NHK高校講座

ロンリのちから

Eテレ 隔週 金曜日 午前11:20〜11:30
※この番組は、前年度の再放送です。

ロンリのちから

Eテレ 隔週 金曜日 午前11:20〜11:30
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第11回

ロンリのちから (11)見せかけの根拠

  • 監修:立正大学教授 野矢 茂樹
学習ポイント学習ポイント

ロンリのちから (11)見せかけの根拠

  • 演劇部が体育館のステージで練習中
  • この世界からみんな消えてしまった…

演劇部が体育館のステージで練習をしています。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
タネ「ぼくはタネ。気持ちが種ほど小さいから、みんなにそう呼ばれていた。
しかし、そう呼ぶみんなはもういない。あちこち歩き回ったけど、誰も見当たらない……。
この世界からみんな消えてしまった……。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

  • ノーノ
  • 自分の意見を言いあっているだけの水掛け論

マリア「演出の立場からいうと、なんかしっくりこないんだよね〜。」
圭次「えっ?どこが?」
ノーノ「あのさ、背景は部屋の方がよくない?」
圭次「なんで?街の方がいいよ。」
マリア「町だとしてもこの風景は違うよ。例えば、駅の構内とかスーパーの中とか……。」
ノーノ「部屋の方がいいよ!」
マリア「来緋はどうなの?来緋がどれに賛成するかで決まるよ。」

溝口先生「あなたたちがしていることは、ただ自分の意見を言いあっているだけの水掛け論ね。互いの意見を理解しようとしないで、ただ結論だけを求めている。」
マリア「失礼ですけど、どちらさまですか?」
溝口先生「映像部の顧問をしている溝口よ。産休の成瀬先生に代わって、あなたたち演劇部を見ることになったの。まず、相手の考えを理解しようとしなければダメ。」
圭次「これ以上何を理解すればいいのですか?」
溝口先生「なぜノーノが部屋の中がいいと言うのかわかる?」
圭次「それは……。」

  • 溝口先生
  • 演劇部の生徒たち

☆どうしてそういう意見なのか、その根拠を求める☆

溝口先生「それぞれ自分がどうしてそう考えるのか根拠を言ってごらんなさい。」
ノーノ「だって、部屋の中にいる方が感じ出てると思うし。」
圭次「違うよ、町を歩いていて立ち尽くすからいいんだよ。」
マリア「いやいや、ここは演出家の直感が大事でしょ。」
溝口先生「根拠になってないわね。私についていらっしゃい。」

  • 盆栽クラブ
  • 見せかけだけの根拠に騙されないようにしなくてはいけない

一同は盆栽クラブを訪れました。

溝口先生「根がしっかりしていなければ木は枯れてしまう。同じように、何かを考えるときにも根をしっかり張ることが大事。」
マリア「考える根って根拠ってこと?」
溝口先生「そう。形だけ根拠になっていても、実は根拠になっていない事がよくあるの。いわば見せかけの根拠ね。見せかけだけの根拠に騙されないようにしなくてはいけないわ。」

見せかけの根拠とは……
  • 母「勉強しなさい!」
  • 勉強は大事だからよ!

例えばこんなシチュエーション……
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「勉強しなさい!」
息子「どうして勉強しなくちゃいけないの?」
「またそんなこと言って。勉強は大事だからよ!」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「勉強しなさい」という意見の根拠が「勉強は大事だから」となっています。
ただ「大事だから」では何も伝わりません。
勉強のどういうところが大事なのか言わなければ根拠になりませんね。

  • 「最近の観葉植物はダメだ」「逆にダサい、盆栽が一番」という意見
  • 自分の考えを理解してもらおうという姿勢がまったくありません

もうひとつ、例えばこんなシチュエーション……
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
男子生徒A「最近の観葉植物ってダメだよね。」
男子生徒B「あんなの全然ダメ。逆にダサい。やっぱ盆栽が一番。」
女子生徒「なんでそう思うの?最近の観葉植物の何を知っているの?」
男子生徒A「だって、あんなのくだらないもん。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「最近の観葉植物はダメだ」「逆にダサい、盆栽が一番」という意見の根拠が「(観葉植物は)くだらない」となっています。
男子生徒2人は意見を言っているだけ。
自分の考えを理解してもらおうという姿勢がまったくありませんね。

