NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第19回

肝臓のつくりとはたらき

  • 生物基礎監修:東京都立八王子東高等学校教諭 長尾 嘉崇
学習ポイント学習ポイント

肝臓のつくりとはたらき

  • 秋吉英雄さん
  • 魚を中心に内臓を研究している

内臓進化研究者の秋吉 英雄(あきよし ひでお)さん。
魚を中心に、いろいろな生き物の内臓を研究しています。


秋吉さん 「環境に適応するために、内臓も形を変えているんです。だから、いろいろな環境の動物、特に今は魚に注目して。その内蔵を見ることによって、どういうふうに適応した形の肝臓になっているかというのを、いちばん興味があって見ています。」

ネコ、ヘビ(マムシ)、ニワトリ、ネズミの内臓

さまざまな生物の肝臓を見てみましょう。
画像左からネコ、ヘビ(マムシ)、ニワトリ、ネズミの内臓です。
色の付いている部分が肝臓です。

生物によって肝臓の大きさや形が全然違うんですね!


秋吉さん 「何種類だろう?魚だけでも600種類くらいあるんじゃないかな……。同じグループの中でも、肝臓がみんな同じかどうかを見ないといけない。それを見るために、600種という数を見ていかないといけない。」

  • 魚屋さんで調達する
  • 南極で魚釣り

秋吉さん 「当然、とれない魚は魚屋さんに頼んで、生きた魚をとるとか。どうしても南極の魚をとりたい場合は『南極へ行かせてください』といって。」


そこまでしてとってきて、見ているのは、それでも内臓なんですね!

  • ヌタウナギ、ウナギ
  • フナ、カサゴ、スズキ

秋吉さん 「盲目的に魚をとってくるわけではないんです。たとえば、脊椎動物で最初に出てきたヌタウナギ。それから、ちょっと進化して出てきたウナギ。それから川の魚のフナとか、もしくはカサゴやスズキとか。最後に進化してきた、いちばん骨の硬い魚ですよね。どういった魚の内臓を、肝臓を見ようかということで、それでとりに行っています。」


なるほど、肝臓の進化を研究するのに適した魚を調べているんですね。

  • ヌタウナギ
  • ヌタウナギの肝臓と胆のう

ヌタウナギです!
ヌタウナギの皮はとても丈夫で、ベルトや財布の原料にもなっています。


秋吉さん 「肝臓はこことここに2つある。その間に見えるのが胆のうで……。」

  • 樹脂を入れて血管の標本をつくる
  • 血管の標本づくり

秋吉さん 「そこにピュッと入れる感じで……。」


肝臓に注射針を刺し入れていますが……これは何をしているんですか?


秋吉さん 「今は、肝臓の中の血液を……肝臓の中に走っている血管から血液を全部追い出しています。そして、その血管を固定したあとに、今度は樹脂をそこに入れます。」


肝臓の血管に樹脂を入れて固定して、血管の標本をつくってみるのだそうです。


秋吉さん 「進化の過程を見るのに、血管の構築、それを証明したいので。それでいろいろな動物の血管の中に樹脂を入れて、血管だけの網目状の標本をつくって、それを見るということなんですね。」


血管を見ると、何がわかるのでしょうか……?

  • ナマズの肝臓の血管標本
  • 白い部分は毛細血管

これは、ナマズの肝臓の血管に樹脂を入れて、標本にしたものです。
青色が太い血管、白いのが毛細血管です。
肝臓の隅々まで血管が張り巡らされているのがわかります。

  • ヌタウナギの肝臓の血管標本
  • ウナギとヌタウナギの比較

左画像は、ヌタウナギの肝臓の血管の標本です。
ヌタウナギの肝臓は2つあります。

左画像・左が後ろの肝臓、右が前の肝臓です。
毛細血管はそこまで多くありません。

ウナギの肝臓と比べてみましょう(右画像)。
ウナギのほうが、血管が密であるのがわかります。

なぜ魚の肝臓の研究を始めたのか
  • 肝臓の形が違う要因は?
  • 肝臓の形が違う要因は?

秋吉さん 「ヒトの肝臓を研究テーマにしていたんだけれど。あるとき魚の肝臓を見て、なんじゃこれと。全然ヒトの肝臓と違う。何がそんなふうに形を変える要因なのか。食性なのか、環境なのか、行動なのか。それとももっと違う、進化。この進化の過程において、肝臓の形が徐々に変わってきているのではないか。とにかく、肝臓の形が違う……それにびっくりして。何で違うのだろうかと。それから始めましたね。」

  • ヒトの肝臓の位置
  • ヒトの肝臓
  • ヒトの肝臓

ヒトの肝臓は、体の中心部、胃の上に覆いかぶさるように位置しています。

1〜2kgほどあり、暗赤褐色をした器官です。

  • 肝臓につながる器官
  • 肝臓の毛細血管

肝臓は、ほかの器官と異なり、肝門脈と肝動脈という2種類の血管から血液が流れ込んでいます。
小腸からの、栄養分を多く含む血液が流れる血管が肝門脈
心臓からの、酸素を多く含む血液が流れる血管が肝動脈です。

2本の血管から流れ込んだ血液は、肝臓の中の毛細血管に広がります。
その後、肝静脈をへて心臓に戻ります。

  • ブタの肝臓
  • 肝臓は赤褐色をしている

秋吉さん 「肝臓というのは、実はものすごい血管の塊で。あれだけ血管があるから赤血球の色をして、肝臓が赤黒い。赤褐色といいます。」


肝臓が赤いのは、血管の塊だからなんですね!
ところで、肝臓はどんなしくみになっているのでしょう?

