NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2018年度の新作です。

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今回の学習

第7回

葉緑体とミトコンドリアの起源

  • 生物基礎監修:東京都立西高等学校指導教諭 平山 大
学習ポイント学習ポイント

葉緑体とミトコンドリアの起源

  • アメーバがシアノバクテリアを取り込む

宮城島さん 「無色で単細胞のアメーバが、シアノバクテリアを細胞内に取り込んで4時間くらいかけて消化中です。中が緑色に見えていますね。」


シアノバクテリアは、光合成の回(第5回)でも出てきました。
「アメーバがシアノバクテリアを取り込む」って……食べたということでしょうか?

細胞内共生説とは?
  • 宮城島 進也さん
  • 細胞内共生説とは?

共生細胞進化研究者の宮城島 進也(みやぎしま しんや)さんは、細胞内共生による進化を研究しています。
それは、どのようなことなのでしょうか?


宮城島さん 「今は細胞の中にある、呼吸をするミトコンドリアや光合成する葉緑体。昔は独立に生きていた、光合成するバクテリア・呼吸をするバクテリアが、それぞれ細胞の中に取り込まれ、細胞の中で共生する『細胞内共生』をして、ミトコンドリアや葉緑体になったというのが、細胞内共生説です。


ミトコンドリアや葉緑体って、別の生き物だったのですか!?
では、どうやってミトコンドリアや葉緑体になったのでしょう?

  • 細胞
  • 葉緑体
  • ミトコンドリア

真核細胞内にある細胞小器官、ミトコンドリアと葉緑体は、元は独立して生きていたバクテリアでした。

どのようにして、葉緑体やミトコンドリアは細胞小器官になったのでしょうか。

  • 葉緑体とミトコンドリア
  • シアノバクテリアとプロテオバクテリア

葉緑体の起源はシアノバクテリア、ミトコンドリアはプロテオバクテリア(好気性細菌の一種)という原核生物でした。

それぞれ独自のDNAを持ち、分裂して増えていた生き物です。

細胞内共生説の時系列

約20億年前、ある真核生物が、プロテオバクテリアを取り込みました。
共生する相手を取り込んだ生物を宿主(しゅくしゅ)と呼びます。

宿主の細胞の中で、プロテオバクテリアがミトコンドリアへと変化し、菌類や動物へと進化しました。

一方、プロテオバクテリアを取り込んだ細胞が、約10億年前にシアノバクテリアを取り込み、シアノバクテリアが葉緑体へと変化します。
それが、藻類や植物へと進化を遂げたのです。

細胞内共生とは、宿主の生物が異なる種の原核生物を取り込んで共生し、葉緑体やミトコンドリアを持った細胞を形成したことなのです。

  • 細胞が陥入する
  • 細胞の中にもうひとつ袋ができる
  • 二重の膜に包まれている

気の長くなるような歴史の中で、さまざまな生物に進化していき、今の私たちもあるのです。
ところで、「細胞内共生した」とは、どのようにしてわかったのでしょうか?


宮城島さん 「細胞が外から別の細胞を取り込むときには、自身の細胞膜が内側に陥入して袋をつくり(左画像)、それが細胞膜と連続しているところが切れることによって、細胞の中にもうひとつ袋ができます(中画像)。その中にバクテリアが入っています。バクテリア自身も、自身の細胞膜で囲まれているので、ミトコンドリアと葉緑体は2枚の膜で囲まれることになります。」


右画像・赤矢印の部分も、二重になっているように見えますね!

細胞内共生の発見
  • 細胞内共生の発見
  • 研究の様子

宮城島さん 「『細胞内共生説』は19世紀後半から存在したのですが、その理由というのが、細胞の中でミトコンドリアや葉緑体が、あたかもバクテリアが分裂して増えているかのように『分裂をしている』という観察が元です。」


細胞の中で、ミトコンドリアや葉緑体も増えているということでしょうか?

