NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第9回

DNAとゲノム

  • 生物基礎監修:成城学園中学高等学校教諭 中村 雅浩
学習ポイント学習ポイント

DNAとゲノム

  • 胡桃坂仁志さん
  • 塩基の並びが遺伝情報

構造生物学者の胡桃坂 仁志(くるみざか ひとし)さんです。

前回は、DNAと遺伝子についてお話しいただきました。
4種類の塩基の並びが、遺伝情報でしたね。

今回のテーマは、「DNAとゲノム」です。

  • DNA、遺伝子、ゲノム

胡桃坂さん 「DNA、遺伝子、ゲノムはとてもコンフューズ……混乱しやすい言葉なんです。」


DNAは化学物質の名前で、デオキシリボ核酸の略称です。
DNA自体は化学物質です。


胡桃坂さん 「遺伝子とは、化学物質が意味のある順番で並んだ文字列で、それが生命を作る・起動するために必要な情報を含んでいるものです。ゲノムとは、その生物に含まれている、その生物を作るのに必要なすべてのDNAの情報です。」

  • DNAは細胞の核の中にある
  • DNAの形
  • DNAが折りたたまれ含まれる

サカナの子はサカナ、ヒトの子はヒト。
その生物になるために必要なDNAのセットを、ゲノムといいます。

遺伝情報を含むDNAは、細胞の核にあります。
DNAは細胞が分裂するときに集まり、中画像のような形になります。
この中に、長い1本のDNAが折りたたまれ、含まれています(右画像)。

  • ヒトの染色体は46本
  • 生物ごとの染色体の数

ヒトでは、染色体は23種類あります。
体を作る細胞には、同じ大きさと形を持った染色体が2つずつ、1対あるため、ヒトの染色体は46本存在することになります。

※男性では、1対だけ染色体の大きさが異なります。


染色体の数は、

キイロショウジョウバエ 8本
イネ 24本
トノサマガエル 26本
ヒト 46本
ウシ 60本
コイ 100本

と、生物の種類によって違います。

  • ヒトの塩基対は約60億

ヒトの46本のDNAに含まれる塩基対は、約60億あります。

母と父からくる遺伝情報
  • 母と父からくる遺伝情報
  • ヒトゲノムは30億

胡桃坂さん 「精子と卵子が受精によって結合し生まれる、ヒトの第一歩である受精卵になると、卵子から30億塩基対、精子から30億塩基対がきますので、60億の文字列になるわけです。母親からくる分と父親からくる分で、ヒトを作るのに必要な情報というのはどちらか一方でいいんです。」


この遺伝子は母親のものが使われて、父親のものは使われていない、もしくはその逆……ということが、体のあちこちで起こります。
そのため、母親に似ているけれども父親にも似ているし、どちらにも似ていない感じにもなると胡桃坂さんはいいます。


胡桃坂さん 「半分だけではヒトはできないんですけれども、情報量としては半分で済むので、それがヒトゲノムと呼ばれていて。だから、ヒトゲノムは30億なんです。たとえば大腸菌のゲノムというと、大腸菌のDNAは約460万塩基対。ヒトが30億塩基対×2なので、だいぶ小さいんですけれども。その460万の文字列すべてが、大腸菌のゲノムです。基本的には、ゲノムに含まれているDNAの情報というのは、その生物を作るのに必要なものです。」


30億!やはりヒトには、たくさんの遺伝子が必要なんですね。

  • 遺伝子はゲノムの数%

胡桃坂さん 「30億ある中の1〜2%くらいが、タンパク質のアミノ酸配列を指定している領域になっています。それがいわゆる遺伝子と呼ばれているところです。それが、ヒトではだいたい2万数千個あるといわれています。」


30億の塩基、すべてが遺伝子というわけではないんですか?

  • 体細胞の中に含まれる核
  • 1個の核に46本の染色体

ヒトの体細胞1個の核には、46本の染色体があります。

卵と精子の塩基対が一緒になる

そこに含まれるDNAの塩基対は、約60億。
これは、卵に含まれていた30億の塩基対と、精子に含まれていた30億の塩基対が、受精によって一緒になったためです。

  • ヒトの塩基対には約2万の遺伝子
  • ゲノムの中で遺伝子が占める割合は数%

ヒトの30億の塩基対の中には、約20,000の遺伝子が含まれています。

ゲノムには、遺伝子の領域と、遺伝子ではない領域が含まれます。
ゲノムの中で遺伝子が占める割合は数%といわれています。

  • 生物の種類によって塩基対と遺伝子の数も違う

生物の種類によって塩基対の数と遺伝子の数も違います。

大腸菌は、約460万の塩基対の中に4,400の遺伝子があります。
イネは、4億の塩基対の中に33,000の遺伝子があります。

遺伝子の領域と遺伝子でない領域
  • 遺伝子の領域と遺伝子でない領域
  • 遺伝子でない部分も大事

ゲノムの中の数%にしか情報がないということは、無駄が多いということなのでしょうか?


