NHK高校講座

歴史総合

Eテレ 隔週 水曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。

歴史総合

Eテレ 隔週 水曜日 午前10:00〜10:20
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今回の学習

第1回

なぜ歴史総合なのか

  • 監修・講師:東京大学教授・川島 真
学習ポイント学習ポイント

なぜ歴史総合なのか

  • 秋元才加さん
  • 牧田習さん

歴史総合、今回のテーマは「なぜ歴史総合なのか」。

ここは秋元才加さんがオーナーを務めるグローバル・レストラン「こんぺいとう」です。
そこに常連客の牧田習さんが加わります。

世界中のおいしい料理を取りそろえ、みなさんを、時空を超えた旅にいざないます!

  • カレーライス

しゅう 「お腹すいたよ!今日のオススメある?」

さやか 「もちろん準備OK!今日はスペシャルだからね。」

しゅう 「え?カレーライス?でも、普通のとちょっと違うような?」

さやか 「スペシャルだからね。しゅう君もカレーは大好きでしょう?」

しゅう 「うん、カレーが嫌いな人、あまりいないと思うな。」

本日のオススメ カレーライス
  • いろいろなカレー
  • インドのスパイス料理がイギリス経由でカレーとして日本に紹介され始めた

グローバル・レストラン「こんぺいとう」がお届けする、本日のオススメはカレーライス。
好きな家庭料理アンケートでは、常に上位にランキングしています。
今や日本の国民食です。
インドのスパイス料理が、イギリス経由でカレーとして日本に紹介され始めたのは、日本の近代化が進み出す、およそ150年前です(画像・右)。
その後、日本で独自の進化を遂げたカレーライスの歴史をひもとけば、意外な事実と時代の変化、そしてあなたの未来が見えてくる!

  • 明治時代のカレー
  • 西洋料理指南書

さやか 「今回は明治時代のカレーライスを再現しました!」

しゅう 「ちょっと違うと思ったら、明治時代のカレーなんだ。いただきます!これ、何が入ってるんだろう?じゃがいもとか、にんじんは入ってないし…。お肉はこれ、なんだろう?」

さやか 「これはね、当店に伝わる、明治時代のレシピを再現したものなんです。明治5年、1872年に発行された料理のレシピ本『西洋料理指南』です。」

しゅう 「食材は、『葱一茎(ねぎいっけい)』。葱って長ねぎのこと?」

さやか 「そう。」

しゅう 「それから赤蛙(あかがえる)?え、カエル!?この肉ってカエルだったの!?」

さやか 「そうなんです、レシピ通りに再現しちゃいました。」

しゅう 「でも、じゃがいも、にんじん、たまねぎがないのは、なんだか物足りないな。」

さやか 「どうしてこういった食材が使われていたと思う?」

しゅう 「どうしてって言われても、わからないな。」

カレー 食材の時代背景
  • 肉食の禁
  • カレーとカエルとネギ

明治維新前の江戸時代、日本では肉食が禁じられていました。
多くの日本人は米を主食に、野菜や魚などを食べていたのです。
明治天皇が初めて牛肉を食べ、「肉食の禁」が解かれたのは、明治5年、1872年のことです。
これは、カレーのレシピ本が発行された年と同じです。
一般の人たちが牛肉や豚肉を食べるようになるのは、もう少し先のことでした。

カエルは肉食を禁じていた江戸時代でも、薬として食されていました。
長ねぎは、鍋料理などに欠かせない庶民の味でした。
じゃがいも、たまねぎ、にんじんは、西洋から伝わった西洋野菜です。
明治初期の日本では、まだ一般的ではありませんでした。

明治41年のカレーライスのレシピ

しゅう 「なるほど。明治時代の初めに食材が違ったのは、こういうことだったんだね。」

さやか 「次にこれを見て。明治41年、1908年に発行されたカレーのレシピです。」

しゅう 「材料に牛肉って書いてあるよ。人参(にんじん)、玉葱(たまねぎ)、そして馬鈴薯(ばれいしょ)?」

さやか 「馬鈴薯は、じゃがいものことだね。」

しゅう 「今のカレーと同じになったのかな。さっきのレシピが、確か明治5年だったよね。40年くらいの間に何があったんだろう?」

カレーライスと近代化
  • クラーク博士
  • 当時の農業機械

  • じゃがいもの収穫量のグラフ
  • 札幌農学校取裁録

「Boys,be ambitious.(少年よ大志を抱け)」

クラーク博士の有名な言葉です。
カレーの具材に西洋野菜が使われるようになったことに、彼の功績は少なからず関係しています。
誕生直後の明治政府は、食料増産のため北海道の開拓を行いました。
札幌農学校を設立し、農業教育者のクラーク博士を教頭に就任させたのは、明治9年(1876)のことでした。

今も残る当時の農業機械(画像・右上)。
西洋から調達したこれらの機械を用い、大規模農地での大量生産を始めました。
農業の近代化です。
このとき選ばれたのが、じゃがいもなど、寒冷地でも栽培が可能な西洋野菜です。
その収穫量は飛躍的に伸び、日本中に普及しました(画像・左下)。
ちなみに、札幌農学校の公文書には、生徒たちが1日おきにカレーを食べていたことが記されています(右下)。

