NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第16回

体内環境

  • 生物基礎監修:東京都立国立高等学校教諭 板山 裕
学習ポイント学習ポイント

体内環境

体内環境とは
  • 坂井建雄さん
  • 体内環境は細胞にとっての環境

ないと生きていけないのが、体内環境。
「体内環境」とは、何なのでしょうか?

お話をしていただくのは、解剖学者の坂井 建雄(さかい たつお)さんです。

解剖はわかりますが……体内環境とは関係があるのですか?


坂井さん 「人体を見るというのがいわゆる普通の解剖学ですが、ありのままを観察するというのが解剖学のいちばん素朴なあり方ですかね。メスやピンセットを使ったりして、分けながら見ていくというのもあります。さらに、顕微鏡を使って細かく見ていくという方法もあるわけです。環境というのは、生きている我々があって、そしてその外の環境があるという、そういう意味です。ところが、その『体内の環境』というときに、そこで意識されているのは体の中にある細胞なんですね。」


細胞!体内環境って、細胞にとっての環境なんですか?

  • 体外環境
  • 体内環境

私たち生物は、さまざまな環境で暮らしています。
光や温度、湿度など、生物を取り巻く環境のことを体外環境といいます。

これに対して、細胞を囲む体の内部の環境のことを体内環境といいます。

  • 細胞の環境の装置
  • 1粒1粒は細胞を表す

では、細胞はどのような環境で生きているのでしょうか。
装置でその様子を見てみましょう。

この紫色の1粒1粒は、細胞を表しています。
ギュッと詰まっているように見えます。

  • 粒と粒の間に液体が流れ込む
  • 細胞と細胞の間は液体に満たされている

ここに、液体を流し込んでみます。
粒と粒の間に、液体がゆっくりと流れ込んでいきます。

このように、細胞と細胞の間は液体に常に満たされているのです。

  • 体液

この液体は、体液です。
体液には、血しょう、リンパ液、組織液などがあります。
体液の成分や濃度、温度などが、細胞が生きていくために重要なのです。

  • 研究室の教科書
  • 細胞と細胞の間には隙間が空いている

坂井さん 「ここで見せられるようなものだと……組織学の教科書。結構、隙間がたくさん空いているんです。細胞と細胞の間の隙間。腎臓、脳組織……どういうところを見ても、細胞と細胞との間には、結構隙間がたくさん空いている。」


本当だ、隙間が空いている!

体内環境にとって重要なもの
  • 体内環境にとって重要なもの

坂井さん 「体内環境にとって重要なのは、細胞と細胞の間の隙間の液体で。細胞にとってみれば、栄養や酸素をやり取りする場所で。そこが一定になってくれていないと困る。」


一定って、ずっと同じ状態のことですよね。
でも、なぜ一定でないと困るんですか?

体液濃度が一定な理由
  • 体液濃度が一定な理由
  • 食塩水の濃度は0.9%

坂井さん 「外のイオンの濃度が変わってしまうと、細胞はすごく強い影響を受けます。細胞の外の濃度が高くなると細胞が縮んでしまったり、薄くなると細胞が膨らんだりします。だから、細胞の外の液体は、基本的には食塩水で、その濃度も一定に保っている。」


病院で食塩水を点滴するときは、その濃度は0.9%に決まっているのだそうです。
これより濃くても薄くてもいけないし、食塩水以外のものでもいけないのだといいます。


坂井さん 「人間の体は、体液を0.9%の食塩水にきっちり保っているということが、そういうところからもわかります。それが、細胞が生きていくための前提条件。」


細胞のまわりの体液が一定じゃないと、細胞が縮んだり膨らんだりするんですね。

細胞を生かす環境
  • 細胞を生かす環境

坂井さん 「もう少し具体的にいっていくと、細胞そのもの、体の中の一つ一つの細胞は、生きるために一生懸命努力をしているんです。その生きるための装置、さまざまな細胞がいろいろな姿かたちをしているけれども、体の中のどの細胞も共通して、細胞の中にはカリウムイオンが多くて。そして細胞の外にはナトリウムイオンが多くてという、そういう液の成分の違いがあり、不思議なことに、それがどの細胞を取ってみてもみんな共通しているんです。それが実は、体の細胞にとって生きている状態だということが、だんだんわかってきました。」

