NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第18回

血液のはたらき

  • 生物基礎監修:東京都立八王子東高等学校教諭 長尾 嘉崇
学習ポイント学習ポイント

血液のはたらき

  • ミスターラング
  • 岡田隆夫さん

岡田さん 「ミスターラング(左画像)。医学部の学生教育用のいろいろな機械がありますけれど、(肺の)診断の練習をするための装置です。」


前回(第17回)に引き続き、生理学者の岡田 隆夫(おかだ たかお)さんにお話を伺います。
今回は血液についてです。

血管や血液は、なぜ必要なんですか?

血管・血液の役割
  • 血管は体の臓器を結ぶ

岡田さん 「私たちの命を保っていくためには、いろいろな臓器がもちろん必要です。そして、酸素を取り込まなければならない。酸素を取り込むのは肺で、胸にあります。それから栄養素も取り込まなければならない。これは腸なので、おなかにあります。それから老廃物、いらなくなったものを尿として捨てなければならない。このためにはたらいているのが腎臓で、これは背中側の腰のあたりにあります。もうみんな、てんでんばらばらなところにいるわけで。要するに全身の臓器をつないでいるものですね。」


脳・肺・心臓・肝臓・腸・腎臓など、臓器はそれぞれ離れたところにあります。
血管はそれらの臓器を結び、その中を血液が流れています。

血液が循環することで、体の隅々にある細胞にまで栄養分や酸素などが運ばれ、それによって体のすべての細胞は生命活動を行っているのです。

  • 血液は全身をめぐる
  • 体の端では血液はどうなっているのか?

岡田さん 「肺で取り込んだ酸素を全身の細胞、足の先から頭のてっぺんまで送らなければならない。そのためにはたらいているのが、血液です。」


足の先から、頭のてっぺんまで……。
でも、体の端で血管がどうなっているか、見たことがないですね。

  • 顕微鏡で指先を見てみる
  • 黒い筋のようなものが並ぶ
  • 毛細血管

体の隅にある血管の様子を観察してみましょう。

特殊な顕微鏡で人の指先を見てみます。
黒い筋のようなものがたくさん見えます(中画像)。

さらに拡大すると、毛細血管が見えてきます(右画像)。
血液が流れているのがわかります。
血液の中に、何かが動いているのが見えます。

  • 赤血球
  • 白血球
  • 血小板

人の血液を染色して顕微鏡で見てみましょう。

赤く染まった丸いものがたくさんあります。
赤血球です。
赤血球はそれぞれが1つの細胞ですが、核がありません。

中画像の丸で囲ったものは白血球で、紫色に染まっているところが核です。

右画像の小さなかけらは、血小板です。

  • 赤血球、白血球、血小板の形

さらに、それぞれの形を詳しく見てみましょう。

血液は、赤血球白血球血小板、そして液体成分の血しょうから成っています。

血液成分の構成

血液の中では赤血球がもっとも多く、次に多いのが血小板、そして白血球の順番になっています。

液体成分の血しょうのほとんどは水ですが、そのほかに、たんぱく質・無機塩類・グルコース・脂質などが含まれます。


血液の中には、いろいろなものが入っているんですね。
しかし、なぜ赤血球はそんなに多いのでしょうか?
どんな役目があるんですか?

赤血球のはたらき
  • 赤血球のはたらき

岡田さん 「酸素の運び屋であり、かつ、二酸化炭素の回収係といえるかなと思います。」


運び屋さんで、回収もする?どういうことですか?

  • ATP
  • ADP

岡田さん 「人間の体の中ではエネルギーとしてATPがつくられます。これは、人間社会のようにどこかに大きな発電所があって、そこでエネルギーをつくっていて、それを送ってくるというわけではなくて。全身の細胞1個1個が、そのエネルギーをつくっているわけです。各家が太陽電池を備えて自給自足している感じですね。そのエネルギーをつくるためには、どうしても酸素が必要だということで、酸素を全身の細胞に送る必要がある。」


赤血球が細胞に酸素を届けているんですね!