  • 海軍割烹術参考書
  • 列強のアジア進出

  • 義和団戦争の連合軍
  • 1880年の成年男子の平均身長

一方、20世紀になって、カレーライスは軍隊食として採用されるようになります。
実は、さやかオーナーが紹介した明治41年のカレーレシピは海軍の料理参考書。
なぜ、軍隊食としてカレーライスが採用されたのでしょうか。

19世紀以降、植民地化が加速していたアジア。
欧米列強と対峙するための近代化政策の1つが「富国強兵」でした。
そこで問題となったのは、欧米との体格差(画像・左下)と、栄養不足による病気です。
カレーライスは、肉、野菜、米を一度に食べさせることができ、体格の改善が期待されました。
軍隊食として理想的だったのです。


しゅう 「強い軍隊を作るためには、食事まで見直す必要があったんだね。」

さやか 「欧米列強との体格差をうめるためには、カレーライスが適役だったってわけ。」

しゅう 「じゃあ、カレーを食べるようになってから日本人の体格はどうなったんだろう?」

さやか 「1880年の日本人の成人男子の平均身長は157.8cm(画像・右下)なんだって。」

しゅう 「今の僕の身長は173cm。だから、これは食文化の近代化のおかげって言えるかもね!」

  • カレールー
  • カレー粉

さやか 「でも、カレーの食材、なにか見落としてない?」

しゅう 「カレールー!」

さやか 「正解!」

しゅう 「これがないとカレーは作れないよ。でも、いつごろからあるのかな?」

さやか 「明治時代には、まだカレールーはなくて、そのころは、このカレー粉を使って、料理していたの。」

しゅう 「初めて見た。カレー粉ってなに?」

さやか 「じゃあ、カレー粉とカレールーが、いつごろ生まれて、私たちの暮らしをどう変えたのか、調べてみたら?」

カレーライスと大衆化
いろいろなスパイス

そもそもインドのカレーはたくさんのスパイスを調合して作ります。
この複雑なレシピを簡略化したのが、カレー粉です。
スパイスを調合し、1つの調味料にしたのです。
18世紀頃にイギリス人が考案しました。
ところが、イギリス産のカレー粉は高価でした。
そのため、カレーライスは長い間、高級料理として食されていました。

そこで、20世紀になると、カレー粉の国産化を目指す人々が次々に現れました。
1923年(大正12年)に登場したカレー粉は、原料の香辛料を一からブレンドすることを試みました。
イギリスのカレー粉のレシピは公表されていませんでした。
そのため、薬問屋などから調達した香辛料を独自に調合。
試行錯誤を繰り返し、ようやく完成しました。
国産化によって値段が安くなり、家庭にカレーが浸透していきました。
これがカレーの大衆化のはじまりです。

  • 阪急百貨店大食堂がオープン
  • 固形カレールー

一方、外食では、1929年(昭和4年)、大阪の阪急百貨店に大食堂がオープンしました。
目玉メニューの1つがカレーライスでした。
ビフテキと同じ値段でしたが、カレーライスはコーヒー付き。
1日に1万3千食を売り上げるほどの大ヒットを記録しました。
デパートで買物をしたあと、食堂でランチを楽しむ。
これが、庶民の少し贅沢な休日の過ごし方として広まっていきました。

第2次世界大戦後の1950年頃、固形カレールーが日本で誕生。
スパイスにだし成分や、味にコクを出す油成分などが加わり、各家庭でいっそう手軽にカレーを調理できるようになりました。
カレーの大衆化はさらに進み、日本の国民食へと進化していきました。

しゅう 「カレーが大衆化したのは、たくさんの人の努力があったからなんだね。」

さやか 「身近なもののヒストリーを調べると、ほんとおもしろいよね。そして、このカレーライス、またまた日本で進化しました!」

大衆化とメディア
  • レトルトカレー

しゅう 「レトルトカレーだ!」

さやか 「これね、日本人が発明したんだよ。」

しゅう 「知らなかった、そうなんだ。」

1968年、レトルトカレーが誕生。
コマーシャルのヒットと共に大ブームになりました。
テレビというマスメディアの登場によって、カレーの大衆化は加速しました。
大量生産・大量消費社会へと大きく変化していく中、カレーはさらに人々の暮らしに浸透していきました。

しゅう 「僕もテレビで新しいカレーのCMとか見たら、つい食べたくなって買っちゃうんだよね。」

さやか 「レトルトカレーの種類も増えているし、本格的なインドカレーもあるよね。」

しゅう 「最近すごく気になることがあるんだよね。近くにインド料理屋さん増えてない?」

さやか 「確かに。そういうお店に、なぜかネパールの国旗がかかってたりするんだよな。これは2人で調べてみようか?」

しゅう 「調べよう!」

カレーライスとグローバル化
  • ネパールの地図
  • ネパールの日本語学校の様子

  • ネパール人在留資格者のグラフ
  • ネパール人の子供

日本のインド料理店は2008年からの10年間で4倍に増加し2000店を突破しました。
ところが、働いている人の多くがネパール人。
インドに国境を接するネパールは、自国の産業に乏しく、平均月収は2万円弱です。
そのため、国策として出稼ぎを奨励しています。

