NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第10回

DNAの複製と分配

  • 生物基礎監修:東京都立日比谷高等学校主任教諭 平山 大
学習ポイント学習ポイント

DNAの複製と分配

  • 研究室のようす
  • 武村政春さん

DNA研究者の、武村 政春(たけむら まさはる)さん。
何の研究をされているのでしょうか?


武村さん 「ウイルスを感染させるアカウントアメーバというアメーバがいまして。その細胞を植えついでいるところです。」


アメーバに、ウイルスを感染させる?

  • アカウントアメーバ
  • 24時間後

武村さん 「これは、これからウイルスを感染させる、先ほど植えついでいたアカウントアメーバの写真です。このように、フラスコの底にペチャッとへばりついて、ワーッと増えているところです。(右画像は)24時間たったものなんですけれども、先ほどのような形は全然見られず、全部のアメーバの細胞が丸くなって、浮き上がってきてしまっているところですね。」


時間がたつと、ウイルスに感染してアメーバが小さくなっちゃうんですね!

  • 72時間後

武村さん 「72時間後にもなりますと、ご覧のように、ほとんどアメーバの細胞はどこにも無くて。細かい粒のように見えるものが、全部ウイルスですね。アメーバの中で増えて、アメーバを殺して飛び出してきたミミウイルスたちです。」


アメーバがほとんどいなくなってしまいました!
ウイルスは、どうやって増えているのでしょうか?

  • 巨大ウイルス
  • 複製される巨大ウイルスのDNA

武村さんは巨大ウイルスを研究していますが、そのしくみは、まだほとんどわかっていないのだそうです。


武村さん 「ミミウイルスのDNAがここでバンバン複製して、光っているのが全部DNAなんです。このように複製して、その複製されたDNAを1個ずつ取り込んだミミウイルスの、子どものウイルスがバッと外側に向かって飛び出そうとしているところですね。このピカッと光った、複製がバンバン行われているところで、どうやってDNAが複製されているのか。それはまだ謎なので、まさにそこをこれから研究しようとして、アメーバ実験、感染実験をやっているところです。」


DNAが複製されて、ウイルスが増えるのですね。
DNAの複製って、何なんでしょうか?

DNAの複製とは
  • 単細胞生物は分裂して子孫を残す
  • 多細胞生物は生殖細胞に次の世代を受け渡す

遺伝子は、私たち生物の体を作るために必要な設計図のようなものです。
武村さんによると、細胞が増えたり生物が生殖をして子どもを作るときには、必ずその設計図も一緒に、子どもや次の細胞に受け継がれなければならないといいます。

武村さん 「たとえば、単細胞生物だったら自分自身の体を分裂して、その子孫を残していかなければならない。私たちのように、たくさんの細胞からできている多細胞生物の場合は、生殖細胞に次の世代を受け渡す役割を担わせて、その持っているDNAを次の世代に受け渡していく。そのために必要なプロセスが、DNAの複製だと。だから私たちが生き続けていくためには、DNAの複製は非常に重要なステップなんですね。」


生き続けていくために……って、すごく重要じゃないですか!
細胞はどのように増えていくのでしょうか?

分裂して増える細胞
  • 分裂して増える細胞

武村さん 「生物はすべて細胞からできています。したがって、単細胞生物であっても、多細胞生物であっても、必ず細胞は分裂します。ただ、その分裂のしかたは必ず決まっていて、1個の細胞が2個に増える、というだけなんですね。だから、たとえば受精卵が、私たちの体の何十兆の細胞になるためには、1個が2個、2個が4個、4個が8個……というふうに、倍々で複製して、分裂していくんですね。」

  • ヒトの受精卵
  • 受精卵の細胞分裂
  • 分裂を繰り返して細胞が増える

これは、ヒトの受精卵です。

時間がたつと、細胞が分かれていくのがわかります。
1つの細胞が、分裂を繰り返しながら、ヒトの細胞は増えていきます。
細胞が分裂するときに、DNAも複製され、分配されていきます。


細胞が分裂するときに、どうやってDNAは分けられていくのでしょうか?