  • ヒトの体の構成成分の割合

体内環境について見ていきましょう。

ヒトの体の構成成分の割合を見てみると、水がほとんどを占めています。

  • 細胞内液
  • 細胞外液

そのうち、細胞内にある細胞内液は、体重の約40%です。
体を構成する細胞や、赤血球、白血球、血小板といった細胞の中にある液体が、それにあたります。

細胞の外にある細胞外液は、体重の約20%です。
細胞と細胞の間を満たしている組織液や、血管を流れる血しょう、リンパ管を流れるリンパ液がそれにあたります。

細胞内液と細胞外液のイオンの組成

細胞内液と細胞外液のイオンの組成は、図のように分かれています。

細胞内液には、陽イオンのカリウムイオン(K)と、陰イオンのリン酸水素イオン(HPO42−)が多く含まれています。
細胞外液には、陽イオンのナトリウムイオン(Na)や、陰イオンの塩化物イオン(Cl)が多く含まれています。

  • 体液濃度は0.9%
  • 一定に保つのに重要な臓器

細胞内液と細胞外液の濃度は、0.9%の食塩水に相当します。
細胞はすべて、同じ条件の体内環境で生きているのです。


どんな細胞でも同じ環境の中にあるんですね。
どうやって一定に保っているのでしょうか。


坂井さん 「いくつかの重要な臓器があって、その臓器を使って体外と物質をやり取りして、体の中の環境を一定に保ってくれているわけです。」

  • 循環系

体の中には、心臓を中心とした循環系とよばれるしくみがあります。
循環系は体外環境と体内の細胞との間で物質のやり取りをサポートしています。

血管系

リンパ系

循環系には、血管系とリンパ系があります。

  • 血管
  • リンパ管

血管系では、血管を通る血液によって細胞へと栄養分や酸素が運ばれます。
また、細胞で出た老廃物の回収も行っています。

リンパ系では、消化吸収した脂質を細胞へと運ぶ役割などをしています。
また、体を守る免疫のはたらきにも関係しています。

器官

このほか、肝臓や腎臓などの器官も、体内環境を保つ重要なはたらきをしています。
この体内環境を一定に保とうとする調整のしくみを恒常性といいます。


体内環境を一定に保つためのしくみが、いろいろあるのですね!

隙間が必要な理由
  • 細胞と細胞の間の隙間
  • 満員電車

そういえば、細胞と細胞の間に隙間があるといっていましたよね。
その隙間が、栄養や酸素をやり取りする場所なんですよね。


坂井さん 「細胞も、ギューッと集まっているところもあれば、隙間が空いているところもあります。満員電車を考えてもらえばいいと思うんですけれども。満員電車の中に人間がビシーッと入って隙間がないとつらいですよ。満員電車も苦しいですけれども、それでもまだ頭のまわりには空気がありますよね。もっともっと詰め込まれて、満員電車の中に人が寝転がされて、どんどんその人の上に……荷物のように人が集められた状態だったら、これはもうとんでもないですよね。細胞が密集しているとはそういう状態なので、隙間をたくさん空けて息ができるようにしてあげるという。実際そうなっているんですね、人間の体の中は。」


満員電車……確かに息苦しいし、空気が通らない感じ。
細胞も息苦しいとダメなんですね。

体内環境を保つしくみ
  • 毛細血管
  • 細胞のまわりの体液で栄養や酸素が届く

坂井さん 「細胞は、生きていくためには エネルギーを確保しなくてはいけなくて。そのためには栄養をもらって、酸素をもらって。そして、それをくっつけて燃焼させて、エネルギーになるんですよね。じゃあ、どこかから栄養と酸素をもらわなければいけない。それは血液を通して運ばれてくるものを受け取るしかないんですね。隙間が全然ないと、血液から栄養も酸素ももらえない。そこで、細胞と細胞との間に隙間が空いていて、そこを毛細血管が通って、そして毛細血管の血液から細胞外の液体を通して、細胞は栄養や酸素をもらっているんですね。結構、隙間が必要なんです。」


細胞のまわりの体液があることで、栄養や酸素が細胞に届くということがわかりました。
隙間、大事ですね!

体内環境の前提
  • 体内環境の前提

坂井さん
「体の中の細胞は、それぞれ一生懸命生きよう生きようと努力しているんですよね。
体内環境が変わってしまうと、その大前提を壊されてしまうようなものだから、生きていけないんですよ。
液の濃度を変えてしまうと、それだけでも影響を受けるし、液の成分が変わると影響を受けてしまうし。

細胞というのは、けなげで、かわいそうなくらい繊細なもので。
人間の体が生きているということ、そしてそれを細胞がつくっているということ。
その意味を考えたときに、細胞が生きているための前提条件というのを考えますし、そこに体内環境の役割というものがある。
それが体の生命を維持するための大前提であるということで、理解して学んでほしいと思います。」



私たちの見えないところでいろいろなものがはたらいて、体内を一定に保とうと調整が行われているなんて、驚きでしたね。
その詳しいしくみについては、次回以降のお楽しみです!

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