NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第3回

生命活動を支える代謝

  • 生物基礎監修:東京都立西高等学校指導教諭 渡邊 正治
学習ポイント学習ポイント

生命活動を支える代謝

  • 高橋伸一郎さん
  • 細胞がシャーレで飼われている

内分泌学者 高橋 伸一郎(たかはし しんいちろう)さんの研究室には、いろいろな細胞があります。


高橋さん 「今培養しているのは、神経細胞と脂肪細胞……脂肪をつくる細胞とか、筋肉の細胞。動物細胞を飼っていて、学生たちが顕微鏡で見ているシャーレの中で飼われています。」


研究室の学生さんたちが飼っているという細胞は、ヒトの胎児の腎臓の細胞や、神経細胞などです。
それぞれ、自分の実験に合った細胞を飼っています。
たとえば、脂肪のたまりかたを研究している人や、筋肉について調べている人もいるのだそうです。

高橋さんの研究室では、細胞を使って、動物がどのように成長したり老化したりするのか、そのしくみを研究しています。

生物を構成する物質
  • シロイヌナズナの孔辺細胞
  • ヒトの口腔内上皮細胞
  • オオカナダモの細胞

高橋さん 「みなさんの体は細胞でできているわけですけれども。細胞の中にいろいろな分子があって、機能しあっています。」

細胞は、分子……?
もの、なのでしょうか?

細胞の構造

細胞は何からできているのでしょうか。

核には、遺伝情報を含むDNAが含まれ、そのDNAは核酸という物質の一種です。
細胞膜は油、つまり脂質でできていて、その中にタンパク質が埋め込まれています。

植物細胞にある細胞壁は、セルロースと呼ばれる炭水化物でできています。
細胞質基質のほとんどは水で、その中にタンパク質や無機物も含まれています。

このように細胞は水、タンパク質、脂質などの物質から構成されています。
その他に、無機物が含まれています。

原核細胞と真核細胞の構成比率

ヒトの細胞を見てみると、その割合は水がほとんどを占めています。
その他に、有機物であるタンパク質や脂質、そして無機物があります。
※炭水化物は糖質とも呼ばれる

原核細胞ではどうでしょうか。
やはり水がほとんどで、次にタンパク質が多く占めています。

原核細胞でも真核細胞でも細胞を構成する物質は同じで、その割合は水がほとんどを占めています。

  • 生命は水から生まれた

高橋さん 「元々、生命は水の中から生まれたので、水を利用しないわけにはいかなかった。その中に細胞という社会をつくるためには、周りと隔絶しなければならない。そのときに、水に溶けない脂質性のものを周りにつくって、自分の社会をつくったわけですよね。」


だから、細胞には水や脂質があるんですね!

  • 細胞の中の連携
  • 心筋細胞

「たとえば、タンパク質、糖、脂肪を水の中に浮かせたら生命になるかと言われたら、誰も生命になるとは言わないだろう」と高橋さんは話します。
その理由は、水の中に「細胞」という形で社会をつくっていないため、どのようにそれらを連携させるかというしくみがないからなのだそうです。


高橋さん 「それを連携させているのが奇跡のようなものなんですけれども。たとえば、『このタンパク質はこれ』『この脂肪はそれ』といった、それぞれの機能を、はたらけるような場をつくっていくためには、ちゃんと組織をつくらなければならないわけですね。」


細胞は物質からできているけれど、ものがあればいいというわけではないんですね。
タンパク質や脂質にも、生き物の中では役割があるんですね。

  • 研究室の様子
  • 研究室の様子

高橋さんの研究室では、脂ののったおいしい食べ物についても研究しているのだそうです。
研究から何がわかるのでしょうか?


高橋さん 「脂肪肝はヒトがなると病気ですよね。でもこれは食べ物にするとフォアグラ、肝臓に脂肪がたくさんたまったおいしい食べ物になります。また、『霜降り』は筋肉に脂肪がたまっているわけですけれども、我々の体だったら病気ですよね。生きている以上は正常なわけで、ただ、病気になると異常だということがわかりますよね。その異常だということを研究すると、正常がわかるわけです。」


つまり、どうして脂肪がたまるのかがわかれば、どうすれば脂肪が分解できるのかがわかるということですね!

  • イモリの細胞

高橋さん 「どうやったら分解するかということを調べることで、体の中でどうやって脂肪をためることになるのかということも、わかるようになります。」


……細胞で脂肪が分解されているということなんですか?
細胞をつくっている物質は、ずっと同じものではないんですか?


高橋さん 「ずっと同じものを使っていると、だんだん傷んできます。合成したり、分解したりして、新しいものに変えていくというのが、我々の体に起こっている、いわゆる『新陳代謝』です。」

同化と異化

生物の体内では、物質が入れ代わり立ち代わり、分解されたり合成されたりしています。

単純な物質から、細胞をつくるタンパク質などの複雑な物質に合成する反応を同化といいます。
逆に、複雑な物質を単純な物質に分解する反応を異化といいます。
合成された複雑な物質は、異化の反応で分解されます。

このように、同化や異化の反応によって生体内で物質が合成・分解されることを代謝といいます。

代謝とエネルギー
  • 動的平衡

高橋さん 「我々は毎日気付かないところで、『動的平衡』というのですが、つくる速度と壊れる速度が同じなら、まるで何も起こっていないように見えるわけですね。」


私たちが気付かない間に、体の中は入れ代わり立ち代わり変わっているのでしょうか。


高橋さん 「我々の体で起こっている、いわゆる新陳代謝をするためには、エネルギーが必要です。そのエネルギーを得ることによって、どんどん新陳代謝をして、自分たちの命に必要な物質をつくり、壊し、ということを絶え間なく続けていくというのがすごく重要になって、それが食べるということの根源的な意味です。」


私たちの体は毎日変わらないように見えているけれど、実は変わっているんですね!