  • ムラサキツユクサの細胞分裂
  • ひものようなものが現れる
  • 染色体は2つに分裂される

細胞分裂の様子を観察してみましょう。
ムラサキツユクサの細胞が分裂するところを、時間を縮めて見てみます。

分裂が始まると、ひものようなものが現れ(中画像・矢印)、細胞の両端に引っ張られるように分かれていきます。
この、ひものようなものが染色体です。

分裂の際に、染色体はふたつに分かれ、細胞に等しく分配されるのです。

細胞分裂とDNA
  • 染色体が太くなる
  • 染色体が分かれる

武村さん 「細胞が分裂するときに、まずDNAが複製された状態になる。DNAは普段は核の中に散らばっていて見えないんですけれども、その後、細胞が分裂する直前になると、ギュッと縮まってきて普通の顕微鏡でも見えるくらい太くなるんです。その太くなった染色体が、細胞が分裂する直前に、まず染色体がふたつに分かれるんですね。そのあと、細胞がふたつに分かれる。そういう方法で、DNAは複製されたあと分配される。そういうしくみになっています。だから、染色体が複製されて分配されるというのは、まさに細胞分裂の一番重要なイベントということですね。」

  • 母細胞と娘細胞
  • 細胞分裂の概略

細胞分裂前の細胞を母細胞といい、分裂したあとの細胞を娘細胞といいます。

母細胞では、DNAを含む染色体が、核の中に分散しています(右画像・左端)。

細胞分裂のときに、染色体は凝縮して、太く短くなります(右画像・右から3番目)。
このとき、複製されてふたつになった染色体が、中央付近でくっついた状態になっています。

そのあと染色体は、中央から分かれて両極へ移動し、核の分裂が終わります(右画像・右から2番目)。

核の分裂に続いて、核以外の細胞質もふたつに分かれ、2個の娘細胞となります(右画像・右端)。


こうやって、規則正しく分かれていくんですね!
母細胞、娘細胞……なんだか、身近な感じに思えてきました!
どんな生き物でも、同じように細胞分裂するのでしょうか?

植物と動物の細胞分裂
  • 植物と動物の細胞分裂
  • 植物と動物の細胞分裂 分裂後

もう一度、細胞分裂を見てみましょう。
それぞれの画像の左側はムラサキツユクサ、右側はイモリの細胞分裂です。
右画像のほうが時間が経過しています。


こうして見ると、植物も動物も同じように分裂して、細胞が増えていくんですね!

細胞分裂とDNA複製
  • 細胞分裂とDNA複製

分裂するときって、細胞の中は大きく動いているんですね!
どうやって「分裂するぞ!」って気張るんでしょうか?


武村さん 「上からの指令みたいなものが、細胞にやってくるわけです。そうすると、細胞の核の中でそれを受け取って、さまざまな細胞分裂の準備が始まるんです。具体的にいうと、一番最初にそのDNAの複製がくるんですが、そのためのタンパク質とか、酵素とか。そういったものが細胞の中で作られ始める。そしてDNAの複製に十分な量がそろったら、そこでDNAの複製が始まると。」

  • 染色体が真ん中で1列に並んでいる
  • 染色体が2つに分かれている
  • 染色体が両極に分かれている

細胞分裂の際の染色体の様子を、詳しく見てみましょう。

タマネギの根の部分の細胞を、酢酸オルセインという核を染める溶液で染色してあります。
さまざまな分裂の段階にある細胞を見ることができます。

左画像の細胞は、染色体が真ん中の部分で1列に並んでいます。
中画像の細胞では、染色体がふたつに分かれています。
そして、右画像の細胞はすでに染色体が両極に分かれた状態になっています。

