NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第24回

血糖値の調節

  • 生物基礎監修:東京都立小石川中等教育学校教諭 佐野 寛子
学習ポイント学習ポイント

血糖値の調節

  • 高橋 伸一郎さん
  • 血糖値の調節

体内環境を保つしくみとして、自律神経とホルモンのはたらきについて見てきました。
この2つが合わさって調節されているものがあるそうです。

お話しいただくのは、前回(第23回)に引き続き、内分泌学者の高橋 伸一郎(たかはし しんいちろう)さんです。
内分泌といえばホルモンですが……。


高橋さん 「僕らがやっているホルモンの中には、成長ホルモンというのがあります。成長ホルモンは、なんとなく皆さん『成長を促進するホルモン』だと考えているんですけれども。本当の姿は、夜の間に脂肪を分解して、体にまいて、翌日血糖値が低い状態でも動けるようにするというホルモンなんだと、僕らは考えています。」


血糖値といえば、ダイエットや糖尿病という言葉と一緒によく聞く言葉ですよね。
今回のお話は、血糖値の調節について。
そもそも血糖は、私たちの体にとって、なぜ必要なのでしょう?

血糖が必要な理由
  • エネルギー源

高橋さん 「横になっていて、まったく運動をしていない状態。このときにも最低限生命を維持するために必要なエネルギー源というのがあります。このときに、もちろんグルコースが燃やされているんですけれども。ただ、エネルギー源として使う順番というのは、いちばん最初に糖を使うんですね。次に脂肪を使って。その次に、糖が足りなくなるとタンパク質を分解したアミノ酸を使って、糖をつくる。順番があるんですね。」

血糖

血液の中に含まれるグルコースのことを、血糖といいます。

血糖は食事によって体の中に取り込まれます。
主に、炭水化物を多く含むご飯やパンなどの糖分が、消化・吸収されたものです。

吸収された血糖は、必要に応じて肝臓でグリコーゲンとして貯蔵され、血糖が不足したときには再びグルコースになって血液中に放出されます。
血糖は脂肪に変えられ、脂肪組織などにも貯蔵されます。

神経や筋肉など、全身の細胞で分解・消費される血糖は、体にとっては燃料にあたる大切なものです。


血糖は、私たちの体を動かすためのエネルギー源のことだったんですね!
ところで、血糖とは砂糖のようなものなのでしょうか?

血糖は甘いのか?
  • 報酬
  • 疲れたときには甘いもの

高橋さん 「いくつかの糖があります。グルコースというのは、ある意味皆さんがよく知っている糖で、それをなめるとやはり甘いです。ある意味報酬なんですね。皆さんも頑張ったあとにアイスクリームを食べたいと思うじゃないですか。おいしいということがついてくると、頑張ろうという気持ちになれるということで、甘いものがたまたまエネルギー源として使われるようになっているというリンクがあるのかなと思います。」


確かに、甘いものって疲れたときに食べたくなりますよね!
ついつい食べすぎちゃって気になるのが、血糖値というわけですが……。

  • 血糖値

血液の中に含まれるグルコースの濃度を血糖値といいます。

この濃度はヒトの場合、空腹時に血液100mL中に約100mg、約0.1%が正常値といわれています。

  • 低血糖
  • 高血糖

これが約60mg以下になることを低血糖。
約200mgを超えることを高血糖といいます。

血糖値を調節する理由
  • 血糖値を調節する理由
  • 糖尿病の血糖値の例

高橋さん 「低血糖が実は非常に危険で。かなり早い時期に気を失い、こん睡状態になり、死に至る……というのは、低血糖のほうが起こりやすいです。高血糖は、逆に健康な方はほとんどならないんですけれども。ご飯を食べた直後は高血糖になります。それから糖尿病の方。長い間、高い濃度であるということが非常に良くなくて(右図)、いろいろな合併症が起こる。網膜に起こったり、神経がおかしくなったり、いろいろする……というふうになってくると、非常に致命的で。糖尿病で命を落とすこともあるというのは、そういうことが起こった結果になるのです。」


血糖値を調節する理由、それは血液の中の血糖の濃度が、高くても低くても問題だからなんですね。

血糖値の調節
  • ホルモンと自律神経系は一方だけでコントロールされない

では、血糖値の調節はどのように行われているのでしょう。


高橋さん 「たくさんのホルモンや神経系や免疫系というのが、一緒に情報を統合しながらはたらいていて。そういうものがみんな連動して、我々の命を長らえている。重要な反応は一方だけではコントロールされていないんですね、僕らの体というのは。1つだけでコントロールされていると、どちらかがおかしくなったときにすぐ反応ができないので、いくつもの安全弁を使って。両方がGOといったとき、あるいはどちらかがダメになってもちゃんと作用が出るようにするという意味がある。それからもう1つは、神経系とホルモン系のモニターしているものが違うので、両方とも『こういうことだよね』というものが少しずつ違って。両方が血糖値を上げられるようにしているという面もあるかなと思います。」

高血糖時の調節のしくみ(内分泌系)

