅くなります。けど、いったん動くととても強い。こういう特徴があります。」


自然免疫は、侵入してきた病原体に対して反応は早いのですが、はたらきは強力ではありません。
適応免疫は、時間はかかりますが、はたらきは強いのです。

  • ヤツメウナギ
  • ヤツメウナギの腸の断面

自然免疫は、ヒトに限らず、さまざまな動物が生まれながらに持っているはたらきです。
適応免疫は、脊椎動物だけが持っているはたらきです。

最も原始的な脊椎動物といわれるヤツメウナギの仲間には、適応免疫のしくみは無いと考えられてきました。
しかし最近の研究で、独自の適応免疫のしくみを持っていることが明らかになり、T細胞やB細胞に似た細胞があることなどもわかってきました。

T細胞の研究
  • T細胞の研究
  • 研究室の様子

河本さんは、免疫がどうやってできるのか、どうやってはたらくのかということを研究しているのだそうです。
どんな研究をされてきたのでしょうか?


河本さん 「ずっと主にやってきたのは、T細胞が体の中のどこで、どうやってできてくるのか。たくさんのステップを経て、長い時間をかけてできます。この1個ずつがとてもおもしろいんです。T細胞はすごい細胞ですので、これがどこでどのようにできてくるのかということを、最初から最後まで興味を持って、ずっと研究してきました。」

  • 胸腺

河本さん 「心臓の上にある胸腺という組織がありまして、そこでできるということはわかっていたのですが。たとえば、どういう状態の細胞が胸腺に入ってくるか。胸腺に入ってから、まず何が起こるか。そういうことはほとんどわかっていなかったので。その姿形を変えるところとか、動いていくというのを研究していると、おもしろくてしかたがないんですよ。」

  • 「よくぞ見つけてくださいました」
  • 「堪忍してな」
  • 「悲しい戦いやな」

河本さん 「そのうちに、これが人に見えてくるんですね。たとえば、感染細胞をT細胞が殺すとき。感染細胞はT細胞に殺してもらおうと思って、逃げようとしないんですよ。きっと、感染細胞は『殺すな』ではなくて『よくぞ見つけてくださいました』『どうぞ殺してください』と。T細胞はおそらく『ごめんな』『堪忍してな』とかいいながら殺していると思うんですけれども。そういうふうに見えてきますね。」


免疫たちには、涙なしでは語れないドラマがあったんですね!

  • 骨髄で生まれた未熟なT細胞は胸腺という臓器に運ばれる
  • キラーT細胞
  • ヘルパーT細胞

免疫細胞はどこでつくられるのでしょうか。

免疫細胞は、骨髄にある造血幹細胞からつくられます。

また、骨髄で生まれた未熟なT細胞は、胸腺という臓器に運ばれ、選別されて、キラーT細胞やヘルパーT細胞になります。

  • 胸腺
  • 胸腺は思春期をピークに縮み始める

胸腺は心臓の上にある小さな臓器で、思春期のころをピークに次第に小さくなっていきます。
免疫で重要なはたらきをするT細胞ですが、その多くは若いうちにつくられます。

自然免疫と適応免疫で戦う、さまざまな免疫細胞たち。
免疫のシステムは、これらの細胞が相互に連携することで支えられているのです。

  • 研究室の様子
  • リンパ球は人間の社会のよう

河本さん
「免疫細胞は、すごく何段階にもわたって姿形を変えます。
たとえば大きくなるとか、手足をたくさん出すとか、機能的に全然変わるわけです、最初は何もできないのが。

しかもそれが増えて、長生きして、その記憶……1回かかった感染症を忘れないようにするために、その病原体を見分けることができるリンパ球というのが、何年も何年も、場合によっては一生、生きたりする。

リンパ球を見ていたら、人間の社会を見ているようで。そういう見事なしくみができているわけです。」



免疫細胞たちも人間の社会のように、日々成長し、涙を流し、一生懸命生きているんですね!
河本さん、教えていただきありがとうございます……ん?これは、何ですか?

  • 次回もお楽しみに!

河本さん 「こっちが樹状細胞(画像左)、こっちがT細胞なんですけれども……。」


樹状細胞!
まだほかにも、免疫細胞があるんですか!
次回はさらに、深い免疫の世界に踏み込んでいきますよ!

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