  • 野地博行さん
  • 研究室の様子

代謝に必要なエネルギーとは何なのでしょうか。

一分子生物物理研究者の野地 博行(のじ ひろゆき)さんは、生物の体内でエネルギーがどのようにつくられているのか、分子を実際に見て調べています。


野地さん 「たとえば3か月前と今で、見た目は同じですけれども、一つひとつの我々の分子、もしくは分子を構成している原子のレベルで見ると、3か月前の原子と今の私の体を構成している原子は同じではない。つまり我々の体は常につくって壊して、つくって壊して……という状態の中にあって、つくるときに必ずエネルギーが必要なので、そのエネルギーをご飯を消費することで得ているわけです。」

エネルギーの受け渡しをするATP
  • ATP

エネルギーが必要なのはわかりましたが、「エネルギー」とは何なのでしょうか?


野地さん 「生物の世界では、エネルギーを運んでくれる分子というのが明確にあります。たとえば、キャンディーやチョコレートを食べると元気に動き出すことができます。その糖をとった後に何が起きるかというと、ものすごくたくさんの反応・ステップがありますが、最終的には大部分のエネルギーが『ATP』と呼ばれる分子に渡されます。」

  • エネルギーを取り出すしくみ
  • ゾウリムシの細胞分裂

生き物は、食べることによって体に取り入れた有機物から、エネルギーを取り出すしくみを持っています。

有機物が分解されると、そこに蓄えられていたエネルギーが、ATPという物質に受け渡されます。
逆に、ATPに渡されたエネルギーは、ATPがADPとリン酸に分解される際に取り出され、物質を合成したり、筋肉を収縮するなど、さまざまな生命活動に使われます。



野地さん 「ATPはよく教科書で『細胞のエネルギー通貨』、エネルギー貨幣として使われるという言い方があります。生物がエネルギーをやり取りするときに、ちょうどいい大きさというのがあって。大きすぎても小さすぎてもいけないんですけれども、その『ちょうどいい大きさのエネルギーを持っているのがATP』という言い方もあります。」


確かにお金も、1万円のものを買うときに1円玉しかなければ不便だし、10円のものを買うときに1万円札しか無かったら大きすぎますね。

  • ATPの粉

野地さん 「ATPってパウダーで、白い粉です。」

これが、ATP?
エネルギーを持っているようには見えないのですが……。

  • 引き裂いたウサギの筋肉
  • ATPをかけると筋肉が収縮する

ATPにエネルギーが蓄えられているのか、ウサギの筋肉で実験してみます。

ATPがしみこみやすいように細く引き裂きます。
この筋肉にATPをかけると、筋肉が収縮しました。

  • ウサギの筋肉に1gのおもりを付ける
  • ATPによって筋肉がおもりを持ち上げる

1gのおもりを筋肉に付けてみます。

ATPをかけると、筋肉がおもりを持ち上げました。
ATPのエネルギーを使って、筋肉が収縮したのです。

  • ATP
  • リン酸が離れるとエネルギーが放出される

ATPがあると筋肉が縮んだりすることがわかりましたが、これはどんなしくみなのでしょうか。

ATPは、アデニンとリボースが結合したアデノシンに、3つのリン酸が結合した化合物です。
リン酸同士の結合には、大きなエネルギーが蓄えられます(左画像:高エネルギーリン酸結合)。
3つのリン酸のうちの1つが離れるとき、大きなエネルギーも放出されます(右画像)。

  • ADP
  • 再びリン酸が結合するとATPに

リン酸が2つになったADP。

再びリン酸が結合し、ATPになります。

  • 野地さん
  • 分子の観察の様子

野地さんによれば、基礎代謝レベルでも人間は1日に自分の体重相当のATPを合成し、同じ量だけATPを分解しているといいます。


野地さん 「ATPも分子なので、粒々です。1個の特定の粒だけをずっと観察すると、1日に数百回も合成と分解を繰り返します。生きているって結局、たくさんご飯を食べて、たくさん動くことだよね。その中で、エネルギーを実際に媒介しているATPは大事なので、ぜひみなさんATPを覚えてください。」


それにしても、「食べる」って「おいしい」ということだけでなく、エネルギーを得るために大事なことなんですね。

エネルギーの源は太陽光

高橋さん 「自分はなぜ食べているのか、という疑問ですが。たまたま私の父が植物学者だったので。植物学者と、動物を研究している私とで話をすると、必ず父が『植物の方が偉い』と言うんですね。その理由が、植物は太陽エネルギーを固定できる。地球を見たとき、エネルギーはどこから来ているのかというと、太陽光しかない。」


生き物はエネルギーを使って様々な生命活動を行っています。
そのエネルギーの源は何なのでしょうか。

まず、太陽の光エネルギーを使い、植物が光合成を行います。
そこで光エネルギーを利用して、有機物が合成されます。
その有機物を分解することで、動物をはじめ さまざまな生き物が呼吸によってエネルギーを取り出し、自らの生命活動を維持しているのです。


高橋さん 「話の最後には必ず、父が『お前、従属栄養のやつが何言ってるんだ』と言って話が終わるんですけれども。最後のひと言は『悔しかったら光合成してみろ』って。父もしていないんですけれどもね。」


「光合成」とは、どんなしくみなのでしょうか?
それは、今後のお楽しみです!

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