NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第20回

腎臓のつくりとはたらき

  • 生物基礎監修:東京都立小石川中等教育学校教諭 佐野 寛子
学習ポイント学習ポイント

腎臓のつくりとはたらき

腎臓とは
  • 坂井建雄さん

血液や肝臓などの体内環境を維持するはたらきについて学んできました。
腎臓も、とても重要なはたらきをしているといいます。

体内環境の回に引き続きお話いただくのは、解剖学者の坂井 建雄(さかい たつお)さんです。
腎臓とは、どんな臓器なんでしょうか?


坂井さん 「腎臓というのは、人間の体にとってなくてはならない臓器、大切な臓器の1つです。形で見たときに、すごくおもしろい。たくさんの種類の細胞と、精密な構築……。腎臓ほど精巧・精密にできている臓器は、あとは脳くらいですね。」


脳と同じくらい!
腎臓は、そんなにすごい臓器なんですか?

腎臓の構造
  • 腎臓の構造
  • 腎臓

坂井さん 「腎臓という1つの小さな臓器の中に、実は、顕微鏡で見えるような小さな器官がたくさん集まっているんです。腎臓が持っている細胞の種類というのは、1つの臓器だけで30種類以上といわれています。肝臓は、せいぜい3〜4種類くらいです。その仕上がりの精密さというと、腎臓のほうがはるかに精密なんですね。」


でも腎臓って、おしっこをつくる臓器ですよね?
なぜ、そんなに精密につくられているんだろう?

体内で流れる血液の量
  • 体内を流れる血液

坂井さん 「心臓から全身に送り出される血液の量は、1分間に5Lくらいなんですね。これはどのくらいの量かというと、体の中に含まれている全身の血液の量もだいたい5L。心臓は1分間で全身の血液を入れ替えるくらいのスピードで、血液を送り出しているんです。腎臓の中を通り抜けている血液の量って、ものすごく多いんですよね。」


腎臓にも血液が送られているんですか?

  • 消化器と肝臓へ送られる血液は28%
  • 腎臓へ送られる血液は23%

坂井さん 「その心臓から出ている血液のうち、どこにいちばん多く行っているかというと、これは消化器、そして肝臓なんです。胃腸に送られて、そして肝臓に集まって……これが28%です。その次に多いのが腎臓なんですよ、23%くらい。腎臓は左右合わせて200gぐらいですから、体重の1/300くらい。そこに23%の血液が送られていくので、ほかの臓器に比べると60〜70倍くらいの血液が集まってくるということなんですね。」


小さな腎臓に、そんなにたくさんの血液が!
いったい、血液からおしっこがどうやってつくられているのでしょう?

ブタの腎臓の構造を観察する
  • ブタの腎臓

ブタの腎臓を例に、腎臓のつくりを見ていきましょう。

  • 腎動脈
  • 腎静脈
  • 輸尿管

腎臓には、動脈からの血液が流れ込む腎動脈、腎臓の血液を静脈へ送り出す腎静脈、尿を送る輸尿管という3つの管がつながっています。

  • 腎臓の断面
  • 皮質

断面を見てみましょう。

いちばん外側にあるのが皮質、少し赤く見える部分が髄質です。
そして、白く見える部分が腎うです。

  • 腎動脈に墨汁を流し込む
  • 墨汁を流し込んだあとの腎臓
  • 糸球体

腎動脈に、血液の代わりに墨汁を流し込んでみましょう。

皮質の部分にたくさん現れた黒い点、これは糸球体(しきゅうたい)です。

  • ヒトの腎臓
  • 糸球体

ヒトの腎臓を、拡大して見てみましょう。

袋状の構造をした「ボーマンのう」の中に、毛細血管が密集した糸球体が見えます(右画像)。
大きさは約0.2mm。
1つの腎臓には約100万個もの糸球体があります。

  • 血液は糸球体でろ過される
  • 原尿

腎動脈から送られた血液は糸球体へと送られ、ボーマンのうに向かって、血球とタンパク質以外はろ過されます。

このとき こし出された液体は、尿のもと、原尿といいます。

原尿と血しょうの比較

もとの血液に含まれる血しょうと、原尿を比較してみると、血しょうにあったタンパク質は原尿には含まれていません。
そのほかのグルコースやナトリウムイオンなどは、原尿になっても同じ濃度のままです。


血液がろ過されることで、おしっこのもとがつくられるんですね!

  • 糸球体では1日200Lろ過される
  • 200kg

坂井さん 「腎臓では尿を2段階方式でつくっているんです。第1段階は、糸球体でろ過をする。1日あたり200Lくらいなんです。200Lってピンとこないかもしれないですけれども、重さはどれくらいだと思いますか?」


糸球体でろ過された200Lの液体?
1Lの水の重さは1kgなので……?


