NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第11回

DNAの倍加

  • 生物基礎監修:東京都立新宿高等学校指導教諭 渡邊 正治
学習ポイント学習ポイント

DNAの倍加

  • 武村政春さん
  • 細胞分裂

前回(第10回)に引き続き、DNA研究者の武村 政春(たけむら まさはる)さんです。

まずは、前回の復習です。
細胞分裂とは、細胞が2つに増えることでした。
1つの細胞である受精卵が分かれて、分かれて……たくさんの細胞でできている体に成長してきました。

  • DNAが複製・分配される
  • 染色体が太くなる

分裂に先立って生物の設計図のDNAが複製され、すべての細胞に同じものが分配されるということでした。
そのとき、太く短い染色体になるため、顕微鏡で見ることができるようになります。

  • ムラサキツユクサの細胞分裂
  • イモリの細胞分裂
  • さまざまな形の核

左画像はムラサキツユクサの、中画像はイモリの細胞分裂の様子です。
植物も動物も、同じように分裂をしていました。
染色体が分かれていく様子は、ダイナミックですごいですよね!

ところで、染色体が分かれる前の、核が丸くなっているときは、何をしているのでしょうか?

DNA複製の準備
  • DNA複製の準備
  • G1期

武村さん 「一番最初は、DNAをまず細胞が複製する準備を始めようというところからですね。準備が始まって、DNAを複製する準備が整って、さあDNAを複製しようという話になります。だから準備段階が一番重要ですね。」


DNAを複製する準備のため、DNAの材料となるヌクレオチドが正しく備わっている必要があります。
またDNAを複製するためのタンパク質の準備も整っている必要があります。


武村さん 「さらに、複製した後のさまざまな現象に対処するためのタンパク質も増やしておく必要があります。2つの染色体をまとめているタンパク質といったものも、たくさんなければいけません。ですから、そういったようなものを準備する。一般的にDNA複製のための準備をする期間といわれる、G期といわれています。」


一見、何もしていないように見えますが、準備をしていたんですね。

  • S期の細胞の核

武村さん 「その準備が終わったら、今度はDNAが複製される時期、S期が始まります。」


S期の細胞を見てみると、真ん中にある核はG期とあまり変わらず、丸い形をしています。

  • G2期
  • G2期の細胞の核

武村さん 「DNAが複製し終わったあと、細胞分裂させるための準備を行う期間とよばれるものがありまして、それがG期ですね。G期というのは、細胞分裂の準備をする期間です。」


直前のS期で行われた、DNAの複製が正確に行われたかのチェックをすることも、G期の非常に重要なポイントだといいます。


武村さん 「このときだけチェックしているのではなくて。たとえばS期でDNAが複製されている間でも、チェックシステムっていうのは働いているといわれています。いつもチェックしているんです。それが終わってから、ようやく細胞が分裂するM期と呼ばれる期間に入ります。」

  • 間期はG1、S、G2期がある

細胞分裂の過程を詳しく見てみましょう

間期と分裂期を繰り返しながら分裂します。
一連の過程を
細胞周期と呼びます。


間期にはG期、S期、G期の3つの時期があります。

ではDNAの構成成分であるヌクレオチドなど、分裂に必要な物質の合成の準備を行なっています(DNA合成準備期)。
DNAを複製するための準備ができると、次のS期に移ります。

S期ではDNAの複製が行われます。

複製が終わるとに入ります。
期は分裂期に入る準備が行われています(分裂準備期)。

そのあとは分裂期に入ります。

  • 分裂期ー前期
  • 分裂期ー中期
  • 分裂期ー後期

分裂期は前期・中期・後期・終期に分かれます。

前期では核の中に細長い染色体が現れます。
中期では染色体が赤道面に並びます。
後期は染色体が両極に移動します。

  • 分裂期ー終期
  • 再びG1期へ

そして終期で細胞質分裂が起こり、細胞分裂が終了します。

さらに細胞分裂が行われる場合は、再びG期に入ります。

チェックをする理由
  • チェックをする理由
  • DNAポリメラーゼ

チェックを何回もするのは、なぜでしょうか?