岡田さん 「エネルギーをつくった結果として、やはり二酸化炭素ができてしまう。これがいつまでも組織に残っていては困るので、その二酸化炭素も血液が受け取って、肺に送って、肺から体の外に捨ててもらうというわけです。」

ミトコンドリアでATPがつくられる

細胞にあるミトコンドリアで、ATPをつくられているんでしたね。
ATPができるのには酸素が必要で、そのときに二酸化炭素が出ていましたよね。

赤血球は、酸素を運んで二酸化炭素を回収しているということは……赤血球がないとエネルギーができない!
すごく重要じゃないですか!

酸素の運搬
  • 酸素の運搬
  • ヘモグロビン

岡田さん 「肺で呼吸をしているわけですけれども。要するに、酸素に富んだ空気が吸い込まれて、その酸素が赤血球の中のヘモグロビン、その中心にある鉄に結合します。これがまた心臓に戻って、そして全身に向かって送り出される。組織ではその酸素濃度が低くなっていますから、そこで酸素を手放して、組織に与えるというわけです。」

  • 肺には体に取り込まれた酸素がある
  • 酸素はヘモグロビンと結合する

肺には、体に取り込まれた酸素が大量にあります。
酸素は、赤血球の中のヘモグロビンとよばれるタンパク質と結合します。

酸素と結合した状態の赤血球は、心臓を経由して体じゅうに送られます。

  • 赤血球が体中に送られる
  • 酸素濃度が低い場所では酸素を離しやすくなる

各組織では細胞が活動しており、酸素が大量に使われています。
そのため、酸素の濃度が低くなっています。

酸素の濃度が低い場所では、ヘモグロビンは酸素を離しやすくなります。

こうして、各組織の細胞には、赤血球によって運ばれてきた酸素が与えられます。

二酸化炭素の回収
  • 炭酸

岡田さん 「一方、二酸化炭素のほうですけれども。組織での代謝の結果が発生しますので、そこで血液中に二酸化炭素が溶け込んできます。溶け込んだ二酸化炭素は赤血球の中で、いったん炭酸になります。みなさんが飲む炭酸飲料と同じ炭酸です。これが、重炭酸イオン(HCO)と水素イオン(H)に電離するわけですけれども、大部分の二酸化炭素が、重炭酸イオンという形で、運ばれています。」


炭酸!?……って、どういうことですか?

二酸化炭素の回収

細胞から出た二酸化炭素のほとんどは赤血球に入ります。
そこで、酵素のはたらきにより、水と反応して炭酸(HCO)になります。

次に炭酸は、炭酸水素イオンと水素イオンに分かれ、炭酸水素イオンのほとんどが血しょうに溶け、肺に運ばれます。


岡田さん 「肺に行くと、この反応がまた逆向きに進みまして。重炭酸イオンと水素イオンが炭酸になって、これがまた二酸化炭素と水になると。その二酸化炭素が肺胞からどんどん外に呼出されるというわけです。」

二酸化炭素の放出

肺では、血しょう中の炭酸水素イオンと水素イオンが結合し、再び炭酸になります。

そして炭酸は二酸化炭素と水に分解され、この反応によって生成した二酸化炭素は肺から外に放出されます。

組織と肺で逆の反応

二酸化炭素は、重炭酸イオンと水素イオンに分解されるんですね!
いちいちイオンになるなんて、面倒なことをするんですねぇ。

pHの調整
pH

岡田さん 「水素イオンがたくさんできれば、pHとしては酸性になりますから、下がってくる。あるいは水素イオンが少なくなれば、pHとしては上がってくる。この反応をどう進めるかによって、pHは調節されている、というわけです。」


pHって、水溶液の酸性やアルカリ性の程度を示す数値でしたよね?
水素イオンが多いと酸性で、少ないとアルカリ性……ということですね。


岡田さん 「酵素の活性がいちばん高くなるのが、pHでいうと7.40。温度でいうと37度くらい、私たちの体温ですね。そのときに最も活性が高くなります。pHが上がっても下がっても、あるいは体温が上がっても下がっても、この酵素の活性が落ちますので、私たちとしては非常に気分が悪くなる。」


二酸化炭素を運ぶだけでなく、酵素のはたらきがうまくいくようにもなっているんですね。
赤血球って、一石二鳥どころか、3鳥、4鳥、5鳥も役立っているんだ!