  • 肝小葉

肝臓のしくみを詳しく見てみましょう。
これは、肝臓を構成する肝小葉とよばれる部分です。
直径1mmほどの大きさの肝小葉は、約50万個の肝細胞からなっています。

  • 肝小葉の断面モデル
  • 肝小葉内の毛細血管に広がる

肝動脈と肝門脈の2種類の血管は、肝小葉内の毛細血管に広がります。
血管で運ばれてきたものは、肝小葉の細胞で処理されます。
血液は肝小葉内の毛細血管に広がり、肝細胞との間で物質交換が行われるのです。

  • 肝小葉の電子顕微鏡写真
  • 毛細血管に穴が空いている

さらに、電子顕微鏡で見てみましょう。
毛細血管の壁には、たくさんの穴があります。
この穴から、栄養分は血管を出て、肝細胞へと送り込まれていくのです。

  • 胆管
  • 十二指腸

肝臓の下部からは、胆管が十二指腸に伸びています。
肝細胞でつくられた胆汁は、胆のうにいったん蓄えられ、十二指腸に放出され、脂肪の消化を助けるのです。

肝臓のはたらき
  • ヒトと魚の肝臓
  • グリソン鞘

秋吉さん 「ヒトの肝臓も、魚の肝臓も、形が違いますよね。その形が違うのが、器……つまりグリソン鞘(しょう)が違っている。」


グリソン鞘……って、何ですか?


秋吉さん 「グリソン鞘というのは、結合組織でできている、そういう組織で。そのなかに血管とかリンパ管とか、胆管が走っています。肝臓の主なはたらきは、肝細胞。この肝細胞に栄養を与えたり、酸素を与えたり。もしくは肝細胞でつくったいろいろなタンパク質、そういったものを体の必要な部位に届ける。」


肝臓の細胞では、物のやりとりが行われているのでしょうか。

  • グルコース
  • グリコーゲン
  • グルコースに分解

肝臓は、体液の成分の調整を行っています。
小腸で吸収されたグルコースをグリコーゲンに合成して、一時的に蓄えます。
必要に応じて、グリコーゲンをグルコースに分解し、血液中のグルコースの量を調節します。

  • タンパク質を合成
  • タンパク質を供給

また、血しょうに含まれるタンパク質を合成し、血しょう中で不足しないように供給します。

  • 脂肪肝
  • 通常の肝臓と脂肪肝の比較

秋吉さん 「ところが、肝細胞の中に脂肪がたまりすぎてくると、パッと見ただけで黄色くなる。色も大事、だから色を見れば『この人、肝細胞の中に脂肪がいっぱい入っているな』とか。正常に近い人は、きれいな赤褐色。」


本当に黄色い!
肝臓は脂肪だらけになってしまいませんか?

  • アンモニア
  • 尿素につくり変えて排出

肝臓には、物質の排出をするしくみもあります。
アミノ酸の分解により生じた毒性の高いアンモニアを、比較的無害な尿素につくり変え、排出します。

  • 胆汁を生成

また、脂肪の分解を助ける胆汁を生成します。
胆汁は胆のうに一時的に蓄えられ、濃縮されたのち、十二指腸に放出されます。

  • アルコール
  • アルコールを分解
  • 解毒作用

さらに、消化管から吸収された有害なアルコールや酸などを、無害な物質に分解します。
また、胆汁に溶けるようにして排出し、血しょう中から取り除きます。
このはたらきを解毒作用
といいます。

  • アンコウ
  • カワハギ
  • 肝臓

秋吉さん 「人間は、脂肪肝といって肝細胞の中に脂肪が入っているのを病気としているけれども、魚は違う。魚が生きていくために、肝細胞の中にあえて脂肪を蓄積している。それによって、餌が食べられないときとか、そういったものを回避する。よく泳ぐマグロとか、ブリとか、ああいう肝臓には脂肪が入っていない。脂肪はみんな筋肉の中に入っている。それだけ、肝臓が違う。」


そうなんですね!
だから、アンコウの肝臓のあん肝や、冬にあまり活動しなくなるカワハギの肝臓は、脂が乗っておいしいんですね!

生物を学ぶ上で大事なこと
  • 生物を学ぶ上で大事なこと
  • 次回もお楽しみに!

秋吉さん
「魚を解剖して肝臓を見るために、それを観察するということは、魚が住んでいるところから観察しなければいけない。
はたらきというのは、形が違ってくる、その形を見て察する。
あとはやはり……感動でしょうね。『なんじゃこりゃ!』とか『すごい!』とか。」



それでは、次回もお楽しみに!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約