「ゲノムとは設計図と考えるとわかりやすい」と胡桃坂さんはいいます。
たとえば家を作るには、家のための設計図があります。
柱のサイズや材質、立てる本数から場所、そして天井を張って梁を作り……というようなことが描かれているのが設計図です。

この設計図が、白い紙に黒いインクで描かれているとします。
紙の中でインクが占めている面積はわずかなものです。
また、黒い紙の上に黒いインクで描いてあると、読むことができません。
それと同じことがゲノムでも起こっているのだといいます。


胡桃坂さん 「DNAの遺伝子も、ほかの98%の部分があってはじめて、1〜2%の部分が読めるようになっているんです。私たちは、白紙の部分も含めて……もちろん“インクで描かれた部分”がどうやって読み取られているのかも研究していますし、書かれていない白紙の部分、つまり紙自体がどういうものなのかも調べています。その紙自体に意味があると思っています。」


確かに、黒い紙に黒いペンでは、何が書いてあるのかわからないですね。
白い部分、遺伝子ではない部分も大事なんですね。

  • DNAとゲノム

「DNAとゲノム」 作詞・作曲 胡桃坂仁志

ゲノム ゲノム それは
生物の設計図 DNA
アデニン チミン グアニン シトシン
それはDNAのパーツ
DNAの長い鎖辿れば
生命の秘密がそこに
ヒトはヒト サルはサル
花は花 鳥は鳥
ゲノムだけが知っている 運命

長いDNAがどうやって核に収まる?
  • ヒトの細胞核は5〜10μm
  • 長い糸を物に巻きつける

胡桃坂さん 「ヒトの細胞核ってだいたい5〜10μmの球体なんですね。そこにどのくらいの長さのDNAが入っているのかというと、だいたい2mなんです。まずどうやって折りたたんだら、そんな巨大な・長大なものを、そんな小さな細胞核の中に折りたたんで入れられるのか。というのが1つのクエスチョンだし……秘密だらけですね。」


たとえば、長い糸のようなものがDNAだと考えた場合、その糸をかき集めると、絡まって切れてしまいます。
長い糸を丁寧にしまうには、物に巻きつけることで、絡まらずコンパクトに折りたたむことができます。
実際に、生物も同じことをしているのだといいます。

  • ヌクレオソーム
  • DNAがヌクレオソームによって数珠のようになる

胡桃坂さん 「ヒストンというタンパク質のまわりにDNAを2回巻きつける。それをまた、隣に同じものを作って2回巻きつける。隣に2回、隣に2回……と延々と繰り返していって、ビーズみたいにするんですね。ヒストンにDNAの巻きついたこれをヌクレオソームというんですけれども。このビーズを、並んで、まず折りたたみます。すると、今度はDNAがヌクレオソームによって数珠のようになります。」


ヒストンに、ヌクレオソーム……難しい言葉が出てきました。

  • 核の中にはDNAが入っている
  • 染色体は1本の糸からできている

真核細胞の核の大きさは、1mmの1/100ほどです。
核の中にはDNAがたくさん入っています。
このうちの1つの染色体を取り出し、ほぐすと、たった1本の細くて長い糸からできていることがわかります。

これが、DNAです。
1つの細胞の核に入っている46本のDNAの長さをすべて足し合わせると、約1.8mになります。

  • ヒストン
  • ヌクレオソーム
  • クロマチン

DNAはヒストンというタンパク質に巻きついています。
ヒストンにDNAが巻きついたものをヌクレオソームといいます(中画像)。
このヌクレオソームが集まってできたものが、クロマチンとよばれます。

DNAはこのようにして、直径わずか1/100mmほどの核の中に収納されているのです。

進む折りたたまれ方の研究
  • 進む折りたたまれ方の研究
  • ヌクレオソームの研究

胡桃坂さん 「昔は、その数珠がさらに、らせん状に折りたたまれているモデルが考えられて、これが一番有力な候補でした。ですが、最近はそうでもないという発表がいくつか出されて。巻きつき方も、これまではヒストンにDNAが2回巻きついたヌクレオソームが単位で、これが並んでいるといわれていましたが、それも、いろんな種類がまだあるのではないか、という話になっています。どんどん日進月歩で変わるので、本当におもしろいです。」


胡桃坂さんは、日進月歩で進む研究の真っ只中にいるんですね!

胡桃坂さんが解明したDNAの折りたたまれ方
  • ヌクレオソームの結晶
  • 胡桃坂さんが解明したDNAの折りたたまれ方

ヒストンに巻きついたDNA、ヌクレオソームをたくさん集めます。
左の画像は、ヌクレオソームの結晶です。

この結晶を調べて、右画像のような形をしたヌクレオソームがあることがわかりました。
緑色のくるくる巻いているのが、ヒストンというタンパク質。
そのまわりを取り巻いている、オレンジのロープのような二重のらせんがDNAです。

  • 3周巻きついた構造体

胡桃坂さん 「これは、2つのヌクレオソームがぶつかって、ヒストン14個が1つのかたまりになって、そのまわりにDNAが3周巻きついた構造体ができあがっています。これは仮説として言われていましたが、実際にどういうものができているかはわかっていなかった。これを、世界で初めてこういう構造体が実際に存在すると示した、最初の証拠になったわけです。」


ヌクレオソームの形や、DNAの折りたたまれ方が、遺伝子がどのようにはたらくのかを知る手がかりとなるそうです。

研究で何を解明するのか?
  • DNAの折りたたまれ方が生物の仕組みと関係する?
  • 折りたたまれ方で遺伝子がオン・オフ

胡桃坂さん
「実際は、DNAからタンパク質が作られて、そして生物ができて、生命が生きている。
ものすごい不思議なことなんですよ。
実際は何もわかっていないに等しい。
なので、どうやって生物が生きているのかということを知りたいですね。
ただ、それだと道はまだまだとても遠い。

今は、僕のレベルで知りたいことは、真核生物の中で……たとえばヒトの中で、遺伝子がどうやって読み分けられているのか。
それは、DNAが塩基配列に書き込まれているATGCだけの情報ではなくて、実際に細胞核の中で遺伝子が折りたたまれている、折りたたまれ方の違いによって、オンになったりオフになったりすると。
そういうメカニズムだということが本当に最近わかってきて。
その折たたまれ方と遺伝子のオンオフのメカニズムがどういう関係にあるのかということを知りたいと思っています。」



そもそも、体にあるすべての細胞の中に、同じDNAが入っているのでしょうか?
それは、次回のテーマになります。
お楽しみに!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約