高血糖の場合と、低血糖の場合の、調節のしくみについて見ていきましょう。

食事をすると、一時的に血液中の血糖値が上がり、高血糖の状態になります。
すい臓のランゲルハンス島のB細胞が、直接血糖値の上昇を感知し、グルコースの貯蔵や脂肪への転換を促進するインスリンを分泌することで、血糖値を下げます。

インスリンなどのホルモンが体液中に分泌されるしくみを内分泌系といいます。

高血糖時の調節のしくみ(自律神経系)

一方、自律神経系では視床下部で高血糖を感知。
副交感神経を通して、B細胞からのインスリンの分泌を促します。

低血糖時の調節のしくみ

運動などをして体を動かした場合、エネルギー源であるグルコースが消費され、一時的に血糖値が低下します。

低血糖の場合は、今度はすい臓のランゲルハンス島のA細胞が直接感知します。
そして、肝臓に作用して、貯蔵されているグリコーゲンからグルコースを生成させるグルカゴンを分泌します。
これにより、血糖値を上昇させることができます。

低血糖時の調節のしくみ(自律神経系)

低血糖の場合、自律神経系のはたらきは、より複雑になります。

視床下部で低血糖を感知すると、交感神経を通してA細胞を刺激し、グルカゴンの分泌を促します。
さらに、交感神経を通して副腎髄質からアドレナリンを分泌させ、このホルモンも肝臓や筋肉に作用することで血糖値を上昇させます。

ほかにも、脳下垂体前葉を介して、副腎皮質から糖質コルチコイドを分泌。
このホルモンは、筋肉などのタンパク質からグルコースの生成を促進させることで血糖値を上昇させるはたらきがあります。

低血糖の場合、複数のホルモンが関わることで血糖値を調節するしくみがあるのです。

ホルモンの特色
  • グルカゴン
  • アドレナリン
  • グルココルチコイド

低血糖の場合にはたらくホルモンがいくつか出てきましたが、それぞれどのような特色があるのでしょうか?


すい臓から出るグルカゴンは低血糖に対するシグナルで、たくさんの糖を肝臓から出させるために重要です。

アドレナリンは恐怖に対する反応で、「逃げる」「戦う」というときにグルコースを上げます。
これも、グルカゴンと同じような方法で低血糖を防ぐと考えられています。

そのほかに、副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイド(糖質コルチコイド)はストレスに対するホルモンで、ストレス耐性になるためにグルコースを上げます。


高橋さん 「そのほかにも甲状腺ホルモンもそうですし、成長ホルモンもグルコースを上げるのに一役買っているということも知られていまして。基本的にたくさんのホルモンが血糖値を元の状態に戻すためにはたらいていると考えられます。」

低血糖でなぜ複数のホルモンがはたらくのか
  • 研究室の様子
  • 飢餓

高橋さんの研究している成長ホルモンも、血糖値を上げるのに一役買っていましたね。
高血糖より低血糖のほうが、なぜいろいろなホルモンがはたらくのでしょうか?


高橋さん 「恐らく、我々の体はいままでずっと飢餓にさらされていて。飽食という状態になっているのは非常に最近だと思うんですね。それまで低血糖に対する用意はたくさんしているけれども、高血糖に対する用意はほとんどされていないというのが本当のところだと思います。」

  • 魚類・鳥類は動き続けるので血糖を下げる暇がない
  • 飢餓に対してエネルギーを蓄える

高橋さん 「血糖値に関していえば、高血糖であっても大丈夫だという生物はいます。たとえば魚類、鳥類。こういう動物たちはエネルギーを使って動き続けなければいけなかったり、すぐに飛ばなければいけなかったりする。基本的には血糖を下げている暇がないというのが1つの特徴かと思います。一方で、飢餓に対して準備をすることができる生物というのは、肝臓や脂肪組織にそれを取り込むというのが行われているかなと思います。」


ずっと動き回っている魚や鳥と違って、いざというときのためにエネルギーを蓄えているんですね!

  • 血糖値を維持するしくみ
  • 血糖が体中をめぐる

高橋さん 「低血糖であるというのが、生命の維持に非常に危険があるということなので。基本的に大きな流れとしては、食べる、自分でつくる、ためてあるものを分解する……グリコーゲンという状態になっているんですけれども、そのグリコーゲンを分解して血中にそれを放出する。それによって、血糖値を維持するということが行われています。」


どんなときでも低血糖の状態になることを防ぐために、血糖値の調節というすごいしくみを備えている私たちの体。
血糖は、体の中で形を変え、蓄えられ、再び分解されて血液の中を巡っていく。
こうして今も、はたらいてくれているんですね!

  • 次回もお楽しみに!

高橋さん
「血糖値は一例でしかないですね。
我々の体の中には、そういう代謝系で命に関わるものは山ほどあって。
その山ほどあるものを、どうやって恒常性を保つかということは、僕らが命を長らえる、生命を維持するということとイコールなんですね。

生きているということが奇跡だと思えるくらい、たくさんの情報伝達系と恒常性の維持に守られているということが、僕らが意識して生活しなければいけないということだと思いますね。」



それでは、次回もお楽しみに!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約