NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2018年度の新作です。

生物基礎

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今回の学習

第8回

生物と遺伝子

  • 生物基礎監修:成城学園中学高等学校教諭 中村 雅浩
学習ポイント学習ポイント

生物と遺伝子

遺伝子によってどうやって生物ができているのか?
  • 胡桃坂 仁志さん
  • サルの子はサル

構造生物学者の、胡桃坂 仁志(くるみざか ひとし)さん。
細胞の部品の、立体構造や機能の解明を通して、生物が生きるメカニズムを調べています。


胡桃坂さん 「私の研究はですね。基本的に、DNAや遺伝子とかがはたらいて、それで生物ができあがってくる。どうやってそれが起こるのかということを知りたいと思っています。」


サルの子はサルですし、サカナの子どもはサカナです。
サカナの子がヒトにならないのは、なぜなのでしょうか?
そもそも、DNAや遺伝子とは、何なのでしょうか?

  • ヒトを作るための図面

たとえば、家を作るときには「ここに柱を立てる」「ここに屋根を作る」ということが図面に描かれています。
ヒトを作るためにも、そのような図面、指令書があるのだと胡桃坂さんはいいます。


胡桃坂さん 「目を作るのであれば目を作るのに必要な細胞が、皮膚を作るには、皮膚を作るのに必要な細胞がある。皮膚を作るのに必要な細胞が間違って目にできると、目の中に皮膚ができて、目が見えなくなってしまう。だから、絶対に間違えちゃいけない。その設計図が何かというと、DNAだということがわかったというわけです。」


生物ができあがっていくための設計図が、DNA。
でもDNAは、遺伝子なのでしょうか?
遺伝子とDNAは、何が違うんですか?

  • 口の中の細胞が含まれる
  • 溶液を混ぜる

ヒトのDNAを取り出してみましょう。

口の内側を軽くかんで、少しの水を含み、すすいで吐き出します。
この水には、口の中の細胞が含まれています。

その水を、3ml試験管に移します。
そこに、合成洗剤を薄めた液を2ml加え、溶液を混ぜます。
DNAを取り出すために、タンパク質分解酵素を5滴入れ、さらに飽和食塩水を5滴入れます。

  • 試験管を湯煎する
  • 水とエタノールの境目にDNAが見える

約50℃のお湯に、試験管を10分間漬けます。
冷ましたあとに、試験管の中にエタノールを10ml加えます。

すると、水とエタノールの境目にモヤモヤしたものが見えてきました。
これが、DNAです。
DNAが集まって束になり、見えるようになったのです。

  • 遺伝とは子が親に似る現象
  • 遺伝子

子が親に似るという現象は、すべての生物で見られます。
親の形や性質などの形質が、子、あるいはそれ以降の世代にあらわれることを遺伝といいます。
親から子へ受け継がれる形質の情報は
遺伝子とよばれ、遺伝子は生物の持つDNAという物質に含まれていることがわかっています。


DNAは、生き物であれば必ず持っています。

DNAとは?
  • CD

DNAって、生物はみんな持っているんですね。
このDNAにどうやって遺伝子が入っているのでしょうか。


胡桃坂さん 「このたとえが正しいか微妙かもしれませんが……たとえば、音楽のCD。CD(ディスク)という実体がありますよね。CDの中に書き込まれている情報は目では見えないですけれど、そこから読み取って音楽が流れる。中に書き込まれている情報が、遺伝情報ですよね。」

  • 4種類の塩基
  • 細胞核の中に60億文字

胡桃坂さん 「DNAというのは化学物質の名称で。塩基でいうと、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)。この4種類の塩基が、ずらーっとつながって。このATGCという文字列。文字の並びが、設計図なんですね。文字の並び方によって、目や、皮膚や、脳みそを作るのに必要な指令が書いてあったりするんです。それがどこにあるのかというと、細胞1個の中の、細胞核の中に、30億文字×2……つまり60億文字が閉じ込められている。」


60億文字!?それが細胞核の中にあるなんて……ミラクルですね。

  • 頬の粘膜から細胞を採取する
  • 細胞
  • 染色体

私たちの体は細胞からできており、DNAは、細胞の核にあるといわれています。
ヒトの細胞の核を見てみましょう。

口の中の頬の粘膜から細胞を採取します。
細胞に染色液をかけると、はっきりと色が染まったところがあります(右画像)。
この部分が核です。

核の中には、特定の色素で染まりやすい染色体が存在します。
染色されやすい構造ということで、染色体とよばれるようになりました。

  • 動物細胞の図説
  • 染色体中にDNAは含まれる

この染色体中にDNAは含まれているのです。

  • 原核生物
  • 原核細胞
  • 細胞質基質の中のDNA

核を持たない原核生物では、細胞質基質の中にDNAが存在します。

  • 塩基

DNAには、塩基と呼ばれる部分があります。
塩基には、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)の4種類があります。
この塩基の並びが、遺伝情報になります。