武村さん 「DNAを複製するとき、いかに正確に、親の情報を子に伝えるかは重要なので。したがって、その複製をするときに、いかにエラーを起こさないようにするか。実はDNAを複製するのはDNAポリメラーゼというタンパク質なんですね。タンパク質は万能ではなくて、ちょっとはミスをするわけです。だいたい10万回とか100万回とか、実はよくわかってないんですが、1億回という人もいるんですけども。そのくらいに1回だけコピーミスをすると。」


ええ!間違えたら大変じゃないんですか?
どうするんですか?

正確な複製を行う仕組み
  • 正確な複製を行う仕組み
  • ゲノム

細胞分裂のそれぞれの期間の中には、必ずチェックをするポイントがあるのだと武村さんはいいます。
その前に行われたことが、きちんと正確に行われているかということをチェックし、チェックができたら先へ進むというしくみがあるのだそうです。


武村さん 「石橋を叩いて渡るじゃないですけども。分子のレベルでも、複雑なしくみでチェックが行われています。したがって一番重要なのが、DNAが複製されたあと、正確に複製されているかをチェックするポイント、そこを乗り越えられるかというところ。それから、DNAの複製がうまく全部終わったか。我々のゲノムはすごく長いので、1ゲノム30億塩基対もありますので。全部きちんと間違わずに複製されて完了して、そのまま細胞分裂をしてもいいかどうかというのをチェックするポイントというのがある。だからそこが、正確な複製にとっては一番重要なところでしょうね。」


ということは、分裂の前の準備に一番時間がかかるんでしょうね。

  • タマネギの根の部分の細胞

タマネギの根の先端部分の細胞を見てみましょう。

ところどころに、糸がほどけたような分裂期の染色体が見えますが、ほとんどの細胞は核が丸い状態、つまり間期にあることがわかります。

  • 2つの細胞に注目
  • 最後の1時間で細胞が分裂する
  • 最後の1時間で細胞が分裂する

ヒトの培養細胞で体細胞分裂を見てみましょう。
約16時間に1回の割合で、分裂を繰り返します。

黒枠の中には、2つの細胞が見えます。
時間を早めてこの細胞の変化を見ていきます。

長い時間、2つの細胞には目立った変化は見られません。

最後に急に細胞が変化して、それぞれ2つに分かれました。
細胞が分裂するのは、16時間のうち、最後の1時間ほどでした。
それ以外の時間は、間期にあります。


大抵の細胞は、分裂の準備をしているんですね。
結構、時間をかけていますよね!

  • 細胞周期

武村さん 「一番典型的な、うちの研究室でも培養しているような細胞があります。たとえばヒト由来の細胞ですと、分裂する1サイクル、細胞周期が非常に早くて、だいたい12時間もあれば分裂します。だから1日置けば、大抵1つ分裂しますよという感じなんですね。」


1日で1つですか。
早いような遅いような……。

細胞の間期と分裂期の比較

さまざまな生き物の、細胞の間期と分裂期の長さを比べてみましょう。

マウスの小腸上皮細胞では、間期が18時間なのに対し、分裂期は1時間です。
タマネギの根端細胞は、間期が20時間、分裂期は5時間です。
ヒマワリの根端細胞では、間期が8.9時間、分裂期が1.6時間と、いずれも間期の方がかなり長くなっています。


何もしていないように見える間期ですが、時間をかけて準備して間違えないように確認をしながら、DNAの複製をしているんですね。

  • DNA複製の写真
  • 緑色に光っているのが細胞核

武村さん 「この写真は、ヒトの細胞のDNAが複製されている様子を明らかにしようとして、10分間だけ、複製されたDNAが緑色に見えているという図です。」


緑色に明るく光っているのが、細胞の核です。
複製するDNAは核の中にしかないので、核が明るく見えています。


武村さん 「ところが、染まっていないものも実はいくつかあります。これは何を意味しているかというと、この辺の細胞(染まっていないもの)は、その10分間には複製されていないことを意味していて、この辺の細胞(染まっているもの)は、その10分間にDNAが複製されている様子がわかる。」