ネパールにある日本語学校(画像・右上)。
出稼ぎ先の1つが日本です。
2005年からの16年間で、ネパール人の日本在留資格者は、およそ14倍に増えています(画像・左下)。
ヒマラヤ山脈のすそ野にある農村地帯では、働き手の半数以上が日本に出稼ぎに行き、残っているのは高齢者や子どもばかりです(画像・右下)。
ネパール人にとって、隣の国インドのカレーを作るのはたやすく、しかも日本人の好みに合わせ、前菜は生野菜のサラダ、ナンはより大きくふかふかに、カレーはインドで使わない食材でも作る、という具合に独自の進化をとげています。
これは、国境を越えて人や物、お金や情報の行き来が盛んになる、グローバル化のたまものです。

  • ランチタイムには、ほぼ満席になるほどの人気
  • 海外店舗数は2021年時点で187店舗

一方、日本のカレーもグローバル化を進めています。
日本一の店舗数を持つカレーライス専門店は、2020年にインド店をオープンしました。
ランチタイムには、ほぼ満席になるほどの人気です。
海外店舗数は2021年時点で187店舗、社会主義国のベトナムや中国にまで展開しています。

しゅう 「世界がグローバル化した結果、日本でネパール人が作るインド料理が食べられるようになったんだね。」

さやか 「実際、イギリスではね、日本式の『カツカレー』が大人気なんだって。カツカレーが日本カレーの代名詞になったから、カツがのっていなくてもカツカレーって言うんだって。」

しゅう 「日本のレトルトカレーもインドや中国に進出しているんだって。どちらの国も経済成長がすごいから、手軽に食事ができるレトルトカレーは日本のように広まるかもね。」

  • 明治のカレー、普通の日本のカレー、インドカレー
  • 明治時代と現代のカレー

さやか 「明治のカレー、普通の日本のカレー、インドカレー、すべて取りそろえました。(画像・左)」

しゅう 「こうやって見ると時代とか場所によってカレーが変わってきたのがわかるね。」

さやか 「どう?3種類見比べてみて。」

しゅう 「どれもおいしそうだけど、具とかをしっかり見ると、何かそれぞれの時代の背景とかが見えてくよね。」

さやか 「食材とか、色合いもそうだけど、スパイスの使い方とかも全然変わってきてるよね。」

しゅう 「同じ日本でも明治と今でこんなにも違うから(画像・右)、これからどんどんカレーが進化して行くかもね。」

さやか 「今回のオススメ、カレーライス、どうでした?」

しゅう 「カレーにこんなに歴史があるって思わなかったし、世界中のいろんな時代にカレーが旅しているみたいで、すごいおもしろかった。」

しゅう 「これから大衆化とかグローバル化がもっと進んで、おいしいカレーとか、はやく作れるカレーとか出てきたらいいな。」

さやか 「時代によって、カレーライスの中に入ってくる食材もまた変わってくるかもね。」

歴史総合の特徴・学習のしかた
  • 川島真先生

2022年度からの新科目「歴史総合」について、教科書作りにも関わった川島先生に、特徴や学習のしかたを教えてもらいましょう。

1番目に、この科目は「18世紀から現在までの期間を学ぶ」ということです。
これまでは学びが決して十分とは言えなかった近現代史を中心とする科目になっています。

2番目に、「日本史と世界史が融合された科目」という点です。
日本と世界との結びつきが強まる時代ですので、世界と日本との関係性やつながり、そして、色々な国や地域などとの比較の中で学びを深めていただければというふうに思います。

3番目に、今回のカレーがそうでしたが、みなさんが「身近なところから学ぶ」ということも、この科目の特徴になっています。

4番目に、方法として、「さまざまな資料(歴史史料や絵画・写真・図表など)から、根拠を得ながら学ぶ」ということがあります。
これは歴史学の基礎を学ぶということでもあります。

5番目に、「時代ごとに3つのテーマ(近代化、大衆化、グローバル化)が設定されている」ということがあります。
およそ19世紀には近代化20世紀前半から半ばまでが大衆化20世紀後半以降をグローバル化というふうに設定していますが、近代化や大衆化は現在にも継続し、また、それぞれ重なってもいますから、国や地域ごとにその重なり方は違う、多様である、ということを踏まえてほしいと思っております。
また、今回のカレーの話も、この3つのテーマを踏まえて考えてほしいと思っています。

最後になりますが、その時代の人々の考え方や選択を大事にするということはもちろん、格差や差別、あるいは開発と環境といったような、「現在の諸課題と結びつけながら学ぶ」ということがあります。
歴史から現在を考えるということのトレーニングと考えていただければ、と思っています。


それでは次回もお楽しみに!

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