  • 葉緑体
  • ミトコンドリア

植物細胞を観察してみましょう。

植物細胞の中には、光合成によって光エネルギーを化学エネルギーに変換する葉緑体と、呼吸によって有機物に蓄えられていた化学エネルギーをATPとして取り出すミトコンドリアが存在します。

  • 形がいびつな葉緑体
  • 葉緑体が分裂する

葉緑体に注目して見てみましょう。
丸いものだけでなく、真ん中がくびれた形のものも見えます。

くびれた形の葉緑体は、やがて2つに分かれます。
葉緑体は細胞の中で分裂し、増殖します。
葉緑体だけでなく、ミトコンドリアでも同様の現象が見られます。

  • オルガネラ
  • 分裂の電子顕微鏡写真

宮城島さんは高校生のとき、細胞の電子顕微鏡写真を本で見て「細胞の中はこんなに複雑になっているのか」と興味を持ち始めたのだそうです。

宮城島さん 「大学の講義で、オルガネラ(細胞小器官)は、細胞の中で動いたり、ちぎれたり、くっついたりを繰り返しているということを聞いて、これはすごいことが起きているぞと。電子顕微鏡で観察するとリングのようなものがあり、それが縮むことによって、葉緑体もミトコンドリアも増えているようだと。」


右画像は、宮城島さんが学生のときに葉緑体の分裂を観察したときのものです。
赤い三角形で示された、葉緑体がくびれた部分の小さな黒い部分がリングの断面だろうと考えたのだそうです。

リングが縮んで、葉緑体を2つに分けるのでしょうか?

  • 分裂させるリング
  • 外側と内側のリングにより分裂する

葉緑体とミトコンドリアは、どのように分裂しているのでしょうか。
葉緑体が分裂する際の様子を詳しく見てみましょう。

真ん中のくびれている部分を見ると、リングで縛られているように見えます。
このリングは、宿主の細胞が分裂する際と同じものでできています。

さらに葉緑体内部にもリングが形成され、「宿主がつくる外側のリング」「葉緑体自身がつくる内側のリング」の2つのリングが縮むことで、葉緑体が分裂しています。

  • 分裂は宿主に決められる

外側のリングは宿主がつくっているんですね!
では、それはどうしてなのでしょうか?


宮城島さん 「それぞれ、ミトコンドリアも葉緑体も、元々持っていた遺伝子の多くがなくなってしまったことと、一部の遺伝子は宿主の細胞核の方に移行しています。それらの遺伝子の使い方というのは、すべて宿主の核のコントロール下にあります。葉緑体もミトコンドリアもそれぞれ分裂のためにつくっているリングのタンパク質というのは、ほぼすべて宿主の核にコードされています。ミトコンドリアも葉緑体も自身が増えるタイミングというのは自分で決めることはできなくて、すべて宿主の、細胞核の情報によって決められています。」


宿主が、葉緑体をコントロールしているのですか?

宿主がコントロールする理由
  • 葉緑体
  • 電子顕微鏡写真

宮城島さん 「増殖がコントロールされないと、共生はずっと続かないはずです。たとえば、宿主の細胞の方も増えるので、中身の葉緑体やミトコンドリアも増えなければいけませんが、増えすぎても困ります。増えなければ、葉緑体やミトコンドリアを持たない細胞ができてしまいますが、そういったことはありえません。ということは、宿主によって葉緑体やミトコンドリアの分裂がコントロールされているはずです。」

光合成のしくみ

葉緑体とミトコンドリアで行われている反応を振り返ってみましょう。

葉緑体は、水と二酸化炭素を使って、光合成を行っています。
光エネルギーを、ATPの持つ化学エネルギーに変換し、このATPの持つ化学エネルギーを利用して、二酸化炭素を材料にグルコースなどの有機物をつくります。
このときに酸素が放出されます。