  • DNAが活発に複製される
  • DNAの複製が活発でない

なんだか、緑色の光の輝きが違いますね。


武村さん 「細胞で、緑色の見えるパターンが違うのはなぜかというと、こちら(左画像)は非常に活発にDNAが複製されているので、DNA全体が非常にきれいに染まります。しかし、こちら(右画像)は比べると、バラバラにDNAが染まっているように見えているので、まだ活発な時期ではないのかなと。」


DNAの複製が活発に行われている時期と、そうでない時期があるんですね。

細胞周期でのDNA量の変化図

細胞周期の、それぞれの時期でのDNAの量の変化を見てみましょう。

期ではDNAの複製の準備を行なっています。
DNAの量は増えていません。

S期に入るとDNAの複製が行われ、S期の終わりにはDNAの量は2倍になります。

期から分裂期にかけてはDNAの量は2倍のままです。

分裂が終了すると、DNAが2つの娘細胞に分配されています。
それぞれの娘細胞が持つDNAは、元の量になるのです。



武村さん 「基本的にG期は、DNAの量としては特に何も変わらないですね。S期になると、徐々にDNAが複製されてきますので、だんだん量が増えていく。S期が終わる頃には、DNAの複製が完了するという意味ですから、DNAの量は2倍になっている。G期は2倍のまま進み、最後は分裂期に2つの細胞に分かれるわけなので、2倍になったDNAはそれぞれの細胞ごとに1つにまた戻ると。ですからG・G・Sの中では、そのS期だけで、DNAの倍加が起こるということになります。」

  • DNAの量を測定する装置

これは、DNAの量を測定する装置です。

  • DNAの量を測定したグラフ
  • DNAの量の簡易グラフ

実際に測定をすると、左図のようなグラフが得られます。
横軸は一つの細胞の中に含まれるDNAの量、縦軸は細胞の個数です。

DNAの量を「1」「1〜2」「2」に分けます。
これを簡単なグラフに直してみましょう(右図)。

複製前の「1」と、複製後あるいは分裂中の「2」の細胞はたくさんあります。
複製中の「1〜2」の細胞は少ないことがわかります。

  • DNAには複製開始点が何千か所もある

複製中の細胞が少ないのはなぜなのでしょうか?


武村さん 「人間の場合は1本1本のDNAが長いので、端からDNAをポリメラーゼで複製していくと時間がかかって仕方がない。人間の場合には、1本のDNAにつき何千か所もの、DNAを複製する最初のポイントである複製開始点というのがあって。イメージとしては、一斉に始まって数時間で複製を終えると。端っこから順番にというわけではないです。」


端から複製されるのではなくて、たくさんの場所で行われて、短時間で終わるんですね。

複製の正確さとエラー
  • 複製の正確さとエラー
  • 次回もお楽しみに!

武村さん
「DNAの複製というのは正確さが命で。
いかに正確に親の情報、遺伝子を子に渡していくかというのが至高の目的だと思うんですね。
それで、その生物というのは何回も何回もDNAを複製して生きてきたわけなんですけど。

正確に、正確に、伝えようというふうにしているんですけれど、やはり正確に伝えきれない部分もあって。
それはやっぱり子孫につながるんですね。
ただそういうのがあるからこそ、我々生物は進化してきたので。
だから、表裏一体ですね。

エラーがないというのはいいことだけど、エラーがないと、進化はしなかったはずなので。
だからその両方のバランスをうまく取りながら、我々はDNAを複製してきたのかなというふうには思います。」



エラーが起きると困るけど、エラーがあるから進化する……う〜ん、深い!
それにしてもどうやって、生き物はDNAを正確に複製しているのでしょう?
それは次回、また武村さんにお話しいただきます!

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