  • 遺伝情報は塩基の並び
  • 塩基配列

DNAの4種類の塩基は鎖のようにつながっていて、2本の鎖が並んだ構造をしています。
この塩基の並びを塩基配列といいます。

2本の鎖のうち、どちらかの塩基配列が遺伝情報として使われます。
塩基配列や塩基の数は生物の種類によって異なります。

地球上に生存する多様な生物は、それぞれが異なるDNAを持っています。

DNAの違いが、多様性を生み出しているのです。

DNAの構造発見の歴史
  • DNAの構造発見の歴史

DNA自体は1800年代に発見されており、昔から見つかっている物質でした。
ですが、これが「遺伝情報を書き込んでいる設計図である」ということは、当時はまだわからなかったと胡桃坂さんはいいます。


胡桃坂さん 「それがわかったのが1940年代ですね。それから10年以内の間に、DNAがどういう高次構造、立体構造をしているのかというのを、世界中の研究者が競って明らかにしようとしました。どんな形をしているのかを見れば、どうやって遺伝情報がコピーされて子孫に伝わるのかということが、きっとわかってくる。そのためにはまず形を知らなければいけない、ということだったんです。」

  • ヌクレオチド
  • それぞれの塩基が付いたヌクレオチド

当時わかっていたのは、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの4つの塩基が、デオキシリボースという五炭糖とリン酸とでできあがった、ヌクレオチドという物質になっていることでした。

胡桃坂さん 「そしてアデニン、チミン、グアニン、シトシンがそれぞれ付いた4種類のヌクレオチドがあり、それがおそらく糖とリン酸との間でホスホジエステル結合という結合で結ばれ、長い鎖になっているのではないか……ということが、わかってきていたわけです。」

  • 結合したヌクレオチド
  • シャルガフの法則

塩基、糖、リン酸を1組にしたものがDNAを構成する基本単位であり、ヌクレオチドとよばれます。
このヌクレオチドがたくさん結合しています。



胡桃坂さん 「それがどういう構造になっているのかは、わかっていなかったんです。1つ重要なヒントがあって、シャルガフの法則というのがわかっていました。それはどうやら、アデニン・チミンのペアと、グアニン・シトシンのペアというのが同じ量存在する。」

  • アデニンはチミンとだけ結合する
  • グアニンはシトシンとだけ結合する
  • 塩基対

2本のヌクレオチドの鎖の間で、アデニンは、もう一方のヌクレオチドのチミンとだけ結合します。
またグアニンは、シトシンとだけ結合します。
特定の塩基同士が対を作ったり、結合しやすい性質を、相補性といいます。

この相補性によって、互いに向かい合って結合している2つの塩基を塩基対といいます。
一方の鎖の塩基配列が決まれば、もう一方の塩基配列も必ず決まるのです。

  • ワトソンとクリック
  • 二重らせん構造

1953年、それまでの研究者によるDNAの研究をもとに、ワトソンとクリックは二重らせん構造のモデルを提案します。


胡桃坂さん 「ヌクレオチドの模型を作って。その模型でペアを作って、どうやったら上手に二重らせんができるか。二重らせんができるかを調べたかは定かではないんですが。調べていって、非常にきれいな二重らせん構造ができたときに、物理的に無理がなく。そしてアデニンとチミン、グアニンとシトシンがペアを作って、DNAの構造を示すことができたんです。」

  • ヌクレオチドの模型
  • ヌクレオチドのリンは、隣のヌクレオチドの糖にくっつける

A、T、G、Cという4種類の塩基を持つヌクレオチドを使って、DNAの模型を作ってみましょう。

ルールは2つで、AにはT、GにはCを向かい合わせます。
ヌクレオチドのリン酸は、隣のヌクレオチドの糖にくっつくようにつなげていきます。

1本の列の塩基の並びは、どのようになってもかまいません。

  • つなげると、らせん構造になる
  • らせん構造

では、並べていきましょう。

確かに、2本の鎖が、らせんの構造を作りました。


本当にきれいな、らせんになるんですね!

過去の発見を知る意味
  • 「生物と遺伝子」 作詞・作曲 胡桃坂仁志
  • 次回もお楽しみに!

胡桃坂さん
「過去の発見は決して、ないがしろにできないし、過去の発見がすべて説明できる次の発見でないと認められない。
そこはすごくおもしろいところですね。

基礎の生物学を学ぶ意味とは、そこにあるわけです。
過去に何がわかっていて、何が明らかになっていることで、何がわかっていないことか。
何がわかっていないことかを考えるためには、何がわかっていることかを知らなければいけない。

研究とは、長い歴史の中で、先人が作った上に乗っかって、次の人が作っていくと。
僕は先ほど『研究者としては、生命のメカニズム。どうして生命が生きているのか、その秘密を知りたい』それは本当なんですけれども。
でも実際は、それがわかっていく過程の1つのステップを、自分がちゃんと1歩進めたい……というのが、現実的な目標ですよね。」



最後に胡桃坂さんが作った歌で、今回はお別れです。

「生物と遺伝子」 作詞・作曲 胡桃坂仁志

ダーウィンとウォレスが見つけた
進化の 進化の秘密を
メンデルがエンドウマメをまいて
法則を 法則を見つけた
なんてことないさ 親父に似ちゃってんのも
仕方がないのさ 遺伝さ
どうなってんだろう 遺伝子はたらく秘密
つぎは誰が見つけんだろう


それでは、次回もお楽しみに!

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