呼吸のしくみ

ミトコンドリアで行われている呼吸では、酸素を用いて、有機物を二酸化炭素と水に分解します。
その過程で、生命活動に必要なエネルギーを取り出しています。

宿主と細胞小器官が共生するには
  • 活性酸素
  • 捕食

宮城島さん 「ミトコンドリアの呼吸や葉緑体の光合成は、その宿主にとって良いことではあります。ですが、どちらも水と酸素を使うという反応の結果、活性酸素種を大量に発生します。これは宿主にとって非常に有害なものです。そのため、葉緑体を持つ生き物もミトコンドリアを持つ生き物も、それぞれ活性酸素種への対応策、まず『消す』ということや、なるべくできないように、というような制御をしています。実は、おそらくそういったメカニズムというのは、捕食の段階からあったのではないかと。」


「捕食」ということは食べて、取り込んだということでしょうか。
どうやって共生するようになったのでしょう?

  • 渦鞭毛虫
  • 盗葉緑体

宮城島さん 「無色の光合成をしない渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)が、自身より少し小さいクリプト藻(そう)という単細胞の藻類を細胞内に取り込み、中で大きく育てて光合成をさせて、光合成産物をもらいながら育ちます。盗葉緑体といいます。」

  • 捕食直後
  • 光合成産物をもらう
  • 消化する

捕食は、とってすぐに消化をしてしまいますが、盗葉緑体は

1 捕食をした直後
2 光合成をさせて、光合成産物をもらう
3 それをしばらくしたあとで消化する

という段階を経ます。
「消化よりも一歩進んでいる、共生の手前」だと宮城島さんはいいます。

任意共生と絶対共生

盗葉緑体の次の段階が、「共生」です。

たとえば、ミドリゾウリムシは体内にクロレラを取り込んでいます。
ミドリゾウリムシはクロレラに二酸化炭素や窒素を与え、クロレラは光合成で得られた糖や酸素をミドリゾウリムシに与えて、共生(任意共生)しています。

真核細胞とそのミトコンドリアや葉緑体は、宿主と取り込まれた生物がお互いに頼り、独立して生きていけないような共生関係になっていったものです(絶対共生)。


細胞小器官になるまでは、何段階もあるんですね!
お互いに様子を見ながら、一緒に暮らす方法を模索してきたんですね。

ミトコンドリアの伝わり方
  • ミトコンドリアの伝わり方

宮城島さん 「基本的に、葉緑体で見られていることと同じことというのは、進化的には先にできたミトコンドリアで起きていたこと。ミトコンドリアのDNAは核のDNAとは違って、両親から来るのではなくて、必ず片方の親、母親からしか遺伝しないことが知られています。」


ミトコンドリアのDNAは、お母さんからしか伝わっていないのですか?

  • ミトコンドリアは卵に入ると分解される
  • 母親のミトコンドリアのみ受け継がれる

私たちの体は、受精卵という1個の細胞から始まっています。
受精卵は、卵と精子のそれぞれの核や、細胞小器官を受け継いでいます。
実は受精のとき、精子のミトコンドリアは、卵の中に入ると分解されてしまいます。

ミトコンドリアは、卵のミトコンドリア、つまり母親からのミトコンドリアのみが受け継がれているのです。

細胞内共生を知る意義
  • 次回もお楽しみに!

細胞内共生は、単純に見えてとても複雑です。
宿主と細胞小器官は、互いに支えあうことで成り立っているんですね。


宮城島さん
「共生とは必ずしも楽なものではなくて。
お互いに……宿主も縛られるし、中に共生したミトコンドリアや葉緑体も宿主に縛られるし。
お互いに制約があって成り立つもの、いいことばかりではないということが、共生なんだと思います。

40億年の生命の歴史の中で、最初にミトコンドリアができたのは20億年前ぐらいだといわれています。
細胞内共生なしに、今の、たとえば多細胞の動物がこれだけ発展していることや、陸上に植物がたくさんあるということ自体は、成り立っていないことです。

細胞内共生と、酸素を使った高効率なエネルギー変換というものが生命の中に広がっていったということを知ることは、まさに細胞内共生を知ることなので。
細胞内共生を知るというのは、今の生物の多様性と進化を知ることそのものだと思います。」



それでは、次回もお楽しみに!

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