このように、細胞分裂にはいくつかの段階があることがわかります。

染色体が分配される過程

細胞分裂で、どのように染色体が分配されるのか。
その過程を詳しく見てみましょう(画像は動物細胞の細胞分裂の過程)。

細胞分裂は、間期分裂期に分けられます。
さらに分裂期は、前期・中期・後期・終期に分けられます。

間期には、DNAを含む染色体が複製されます。

  • 分裂期 前期
  • 分裂期 中期・後期・終期

分裂期に入ると、前期には細長い糸のような染色体が現れ、次第に染色体は太く短くなります。
前期の終わりには、核膜は消えています。

中期では、染色体が細胞の赤道面に並びます。

そして後期に入ると、染色体は分かれて両極へ移動を始めます。

終期では、染色体は凝縮が緩み、細くなります。
そして、細胞質分裂が完了して、2個の娘細胞となるのです。

  • 糸のようなものが中心に向かって伸びる
  • 染色体が並ぶ

細胞分裂のときに、染色体をうまくふたつに分けるには、何か仕掛けがあるのですか?


武村さん 「将来ふたつの細胞になる、頭の部分から糸のようなものができて、中心に向かって伸びていて、これから分かれようと染色体が並んでいる。その糸みたいなものは実際にはタンパク質でできているんですが、その道筋に沿って、ふたつの染色体が分かれます。」

  • 紡錘体

これは、分裂中期にある細胞の核を、レーザーを使った特殊な顕微鏡で撮影した画像です。

中央で赤く光っているのが染色体です。
染色体は1列に並んでいるのがわかります。

染色体のまわりでは、緑色の糸状のものがラグビーボールのような形を作っているのが見えます。
これを、紡錘体(ぼうすいたい)といいます。

紡錘体を形成する糸状のものを、紡錘糸(ぼうすいし)と呼び、細胞が分裂するとき、染色体はこの糸に沿うように細胞の両端に移動していきます。

細胞分裂では、複製された染色体はこのようにして、ふたつの細胞に分配されるのです。


紡錘糸という、染色体を分ける糸があるなんて……ちゃんと分配できるように、細胞の中に部品もあるんですね!

ウイルスのDNA複製
  • ウイルスのDNA複製
  • 細胞分裂

細胞分裂のときに遺伝情報が伝わるしくみがあることは、わかりました。
ところで、武村さんが研究されている巨大ウイルスとは、どんな関係があるのでしょうか?


武村さん 「ウイルスとは、実は細胞からできていないんですね。ですから、ウイルスは生物ではないといわれています。ウイルスとは、生物の細胞の体の中に感染して、そこで増えます。増え方は2倍、4倍……ではまったくなくて。1個のウイルスが、たとえば細胞の中に感染すると、それが細胞の中でいきなり1万個とかに増える。で、そのままその細胞を蹴破って出て行くという、そういう複製のしかたをするんです。」


DNAを持っていること、あるいはそのDNAを複製することには変わりありません。
しかし、その複製が次から次へと起こるのがウイルスなのだといいます。


武村さん 「細胞は、いっぺん複製したら分裂し、複製したら分裂し……と、そのつどちゃんと順を追っているんですけれども、ウイルスの場合は(複製が)なし崩し的に起こって、最後は1万個になって細胞を出て行くと。そこが大きく違うところですね。」


DNAを複製するということは同じだけど、細胞を持っていたり、持っていなかったり、いきなり複製するのと丁寧に複製するのと……いろいろあるんですね!

  • 次回もお楽しみに!

武村さん
「それだけ、違うしくみで複製していく、細胞とウイルスと……まったく異なる生命体といいましょうか。
そういったものが、なぜ地球上に存在しているのか、どう共存しているのか。
そういうところに、私の研究の方向性があって。

共通性と多様性というのが、生物の大いなる特徴なんですけれども、ウイルスと細胞でも共通性と多様性がある。
そこをうまく突き詰めて、『なぜ私たちは今ここに、ウイルスとともに生活しているのか』という、生命・生物のおもしろさがわかってくるのではないかと思っています。
それを突き詰めて研究したいと思っています。」



私たちの体の中で、細胞はこんなにミラクルなことを起こしているんですね!
ウイルスも、すごい!

次回は武村さんに、DNAがいつ・どんなふうに複製されているのかを詳しく教えてもらいます。
お楽しみに!

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