  • 男の「幸福はお金で買えない」という意見
  • 自分の意見だけ言い合っててもダメ

もうひとつ、例えばこんなシチュエーション……
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「幸福は金なんかじゃ買えやしないんだ。」
「そんなことはありはしません。お金があれば、幸福は手に入ります。」
おばあさん「あんたたち、自分の意見だけ言い合っててもダメ。根拠、根拠!」
「そうだな。幸福は金なんかじゃ買えないんだ。なぜなら。金には代えられない幸福があるからだ。」
「いいえ、お金があれば幸福は手に入るわ。なぜなら、お金があれば誰でも幸せになれるからよ。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

男の「幸福はお金で買えない」という意見の根拠が「お金には代えられない幸福がある」となっています。
また、女の「お金があれば幸福は手に入る」という意見の根拠が「お金があれば誰でも幸せになれる」となっています。
根拠に見せかけて、実は同じことを言い換えているだけの見せかけの根拠です。

演劇部のみんなの意見と根拠は?
  • 来緋
  • 考えが深まることで意見が変わっていくこともある

それでは、演劇部のみんなの意見と根拠を思い出してみましょう。

【圭次】
意見:町の中
根拠:町を歩いていて立ち尽くすから
【マリア】
意見:駅の構内/スーパーの中
根拠:演出家の直感
【ノーノ】
意見:部屋の中
根拠:部屋で立ち止まる方が感じ出てる

では、なぜそういう意見なのか、どうしてそう考えるのか、その根拠を掘り下げて考えてみましょう。

圭次「誰もいないんだから、誰もいない町の様子を見せるのが一番でしょ。部屋の中じゃ外のことはわからないもん。」
マリア「でも、誰もいないってことだから、以前は人がたくさんいたところがいいでしょ。駅の構内とか、スーパーの中とか。」
ノーノ「だって、本当は誰もいないんじゃなくて、このあと私、ヒネの役で登場するんでしょ?」
圭次「うん、そう。タネは誰もいなくなったと思い込んでる。でも……」
マリア「あ。ねぇ、この場面で見せたいのは誰もいなくなったという事実?それともそう思い込んでいるタネの孤独感?」
圭次「孤独感だね。」
マリア「タネは自分一人が取り残されたと思い込んでいる。だったら、部屋の中の方がタネの孤独感をより強く出せるんじゃないかな。」
圭次「さっきと言ってること違うじゃん。」
マリア「これはノーノの考えの根拠だね。だけど、どうして部屋の中がいいと思うのかノーノの立場になって考えてみたら、タネの孤独感だって思いついたの。」
圭次「部屋の中の方が世界から孤立したタネの心をよく表してる。」
来緋「じゃあ僕は部屋の中で孤独に押しつぶされそうになっているかんじで演技しますか!」

溝口先生「根拠を求めることで考えが深まる。考えが深まることで意見が変わっていくこともあるの。そうしてより良いものが生まれるの。」

  • マリア
  • 論理のち・か・ら☆

新しい脚本で演劇の練習を再開しましょう。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
タネ「あちこち歩き回ったけど、誰も見当たらない……。この世界からみんな消えてしまった……」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

マリア・圭次「いいね!」
圭次「今までは、とにかく自分の意見をはっきり言えばいいと思ってたけど、それだけじゃダメなんだ。」
マリア「どうしてそう考えるのか、根拠を考える。そうするとお互いがもっと理解できて考えも深まっていく。溝口先生、これって……」
溝口先生「そう。見せ掛けではない根拠を考える。それは論理のち・か・ら☆」

不思議の国のロンリ劇場〜見せかけの根拠をやっつけろ!〜
  • アリスとハンプティダンプティ
  • アリスとうさぎさん

ハンプティダンプティ「アリスって名前には意味があるのかね?」
アリス「ないわよ。」
ハンプティダンプティ「意味がない?名前には意味がなくてはいかん。」
アリス「どうして?」
ハンプティダンプティ「どうしてだと?いいかね、我輩の名前“ハンプティダンプティ”はこの丸い素敵な形を意味しておる。だから、あらゆる名前には意味がなくてはならんのだ。」

アリスはうさぎさんに相談に行きました。

アリス「ねえ、うさぎさん。これって……」
うさぎさん「見せかけの根拠だね。」
アリス「私、言い返せなかったんだけど、どうしたら良かったのかな?」
うさぎさん「追求するのさ。どうしてそれが根拠になるの?ってね。やってごらん?」
アリス「どうしてそれが根拠になるの?あなたの名前に意味があるということから、名前が全部意味を持たなくちゃいけないなんてどうして言えるの?」
うさぎさん「そうそう。」
アリス「ところでうさぎさん、うさぎさんの名前はなんなの?」
うさぎさん「うさぎさん、だよ。」
アリス「えーーーーーーーっっ!!!」

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約