  • 毛細血管
  • 赤血球の直径より細い毛細血管

こんなに細いところを赤血球が通って、酸素や二酸化炭素を運んでいるんですね。


岡田さん 「赤血球の直径は7.5μmくらい。ですが、毛細血管は5〜7μmですから、赤血球の直径よりも細い毛細血管はいっぱいあります。」


え!それでは通れないですよね!?

  • 赤血球が変形して毛細血管を通る
  • 赤血球が変形して毛細血管を通る
  • 赤血球が変形して毛細血管を通る

岡田さん 「そういうところは赤血球が変形して。普通は真ん中がへこんだ円盤状と表現されるんですが、これが流れているときは、砲弾型になったり、どこに力がかかるかによってスリッパ型になったりと、自由に形が変わることができます。」


本当だ!形が変わっているんですね。


岡田さん 「先に白血球がいますと、白血球のほうが少し大きいですし、わりと血管に粘着しやすいので、ゆっくり流れるんですね。そうすると、その後ろに赤血球が渋滞して詰まっていることがあります。」


渋滞するって、なんだかおもしろいですね。
白血球は、どのような役目があるのでしょうか?

白血球の役割
  • 白血球の役割
  • 血管を流れる血液

岡田さん 「我々の体の中に入ってきた病原微生物をやっつけてくれたり、あるいはガン細胞、いろいろな奇形の細胞を殺してくれる。そういう重要な役割を果たしています。」


まるで、体じゅうをパトロールしている、おまわりさんみたいですね。

血小板の役割
  • 怪我をしたときの血液のはたらき
  • 血液凝固

あ!すり傷で、大切な血液が流れちゃいますよ!


岡田さん 「たとえば軽く叩いただけでも、毛細血管とかは結構破けています。破けたところにすぐに血小板が張り付いて、応急的な止血をする。そこからまた血液凝固を促す物質を放出して、きちんと固める。それが血小板の仕事です。」

  • 血管が破れる
  • 血小板が集り血液凝固因子などがはたらく

血管が破れると、まず傷口に血小板が集まります。

その後、血小板に含まれる血液凝固因子など多くの因子がはたらき、血しょうの中にトロンビンという酵素ができます。

  • フィブリノーゲンがフィブリンに変化

このトロンビンという酵素のはたらきで、血しょうの中にあるフィブリノーゲンというタンパク質がフィブリンに変化します。

フィブリンは、繊維状で水に溶けにくい性質があります。

  • フィブリンが血球を絡めとる
  • 血ぺいがつくられる

破れた後の血管の様子を、電子顕微鏡で見てみましょう(左画像)。

糸のようなものがフィブリンです。
このフィブリンが血球を絡めとり、血ぺいがつくられます。

このようにして傷口が塞がれるのです。

  • プラスミノゲンがプラスミンに変化
  • 線溶

岡田さん 「血液中にはプラスミノゲンというタンパク質が入っていまして、これが組織から出る活性化因子によって、プラスミンに変わります。そうすると、このプラスミンはその繊維素、フィブリンを溶かしてくれる。これが繊維素溶解です。繊維素っていうのは先ほどのフィブリンのことですけれども、これを溶かすという反応が起こってきます。」

  • プラスミノゲン
  • プラスミンがフィブリンを分解する

プラスミノゲンは、細胞から出てくる活性化因子によって、プラスミンという酵素に変わります。

このプラスミンが、フィブリンをゆっくりと分解します。

こうして、傷ついた血管が修復されると、すみやかにフィブリンはプラスミンによって分解され、血液は元どおり流れるようになります。

フィブリンがプラスミンによって分解される反応を線溶といいます。

  • 次回もお楽しみに!

岡田さん
「血液の非常に大きな役割として、物質の運搬……酸素を含めて運搬ということがあります。

運搬するためには流れなくてはいけませんから、血液はふだんはサラサラで、よく流れてくれないと困る。
ところが、いったん傷がついたら、できるだけ早く固まって、その傷口を塞いでくれないと困る。
非常に矛盾した仕事なんですけれども、これを見事に解決している。

しかも、血管壁の修復ができたら、できるだけ早くその血の塊は溶けてくれないと困る。
これも、見事に解決している。
ということで、すばらしい液体であると思います。」



細胞に酸素を届けたり、二酸化炭素を回収したり、ばい菌を見張ったり、土木工事みたいに修復したり……。
血液って、いろいろなことをしているんですね!

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