坂井さん 「200kgなんですよ!体重の3倍くらいの量が出ちゃうんですよ!でも心配することはありません。細尿管という管を通って流れていくんですけれども、その間に99%がまた血液の中に戻ります。最終的なおしっこの量は、1日1.5Lくらいです。」

原尿中の水の99%は再吸収される

次に、糸球体とボーマンのうでろ過された原尿から尿が生成されるまでを、図解にして見てみましょう。

ボーマンのうに近い細尿管では、原尿が通過する間に、グルコースやアミノ酸などがほぼ100%再吸収されます。
水や無機塩類などは、80%が再吸収されます。

ボーマンのうからいちばん遠い細尿管では、水や無機塩類が再吸収されます。

そして、集合管までくる間に、原尿中の水の99%までが再吸収されます。

老廃物は1%の水とともに尿として排出される

一方で、再吸収されずに残った尿素などの老廃物は濃縮され、1%となった水とともに ぼうこうへ送られ、尿として体外へ排出されます。

こうして毛細血管に再吸収された成分は、体の中を再びめぐっていくのです。


体に必要な物質が再吸収されてから、いらないものだけがおしっことして出されているんですね!

腎臓の役割
  • 体内環境

それにしても、腎臓はどうして、こんなに複雑なことをしながらおしっこをつくっているんだろう?


坂井さん 「腎臓のメインの役割は、おしっこ・尿をつくることです。大したことのないように思えるかもしれませんが、実は大ごとというか。体の外と物質をやり取りをする臓器の中で、ただ1つ腎臓だけが、体の中の環境……体内環境を一定にするという目的で、水分と塩分の出し入れをしているんです。そのために、いろいろな事情で体の中の水や塩分の出入りが変動すると、その帳尻を合わせてくれるのが腎臓なんですね腎臓は尿をつくることによって、体内の環境を一定にしている。


体内環境といえば、以前(第16回)にも出てきましたね!

循環系

どのようにして、私たちの体内環境は維持されているのでしょうか。

心臓を中心とする循環系は、体外環境と体内の細胞との間で物質のやり取りをサポートしています。
循環系には、血管系とリンパ系があり、血液が流れるさまざまな器官の1つである腎臓では、細胞で出た老廃物をろ過し、体外へと排出するはたらきを持っています。

このように、体内環境を一定に保とうとすること、またそのしくみを恒常性といい、腎臓も肝臓などと同様に重要な役割を果たしています。

体内環境を保つしくみ
  • ホルモン
  • 下垂体

坂井さん 「尿の量と成分を大幅かつ迅速に変えることによって、体の中のイオンの濃度、すなわち体内環境を一定に保つというのが、腎臓の大きなはたらきなんです。ところが、尿の量と成分をつくり変えるというのは結構大変なことですよね。」


尿の量と成分を調節する機構・しくみは、腎臓の中にも備わっています。
さらに、ホルモンのはたらきを受けて尿の濃度や量を大きく変えるというしくみもあるといいます。


坂井さん 「そこで特に大切なのは、下垂体(かすいたい)という脳の下にくっついている内分泌腺があるんですけれども、脳からの刺激が下垂体を通して腎臓にはたらきかけてくる。バソプレシンというホルモンのはたらきで腎臓は尿をうんと濃くしたり、うんと薄くしたりと、そういう調節をしています。」


脳と腎臓がやり取りをしながら、尿の量と濃さを調整しているんですね!

  • 全身に指令を送っている
  • ろ過はきちんとした血圧で行われる

坂井さん 「実は腎臓も生命を維持するために、全身にいろいろな指令を送ったり、指令を受け取ったりしているという。体の中の生命維持のための情報のネットワークの中心にあるような臓器なんです。そういう意味では、脳に似ているところもあります。」


腎臓から指令!
どんな指令を送っているんですか?


坂井さん 「血液をろ過するためには、十分な血圧が必要なんです。血圧を原動力としてろ過をしている。血圧が下がったらどうなるかというと、糸球体でろ過ができなくなってしまう。腎臓は『これは危ない!責任を果たすためには、きちんと高い圧力で血圧がこなければいけない』と判断して、腎臓から全身に指令を送ります。『全身の血圧を上げろ!』って。」


血圧までコントロールして体内環境を調整しているなんて、腎臓、すごい!

  • 次回もお楽しみに!

坂井さん
「隠れた主役ですね。
表面に見えているものが主役だと思うかもしれませんが、実際にはそこを支えている縁の下の力持ちというか。

『おなかが痛くなる』ということはときどきありますよね。
でも『腎臓が痛くなる』ということは、まずないんですよ。
それだけ我慢して一生懸命、体の生命のためにはたらいている臓器ですから。
そういう縁の下の力持ちを、もっとよく知っていただきたいなぁと思います。」



それでは、次回もお楽しみに!

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